ODA(政府開発援助)

万人のための質の高い教育

分野をめぐる国際潮流

平成28年8月9日

概況

 学齢児童のうち5,800万人は依然として学校に行っていない。また,約7億8,100万人の成人は依然として基本的な識字能力を持っていない。
(出典:ユネスコ『グローバル・モニタリング・レポート2015(英語)別ウィンドウで開く』)

 教育は,国家や地域の経済開発において重要な役割を果たし得るとともに,人間一人ひとりが自らの才能と能力を十分に伸ばし,尊厳をもって生きていく道を開くためのものであり,日本が推進している人間の安全保障の実現の基礎となるものです。2015年(平成27年)9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中に含まれる持続可能な開発目標(SDGs)には,教育分野の目標が明記されました。教育は全てのSDGsの達成に欠かせない要素であり,国際社会は,教育開発への取組を強化しています。

主な国際会議

(1)万人のための教育世界会議(1990年)

 1990年(平成2年)3月,タイのジョムティエンで「万人のための教育世界会議」が開催され,「万人のための教育(EFA: Education for All)」をスローガンとして,全ての人に基礎教育を提供することを世界共通の目標とするという国際的コンセンサスが形成されました。なお基礎教育とは,「人々が生きるために必要な知識・技能を獲得するための教育活動」と定義され,具体的には就学前教育,初等教育,前期中等教育及びノンフォーマル教育(成人教育,識字教育など)を含むものとされています。

(2)世界教育フォーラム(2000年)

 2000年(平成12年)4月に,セネガルのダカールで開催された「世界教育フォーラム」において,1990年代の万人のための教育(EFA)に向けた取組は一定の成果をあげたものの,いまだに学校に通うことのできない子どもや,日常的な読み書きや計算が十分にできない成人も多く存在しているとして,2015年(平成27年)までの達成を目指した「EFAダカール目標」が採択されました。

「EFAダカール目標」(EFAダカール行動の枠組み)(概要)
(1)就学前教育の拡大と改善
(2)無償で良質な初等教育を全ての子どもに保障
(3)青年・成人の学習ニーズの充足
(4)成人識字率(特に女性)を50%改善
(5)教育における男女平等の達成
(6)教育のあらゆる側面での質の改善

(3)ミレニアム開発目標(2001年)

 2000年(平成12年)9月のミレニアム・サミットで採択されたミレニアム宣言を契機にとりまとめられたミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)においても,8つのゴールのうち,2つは「EFAダカール目標」のゴール(初等教育の完全普及の達成,ジェンダー平等推進と女性の地位向上(教育における男女間格差の解消))が盛り込まれました。

(4)世界教育フォーラム2015(2015年)

 2015年(平成27年)5月に,韓国の仁川で,「世界教育フォーラム2015」が開催され,2030年までの教育分野の政治的コミットメントがまとめた「仁川宣言」が採択されました。

(5)持続可能な開発目標(2015年)

 2015年(平成27年)9月の国連サミットで「持続可能な開発目標」を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。持続可能な開発目標では,目標4(SDG 4)として教育分野の目標(すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し,生涯学習の機会を促進する)が明記されました。

「持続可能な開発目標:目標4」(概要)
(1)2030年までに男女区別なく,全ての子どもが無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了
(2)2030年までに男女区別なく,全ての子どもが質の高い乳幼児の発達・ケア,就学前教育にアクセス
(3)2030年までに男女区別なく,全ての人が質の高い高等教育(職業訓練・大学)への平等なアクセス
(4)2030年までに働きがいがある仕事や起業に必要な技能を備えた若者・成人の割合を増加
(5)2030年までに教育のジェンダー格差解消,脆弱な立場にある者が全レベルの教育に平等にアクセス
(6)2030年までに全ての若者と大多数の成人が読み書き及び基礎的計算能力を身につけるようにする
(7)2030年までに持続可能な開発のための教育(ESD)やグローバル・シチズンシップ教育等を通じ,全ての学習者が,持続可能な開発を促進するために必要な知識・技能を習得できるようにする

(6)Education 2030ハイレベル会合(2015年)

 2015年(平成27年)11月に,パリで,ユネスコ総会にあわせて開催された「Education 2030ハイレベル会合」において, SDG 4をグローバルレベル,地域レベル,国レベルで着実に実施するための行動枠組である「Education 2030行動枠組」が採択されました。これまで,国際社会はEFAの達成に向けて取り組んできましたが,今後はSDG 4の達成に向けてEducation 2030行動枠組に基づいて取組を進めていくことになりました。

主な国際的な動き

(1)SDG4-Education 2030の主導機関としてのユネスコ

 ユネスコはこれまで,EFAダカール目標の達成状況をとりまとめた『グローバル・モニタリング・レポート(GMR)』(2007年より日本語版(概要)別ウィンドウで開くも作成)を発行し,そのレビューと政治的なモメンタムの維持を目的とした閣僚級会合を主催してきました。2016年(平成28年)以降は,SDG4-Education 2030の着実な実施に向け,SDG4-Education 2030の主導機関として活動して行くほか,GMRの後継文書として,『グローバル・エデュケーション・モニタリング・レポート(GEM) (英語)別ウィンドウで開く』を発行することとなっています。

(2)教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)

 教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE: Global Partnership for Education(英語)別ウィンドウで開く (旧称:ファスト・トラック・イニシアティブ))は,教育関連MDGsの一つである「2015年までの初等教育の完全普及」の達成に向けた国際的なパートナーシップとして,2002年(平成14年)4月に世銀の主導で設立されました。GPEの設立は,2001年(平成13年)のG8ジェノバ・サミットの後に結成されたG8教育タスク・フォースの提言を受けたものであり,またMDGs達成に向けた途上国側の政策整備などの改革努力に対して,ドナーも追加的支援で応えるとする2002年のモンテレー合意を具現化する取組としても位置づけられています。2015年(平成27年)9月に国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されたことを受け,基礎教育分野に重点を置きながら,SDG4達成に向けた貢献を行うべく,同年12月に「新戦略計画2016-2020」がGPEの理事会で採択されました。