通常兵器の軍縮及び過剰な蓄積禁止に関する我が国の取組

平成30年7月4日

1 概要

  • (1)6月18日から6月29日まで,ニューヨークの国連本部において,国連小型武器行動計画(以下,「PoA」)の第3回履行検討会議が開催され,100か国以上の国連加盟国が代表団を派遣(信任状提出ベース)したほか,国際機関及びNGO等が傍聴しました。
  • (2)今次会議は,フランス外務省国境を越える犯罪の脅威担当大使のブルネ大使を議長とし,副議長は5つの地域から選出された日本を含む13か国が務めました。
  • (3)同会議では,2001年に策定されたPoA,及び,2005年に策定されたPoAの関連文書である国際トレーシング文書(以下,「ITI」)の各国による履行状況を検討するとともに,その結果を踏まえて,第4回履行検討会議(2024年)までのこの先6年間の行動指針及び重点項目等が議論されました。
  • (4)成果文書は,「宣言」,「PoAの履行」,「ITIの履行」,「PoA及びITIの完全且つ効果的な履行に向けた,適切,効果的且つ持続的な国際協力の促進」,「第3回履行検討会議後のフォローアップ」,の5分野に分けて議論が行われました。
  • (5)会議では,一般討論演説に引き続いて上記(4)に則して事項別討論が行われた結果,会議最終日(6月29日)に,成果文書の弾薬に関する二つのパラグラフ及び持続可能な開発目標に関するパラグラフが投票にかけられ,賛成多数でこれらの維持が決定されるとともに,成果文書全体が全会一致で採択されました。
  • (6)成果文書では,PoA及びITIの将来の履行に対する各国の強固な意思が改めて確認されたほか,以下の多岐にわたる項目が今後取り組むべき優先課題として盛り込まれました。
    • 国内法制度の一層の整備や履行を担当する職員の研修
    • 小型武器の輸出入や国内における流通の管理の強化を通じた非合法市場への流出防止
    • 各国が属する地域の特性を踏まえた地域協力や地域を超えた国家相互及び国際機関との協力及び支援
    • 国別報告書の一層の提出促進による情報の共有と交換
    • 小型武器問題の解決に向けた政策決定への女性の参加促進
    • 今後6年間にわたる会議の開催日程等
    また,本年5月にグテーレス国連事務総長が発表した,小型武器非合法取引対策に焦点を当てた多国間ベースの信託基金の設置のイニシアティブに言及し,可能な国に対して任意での拠出を呼びかけました。

2 我が国の貢献

  • (1)我が国は軍縮会議日本政府代表部の髙見澤將林(たかみざわ・のぶしげ)大使を団長,国連代表部次席代表の川村泰久(かわむら・やすひさ)大使を団長代行,南健太郎通常兵器室上席専門官他を随員とする代表団を派遣しました。また,我が国は,アジア大洋州地域選出の副議長を務め,積年にわたる国連小型武器決議案の提出や現地レベルで実施している多くの小型武器関連事業を通じて確立した本件分野における国際的信認を背景として積極的かつ建設的に議論に貢献しました。
  • (2)我が国は,武器貿易条約(以下,「ATT」)第4回締約国会議(本年8月20日から24日まで東京において開催)議長国として,ATTを含む小型武器問題対策の国際枠組みとのシナジーを強く主張した他,国際協力の基盤となる情報共有のために不可欠なPoA及びITIに関する各国による報告書の提出率及び内容の改善の必要性等を指摘し,効果的なPoAとITIの履行との観点から意義のある成果文書の作成に積極的且つ建設的に貢献しました。

3 評価

 各国がそれぞれの立場の相違を乗り越えて,成果文書が全会一致でされたことは,世界中に10億丁を越える小型武器が存在するという調査結果がある中で,引き続き小型武器問題の解決が重要な国内的,地域的,国際的な課題であるとの認識が共有されていることの証左と考えられます。今後は,文書に記載された内容を具体的かつ着実に実施していくための各国の不断の取り組みが重要となっています。

【参考1】国連小型武器行動計画(PoA)の概要

  • (1)紛争や犯罪で主な武器として使用され,実際に多くの人を殺傷しているのは小型武器であり,このため小型武器は「事実上の大量破壊兵器」と呼ばれる(国連事務総長による安保理報告(2002年9月,S/2002/1053のII.4.))。小型武器は,紛争を長期化,激化させるだけではなく,紛争終了後,国連などによる人道援助活動や復興開発を阻害し,紛争の再発,犯罪の増加等を助長する原因となっている。
  • (2)PoAは,2001年7月の国連小型武器会議において採択された(A/CONF.192/15)。同行動計画は,小型武器の非合法取引規制に関する具体的措置を規定しており,その後の国際社会における取組の指針となっている。
    • ア 非合法取引規制に関する具体的措置
      • 小型武器非合法取引を規制するための法制度整備
      • 小型武器非合法取引に対するトレーシングのための措置(刻印,製造・移譲等に関する記録保持)
      • 実効的な輸出入許認可制度の確立・維持
      • 小型武器の非合法ブローカー取引の規制
      • 小型武器の回収・破壊等を含むDDR(武装解除・動員解除・社会復帰)の実施
      • 各国の法執行機関・国境管理機関・税関による情報共有
    • イ 履行及び国際協力・支援
      • 被害国における法制度整備,法執行等の分野における能力構築への支援
      • 税関・警察・軍備管理担当機関の間の協力・経験の共有
      • DDRへの支援

【参考2】成果文書に関する採択結果

  • (1)全体(賛成98,反対0,棄権0)
  • (2)各パラ
  • ア 持続可能な開発目標に関するパラ I.A.13.(賛成65,反対0,棄権25(シリア,イラン,エジプト等))
    「13. We also stress the importance of the full and effective implementation of the Programme of Action and the International Tracing Instrument to the achievement of the 2030 Agenda for Sustainable Development in particular Goal 16 and target 16.4, which calls for a significant reduction of illicit arms flows by 2030; and acknowledge that sustainable development cannot be realized without peace and security and that peace and security will be at risk without sustainable development, and note that the illicit trade in small arms and light weapons has implications for the realization of several Sustainable Development Goals, including those relating to peace, justice and strong institutions, poverty reduction, economic growth, health, gender equality, and safe cities and communities.
  • イ 弾薬の物理的管理に関するパラ
    • (ア)I.A.16.(賛成63,反対2(米,イスラエル),棄権28(シリア,イラン,独等))
      「16. We welcome the parallel process established by General Assembly Resolution 72/55, adopted by consensus, with a view to identifying urgent issues pertaining to the accumulation of conventional ammunition stockpiles in surplus on which progress can be made.
    • (イ)II.A.18. (賛成62,反対2(米,イスラエル),棄権29(シリア,イラン,独等))
      「18. To acknowledge that States that apply provisions of the Programme of Action to small arms and light weapons ammunition can exchange and, as appropriate, apply relevant experiences, lessons learned and best practices acquired within the framework of other relevant instruments to which a State is a Party, as well as relevant international standards, in strengthening their implementation of the Programme of Action.

【参考3】小型武器問題への我が国の貢献

  • (1)国連総会への決議案の提出
    1995年に国連総会で小型武器政府専門家パネルの設置を求める決議案を提案して以来,ほぼ毎年決議案を提出。2005年からはコロンビア,南アフリカとともに提出し,採択されている。直近の第72回国連総会(2017年)は,我が国が主要提案国として,決議案の調整にあたり,例年通りコンセンサスで採択された。
  • (2)国際会議の議長職等への就任
    2001年7月の国連小型武器会議で我が国の堂之脇光朗外務省参与(当時)が副議長を,2003年7月の第1回国連小型武器中間会合で猪口邦子軍縮代表部大使(当時)が議長を務め,会合を成功に導いた。
  • (3)現場でのプロジェクト等への財政的支援
    • ア 武器回収・廃棄プロジェクト(アジア,アフリカ等)
    • イ 小型武器基金を通じたセミナーの実施等
      2000年のG8宮崎外相会合に際し,国連内に小型武器基金(200万ドル規模)を設置することを発表。同基金により,中央アジア小型武器セミナー(04年3月,於:カザフスタン・アルマティ),南太平洋地域小型武器セミナー(04年8月,於:フィジー・ナンディ),ASEAN・中央アジア小型武器セミナー(05年4月,於:北京),ASEAN・南アジア小型武器セミナー(06年5月,於:バンコク)などを国連等と共催。
    • ウ 市民社会との連携
      民間調査機関スモール・アームズ・サーベイ(Small Arms Survey)が実施する小型武器管理に係る制度構築,当局者の能力向上事業を支援(2017年)等。

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