ODA(政府開発援助)

万人のための質の高い教育

日本の取組

平成28年8月9日

 日本は60年以上にわたり,政府開発援助(ODA)を通じた国際貢献を行ってきました。そして,従来から,人間の安全保障を推進するために不可欠な分野として,教育分野の支援を重視してきました。教育は,すべての人が等しく享受すべき基本的な権利であり,必要な技能の習得を通じて一人ひとりが自らの才能と能力を開花させ,運命を切り開いていくことを可能にすると同時に,それぞれの国の持続可能な開発の実現に重要な役割を果たします。また教育は,他者や異文化に対する理解と信頼を育み,平和を支える礎ともなります。日本は,今日に至るまで自らの近代化や戦後の高度経済成長,各種課題の克服の経験を活かして教育協力を実施しています。

教育分野における政策方針

開発協力大綱(平成27年2月閣議決定)での扱い(抜粋)

II 重点政策
(1)重点課題
ア 「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅
 世界には,いまだに多数の貧困層が存在しており,世界における貧困削減,とりわけ絶対的貧困の撲滅は,もっとも基本的な開発課題である。特に様々な理由で発展の端緒をつかめない脆弱国,脆弱な状況に置かれた人々に対しては,人道的観点からの支援,そして,発展に向けた歯車を始動させ,脆弱性からの脱却を実現するための支援を行うことが重要である。
 同時に,貧困問題を持続可能な形で解決するためには開発途上国の自立的発展に向けた,人づくり,インフラ整備,法・制度構築,そしてこれらによる民間部門の成長等を通じた経済成長の実現が不可欠である。ただし,一定の経済成長を遂げた国々の中にも,格差の拡大や持続可能性の問題,社会開発の遅れ,政治経済的不安定等の課題に直面する国々があることに鑑みれば,その成長は単なる量的な経済成長ではなく,成長の果実が社会全体に行き渡り,誰ひとり取り残されないという意味で「包摂的」であり,環境との調和への配慮や経済社会の持続的成長・地球温暖化対策の観点を含め世代を超えて「持続可能」であり,経済危機や自然災害を含む様々なショックへの耐性及び回復力に富んだ「強靭性」を兼ね備えた「質の高い成長」である必要がある。これらは,我が国が戦後の歩みの中で実現に努めてきた課題でもあり,我が国は自らの経験や知見,教訓及び技術を活かし,「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅を実現すべく支援を行う。
 これらの観点から,インフラ,金融,貿易・投資環境整備等の産業基盤整備及び産業育成,持続可能な都市,情報通信技術(ICT)や先端技術の導入,科学技術・イノベーション促進,研究開発,経済政策,職業訓練・産業人材育成,雇用創出,フードバリューチェーンの構築を含む農林水産業の育成等,経済成長の基礎及び原動力を確保するために必要な支援を行う。同時に,人間開発,社会開発の重要性に十分に留意し,保健医療,安全な水・衛生,食料・栄養,万人のための質の高い教育,格差是正,女性の能力強化,精神的な豊かさをもたらす文化・スポーツ等,人々の基礎的生活を支える人間中心の開発を推進するために必要な支援を行う。

政策・イニシアティブ

(1)平和と成長のための学びの戦略

 平成27年9月の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」採択に係る国連サミットにあわせ,日本は教育分野における新たな戦略を発表しました。新しい戦略は,平成27年2月に閣議決定された開発協力大綱の教育分野の課題別政策として策定し,策定にあたって,開発教育専門家や教育支援NGO,関連国際機関等と幅広く意見交換を行いました。新戦略では基本原則として(1)包摂的かつ公正な質の高い学びに向けた教育協力,(2)産業・科学技術人材育成と社会経済開発の基盤づくりのための教育協力,(3)国際的・地域的な教育協力ネットワークの構築と拡大を挙げ,学び合いを通じた質の高い教育の実現を目指しています。今後,新戦略に基づき教育分野の支援に一層貢献していきます。

(2)日本の教育協力政策2011-2015

 平成22年9月のミレニアム開発目標(MDGs)に関する国連首脳会合において,日本は教育分野における新たな5年間の協力政策を発表しました。この政策に基づき,万人のための教育(EFA: Education for All)及び教育関連MDGsの達成に寄与するため,2011年(平成23年)からの5年間で35億ドルの支援を行い,少なくとも700万人(延べ2,500万人)の子どもに質の高い教育環境を提供しています。基礎教育分野の支援に加え,疎外された子どもや脆弱国等支援の届きにくいところへも対応し,併せて,初等教育修了者の教育の機会継続にも配慮した支援を行っています。

(3)成長のための基礎教育イニシアティブ(BEGIN)(日本語英語

 平成14年6月のG8カナナスキス・サミットにおいて,日本は,「成長のための基礎教育イニシアティブ(BEGIN: Basic Education for Growth Initiative)」を発表しました。これは,1990年(平成2年)と2000年(平成12年)に「万人のための教育(EFA: Education for All)」推進に係る世界会議が開催され,全ての人に基礎教育を提供することを世界共通の目標の一つとするという国際的なコンセンサスが形成されたことを踏まえ,日本としての具体的方策を打ち出したものです。

(4)低所得国への教育分野支援(日本語英語

 同じく平成14年6月のG8カナナスキス・サミットにおいて,日本は,EFAダカール行動の枠組みの目標達成に困難を抱えている低所得国を支援するため,向こう5年間で教育分野(留学生支援,職業訓練等を含む)へのODAを2,500億円以上行うこととし,着実な支援を行ってきました。

教育分野における事例

初等教育カリキュラム改訂支援

 ミャンマーでは、基礎教育の拡充が重点課題の一つであり,学制改革や基礎教育行政の地方分権化など大規模な教育改革に着手しています。これまで,日本は,ミャンマー教育省が進める児童中心型教育(CCA)を導入するための教員研修などを支援してきましたが,この協力では,CCAの効果的実施のため,新たなカリキュラムや教科書・指導書、評価ツールの開発とこれらを用いた教員養成校教官などの人材育成を支援しています。新カリキュラムに則った教育活動が学校および教員養成大学で実施され,国際水準の学力達成に資する新カリキュラムの全面実施に寄与することとなります。なお,支援の実施にあたり,日本の教科書会社とも連携し,日本の教科書会社が培ってきた技術,ノウハウ,経験を活用した官民連携の取組が行われています。

住民参加による教育開発プロジェクト(ニジェール「みんなの学校」プロジェクト)

 後発開発途上国の一つであるニジェールでは,基礎教育へのアクセスや質の改善などに向け,住民参加型の学校運営委員会(COGES)の設置及び機能化を通じた教育開発に取り組んでいます。みんなの学校プロジェクトのアプローチの特徴は,学校運営委員会の委員を選出する民主選挙を行い,自分たちの代表を自分たちで選ぶことで,学校運営委員会が住民により身近になり,学校と親たちをつなぐ橋の役割を果たすようになることです。さらに,住民自らが学校に関連する問題を発見・分析し,解決策,予算化などについて話し合うことによって,学校を自分たちのものとして継続して運用することを目指す「学校活動計画」を取り入れています。これまで日本は「住民参画型学校運営改善計画(みんなの学校プロジェクト)フェーズ1」を通じ、機能するCOGESモデルの確立を,同プロジェクトのフェーズ2でモデルの約1万3千の小学校への全国普及を支援してきました。フェーズ3となる本プロジェクトでは,住民参加による児童の基礎学力向上,住民監査による学校補助金の有効な管理と運用,地域教育開発のための州教育フォーラムの開催などを行ってきました。プロジェクトの介入の結果,年平均174時間の補習授業が学校運営委員会により行われ,児童の学力テスト(数と計算)の正答率は全学年で向上しています。

マレーシア日本国際工科院の整備支援

 マレーシアは,知識集約的な生産拠点の構築を目指していますが,産業界が求める高度な知識を有する人材が不足しています。そこで,マレーシア工科大学の下に日本型工学教育を導入し,高い生産性と競争力を有する人材育成を行う目的で,マレーシア日本国際工科院(以下,MJIIT)が設立されました。この協力では,MJIITでの教育に必要な資機材の調達と,教育課程の整備を支援することにより,マレーシアの経済・社会の開発に貢献する,実践的で最先端技術の開発研究能力を備えた人材の育成を目指しています。

学校教育システム外で行われるノンフォーマル初等教育支援及び成人識字教育支援

 パキスタンでは,基礎教育へのアクセスのない子どもたちが,全体の50パーセント以上を占め,そのうち3分の2が女子で,500万人に上っています。この数は世界的に見ても,ナイジェリアに次いで多いとされています。また入学しても、小学校(5年間)を卒業するまでに約半数がドロップアウトしてしまいます。こうして,学校で学ぶ機会を逃してしまった子ども,青年,成人を対象として,学びの場を提供するのがノンフォーマル教育です。日本は,パキスタンでノンフォーマル教育の普及を支援し,これまでに約18万人(うち7割が女性)(平成25年時点)に教育の機会を提供してきました。ノンフォーマル教育のカリキュラムの作成,評価手法の確立,教員研修の仕組みづくりなどを行い,生徒がより質の高い教育を受けられるよう支援してきました。

  • パキスタンでの識字教育支援
    (写真提供:JICA)

国際機関・他ドナーとの連携

(1)国連児童基金(UNICEF別ウィンドウで開く)との連携事例

 UNICEFは,世界約190の国と地域で,子どもたちの権利,生命と健やかな成長を守るために活動している国連機関です。日本は,開発政策の推進のため,UNICEFとの連携を重視しており,様々なレベルにおいて政策協議を実施しつつ,教育,保健,栄養,水・衛生,子どもの保護などの分野でパートナーシップを強化しています。

シリア
 内戦が続くシリアにおいて,教育支援は喫緊の課題です。日本政府は,学校施設や教育サービスが不足しているシリアにおいて,UNICEFと連携して,教育へのアクセス確保のための支援を実施しました。

 約10万人の小学校の児童を対象に,英語の教科書を配布した他,約6万2千人の児童に文房具と学校用カバンを配布しました。今回,学用品の支給を受けた児童の約14パーセントは,紛争の影響により支援を受けることが困難な地域で暮らしています。また,教職員への研修実施を通じて,約27万人の児童に危機管理のための教育の機会を提供しました。

  • ©UNICEF Syria

アフガニスタン
 アフガニスタンにおいて,日本政府はこれまでも草の根・人間の安全保障無償資金協力やUNICEF等との協力を通じて,学校建設や識字教育など,教育分野での支援を実施していますが,いまだ,学校に通えない児童が多数残されています。そのため,アフガニスタンに対して,引き続き,教育環境の改善に向けた取組が必要です。

 日本政府は,UNICEFと連携して,これまで国際社会の支援が届きにくかった中央高地三県(バーミヤン県,ゴール県,ダイクンディ県)において,学校70校を建設し,約5万人の児童が学習にふさわしい環境で授業を受けることができるようにするとともに,学校関係者の研修及び衛生教育を実施しています。

  • ©UNICEF Afghanistan

(2)教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)との連携

 GPEは教育支援のための唯一の国際的な資金調達メカニズムであり,日本もドナーとして拠出しています。GPEは低所得国を中心に61カ国に支援対象国に対し,それらの国が策定する教育セクター計画に基づき,実施される事業に対し,資金援助を行っている他,支援対象国の教育関係者の能力強化にも取り組んでいます。

パートナーシップ・広報イベント

女子・女性の教育支援をテーマにしたイベントの開催(東京)

 女性の活躍推進がアジェンダの一つとなっていたG7伊勢志摩サミットを前に,JICA,上智大学,GPEの共催で,教育による女子・女性のエンパワーメントをテーマにした教育サミットが開催されました。同イベントでは,「グローバルな教育機会のための資金調達に関する国際委員会」の委員を務める小池百合子衆議院議員(当時)が登壇し,自身がトルコで行っているシリア難民支援の取組を紹介し,紛争国において女子がより教育を受ける機会を奪われている現状につき訴えました。また,GPEのアリス・オルブライトCEOは女子が教育を受ける機会を保障する教育システムの構築への支援強化の重要性について強調しました。

写真出典:外務省「ミレニアム開発目標MDGs」ハンドブック


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