G7/G8
G7ビアリッツ・サミット(結果)
8月24日から26日にかけてフランス・ビアリッツにて開催されたG7ビアリッツ・サミットに安倍総理が出席したところ,概要は以下のとおりです。
1 議題・日程
(1)出席者
日本 | : | 安倍総理 | |
フランス | : | マクロン大統領(議長) | |
米国 | : | トランプ大統領 | |
ドイツ | : | メルケル首相 | |
カナダ | : | トルドー首相 | |
イタリア | : | コンテ首相 | |
英国 | : | ジョンソン首相 | |
EU | : | トゥスク欧州理事会議長 |
(2)日程及び参加者
8月24日(土曜日)
- 「外交・安全保障(イラン等)」(ワーキングディナー)
参加者:G7首脳
8月25日(日曜日)
- 「世界経済(含む貿易)」
参加者:G7首脳 - 「不平等との闘い(含むジェンダー平等)」(ワーキングランチ)
参加者:G7+6国際機関(世銀,IMF,国連,OECD,ILO,WTO)+ジェンダー平等アドバイザリー評議会委員 - 「アフリカとのパートナーシップ」
参加者:G7+5国際機関(世銀,IMF,国連,AU,アフリカ開銀)+アフリカ5か国(ルワンダ,セネガル,エジプト,ブルキナファソ,南ア) - マクロン大統領主催文化行事等
8月26日(月曜日)
- 「外交・安全保障(シリア)」
参加者:G7+国連 - 「気候,生物多様性,海洋」
参加者:G7+5国際機関(国連,世銀,OECD,AU,アフリカ開銀)+アフリカ5か国(ルワンダ,セネガル,エジプト,ブルキナファソ,南ア)+チリ,印,豪+環境団体等市民社会代表 - 「デジタル化」(ワーキングランチ)
参加者:G7+南ア,チリ,印,豪,OECD - 「外交・安全保障(北朝鮮ほかアジア情勢)」
- 参加者:G7
2 成果文書
(2)不平等との闘い
(3)アフリカ
3 G7サミット概要
(1)総論
今回のサミットでは,議長のマクロン大統領が掲げた「不平等との闘い」のテーマの下,G7の中心的イシューである,世界経済・貿易や外交・安全保障に関するG7首脳間の率直な議論,そして,アフリカ,環境,デジタル化といった議題については,アウトリーチ国や国際機関,市民社会の参加も得て,多角的な視点から意見交換を行い,成果文書として,G7首脳が合意した事項を簡潔にまとめた「G7ビアリッツ首脳宣言」等を発出しました。
安倍総理は,国際社会の牽引役として,自由,民主主義,法の支配,人権といった基本 的価値を共有するG7が結束し,日本が議長を務めたG20大阪サミットの成果の上に,下振れリスクに対する機動的対応を含む世界経済の成長,自由貿易の推進,気候変動といった地球規模課題,北朝鮮やイランといった外交・安全保障上の課題についてもG7首脳間の率直な議論をリードしました。
(2)各論
ア 外交・安全保障
(ア)北朝鮮
北朝鮮に関しては,安倍総理が議論をリードし,G7の優先課題の一つとして,議論が行われました。G7として,全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ不可逆的な廃棄(CVID)の実現を追求していくことの重要性について一致し,そのために国際社会として関連国連安保理決議の完全な履行を徹底し,引き続き米朝プロセスを後押ししていくことを確認しました。拉致問題についても,安倍総理から,早期解決に向けた理解と協力を呼びかけ,賛同を得ました。
(イ)中東情勢
喫緊の課題であるイランを始めとする中東情勢について議論しました。安倍総理から,自身のイラン訪問も踏まえ,中東における緊張緩和と情勢の安定化に向けて日本として外交努力を継続していく旨述べ,G7として,イランの核保有を認めず,地域の平和と安定のため,引き続き緊密に連携していく旨確認しました。
シリアについては,ゲストとして参加したグテーレス国連事務総長から,イドリブ情勢を含む現地の情勢や,国連が主導する政治プロセスの状況について説明がありました。安倍総理からは,国連主導の政治プロセスの進展が引き続き重要である旨指摘し,各国は,現地の人道状況に関する強い懸念を共有しました。各国は,外国人戦闘員及びその家族の帰還問題について今後も議論を継続し,政治プロセスの進展に向けて連携していく旨確認しました。
(ウ)中国
アジア情勢について議論する中で,香港の状況を含む中国の最近の情勢についても議論が及びました。G7として,中国が,地域及びグローバルな課題を解決するため,建設的な役割を果たすよう促していくことが重要である旨一致しました。
(エ)ロシア・ウクライナ
ロシア・ウクライナ情勢についても様々な議論が行われ,その関連でロシアのG7復帰についても議論がありました。
(オ)アマゾンの森林火災
ブラジルの熱帯雨林で多発している森林火災についても議論されました。安倍総理からは,消火への協力のため,G7としてできる支援を各国が検討して行っていくべきであり,中長期的に,アマゾン開発と森林の持続可能性を両立させるために必要な支援を国際社会として考えていくことが必要であると発言しました。
議論の結果,地域の国々としっかり連携しつつ,G7として流域全体の支援を行うこと,まずは消火のための協力を行い,植林の協力を行うにあたってもしっかり連携を取っていくことで一致しました。
イ 世界経済・貿易
世界経済が貿易を巡る緊張の増大を始め,様々な下振れリスクに直面する中で,G7として,こうしたリスクに備え,世界経済を支えるために,必要とあらば機動的かつ万全の政策対応をとっていくことが不可欠であるとの認識を共有しました。
安倍総理からは,多角的自由貿易体制が直面する二つの課題として,(1)自由競争から「取り残されている」と感じている人々の不安に正面から向き合う包摂性を意識した政策運営,(2)WTOのルールを時代に合ったものに改革し,ルールに対する信頼を取り戻していくことの重要性を指摘しました。また,G7として,あらゆる主体が成長の恩恵を享受しWTO改革等を通じてルールを時代に即したものとし自由で開かれた経済を推進していくことを確認しました。
更に,「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の考え方に基づくデータ流通に関するルール作りが重要であることを強調した上で,G20大阪サミットの際に立ち上げた「大阪トラック」の下,WTOでのルール作りを後押しし,来年6月の第12回WTO閣僚会議までに実質的な進捗を達成できるよう,閣僚に指示することを呼びかけました。また,データ・セキュリティについて,G7として議論を継続していくことを確認しました。各国は,デジタル化の進展に伴い,国際課税制度の現代化が必要であり,2020年までに国際的な解決策に合意できるよう引き続き取り組んでいくことに合意しました。
ウ 不平等との闘い
(ア)教育,雇用,保健等
教育,雇用労働,保健等でどのように不平等と闘っていくべきか議論が行われました。安倍総理からは,G7は不平等に起因する様々な課題に直面しているが,急速に進むグローバル化とデジタル化は,不平等の拡大ではなく,経済成長の利益を人々が包摂的に享受するチャンスを提供すること,また,そのカギを握るのが教育であることを述べ,すべての人々に対し,人生のあらゆる段階において,技術革新を先取りした教育や職業訓練の機会を提供する必要性を強調しました。
また,保健に関する不平等については,マクロン大統領の呼びかけに応え,我が国は,世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の次期増資に8億4,000万ドルをコミットした点,更に,来年の東京オリンピック主催国として栄養サミットを開催する点を強調しました。
本セッションの議論をとりまとめた「不平等との闘いに関する議長総括」が発出され,様々な分野での不平等是正の取組の必要性に言及すると共に,大阪トラックを含め,デジタル経済・データの潜在性を活用するための政策討議を促進することに合意しました。
(イ)ジェンダー平等
仏議長国下の諮問機関であるジェンダー平等アドバイザリー評議会(注)の委員であるムクウェゲ医師(ノーベル平和賞受賞者)等から,ジェンダー平等や女性のエンパワーメントの法的枠組等の改善等の重要性につきプレゼンが行われ,G7首脳間で幅広い議論を行いました。
議論の結果として「ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントに関するG7宣言」が採択され,(ⅰ)ジェンダー平等のための法的・政策的枠組の改善及び法律の執行,(ⅱ)紛争下の性的暴力の防止のための基金創設等の取組,(ⅲ)途上国での女児教育と職業訓練等の実施等が確認されました。
(注)昨年の加議長国下で立ち上げられ,本年も継続。日本から,林陽子・元女子差別撤廃委員長がメンバー。林氏は「国際女性会議WAW!」のアドバイザーを務めるとともに,弁護士として,国内(元内閣府男女共同参画会議「女性に対する暴力専門調査会」委員),国連等の場を含め女性の地位向上等の活動に長年取り組んでいる。
エ アフリカとのパートナーシップ
リビア,サヘルの治安・開発支援,及びマクロン大統領が優先事項とする(ⅰ)女性起業家支援,(ⅱ)デジタル化,(ⅲ)透明性及び腐敗との闘いについて,5つのアフリカのアウトリーチ国の首脳と共に議論が行われました。安倍総理からは,TICAD7を3日後に横浜でエルシーシ・エジプト大統領と共催する旨紹介しました。また,サヘル地域に関し,更なる情勢の改善には,若者への職業訓練・雇用機会の拡大,そして気候変動に伴う干ばつに対応することが重要と述べた上で,我が国は同地域の開発を後押しするため,本年2月に2,300万ドルの支援を公表しており、国際機関とも連携して引き続き支援を進めていく旨を強調しました。また,リビアに関し,紛争に軍事的解決はなく,国連主導の政治プロセスの進捗が重要であり,その実現の環境醸成に向けてG7として取り組むことについて首脳間で一致しました。
成果文書として採択された「G7とアフリカのパートナーシップのためのビアリッツ宣言」ではTICAD7に向けた期待が示されるとともに,アフリカ女性起業家支援イニシアティブ(AFAWA(注))への賛同,デジタル格差解消に向けた取組,「G20質の高いインフラ投資に関する原則」に留意した公共調達における透明性向上の重要性等につき一致しました。また,サヘル地域の平和と安全,教育支援を含む長期的な開発課題に関する各国の取組をまとめた「サヘル・パートナーシップ行動計画」も発出されました。
オ 気候,生物多様性,海洋
8つのアウトリーチ招待国(南ア,豪,チリ,印,ブルキナファソ,エジプト,ルワンダ,セネガル),国際機関が参加し,来月の国連気候アクション・サミットを念頭にした国連事務総長からのプレゼン,続いて先般のアマゾンにおける森林火災への国際社会の対応について議論が行われました。更に,環境団体・企業の代表が環境分野での自発的な取組についてプレゼンを行いました。
安倍総理からは,気候変動分野では,G20大阪サミットで確認したように,非連続的なイノベーションが脱炭素社会の目標を実現する鍵であり,先般策定した長期戦略を踏まえ,「環境と成長の好循環」の実現に向けて努力することを述べ,海洋プラスチックごみ問題については,途上国の廃棄物管理人材育成に積極的に協力していくことに言及しました。
本セッションの議論をとりまとめた「気候,生物多様性,海洋に関するビアリッツ議長総括」では,大阪サミットで共有した海洋プラスチックごみ対策に関する「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を首脳間で歓迎すると共に,「生物多様性憲章」を首脳レベルで承認しました。
カ デジタル化
4つのアウトリーチ招待国(南ア,豪,チリ,印)及びOECDが参加し,開かれた自由で安全なデジタル化を促進するための取組につき,議論が行われました。
安倍総理からは,テロ・暴力的過激主義によるインターネット悪用防止に関し,G20大阪サミットで新興国を交え採択した 「首脳声明」の方向性に沿って,プラットフォーム企業等とも共に課題を議論していくべき旨述べました。また,AIに関し,G20大阪サミットで確認したAI原則の下,官民が緊密に連携しつつ,具体的なルールづくりを進めていくべきであり,日本としても大阪サミットに先立ち策定した「AI戦略」の下で得られる知見や経験を共有していきたい旨述べました。
本セッションの議論をとりまとめた「開かれた自由で安全なデジタル化による変革のための戦略」が発出され,インターネットが民主主義に与える影響,テロ等によるインターネット悪用の防止,DFFTの考え方,5G・サプライチェーンのセキュリティ対策,AIの研究成果・ベストプラクティス共有の必要性等が確認されました。
4 2020年G7米サミット
トランプ米大統領は,26日,G7ビアリッツ・サミット終了後の記者会見において,2020年G7サミットを米国・マイアミで開催することを検討している旨を発表しました。