ODA(政府開発援助)

質の高いインフラ投資
令和5年5月10日
(写真1)写真提供:JICA/佐藤 浩治 写真提供:JICA/佐藤 浩治
(写真2)写真提供:JICA/久野 真一 写真提供:JICA/久野 真一

概況

 開発途上国の自立的発展には、水道、道路、発電所といった、そこに暮らす人々の生活や経済活動を支え、国の発展の基盤となるインフラが不可欠です。ところが、依然として、途上国にはインフラに対する膨大な需要があり、2040年までのインフラ需給ギャップは約15兆米ドルとも推計されています(G20グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH))。

 このインフラ需要ギャップを埋めるべく、膨大なインフラ需要に応える必要がありますが、ただ多くのインフラを整備すれば包摂性、持続可能性、強靱性を兼ね備えた「質の高い成長」を実現できるというわけではありません。例えば初期投資が安価であるインフラ・プロジェクトは、制約のある財政状況下では、魅力的に映ることがあるでしょう。しかし、たとえ初期投資が安くとも、非開放的で不透明なインフラ調達により価格に見合った価値の提供が確保されない、運営・維持に莫大な費用がかかりライフサイクル全体でみた経済効率性に欠ける、中長期的に実行困難な債務返済計画により債務不履行(デフォルト)に陥るということになれば、結果として途上国の成長を阻害するものになりかねません。

 つまり、途上国において、「質の高い成長」を実現するためには、インフラの整備にあたり、その需要に量的に対応するのみならず、透明性、開放性、ライフサイクルコストからみた経済性、債務持続可能性等を考慮していくことが非常に重要となっています。

 このような考えの下、日本は、より多くの人々が良質なインフラを利用できるよう、「質の高いインフラ」の国際スタンダード化を目指し、国際社会と連携して「質の高いインフラ」の重要性を発信してきました。

 「質の高いインフラ投資」の基本的な要素について認識を共有する第一歩となったのが、2016年の日本議長国下のG7伊勢志摩サミット(2016年5月)で合意された「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」(英文(PDF)別ウィンドウで開く日本語仮訳(PDF)別ウィンドウで開く)です。同原則の具体的要素の重要性はその後G20杭州サミットをはじめ、多くの国際会議で確認されてきました。さらに、2019年6月の日本が議長を務めたG20大阪サミット(2019年6月)において、新興ドナー国も含め「質の高いインフラ投資に関するG20原則」(英文(PDF)別ウィンドウで開く日本語仮訳(PDF)別ウィンドウで開く)が承認されました。

 日本は、今後とも質の高いインフラ投資の国際スタンダード化を進めるべく、経済協力開発機構(OECD)やEU等を含む国際社会と連携して取り組んでいきます。

 また同時に、日本は高度な技術を生かして途上国の開発に資する質の高いインフラ投資に取り組んでいます。日本の個別の取組については、以下のリンクをご確認ください。

質の高いインフラとは

 「質の高いインフラ」とは、自然災害などに対する「強靭性」、誰ひとり取り残されないという「包摂性」、社会や環境への影響にも配慮した「持続可能性」を有するものです。質の高いインフラ投資を実現するために2019年のG20プロセスで「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が作成され、同年6月の大阪サミットで承認されました。この原則には、以下のものが含まれます。

  • 開放性・透明性
    インフラ・プロジェクトが価格に見合った価値(value for money)を提供できるよう、インフラの調達に際し、開放性・透明性を確保する。また、包摂的成長を実現する観点から、完成後の  インフラが、透明性をもって運営され、全ての利用者が平等にアクセス可能(開放性)とする。
  • ライフサイクルコストを考慮した経済性
    持続可能な成長を確保する観点から、経済社会的インパクトや費用対効果を十分に考慮し、経済性を確保する。その際、インフラ建設の初期投資のみならず、その運営や維持・管理、自然災害へのレジリエンス、環境への配慮等を含めたライフサイクルを通じた全体的なコストを考慮する。
  • 債務持続可能性
    プロジェクトレベルの財務面での持続性に加えて、プロジェクト実施国のマクロレベルでの債務持続性が透明性のある形で考慮されている。

質の高いインフラ投資に関する主要関連会議・イベント

G7伊勢志摩サミット(2016年5月)

 2016年(平成28年)に開催されたG7伊勢志摩サミットでは、参加した主要先進七か国が、「質の高いインフラ投資」の基本的要素について国際社会で認識を共有することが重要との点で一致し、「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」(英文(PDF)別ウィンドウで開く日本語仮訳(PDF)別ウィンドウで開く)にG7として合意しました。合意した内容を、今後各国、国際機関等に対して効果的に発信し、インフラ投資・支援の実施において、「原則」に沿った行動をとるよう促していくことを確認するとともに、日本は2016年の議長国として、質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブを発表しました。

G20大阪サミット(2019年6月)

 2019年(令和元年)に開催され、日本が初めて議長国を務めたG20大阪サミットでは、新興ドナー国を含む G20メンバー国が今後の質の高いインフラ投資に関する共通の戦略的方向性と高い志を示すものとして「質の高いインフラ投資に関するG20原則」(英文(PDF)別ウィンドウで開く日本語仮訳(PDF)別ウィンドウで開く)が承認されました。国際社会と協力し、開放性、透明性、経済性、債務持続可能性といった要素を含む同原則を、国際社会全体に普及させ、個別のプロジェクトに反映・実践していくとともに、途上国の同原則履行のための能力構築支援を促進し、持続可能で包摂的な経済成長を支えていきます。

2015年9月 国連「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(英文(PDF)別ウィンドウで開く)(日本語仮訳(PDF)別ウィンドウで開く
2015年11月 G20アンタルヤサミット
2016年5月 G7伊勢志摩サミット
2016年8月 第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)(ナイロビ)
2016年9月 G20杭州サミット
2016年12月 国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして」(東京)
2017年4月 第1回アジア国際経済フォーラム(東京)
2017年6月 OECD閣僚理事会(パリ)
2017年9月 質の高いインフラ投資の推進に関する国連総会サイドイベント(ニューヨーク)
2017年11月 東アジア首脳会議(EAS)(マニラ)
2018年4月 質の高いインフラの推進に関するセミナー(東京)
2018年5月 OECD閣僚理事会(パリ)
2018年6月 G7シャルルボワ・サミット
2018年9月 ASEM持続可能な連結性/質の高いインフラに関するセミナー(東京)
2018年9月 質の高いインフラ投資の推進に関する国連総会サイドイベント(ニューヨーク)
2018年11月 第13回東アジア首脳会議(EAS)(シンガポール)
2018年11月 第21回ASEAN+3(日中韓)首脳会議(シンガポール)
2018年11月 APEC首脳会議(パプアニューギニア)
2018年11月 G20ブエノスアイレスサミット
2019年5月 OECD閣僚理事会(パリ)
2019年6月 G20大阪サミット
2019年7月 G7ビアリッツ・サミット
2019年8月 第7回アフリカ開発会議(TICAD VII)(横浜)
2020年10月 OECD開発センター(DEV)理事会第6回ハイレベル会合(テレビ会議)
2020年10月 OECD閣僚理事会(テレビ会議)
2020年11月 日本政府・OECD共催 質の高いインフラ投資に関するシンポジウム(テレビ会議)
2020年11月 G20リヤドサミット
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