ODA(政府開発援助)

分野をめぐる国際潮流
令和3年3月22日
(写真1) 対人地雷会議尾身政務官 写真提供:2019年版白書
(写真2) コロンビアCMAC 写真提供:2019年版白書

概況

 紛争と人々の不安定さが人間開発に負の影響を広く及ぼし、世界で何十億人もが不安定な境遇に置かれています。人間開発指数(HDI)低位国の多くは、長年の紛争から抜け切っておらず、なおも暴力にさらされている国々です。2019年末時点で約7,950万人が紛争や迫害によって居住地を追われていますが、これは過去20年間で最悪の数字であり、2,600万人以上が難民となっています。
(出典:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)『グローバル・トレンズ・レポート2019』別ウィンドウで開く

 平和と安定の持続は開発の前提条件であり、国際社会の更なる繁栄及び国際的な開発目標の達成には不可欠です。紛争は長年の開発努力の成果を瞬時に失わせ、膨大な社会・経済的損失を生み出します。さらに、紛争により疲弊し統治能力を失った、いわゆる「破綻国家」は、テロ活動の拠点や大量破壊兵器の拡散の源となり、地域そして世界全体の平和と安定にとって重大な脅威となる危険性をはらんでいます。このように政府が十分な能力を持たない国々には、まさに「人間の安全保障」という視点からの支援が重要となっています。紛争に際しては、個人に対する国境を越えた脅威を除去し、いかにして平和を構築していくかが国際社会の課題となります。

 開発途上国における国内・地域紛争では、政治的対立に加え貧困が紛争の終結とその後の平和の定着を困難にしています。すなわち、腐敗や統治能力のない政府に対する不満が反対勢力の台頭を生み、また、十分な社会サービスを受けられず、収入も乏しい貧困層が反対勢力の兵員として取り込まれ、国内紛争を助長する傾向があります。したがって、政治的和解だけでなく、ODAにより元兵員を含む多くの人々の生活を改善し、平和の恩恵を実感させることが、平和構築の進展のために重要な意義があります。こうした事情を踏まえて日本は、緊急人道支援、紛争の終結を促進するための支援から、復旧・開発支援、紛争の再発予防につながる「平和の定着」と「国づくり」のための支援まで、積極的に継ぎ目のない支援に取り組んできました。

 冷戦後の国際社会においては、民族・宗教・歴史などに根ざす対立が世界各地で顕在化し、地域・国内紛争が多発するようになりました。被害者の大多数が子ども及び女性を含む一般市民であるほか、通常、大量の難民・避難民が発生し、人道問題や人権侵害の問題が発生しています。紛争要因や紛争形態の変化に伴い、紛争予防・紛争解決のための手段として、国際社会では国際平和維持活動(PKO)や多国籍軍の派遣、及び予防外交や調停などの政治的手段のみならず、紛争後の国づくりも含めた包括的な取組が必要であることが認識されるようになり、紛争被害の防止・軽減における開発援助の果たす役割が重視されるようになりました。こうした人道・開発・平和の連携が重視される流れの中で、国連PKOの役割も国家間の停戦監視等に加えて、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)、地雷対策、治安部門改革(SSR)その他の法の支配関連の活動、人権の保護と促進等に拡大し、開発援助とPKOの連携が重要になっています。

 1992年、ガリ国連事務総長(当時)は「平和への課題」を発表し、その中で平和構築の重要性を提示しました。2000年8月には、国連はこれまでの活動経験を踏まえて「ブラヒミ・レポート」を発表し、平和構築を「平和の基礎を組み立て直し、単に戦争が存在しないだけでなく、その状態以上を構築するための手段を提供するもの」と位置づけました。2005年、紛争解決から復興に至るまでの一貫したアプローチに基づき、紛争後の平和構築のための統合戦略を助言することを目的として国連平和構築委員会(PBC: Peacebuilding Commission)が設立されました(日本は設立当初からのメンバー)。特にPBCの対象国として取り上げられることとなった国については、優先分野が特定され、国連平和構築基金(PBF: Peacebuilding Fund)からそれぞれ7,940万ドル(ブルンジ)、6,870万ドル(リベリア)、9,320万ドル(中央アフリカ共和国)、2,770万ドル(ギニアビサウ)が拠出され(2020年11月現在)、国連ミッション撤退後の支援のあり方につき、具体的な協議が続けられています。なお、日本はこれまでPBFに対して計5,550万ドルの拠出を行っています。また、2018年2月には、「平和構築及び平和の持続に関する事務総長報告書」が公表され、平和構築のための資金調達の強化などを目的とした様々な提案がなされました。同報告書を踏まえ、同年4月には、「平和構築及び平和の持続に関するハイレベル会合」が開催され、日本は平和構築分野における事務総長のイニシアティブを支持する旨を表明しました。「ブラヒミ・レポート」から20年が経った現在、様々な取組や議論を経て、平和構築は単に紛争後の活動を意味するものではなく、紛争の予防や再発のリスクの低減、持続可能な平和と開発に向けた基礎を築くための措置といった一連のプロセスを含めたものと認識されるようになっています。

 OECD開発援助委員会(DAC)では、平和構築への取組として、2007年に、安全と正義の構築支援に関して、それまでの教訓と課題に基づいてまとめた「OECD DAC Handbook on Security System Reform(SSR)」を発表し、同年には、脆弱国家に援助を実施する際のドナー側が念頭に置くべき原則として、「脆弱国家支援原則(Principles for Good International Engagement in Fragile States)」を採択しました。また、それまで紛争と国家の脆弱性を別々の枠組みで議論していた流れを統一し、新たにDACの下部機構として設置した「紛争と脆弱に関する国際ネットワーク(INCAF: International Network on Conflict and Fragility)」において、開発の阻害要因でもある紛争の予防、紛争後の復興及び脆弱国の開発において開発協力が果たす役割について議論を行っています。2010年4月には、INCAFにより、ドナーと受益国双方を交えて、平和構築と国家建設に関する経験等を共有することを目的とした「第1回平和構築と国家建設に関する国際対話」が東ティモールで開催され、脆弱国が平和構築と国家建設を行う上で必要な共通の目標等をまとめた「ディリ宣言」が採択されました。さらに、2011年6月にリベリアで開催された「第2回平和構築と国家建設に関する国際対話」における議論を経て、2011年11月に釜山で開催された「第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム」において脆弱国支援を改善するための新たな援助協調の取組である「ニュー・ディール(A NEW DEAL for engagement in fragile states)」が合意されました。

 また、DACにおいては「人道・開発・平和の連携」に関する議論も活発に行われています。これは、近年世界の紛争や人道危機が長期化・深刻化する傾向にあることを踏まえ、人道支援と開発協力に平和構築・紛争予防支援等を組み合わせることにより、紛争発生後の対応のみならず紛争の発生・再発予防にも重点を置くべきとの考え方で、我が国がこれまで重視してきた「人間の安全保障」にもつながるものです。DACにおいても、 INCAFを中心に、「人道・開発・平和の連携に関するDAC勧告別ウィンドウで開くDAC Recommendation on the Humanitarian-Development-Peace Nexus)」が作成され、2019年2月のDACシニアレベル会合において全会一致で承認されました。同勧告は、人々のニーズ、リスク、脆弱性を効果的に軽減し、予防的努力を支え、最も取り残されがちな人々に支援を届けることを目指して、ドナー及び関係アクターが、より効果的で一貫した人道・開発・平和のための活動、特に脆弱性や紛争に関する活動を行うことを支援するために、連携における調整・計画・資金動員の観点から11の原則を定めたものです。

 世界銀行においても、1997年に平和構築担当部門(Conflict Prevention and Reconstruction Unit)を立ち上げ、紛争後の地域におけるプログラムの実施にあたっての助言や情報収集、個別の国における開発モニタリング等を手掛けています。また、脆弱な政府機構や不安定な経済が紛争を引き起こす一要因であるとして、世界銀行が設立した「ポスト・コンフリクト基金」を通して、紛争後の復興支援に係る活動を行ってきました。最近では、紛争と国家の脆弱性の関連性に焦点をあてており、2007年には平和構築担当部門と脆弱国家担当チームのメンバーから構成される新たなグループ(Fragile and Conflict-affected Countries Group)を立ち上げ、また、2008年には、ポスト・コンフリクト基金と脆弱国への支援を行う基金(Low Income Countries Under Stress (LICUS) Trust Fund)を統合し、「国家・平和構築基金(SPF: State and Peace-building Fund)」を設立し、平和構築と国家建設に係る支援を実施しています。なお、2010年には、世界銀行発行の「世界開発報告書(WDR: World Development Report)2011」が「紛争・安全保障・開発」をテーマとして取り上げました。2020年2月には、世界銀行グループは「Fragility Conflict Violence 戦略」を発表し、低・中所得国に対する体系的な支援戦略を示すとともに、脆弱・紛争・暴力の影響下にある国々に対する緊急かつ集中的な支援が必要であることを強調しました。

関連国際会議等

  • 「アジアの平和構築と国民和解、民主化に関するハイレベル・セミナー」(2015年6月)(プログラム:日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)別ウィンドウで開く

 6月20日、東京・青山の国連大学において、「アジアの平和構築と国民和解、民主化に関するハイレベル・セミナー」が開催されました。このセミナーは、2014年11月の東アジア・サミットの際に安倍総理(当時)から開催の意向を表明していたものであり、明石康スリランカ平和構築及び復旧・復興担当日本政府代表(当時)が全体議長を務め、岸田文雄外務大臣(当時)が基調講演を行い、ラモス=ホルタ東ティモール前大統領、サマラウィーラ・スリランカ外相(当時)、ムラド・モロ・イスラム解放戦線議長等、アジア諸国の平和構築、国民和解、民主化にこれまで携わってきた国内外のリーダー、政府関係者、国際機関関係者、有識者、専門家等が幅広く参加して行われました。

 2018年6月、ニューヨーク国連本部において、国連小型武器行動計画第3回履行検討会議が開催されました。同会議では、2001年に策定された国連小型武器行動計画及び、2005年に策定された、同行動計画の関連文書である国際トレーシング文書の各国による履行状況が検討されるとともに、その結果を踏まえて、第4回履行検討会議(2024年)までの6年間の行動指針及び重点項目等が議論され、行動計画及び国際トレーシング文書の将来の履行に対する各国の強固な意思が改めて確認されました。

 2019年8月、横浜において第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されました。同会議において日本は、経済成長・投資や生活向上の前提となる平和と安定の実現に向けた、アフリカ自身による前向きな取組みを後押しすべく、アフリカのオーナーシップの尊重及びアフリカの平和と安定を阻害する根本原因へのアプローチという考えの下、アフリカ連合(AU)等が主導する調停・紛争解決努力や制度構築への支援を行う、「アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ(New Approach for Peace and Stability in Africa: NAPSA)」を発表しました。さらに、同会議の際に河野外務大臣(当時)主催により「サヘル地域の平和と安定に関する特別会合」及び「アフリカの角及び周辺地域の平和と安定特別会合」を開催し、アフリカの平和と安定について、関係国・機関と議論を行いました。

G7/G8

G8九州・外相会合(2000年)

  • 「紛争予防のためのG8宮崎イニシアティブ」(日本語英語

 地球社会全体において「予防の文化」を推進し、発展させるために持続的な努力を行うとの確認がなされ、「包括的アプローチを追求することの重要性が強調されました。初めて紛争地域への小型武器の輸出不許可が宣明されたほか、紛争予防における国連の主導的役割が強調され、武力紛争の潜在的要因の除去に資するような開発政策を策定すること等が承認されました。

G8ウィスラー・外相会合(2002年)

  • 「紛争と開発に関するG8イニシアティブ 共有された水資源に関する協力的かつ持続的な管理の推進」(仮訳英語

 「環境破壊、資源の欠乏及びその結果生ずる社会 政治的影響は、それらが内戦又は国家間の紛争を惹起し、又は悪化させるおそれがあるという点で安全保障に対する潜在的脅威である」との1999年の会合での認識の下、共有された水資源の持続的な管理に貢献しかつそのような管理を推進するイニシアティブが表明されました。

G8カナナスキス・サミット(2002年)

 G8アフリカ行動計画が採択され、その中で「2010年までにアフリカ諸国並びに地域的及び準地域的な機関が、アフリカ大陸における暴力的紛争の予防及び解決をすることがより効果的に出来るように、また、国連憲章に従った平和支援活動の実施により効果的に取り組むことが出来るように、技術的及び資金的な支援を提供する」と表明されました。

  • 「安定化と復興における協力と今後の行動に関するG8宣言」(仮訳英語)(2006年)

 「国際社会は、紛争から持続可能な平和への移行期にある脆弱な国家と国民を、強固な安定化・復興援助をもって支援する用意をしておくべきである」との認識がなされ、G8各国がより調整されたアプローチに向けて努力を行うことが表明されました。

  • 「G8北海道洞爺湖サミット首脳宣言」(2008年)(仮訳英語

 我が国は、議長を務めた2008年のG8プロセスにおいて平和構築を取り上げ、首脳宣言において平和構築支援の強化にコミットする旨が表明されました。これ以降、定期的にG7/G8平和維持・平和構築専門家会合が開催されています。

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