アジア

平成29年11月14日
EAS(東アジア首脳会議)
(写真提供:内閣広報室)
EAS(東アジア首脳会議)
(写真提供:内閣広報室)
EAS(東アジア首脳会議)
(写真提供:内閣広報室)

 11月14日,フィリピン・マニラにおいて,東アジア首脳会議(EAS)が開催され,日本から安倍総理が出席したところ,概要次のとおり(議長:ドゥテルテ・フィリピン大統領)。

1 ドゥテルテ大統領主催EAS昼食会

 安倍総理から,EASに過去5回出席したが,今回ほどその存在意義が試されたことはない旨強調した。また,地域の安全保障環境はかつてないほど厳しい旨述べ,北朝鮮,海洋安全保障,テロをはじめとした諸問題について,国際社会が緊密に連携し,政治・安全保障を議論する地域のプレミア・フォーラムであるEASから,国際社会に対して力強いメッセージを発したい旨訴えた。

2 EAS

(1)EAS内協力のレビューと将来の方向性

(ア)「自由で開かれたインド太平洋戦略」

 安倍総理から,「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下,インド太平洋の法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化し,いずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす国際公共財とするため, 航行の自由・法の支配などの基本的価値の定着を図り, 「質の高いインフラ」の整備などにより連結性を強化するとともに, 海上法執行能力の構築支援や人道支援・災害救援(HA/DR)などの平和と安定のための協力を進めていく考えを表明し,参加国とこのような取組を推進していくことの重要性を共有した。
 また,安倍総理から,「テロに屈しない強靱なアジア」に向けて,現下の状況を踏まえ,フィリピン南部及びスールー・セレベス海の治安改善のため包括的なアプローチによって,2年間で150億円規模の支援を着実に実施する(注)旨述べるとともに,「積極的平和主義」を一層推進するため,海上安全,人道支援・災害救援,PKOの三分野において,人材育成,物資供与,知的貢献を拡充していく方針を表明した。この関連で,会議の期間中,能力向上支援に特化するため新設した日本のチームが,米国と連携し,フィリピン,ベトナム,インドネシア及びマレーシアの同僚に対し訓練を実施している旨述べた。

(注)2017年8月17日の日米安全保障協議委員会(「2+2」)の機会に我が国が表明したインド太平洋地域の沿岸国の海洋安全保障能力分野の能力構築支援のための今後3年間で約5億ドルの支援の一環。

 さらに,インフラの開放性,透明性,経済性,被援助国の財政健全性の確保といった国際スタンダードに則った「質の高いインフラ」整備を進めるとともに,制度改善や人材育成を通じ,「生きた連結性」を各国・各機関とも連携して推進する旨表明した。
 加えて,東アジアにおける天然ガスの利用促進に向け,米国と協力し,この地域において,LNGに係る制度整備支援,人材育成に加え,官民で100億ドル規模のファイナンス支援を実施していく旨表明した。

(イ)自由貿易体制の推進

 安倍総理から,東アジアが,自由で開かれた貿易・投資の重要性を明確に打ち出すべきと訴えた。その上で,11か国でTPPが閣僚間で合意に至ったことは,その力強い意思の表れであると評価し,RCEPについても,質の高い協定を早期に妥結させ,地域の経済成長を支えていきたいと強調した
 複数の参加国から,RCEPを推し進めることなどを通じ,保護主義を払拭し,自由貿易を推進すべきとの発言があった。

(ウ)ERIA

 安倍総理から,東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)の活動を重視している旨述べた上で,ERIAが幅広い分野において,より政策ニーズを反映した提言をすることへの期待を表明した。

(2)地域・国際情勢

(ア)北朝鮮

 安倍総理から,北朝鮮は,核実験を強行し,日本上空を通過する弾道ミサイルを2回発射するなど核・ミサイル開発を着実に継続していると述べ,半島の非核化なくして地域の平和はあり得ないと強調した。また,国際社会が北朝鮮に対する圧力を最大限まで高める必要があると訴え,EASとして,北朝鮮に対する圧力強化の明確なメッセージを示すことが重要と訴えた。さらに,本年9月に採択された安保理決議(PDF)別ウィンドウで開くは,格段に厳しい措置を含むものであると述べ,北朝鮮との「外交」関係の見直し,輸出入の規制,人的往来の制限,北朝鮮「外交団」に対する監視,北朝鮮労働者に対する規制の強化等,あらゆる手段を通じて圧力を高めるよう要請した。加えて,北朝鮮の拉致問題の解決は安倍内閣の最重要課題であり,その早期解決のためにも,圧力が重要であると訴えた。
 ほぼすべての首脳が北朝鮮情勢を取り上げ,核兵器及び弾道ミサイル開発に対する懸念を表明した。また,一連の北朝鮮による挑発行為が国連安保理決議違反であり,国際社会の平和と安定に対する脅威であるとして,北朝鮮に国連安保理決議を遵守するよう求める旨の発言が多くあった。

(イ)海洋安全保障

 安倍総理から,日本は,常にASEANの中心性を支持しており,南シナ海の問題についても,海洋安全保障の基本原則を謳った「ASEAN外相共同声明」を支持する旨強調した。また,法の支配こそ,貫徹されなければならない原則であり,従来から主張してきた「海における法の支配の三原則」により,力ではなく,国際法に基づいて,紛争は平和的に解決されるべき旨訴えた。さらに,南シナ海の状況については,引き続き懸念を表明する一方で,南シナ海行動規範(COC)策定に向けた対話など,中国とASEANとの前向きな取組が進展していることに対して歓迎を表明した上で,実効的なCOCの早期策定に期待を示し,このような取組による緊張の緩和を非軍事化につなげていくべき旨訴えた。
 ほとんどの首脳が南シナ海問題を取り上げ,多くの首脳が航行の自由の確保,国連海洋法条約を含む国際法に従った紛争の平和的解決の重要性について発言した。また,複数の首脳が南シナ海の最近の情勢に懸念を表明した上で,非軍事化と自制の重要性を訴えた。

(ラカイン州情勢)
 安倍総理から,ラカイン州情勢に関し,法の支配と人権に配慮した治安回復,人道アクセスの拡大,避難民の帰還・再定住に向けた当事者間の協議進展が重要であると訴えた。また,ASEAN防災人道支援調整(AHA)センターを通じた人道支援の実施などを通じて,ミャンマー政府の前向きな取組を後押ししていく旨表明した。
 アウン・サン・スー・チー国家最高顧問からミャンマー政府の取組に関する簡潔な説明があった。複数の首脳が,北ラカイン州における人道状況に懸念を示した。


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