経済協力開発機構(OECD)
国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして」(結果)
平成28年12月22日


1 概要
- (1)12月19日(月曜日),イイノホール&カンファレンスセンターにおいて,外務省・OECD開発センター共催により国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして」が開催され,OECD開発センター関係者,有識者,民間企業,市民社会,在京大使館関係者,関係省庁・機関職員等約140名が参加した(コンセプトノート・議事進行(英文(PDF)
)/(和文仮訳(PDF)
))。
- (2)近年世界経済は大きな変容を遂げ,新興国の世界経済に占める割合が飛躍的に増加している。また,開発をめぐる環境も変化し,開発課題が多様化・複雑化している。このような状況の中,本年6月,我が国はOECD開発センターに16年ぶりに復帰した。我が国は,OECD開発センターの活動に積極的に協力,関与し,OECD開発センターとアジアとの関係をさらに強化していく役割を果たしていく考えであり,この度,我が国のOECD開発センター復帰の機を捉え,マリオ・ペッチーニOECD開発センター所長兼OECD事務総長特別顧問(開発担当)の参加を得て,国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして」を開催する運びとなった。
- (3)冒頭,二階俊博自由民主党幹事長が基調講演を行い,日本のOECD開発センター復帰が日本とOECDとの協力関係強化の一環として位置づけられること,開発センターと東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)との協力関係が重要であること,新興アジアにとって質の高いインフラ投資の推進を含む連結性の強化が重要であること,津波を始めとする自然災害の脅威に対応していく必要があること等述べた。続いて,外務省を代表して小田原潔外務大臣政務官が挨拶を行った(和文(PDF)
)。その後,基調講演として,北岡国際協力機構(JICA)理事長は,グローバルな開発潮流に触れつつ,OECD開発センターへの期待を述べた。また,伊藤環境副大臣が第2セグメントの途中で来場し,開発と環境は切っても切り離せない旨述べるとともに,開発センターが世界,地域,一人一人の役に立つ活動を行う中で日本としても貢献したいと考えている旨述べた。なお司会進行は小林開発協力企画室長。
2 各セッションの概要
- (1)セグメント1:グローバルな開発潮流と新興アジアの課題 開発センターの知見を生かして(マリオ・ペッチーニOECD開発センター所長兼OECD事務総長特別顧問(開発担当))(資料(PDF)
)。
モデレーター:上田奈生子OECD開発センター次長 - ア マリオ・ペッチーニOECD開発センター所長は,開発の国際的な潮流を概括するとともに,開発センターと日本が更に協力できる途上国支援のツールとして,(ア)多面的国別レビュー(MDCR),(イ)各種政策対話,(ウ)社会的保護システム及び若者の包摂に係るレビュー,(エ)ジェンダープログラム,(オ)自然災害のリスク管理を始めとする開発と環境の連結を紹介した。
- イ 質疑応答では,多面的国別レビュー(MDCR)の独自性や日本やアジアの機関との連携,MDCRや政策対話における民間セクターの役割,技術革新への対応,都市との協力,環境課題への対処,中進国の罠など多岐に亘る開発の論点について,活発に意見が交わされた。
- (2)セグメント2:2017年版東南アジア,中国,インド経済アウトルック及び第3版アジア諸国の歳入統計の地域公表(田中兼介OECD開発センターアジアデスク長)(資料(PDF)
)。
モデレーター:上田奈生子OECD開発センター次長
コメンテーター:北野尚宏JICA研究所所長,ファウジア・ツェン東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)エコノミスト - ア 田中兼介OECD開発センターアジアデスク長は,2017年版東南アジア・中国・インド経済アウトルック及び第3版アジア諸国の歳入統計の概要について説明した。
- イ 北野尚宏JICA研究所所長は,日本の経験のアジアへの共有,ASEANの連結性強化に対する日本の支援,再生可能エネルギーに関するJICAの先進的な取組について発表した(資料(PDF)
)。
- ウ ファウジア・ツェン東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)エコノミストは,海洋連結性の改善,高い都市化率,技術の変化への対応,世界における中間所得層シェアに係る動向,インフラ開発のための資金調達,質の高いインフラ投資等について発表した(資料(PDF)
)。
- エ 質疑応答では,質の高いインフラ投資(概念の定着,インパクトについての分析),インフラファイナンスにおける地方政府の能力向上,インフラ投資に関するリスクの把握,維持管理コストなどについて活発に意見が交わされた。
- (3)全体総括として,マリオ・ペッチーニOECD開発センター所長兼OECD事務総長特別顧問(開発担当)は,本日は日本の開発センター復帰の機会を活用して開発センターの取組に関する「森」の部分を提供したが,今後実施に移すことが重要であり,開発協力に関する知見の共有の点で開発センターは役割を果たせると考えている旨述べた。
3 評価
- (1)本セミナーは,日本のOECD開発センター復帰後初の大型共催行事であり,今後OECDとアジアが更に関係を強化していく上で,重要な一歩となった。
- (2)本セミナーでは,コメンテーターによるプレゼンテーション,有識者を含む参加者を交えた活発な意見交換を通じ,OECD開発センターの取組,アジアとOECDの関係強化の必要性,我が国の果たすべき役割等について理解を深めることができた。特に,セグメント2の主要な論点であったアジア地域における連結性の向上,質の高いインフラ投資の促進については,活発な議論を通じ,その重要性を参加者間で共有することができた。
- (3)本セミナーには,多くの企業及び研究機関等の関係者が参加し,OECD開発センターと日本関係者との間での新たな人的ネットワークを築く有意義な機会となった。