経済協力開発機構(OECD)
2018年OECD閣僚理事会
平成30年6月1日
(写真提供:OECD)
5月30日(水曜日)及び31日(木曜日),フランス・パリでOECD閣僚理事会(議長国:フランス,副議長国:ラトビア,ニュージーランド)が開催され,我が国から,世耕経産大臣,とかしき環境副大臣及び岡本外務大臣政務官ほかが出席したところ,結果概要は以下のとおりです。
1 OECD閣僚理事会の概要
- (1)本年の閣僚理事会のテーマは,「より責任ある,効果的で,包摂的な成果を得るための多国間主義のテコ入れ」。グローバル化・デジタル化による経済・社会面の変動に,多国間主義がいかに対処・貢献できるかを議論した。
- (2)具体的には,ア 国際課税,経済のデジタル化,違法な金融取引への規制,イ 包摂的社会の実現,ウ 貿易・投資の公平な競争条件,エ 生物多様性,気候変動,天然資源といった観点から議論した。
- (3)OECDの加盟拡大については,リトアニアとコロンビアの加盟が決定され,OECD加盟国は37か国となる。また,タイ国別プログラムが正式に立ち上げられた。
- (4)成果文書として,議長声明(英文(PDF))が発出された。
2 岡本外務大臣政務官の各セッションへの出席
- (1)岡本大臣政務官は,包摂的社会の実現(議題7),SDGsのための資金調達(議題8),貿易・投資の公平な競争条件(議題9)に関するセッションに出席したところ,同政務官の発言概要は以下のとおり。これらの日本の主張や問題意識は,いずれも議長声明にしっかりと反映された。
- ア 保護主義との闘い,自由で開かれた経済の維持・強化の重要性を強調。
- イ 貿易をめぐる緊張の背景にある,不公平な競争条件への対応に優先的に取り組むべき旨主張し,OECDが果たす役割への期待を表明。特に,鉄鋼・造船等の過剰生産能力問題の根本原因である,政府・国有企業による市場歪曲的措置への対応の必要性を強調。
- ウ 「開かれ,誰もが公平に利用可能な,質の高いインフラ」が包摂的かつ持続可能な成長に果たす役割を強調。また,質の高いインフラの国際スタンダード化の重要性を訴え,理解・支持を得ると共に,OECDの作業を後押しすべき旨主張。
- (2)OECDのスタンダード・セッティングや加盟拡大等の運営事項について議論を行うセッション(議題6)では,岡本大臣政務官から,主に以下の点を強調した。
- ア OECD非加盟の新興国に,OECDスタンダードを普及していくことの重要性。
- イ 日本が議長国を務める2019年G20を見据えた,OECDとG20との更なるシナジーへの期待。
- ウ 世界の成長センターである東南アジアの加盟に向けた協力強化の必要性。
3 バイ会談等
- (1)岡本政務官は,会合の合間に,グリアOECD事務総長を始め,ペルー,コロンビア,メキシコ,タイ,ルーマニア,チリの計7の代表とバイ会談を行い,OECDとの協力,TPPなどの経済連携,二国間関係などについて協議したほか,カナダ国際貿易大臣,メキシコ経済大臣,アルゼンチン外務・宗務大臣,ノルウェー外務大臣,スイス経済・教育・研究大臣等と立ち話を行った。
- (2)また,今時訪問の機会に,岡本政務官は,OECD邦人職員関係者と懇談し,意見交換を行った。
4 評価
- (1)今回の閣僚理事会では,格差拡大等を背景に多国間主義への疑念が増大する中,グローバルな課題(経済のデジタル化,包摂的な社会の実現,貿易・投資の不公平な競争条件,気候変動・環境課題など)に,多国間で協調して対処すべきとのメッセージを打ち出すことができた。
- (2)日本からは,特に,ア 自由で開かれた経済体制の維持・強化,イ 不公平な競争条件の是正,ウ 「質の高いインフラ」の国際スタンダード化等の重要性を強調し,これらの日本の主張・問題意識は,いずれも議長声明にしっかりと反映された。
- (3)今回の閣僚理事会における議論が,今後,ア 自由で開かれた貿易・投資の推進や,グローバルに公平な競争条件の確保に向けた,OECDの更なる客観的分析や対外的な発信,また,イ 日本が議長国を務める2019年G20も見据えた,OECDとG20の更なる連携強化につながることが期待される。