東アジア首脳会議(EAS)
第13回東アジア首脳会議(EAS)
1 EASリトリート昼食会
クローズのセッションで,EAS内協力の将来の方向性について首脳間での議論が行われた。
2 EASプレナリー
(1)EAS内協力のレビュー
ア 安倍総理から,本年10月の中国への公式訪問の際に,日中両国が国際社会の平和と繁栄に建設的な役割を果たしていくことで一致できた旨に言及し,EASにおいても同様の精神で議論したいとした上で,以下のとおり述べた。
(ア)自由で開かれたインド太平洋
(ⅰ)法の支配に基づく自由で開かれた海洋は,インド太平洋地域の平和と繁栄の礎。この地域の発展のために,自由で開かれたインド太平洋を実現していきたい。この中には,ASEANの中心性や開放性といった,EAS参加国が共有する原則が内包されている。今後は,各国が主体的にその具体化に取り組むべき。
(ⅱ)日本による具体的協力は始まっている。シンガポール海峡とマラッカ海峡では共同水路調査を実施すると共に,東南アジア諸国の海上法執行能力強化に取り組んでいる。また,メコンの域内をつなぐ東西及び南部経済回廊を中心に,「質の高いインフラ」を推進。開放性,透明性,経済性,被援助国の財政健全性の確保といった国際スタンダードの必要性を強調したい。
(ⅲ)自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献する取組は,いかなる国も排除されず,大きな国も小さな国も含む地域の全ての国が裨益するものであり,こうした考えを共有する全ての国と協力していく。
(イ)東アジアの持続可能な経済発展
(ⅰ)東アジアの奇跡的な経済成長は,自由で,公平なルールに基づく貿易・投資の恩恵による。保護主義が広がる中,年内のTPP11の発効は,重要な成果。WTO改革,TPP拡大やRCEPの早期妥結を通じ自由貿易を推進しなければならない。
(ⅱ)LNGや水素等の利用を促進していく。
(ⅲ)ASEAN統合深化や格差是正等の課題解決のため,創設10周年を迎えた東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の積極的な役割を期待。
イ これに対して,多くの参加国から,インド太平洋に関するそれぞれの考えや構想についての発言があり,それらの共通点が確認されるとともに,互いに連携・補完させていくために引き続き議論していくべきとの意見が述べられた。
(2)地域・国際情勢に関する意見交換
ア 北朝鮮
(ア)安倍総理から,以下のとおり述べた。
(ⅰ)歴史的な米朝首脳会談と3度の南北首脳会談を,拉致,核・ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けた一歩として歓迎。国際社会で米朝プロセスを後押しし続けることが重要。
(ⅱ)安保理決議に規定されている,北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な廃棄(CVID)を実現べく,安保理決議の完全な履行が必要。
(ⅲ)安保理決議が禁止する「瀬取り」への対策に関し,航空機や艦艇を派遣する米豪英加NZを始めとする各国との協力を高く評価。各国と引き続き協力したい。
(ⅳ)拉致問題の早期解決に向け理解と協力を期待。
(イ)これに対して,多くの参加国が,朝鮮半島の非核化及び引き続き安保理決議を完全に履行していくことの重要性を強調した。
イ 海洋安全保障
(ア)安倍総理から,以下のとおり述べた。
(ⅰ)南シナ海における紛争は,力ではなく,国際法に基づいて平和的に解決されるべき。その観点から,平和で開かれた南シナ海の実現に資する実効的な南シナ海行動規範(COC)の策定を強く期待。
(ⅱ)他方,南シナ海の現場の動きを深刻に懸念。紛争地形の軍事化といった一方的に現状を変更する行為は,南シナ海をこの地域全体の平和と繁栄のための公共財として活用している諸国の利益を脅かしかねない。
(ⅲ)平和で開かれた南シナ海を実現するため,日本は,ASEANが謳ってきた「法的・外交的プロセスの完全な尊重」,「航行の自由」,「非軍事化と自制の重要性」といった基本原則を強く支持。これらの重要性を国際社会に力強く発信すべき。
(イ)これに対して,多くの国が航行及び上空飛行の自由,国連海洋法条約を含む国際法に従った紛争の平和的解決の重要性に言及した。また,複数の国が非軍事化と自制の重要性を訴えるとともに,そのうち,現場の状況に対する深刻な懸念を表明する国もあった。さらに,多くの国が実効的なCOCの必要性に言及した。
ウ ラカイン情勢
(ア)安倍総理から,以下のとおり述べた。
避難民の帰還につき,ミャンマー・バングラデシュ両国の対話を評価。国連との協力の下,「安全,自発的で尊厳のある」帰還が実現することを強く期待。国際社会は,ミャンマー,バングラデシュ両国の取組を引き続き後押しすべき。
(イ)これに対し,複数の首脳が,ラカイン州の人権状況に懸念が示され,避難民の安全な帰還の必要を強調した。