アジア
第7回東アジア首脳会議(EAS)参加国外相会議
8月7日(月曜日)午後1時10分から午後3時25分頃(現地時間),フィリピン・マニラにおいて第7回東アジア首脳会議(EAS)参加国外相会議が開催され,我が国から河野外務大臣が出席したところ,河野大臣の発言を中心に概要以下のとおり。
1 EAS協力のレビューと将来の方向性
(1)冒頭
冒頭,河野大臣から,EAS参加国は,グローバルな不透明・不確実な流れを払拭し,政治・安全保障分野では法の支配に立脚した平和と安定を確保し,また,経済分野においては自由貿易を推進すべく,力強いメッセージを発出しなければならないと訴えた。
また,法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序は国際社会の平和と繁栄の礎であり,特に世界の活力の中核であるインド太平洋の海域を自由で開かれたものとし,国際公共財にすることが国際社会全体にとって重要である述べ,各国の協力を要請した。
(2)EAS強化
河野大臣から,EASの優先協力分野に「海洋協力」及び「テロ対策」を追加することに支持を表明した。また,ASEAN海洋フォーラム拡大会合(EAMF)を正式にEASの海洋協力部門とすることや,トラック1.5会合に加えてトラック1会合の開催等も検討すべきと提案した。
多くの参加国から,地域のプレミア・フォーラムとしてのEASを更に強化することの重要性を強調する発言があった。また,複数の参加国から,海洋協力を新たにEASの優先協力分野に追加することを支持する発言があった。
(3)テロ・暴力的過激主義対策
河野大臣から,日本はテロ及び暴力的過激主義対策を重視しており,この1年間で,アジア地域に対し,約2億9,500万ドル(約355億円)規模の支援を実施してきたと述べ,今後も法執行機関の対処能力向上,若者への教育,戦闘員の社会復帰への支援を続けていく旨表明した。また,フィリピン政府のミンダナオにおけるテロとの闘いへの支持を表明し,マラウィ市から流出した避難民に対して,200万ドルの緊急人道支援を今般決定したことに加え,ASEAN緊急災害ロジスティック・システムによる支援も日本が全面的に協力している旨述べた。
多くの参加国から,ミンダナオ情勢に対する憂慮が示されるとともに,テロ対策の重要性を強調する旨の発言があった。
(4)自由貿易体制の推進
河野大臣から,保護主義が台頭する中,自由で開かれた経済秩序と貿易体制を守っていくとのメッセージを東アジアから発信することが極めて重要である旨訴えた。また,高いレベルの経済連携協定に裏打ちされた自由で開かれた市場と,質の高いインフラ等を通じた連結性の強化は,グローバル・サプライチェーンの一部としての競争力を向上するものであり,東アジア地域と世界全体の経済成長にとっての鍵であると述べた。また,TPPとRCEPを両輪として,アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現を目指していきたい旨表明した。
多くの参加国が,保護主義を払拭し,自由貿易を推進すべきと強調した。
(5)米国の関与
河野大臣から,東アジアが平和と繁栄を追求していくに当たり,米国の関与は不可欠であると訴え,トランプ大統領のEASサミット出席を歓迎し,米国の力強いコミットメントを評価した。また,将来的に,米国も含むアジア太平洋の自由貿易圏の実現が重要であることを強調した。
2 地域・国際情勢に関する意見交換
(1)南シナ海
河野大臣から,南シナ海における急進かつ大規模な拠点構築は継続していることに深い懸念を表明した。また,武力による威嚇又は武力の行使等によるものを含め,力を背景に現状変更を試みるあらゆる一方的な行動に対して強く反対することを強調した。さらに,法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序によって平和と安定を確保することが重要であり,そのために国際社会が連携していくことが重要であると訴え,米国による航行の自由作戦への支持を表明した。加えて,比中仲裁判断は,最終的かつ当事国に対して法的拘束力があり,南シナ海における紛争の平和的解決に向けた更なる取組のための有用な基盤であると述べた。
南シナ海行動規範(COC)の枠組みに関し,中国とASEANとの間の対話は,国際法に基づき,現場における非軍事化及び自制が維持されることが前提であるべきであり,今後,法的拘束力があり,実効的なCOCが早期に策定されることを期待する旨述べた。
これに対して,ほとんどの参加国が南シナ海問題を取上げ,多くの国が航行及び上空飛行の自由の確保,国連海洋法条約を含む国際法に従った紛争の平和的解決に言及した。さらに,複数の国が最近の動向への懸念を表明した上で,非軍事化と自制の重要性を訴えた。複数の国は比中仲裁判断について発言した。
(2)北朝鮮
河野大臣から,北朝鮮による二度のICBM級弾道ミサイルの発射は,北朝鮮が国際社会の最優先事項であることを改めて示すとともに,地域及び国際社会にとって重大かつ現実の脅威であると述べた。その上で,EAS参加国の対応レベルも一段と高める必要があり,今は北朝鮮と対話を行う局面ではなく,北朝鮮への実効的な圧力を一層強化する必要がある旨訴えた。
また,先般新たに採択されたものを含む国連安保理決議の厳格かつ全面的な履行を訴えた。また,各国に,北朝鮮との輸出入や人的往来を規制することで,ヒト・モノ・カネの流れを止めることを要請し,さらに,中露が建設的な役割を果たすことを強く求めた。
加えて,北朝鮮の人権・人道問題,特に拉致問題について強いメッセージを発出すべきと訴えた。
これに対して,多くの参加国から,北朝鮮による一連の核実験,ICBM級ミサイル発射が国連安保理決議違反であり,地域の安定を脅かす行為であるとして,北朝鮮が国連安保理決議(PDF)を遵守するよう求める発言が相次いだ。