ODA(政府開発援助)
安全な水と衛生


概況
水と衛生の問題は人の生命にかかわる重要な問題です。世界の約22億人が、安全に管理された飲み水の供給を受けられず、42億人が安全に管理されたトイレなどの衛生施設を使うことができず、30億人が基本的な手洗い施設のない暮らしをしているとされます(出典:2019年UNICEF報告書)。さらに、安全な水にアクセスできないことは経済発展の足かせにもなっています。
例えば、水道が普及していない開発途上国では、多くの場合、女性や子どもが水汲みの役割を担っています。時には何時間もかけて水を汲みに行くため、子どもの教育や女性の社会進出の機会が奪われています。また、不安定な水の供給は、医療や農業にも悪影響を与えます。
こうした観点から、2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の目標6においても、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」旨が定められています。水・衛生の取組はゴール6以外のゴールの達成にも大きく寄与します。
また、2016年12月には、2018年-2028年を「『持続可能な開発のための水』国際行動の10年」とすることが国連総会において決議
されています。この水の国際行動の10年は、水問題への取り組みに向けた国際社会の決意を新たにし、その関心を喚起することを狙いとしています。
【SDG6】
6.1
2030 年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。
6.2
2030 年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を向ける。
6.3
2030 年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加させることにより、水質を改善する。
6.4
2030 年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
6.5
2030 年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
6.6
2020 年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。
6.a
2030 年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野での活動や計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
6.b
水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する。
【水・衛生に関連するSDGsの達成に向けた現在の課題】
SDG2(飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する)- 水因性疾患による下痢症が多いことによる子供の栄養不良、発育不良
- コレラ、赤痢、腸チフス等の水因性疾患、住血吸虫等の寄生虫症、糞口感染症、水質汚濁等による健康への悪影響
- 重労働である水汲み労働による女性(特に妊産婦)、子供の健康への悪影響
- 水汲み労働を子供が行っていることで、学校に行けない、遅刻する、途中で退学する等の悪影響
- 水因性疾患のため、学校を休む
- 学校に適切な衛生施設(トイレ)がないことや、生理への配慮の欠如が、特に女子の就学率の低下を招く
- 水汲み労働が家事や生産活動、学校教育に割かれるべき時間を奪い、女性・女児にとっての機会損失になっている
- プライバシーが必要で、他人の目を気にして日中に排便に行けない
- 生理中はトイレの重要度が増し、手洗いが可能なことや、生理用品を人目につかないよう適切に処分することが大切。
- 人気のない場所で性的嫌がらせを受けることもある