4 軍縮・不拡散・原子力の平和的利用
(1)核軍縮
日本には、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」の実現に向けた国際社会の取組を主導していく歴史的使命がある。
同時に、日本は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しており、日本の周辺では質的・量的な核軍拡が進んでいる。こうした中で、日本が自ら核兵器を保有することはないという前提の下、国民の生命と財産、日本の独立と平和を守り抜くためには、米国が提供する核を含む拡大抑止が必要な状況にある。
また、核兵器禁止条約を取り巻く状況に見られるように、核軍縮の進め方をめぐっては、核兵器国と非核兵器国との間のみならず、核兵器の脅威にさらされている非核兵器国とそうでない非核兵器国との間においても分断が深まっている。このような状況の下、核軍縮を進めていくためには、様々な立場の国々の間を橋渡ししながら、現実的で実践的な取組を粘り強く進めていく必要がある。
日本は、「核兵器のない世界」の実現のため、核軍縮に向けた着実な歩みを進めており、2023年5月のG7広島サミットにおいて発出された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を強固なステップ台としつつ、2022年の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議で岸田総理大臣が発表した「ヒロシマ・アクション・プラン」(22)の下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を継続・強化していく考えである。そのほか、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議、国連総会における核兵器廃絶決議、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)などの同志国・有志国との協力・連携の取組や個別の協議などを通じ、立場の異なる国々の橋渡しに努めてきている。また、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始に向けた働きかけと、その一環として2024年に立ち上げた「FMCTフレンズ」、軍縮・不拡散教育の推進、さらには効果的な核軍縮検証の実現に向けた議論といった核兵器国も参加する現実的で実践的な取組なども積み重ねることを通じ、「核兵器のない世界」に向けた唯一の普遍的な枠組みであるNPT体制の維持・強化を進めていく考えである。なお、核兵器禁止条約は、「核兵器のない世界」への出口ともいえる重要な条約である。一方、核兵器の保有・使用等を包括的に禁止しており、現状においては、核抑止と相容れない同条約を核兵器国が締結する見込みはない。核兵器国を交えずに核軍縮を進めることは難しく、日本は、国際的な核軍縮の取組は、NPTの下で進めていくことが引き続きより望ましいと考えている。「核兵器のない世界」に向けた道のりが一層厳しさを増す中だからこそ、日本は、抑止力を維持・強化し、安全保障上の脅威に適切に対処していくとの大前提に立ちつつ、唯一の戦争被爆国として、NPT体制を基盤に、核兵器国と核兵器禁止条約締約国双方の参加を得た現実的で実践的な取組の推進に今後も全力を尽くしていく考えである。
ア 核兵器不拡散条約(NPT)(23)
日本は、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であるNPT体制の維持・強化を重視している。NPTの目的の実現及び規定の遵守を確保するために5年に1度開催される運用検討会議では、1970年のNPT発効以来、その時々の国際情勢を反映した議論が行われてきた。
2026年に開催予定の第11回NPT運用検討会議に向けた第2回準備委員会が7月22日から8月2日まで国連欧州本部において開催され、日本からは、高村正大(ひろ)外務大臣政務官が出席した。高村外務大臣政務官は一般討論演説を行い、国際社会が歴史の転換期にあり、安全保障環境が急速に厳しさを増している中だからこそ、唯一の戦争被爆国として、NPTを国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石とし、「ヒロシマ・アクション・プラン」の下で「核兵器のない世界」に向けた国際社会の取組を主導すると述べた。また、日本は国際社会と協力し、北朝鮮及びイランに関する問題を含む核不拡散の取組を進めていくと述べたほか、日本は原子力の平和的利用の促進に向けて積極的に取り組んでいると表明した。今次準備委員会では、議長サマリーが作業文書として提出され、日本が重視する核戦力の透明性の向上、FMCTの早期交渉開始など、「ヒロシマ・アクション・プラン」で掲げられている要素が幅広く反映された。日本としては、現下の厳しい安全保障環境の下で議長サマリーが発出されたことを評価しており、また、各国が2026年の次回運用検討会議に向けNPT体制の維持・強化の重要性への共通認識を示し、対面で率直な意見交換を行った意義は大きいと考えている。
イ 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議
2022年、核兵器国と非核兵器国、さらには、核兵器禁止条約の参加国と非参加国からの参加者が、それぞれの国の立場を超えて知恵を出し合い、また、各国の現職・元職の政治リーダーの関与も得て、「核兵器のない世界」の実現に向けた具体的な道筋について自由闊(かっ)達な議論を行う場として国際賢人会議が立ち上げられた。第1回会合(2022年12月・広島)、第2回会合(2023年4月・東京)、第3回会合(2023年12月・長崎)に続き、第4回会合は、5月21日及び22日に横浜において開催され、白石隆座長(熊本県立大学特別栄誉教授)を含む日本人委員3人のほか、核兵器国、非核兵器国などからの外国人委員10人の合計13人の委員が対面参加し、2人の外国人委員がオンラインで参加した。上川外務大臣は冒頭にビデオメッセージを寄せ、日本政府の「核兵器のない世界」に向けた継続的な取組を紹介し、今後とも、国際賢人会議の叡(えい)智を頂きつつ、現実的かつ実践的な核軍縮の取組を継続していくと述べた。会合では、2026年NPT運用検討会議へのインプットを念頭に、核兵器をめぐる責任・倫理・規範、核軍備管理・不拡散レジームのアップデート、AI等の新興技術の影響などを中心に、六つのセッションを通じて率直かつ突っ込んだ議論が行われた。

第5回会合は、11月6日及び7日にオンラインで開催され、白石座長を含む日本人委員3人のほか、外国人委員11人の合計14人の委員が参加した。会合に当たり、石破総理大臣は、分断・対立が進む国際情勢の中で、国際賢人会議の叡智に基づく提言に期待しており、共に国際社会の未来へ貢献していきたいとの書面メッセージを寄せた。会合では、2026年NPT運用検討会議に向けた提言の作成を念頭に、核兵器をめぐる規範・責任の重要性、NPTに基づく不拡散レジームの強化、AI等の新興技術による核リスクへの影響などを中心に議論が行われた。
ウ 「核兵器のない世界」に向けたジャパン・チェア
2023年の国連総会一般討論演説において、「抑止か軍縮か」との二項対立的な議論を乗り越えるため、海外の研究機関・シンクタンクへの「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」の設置が表明されたことを受けて、カーネギー国際平和財団(米国)、ウィーン軍縮・不拡散センター(オーストリア)及び国際戦略研究所(IISS)アジア(シンガポール)において、核軍縮を専門とするポストである同ジャパン・チェアを設置した。
同ジャパン・チェアは、核軍縮「主流化」の流れを確実に進めていくためには、政府だけではない重層的な取組が必要との認識の下、日本が掲げる「現実的で実践的な核軍縮」についての議論を喚起し、また、国際社会の分断克服に貢献することを目的としている。
エ 軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)(24)
2010年に日本とオーストラリアが主導して立ち上げた地域横断的な非核兵器国のグループであるNPDI(12か国(25)で構成)は、現実的かつ実践的な提案を通じ、核兵器国と非核兵器国の橋渡しの役割を果たし、核軍縮・不拡散分野での国際社会の取組を主導している。2022年8月にニューヨークで開催された第11回NPDI ハイレベル会合には、岸田総理大臣が日本の総理大臣として初めて出席し、会合後にNPDIとしてNPTの実施を強化するために必要な、継続的かつハイレベルの政治的リーダーシップ及び外交上の対話の促進にコミットし続けるとの決意を表明するとの共同声明が発出された。また、NPDIとして、第9回NPT運用検討会議に計19本、第10回NPT運用検討会議プロセスに計18本の作業文書を提出するなど、現実的で実践的な提案を通じてNPT運用検討プロセスに積極的に貢献してきている。7月から8月に開催された2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会でも、NPDIとして共同ステートメントを実施したほか、透明性(報告)及び説明責任(アカウンタビリティ)並びに原子力技術の平和的利用の促進に係る作業文書を共同で提出した。
オ 国連を通じた取組(核兵器廃絶決議)
日本は、1994年以降、その時々の核軍縮に関する課題を織り込みながら、日本が掲げる現実的かつ具体的な核軍縮のアプローチを国際社会に提示するため核兵器廃絶に向けた決議案を国連総会に提出してきている。2024年の決議案においては、「核兵器のない世界」を実現する上での現実的で実践的な取組の方向性を示す必要があるとの認識の下、2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会での議論を踏まえ、「ヒロシマ・アクション・プラン」の更なる具体化と浸透を図るため、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石としてのNPTの重要性をより強調しつつ、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)交渉に向けた実質的な進展及び透明性の向上に関する具体的な措置の実施を国際社会に呼びかけることに焦点を当てた。また、被爆の実相の理解促進に関し、2024年ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)を始めとする被爆者にも言及した。同決議案は、11月の国連総会第一委員会で145か国、12月の国連総会本会議では152か国の支持(賛成票)を得て採択された。賛成国には、核兵器国である米国及び英国のほか、NATO加盟諸国、オーストラリア、韓国などの米国の同盟国や、核兵器禁止条約推進国を含む様々な立場の国々が含まれている。国連総会には、日本の核兵器廃絶決議案のほかにも核軍縮を包括的に扱う決議案が提出されているが、日本の決議案はそれらの決議案と比較して最も賛成国数が多く、例年国際社会の立場の異なる国々から幅広く支持され続けてきている。
カ 国連を通じた取組(核軍縮・不拡散に関する安保理閣僚級会合)
3月18日、上川外務大臣は、国連安保理において、日本の議長下として初めてとなる核軍縮・不拡散に関する安保理閣僚級会合を主催した。同会合には、日本に加えて、安全保障理事会理事国15か国のうち、米国、モザンビーク、シエラレオネの3か国から閣僚級が出席した。上川外務大臣は日本としてのステートメントで、日本は唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」に向け、広島・長崎の惨禍は繰り返してはならないとの信念の下、核兵器廃絶決議、「ヒロシマ・アクション・プラン」の提唱、被爆地広島でのG7サミットの開催など、国際社会を主導してきたと述べた。また、核軍縮をめぐる状況が一層厳しくなっている今こそ、「核兵器のない世界」の実現に向けて現実的かつ実践的な取組を着実に進めていくことが重要であり、NPT体制の維持・強化はその基盤であると強調した。会合では、米国に加えてロシア、英国、フランス、中国の核兵器国を含む各国出席者が、各国の経験や知見に基づき核軍縮・不拡散について活発に議論し、NPT体制の維持・強化の重要性を再確認するとともに、2026年NPT運用検討会議に向けて、核兵器国・非核兵器国間での実質的な議論を加速化させる契機となった。会合に参加した多くの国からは、世界は再び大変厳しい状況にあるという認識が示され、このテーマを提起するのに日本ほど適任の国はいないとの言及があったほか、広島などを訪問した際の経験、紛争下における女性の役割の重要性、AIなどが及ぼし得る影響についても発言があった(217ページ 特集参照)。
キ 包括的核実験禁止条約(CTBT)(26)
日本は、核兵器国と非核兵器国の双方が参加する現実的な核軍縮措置としてCTBTの発効促進を重視し、発効要件国を含む未署名国や未批准国に対しCTBTへの署名・批准を働きかける外交努力を継続している。9月の国連総会ハイレベルウィーク中に第11回CTBTフレンズ外相会合が開催された。上川外務大臣のステートメントにおいては、国際安全保障環境が一層厳しさを増す中での、「核兵器のない世界」に向けた現実的で実践的な取組の一環として、CTBTの普遍化、早期発効及び検証体制強化の重要性を述べつつ、全ての関係国に対し、条約発効までの間、核実験に関するモラトリアムを宣言・維持するよう呼びかけた。また、同会合後には、CTBT早期発効の重要性の強調、発効要件国含む全ての国の早期批准の要請、北朝鮮に対する核兵器・弾道ミサイル及び関連計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄に向けた具体的な行動の要請、核実験モラトリアムの維持、CTBTの検証体制の有効性・強化、政治レベルでCTBTの重要性を訴えることの促進などを内容とする共同声明が採択された。
ク 核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT(27):カットオフ条約)(28)
FMCTの構想は、核兵器用の核分裂性物質(高濃縮ウラン、プルトニウムなど)の生産そのものを禁止することにより、新たな核兵器国の出現を防ぎ、また、核兵器国による核兵器の生産を制限するものであることから、軍縮・不拡散双方の観点から大きな意義を有する。しかしながら、1993年にFMCTを求める国連総会決議が採択されてから、ジュネーブ軍縮会議における長年の議論にもかかわらず交渉開始の合意に至っていない。こうした状況を受け、2016年には、第71回国連総会でFMCTハイレベル専門家準備グループの設置が決定され、日本は同グループでの議論に積極的に参画し、同準備グループは2018年に報告書の取りまとめを行った。
また、3月に日本が議長国として開催した核軍縮・不拡散に関する安保理閣僚級会合において、上川外務大臣は、FMCTに対する政治的機運を維持・強化するために「FMCTフレンズ」の立ち上げを表明し、9月の国連総会ハイレベルウィークの期間において、岸田総理大臣は、FMCTフレンズ・ハイレベル立上げ会合を主催し、ブリンケン米国国務長官やジョリー・カナダ外相、ウォン・オーストラリア外相、マナロ・フィリピン外相など、フレンズ参加国ハイレベル代表との間で「FMCTフレンズ」を立ち上げた。岸田総理大臣は同会合の冒頭挨拶において、冷戦の最盛期以来、初めて核兵器数の減少傾向が逆転しかねない瀬戸際にあるからこそ、核兵器用核分裂性物質の生産禁止により核兵器の量的向上に制限をかけるFMCTの早期の交渉開始が必要であると述べた。複数の参加国が、FMCT早期交渉開始のためには政治的意思が必要と指摘し、会合後に発出された共同声明では、FMCTに対する政治的関心を高めるため緊密に協力し、早期交渉開始に向けて関係国などと協働することが確認された(217ページ 特集参照)。

3月18日、上川外務大臣は、核軍縮・不拡散に関する国連安全保障理事会(安保理)閣僚級会合を主催しました。本会合は、日本の安保理議長下としては初めてとなる、核軍縮・不拡散を議題としたもので、核兵器国と非核兵器国の間の議論を促進することを目的として開催されました。会合の冒頭、グテーレス国連事務総長ら3名から、核軍縮・不拡散を取り巻く現状と課題に関して説明がなされました。その後、上川外務大臣は、(1)強い危機感を持って「ヒロシマ・アクション・プラン」で掲げた五つの行動2に取り組むこと、(2)日本として「ヒロシマ・アクション・プラン」を具体化する取組を強化し、国際社会をリードすること、(3)ロシアや北朝鮮などによる「核兵器のない世界」に逆行する動きに対して、国際社会が一致して声を上げていかなければならないこと、(4)AIなどの新興技術が及ぼし得る影響や女性・平和・安全保障(WPS)の視点も重要であること、の4点を強調しました。

同会合において、上川外務大臣は、「核兵器のない世界」に向けて「ヒロシマ・アクション・プラン」を具体化する取組の一環として、FMCTに対する政治的関心の維持・強化及びFMCTの交渉開始に向けた支持拡大への貢献を目的とする、核兵器国及び非核兵器国から成る地域横断グループ3である「FMCTフレンズ」の立ち上げを表明しました。これに続いて、岸田総理大臣は国連総会ハイレベルウィーク中の9月23日に、FMCTフレンズ・ハイレベル立上げ会合を主催しました。会合にはブリンケン米国国務長官、ジョリー・カナダ外相、ウォン・オーストラリア外相、マナロ・フィリピン外相、アブバカル・ナイジェリア国防相を始め、8か国から閣僚級が、そのほかの国からも政府高官が出席し、「FMCTフレンズ」の立ち上げとFMCTの早期交渉開始に向けた緊密な連携を確認しました。岸田総理大臣は、冒頭挨拶で、FMCTへの政治的関心を更に高め、議論を再活性化することが、早期の交渉開始に向けて取り組む契機となり、ひいては核兵器不拡散条約(NPT)体制の維持・強化につながると確信していると述べました。

FMCTは、包括的核実験禁止条約(CTBT)4とともに、核兵器の減少傾向を維持していく上で重要な枠組みとなるものです。「FMCTフレンズ」を通じたFMCTの早期交渉開始に向けた取組を始め、唯一の戦争被爆国である日本は、引き続き「核兵器のない世界」に向けた現実的で実践的な取組を積み重ねていきます。
1 FMCT:Treaty Banning the Production of Fissile Material for Nuclear Weapons or other Nuclear Explosive Devices / Fissile Material Cut-off Treaty
2 五つの行動:(1)核兵器不使用の継続の重要性の共有、(2)透明性の向上、(3)核兵器数の減少傾向の維持、(4)核兵器の不拡散及び原子力の平和的利用、(5)各国指導者などによる被爆地訪問の促進
3 参加国は日本のほか、米国、英国、フランス、イタリア、オランダ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、ナイジェリア、フィリピン、ブラジルの12か国
4 CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty
ケ 軍縮・不拡散教育
日本は、唯一の戦争被爆国として、軍縮・不拡散に関する教育を重視している。具体的には、被爆証言の多言語化、国連軍縮フェローシップ・プログラム(29)を通じた各国若手外交官などの広島及び長崎への招へい、海外での原爆展の開催支援(30)、被爆体験証言を実施する被爆者に対する「非核特使」(31)の名称付与などを通じ、被爆の実相を国内外に伝達するため積極的に取り組んでいる。
岸田総理大臣は、2022年8月のNPT運用検討会議の一般討論演説において、国連に1,000万ドルを拠出して「ユース非核リーダー基金」を設けることを表明した。これは核兵器国、非核兵器国の双方を含む各国から若手政策決定者や研究者などの未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらい、日本を含め、核廃絶に向けた若い世代のグローバルなネットワークを作ることを目的とした取組である。2023年12月に同基金下の研修が開始され、8月には研修参加者第1期生のうち選抜された49人が1週間の訪日プログラムに参加し、広島及び長崎を訪問した。

また、被爆者の高齢化が進む中で、広島及び長崎の被爆の実相を世代や国境を越えて語り継いでいくことが重要となっている。こうした観点から、2013年から2024年までに国内外の750人以上の若者に「ユース非核特使」の名称を付与してきている。
コ 将来の軍備管理・軍縮に向けた取組
核軍縮分野においては、これまで、NPTなどの多国間の枠組みを通じた取組に加えて、米露二国間での軍備管理条約が締結されてきた。2021年2月3日には、米露両国間で新戦略兵器削減条約(新START)が延長された。同条約は米露両国の核軍縮における重要な進展を示すものであり、日本は同条約の延長を歓迎した。しかし、2022年8月にはロシアは、全てのロシア関連施設を一時的に査察対象から除外するとの声明を発出し、また、同年11月に予定されていた二国間協議委員会(BCC)の延期を米国に通告した。2023年1月には米国国務省はロシアが新STARTを遵守しているとは認定できないとの議会報告書を米国議会上院に提出した。同年2月、プーチン大統領は、年次教書演説において、新STARTの履行停止を発表した。こうした動きを受け、例えば「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」においても、新STARTを損なわせるロシアの決定に対する深い遺憾の意を表明し、ロシアに対して、同条約の完全な履行に戻ることを可能とするよう求めている。
核兵器をめぐる昨今の情勢を踏まえれば、米露を超えたより広範な国家、より広範な兵器システムを含む新たな軍備管理枠組みを構築していくことが重要である。その観点から、日本は様々なレベルでこの問題について関係各国に働きかけを行ってきている。前述の核兵器廃絶決議においても、核軍備競争予防の効果的な措置に関する軍備管理対話を開始する核兵器国の特別な責任につき再確認することが言及されている。
(2)不拡散及び核セキュリティ
ア 不拡散に関する日本の取組
日本は、2022年国家安全保障戦略にもあるように、自国の安全を確保し、かつ国際社会の平和と安全を維持するため、不拡散政策にも力を入れている。不拡散政策の目標は、日本及び国際社会にとって脅威となり得る兵器(核兵器、生物・化学兵器といった大量破壊兵器及びそれらを運ぶミサイル並びに通常兵器)やその開発に用いられる関連物資・技術の拡散を防ぐことにある。
国際秩序が動揺する中、北朝鮮、イラン、シリアなどにおける拡散懸念は高まっている。また、経済成長に伴う兵器やその開発に転用可能な物資などの生産・供給能力の増大、グローバル化の進展に伴う流通形態の複雑化及び懸念物資などの調達手法の巧妙化、新技術の登場を背景とした民間技術の軍事転用のリスクの高まりなども拡散リスクを増大させている。さらに、近年原子力エネルギーの需要が高まる中、不拡散及び核セキュリティの重要性も増している。
このような状況において、日本は、国際的な不拡散体制・ルール、国内における不拡散措置、各国との緊密な連携・能力構築支援などを通して不拡散政策に取り組んでいる。
拡散を防ぐための手段には、前述のNPT、CTBT、FMCTに加え、保障措置、輸出管理、拡散対抗の取組などがある。
保障措置とは、核兵器の拡散防止のために、原子力(核物質)が、原子力発電などの平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されないことを担保することを目的に、国際原子力機関(IAEA)(32)と国家との間で締結される保障措置協定に従って行われる検証活動である。これはNPTの3本柱の一つである核不拡散の中核的手段であり、その強化は核軍縮・原子力の平和的利用の推進にとっても不可欠である。日本はIAEAの指定理事国(33)として、IAEA関連活動の支援、保障措置に対する理解や実施能力の増進支援、追加議定書(AP)(34)の普遍化促進などを進めている。また、アジア太平洋保障措置ネットワーク(APSN)(35)会合への貢献やアジア諸国に対する日本での研修事業実施などを通じて、各国における保障措置の能力開発にも貢献している。
輸出管理は、拡散懸念国やテロ組織など、兵器やその関連物資・技術を入手し、拡散しようとする者に対し、いわば供給サイドから規制を行う取組である。国際社会には四つの輸出管理の枠組み(国際輸出管理レジーム)があり、日本は、全てのレジームに発足当時から参加し、国際的な連携を図りつつ、厳格な輸出管理を実施している。具体的には、核兵器に関して原子力供給国グループ(NSG)(36)、生物・化学兵器に関してオーストラリア・グループ(AG)(37)、ミサイル(38)に関してミサイル技術管理レジーム(MTCR)(39)、通常兵器に関してワッセナー・アレンジメント(WA)(40)があり、各レジームにおいて、管理すべき兵器の開発に資する汎用品・技術をそれぞれリスト化している。参加国は、それらリストの掲載品目・技術について国内法に基づき輸出管理を行うことで、懸念物資・技術の不拡散を担保している。日本は、国際的なルール作り、ルールの運用に積極的に関与しているほか、NSGの事務局の役割を在ウィーン国際機関日本政府代表部が担っている。
また、日本は、こうした保障措置や国際輸出管理レジームを補完し、大量破壊兵器の拡散や脅威に総合的に対処するために、拡散対抗の取組を推進している。具体的には、拡散に対する安全保障構想(PSI)(41)の活動に積極的に参加し、大量破壊兵器などの拡散阻止のため、各国が国際法・各国国内法の範囲内で共同して取り得る措置を実施・検討している。加えて、非国家主体への大量破壊兵器及びその運搬手段(ミサイル)の拡散防止を目的として2004年に採択された国連安保理決議第1540号(42)に関し、日本はアジア諸国による同決議の履行支援のための資金を拠出するなど、国際的な不拡散体制の維持・強化に貢献している。
輸出管理を始めとした不拡散の取組は、国際ビジネス環境の予見可能性を高め、投資・貿易を促進する役割を果たしている。高度にグローバル化した世界経済の中、自由貿易を確保しながら、効率的、効果的な輸出管理を行うために、高い技術力を有する日本の産業界、学界の協力を得ながら、各国の輸出管理制度の調和・強化を含めた国際協調を進めている。そうした観点から、日本は、アジア諸国を中心に不拡散体制への理解促進と地域的取組の強化を図るため、毎年、アジア不拡散協議(ASTOP)(43)やアジア輸出管理セミナー(44)を開催している。
IAEAは、原子力の平和的利用を促進し、同時に原子力が軍事的目的で利用されないことを確保することを目的に、1957年に設立された国連の関連機関である。1970年に発効したNPT第3条においても、平和的利用のための原子力技術が軍事転用されることを防止するため、非核兵器国がIAEAの保障措置を受諾する義務が規定されている。
「核の番人」とも呼ばれるIAEAは、核不拡散の観点からは、保障措置の実施や北朝鮮・イランなどへの核不拡散課題への対応において重要な役割を果たしているほか、核テロ対策にも取り組んでいる。また、原子力の平和的利用の促進の観点からは、原子力発電に係る技術支援のみならず、保健・医療、食料・農業、水資源管理、環境、産業応用などの非発電分野における原子力技術の応用研究・支援を強化しており、さらには近年ではフュージョンエネルギー分野にも注力するなど、その活動は多岐にわたる。
日本は、原加盟国としてIAEAに加盟して以降、指定理事国として総会及び理事会での議論に貢献するほか、伝統的に核不拡散分野や原子力の平和的利用においてIAEAとの協力を深め、人材面、財政面・技術面でその活動を積極的に後押ししてきた。最近では、東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水1の海洋放出や、ウクライナの原子力安全分野における協力に加え、医療・食料・環境などの分野での原子力利用に対する世界的な関心と需要の高まりを背景にIAEAが推進する様々なイニシアティブでも協力を進めている。開発途上国における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けてIAEAが提唱した、Rays of Hope(放射線がん治療・診断に関するイニシアティブ)やAtoms4Food(食料問題に関するイニシアティブ)はその一例であり、日本からも資金拠出を行っている。
グロッシー事務局長による4回に及ぶ外務省賓客としての訪日の機会なども通じて、核不拡散及び原子力の平和的利用の両分野における連携を強化している。

1 ALPS処理水とは、ALPS(多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System))などにより、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化した水。ALPS処理水は、その後十分に希釈され、トリチウムを含む放射性物質の濃度について安全に関する規制基準値を大幅に下回るレベルにした上で、海洋放出されている。
イ 地域の不拡散問題
北朝鮮は、2024年も大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルの発射や衛星打ち上げを目的とした弾道ミサイル技術を使用した発射などを行った。このような一連の北朝鮮の行動は、関連する安保理決議の明白な違反であり、日本の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であるとともに、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、断じて容認できない。8月のIAEA事務局長報告は、北朝鮮の核活動は引き続き深刻な懸念を生じさせるものであり、北朝鮮の核計画の継続は国連安保理決議の明確な違反であると指摘した。さらに、9月のIAEA総会では、北朝鮮に対して、全ての核兵器及び既存の核計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での放棄並びに全ての関連活動の速やかな停止に向けた具体的な行動を強く求める決議がコンセンサスで採択され、北朝鮮の非核化に向けたIAEA加盟国の結束した立場を示した。日本も、7月から8月の2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会や9月のIAEA総会、IAEA定例理事会などにおいて北朝鮮の核問題への対処の重要性を国際社会に積極的に発信した。
北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄に向け、国際社会が一致団結して、国連安保理決議を完全に履行することが重要である。北朝鮮からロシアへの弾道ミサイルなどの移転といった軍事協力は国連安保理決議の明白な違反であり、日本としては、引き続き、米国、韓国を始めとする関係諸国や国連やIAEAなどの国際機関と緊密に連携していく。また、国連安保理決議の完全な履行の観点から、アジア地域を中心とした輸出管理能力の構築も進めていく。NSGやMTCRなどの国際輸出管理レジームにおいても、北朝鮮の核・ミサイルに関する議論に日本は積極的に貢献していく。
イランは、2018年に米国(第1期トランプ政権)が包括的共同作業計画(JCPOA)(45)から離脱し、イランへの独自制裁を復活させて以降、JCPOA上のコミットメントを低減する措置を継続している。2021年2月に追加議定書(AP)を含むJCPOA上の透明性措置の履行停止、同年4月には60%の濃縮ウランの製造を開始した。
日本としては、国際的な不拡散体制の強化に資するJCPOAを一貫して支持してきた観点から、米国及びイラン双方によるJCPOAの再構築に向けた関係国の取組を支持してきている。また、イランがJCPOA上のコミットメントを継続的に低減させていることを強く懸念し、イランに対し、累次にわたり、JCPOAを損なう措置を控え、JCPOA上のコミットメントに完全に戻るよう求めている。
こうしたJCPOAの履行や一連の保障措置問題(イラン国内でIAEAに未申告の核物質が検出された問題)を協議するため、グロッシーIAEA事務局長は、2023年3月にイランを訪問し、両者の間で、保障措置問題などにおける今後の協力に向けた共同声明を発出した。その後、共同声明実施を含む両者の協力が停滞したことを受け、6月のIAEA理事会において、イランに対しIAEAの要請に遅滞なく協力するよう求める決議が発出された。11月にグロッシーIAEA事務局長が再度イランを訪問し、両者間の協力について協議が行われたが、その結果を踏まえて更に11月理事会において、IAEA事務局長に対して、イランの保障措置問題に関する包括的かつ最新の評価を作成することを求める決議が発出された。日本としては、引き続きイランに対して、IAEAと完全かつ無条件に協力するよう強く求めていく。また、日本は、NSGやMTCRなどの国際輸出管理レジームにおけるイランの核・ミサイル・無人航空機(UAV)(46)に関する議論にも貢献していく。
シリアは、2011年のIAEA理事会で未申告の原子炉建設などがIAEA保障措置協定下の違反を構成すると認定されており、今日まで未解決の問題として議論されているが、2024年10月までにIAEAによる未申告の原子炉建設に関連する施設3か所の訪問が実現し、今後の進展が注視される。日本としてはこの未解決の問題を解決するために、シリアがIAEAに対して完全に協力することを求めている。同国が追加議定書を署名・批准し、実施することが重要である。
ウ 核セキュリティ
核物質やその他の放射性物質を使用したテロ活動を防止するための「核セキュリティ」は、2001年9月の米国同時多発テロ事件以降、核テロ対策の重要性が強く認識されるようになり、その後、核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ(GICNT)(47)や核セキュリティ・サミット、核セキュリティに関する国際会議(ICONS)(48)といった核セキュリティの強化に向けた多国間協議が開催されるとともに、2007年に核テロ防止条約、2015年に核物質防護条約の改正がそれぞれ発効するなど、国際社会における協力が進展してきた。ただし、ロシアによるウクライナ侵略に伴い、米露共同議長の下で開催されてきたGICNTの活動が停滞したことから、11月に、米国は、「放射線・核テロリズムを予防するためのグローバル・フォーラム」(Global FTPRNT)(49)を立ち上げて初回会合を開催し、同会合では核テロ対策能力を向上させる方策などが議論された。また、ウクライナ国内の原子力施設の安全・セキュリティ確保に向けた取組も求められてきている。
5月には、IAEAが第4回ICONSを開催し、日本から政府代表として、辻󠄀清人外務副大臣が閣僚会合に出席し演説を行った。演説の中で、辻󠄀外務副大臣は、各国におけるエネルギー需要の増大や脱炭素の世界的潮流の中で、原子力発電への国際社会の関心が高まる中、原子力の平和的利用を進める各国は、非国家主体への核兵器や核物質の拡散リスクといった核セキュリティに対する認識を向上させ、最高水準の核セキュリティの確保に向けて取り組んでいく必要があると述べた。また、ロシアによるウクライナ侵略について、IAEA事務局長による「原子力施設の安全及び核セキュリティに関する7つの柱」(50)が損なわれるべきではない、日本は、IAEA事務局長のリーダーシップの下、様々な活動を展開するIAEA、そして各国と連携しつつ、国際社会における最高水準の核セキュリティの確保に向けて、引き続き貢献していくと述べた。
9月に開催されたIAEA総会においては、ウクライナの原子力安全・核セキュリティ・保障措置について議論され、同国の原子力施設に対する全ての行為を直ちに停止するよう求める過去のIAEA理事会決議にロシアが留意していないことに懸念を表明し、IAEA事務局長による七つの柱及び五つの原則(51)を含むウクライナにおけるIAEAの原子力安全等確保の取組を評価・支持する決議が賛成多数で採択された。引き続き、日本として、原子力施設の占拠を含むロシアによる侵略を強く非難するとともに、ウクライナにおける原子力施設の安全や核セキュリティなどの確保に向けたIAEAの取組を引き続き後押ししていく。
(3)原子力の平和的利用
ア 多国間での取組
原子力の平和的利用は、核軍縮・不拡散と並んでNPTの3本柱の一つであり、同条約で、不拡散を進める締約国が平和的目的のために原子力の研究、生産及び利用を発展させることは「奪い得ない権利」とされている。国際的なエネルギー需要の拡大や、脱炭素化電源としての関心の高まりなどを背景に、原子力発電(52)を活用する又は活用を計画する国は多い。こうした国際的な動向を踏まえ、2024年3月には、ベルギーのブリュッセルにおいて、第1回原子力エネルギー・サミットが開催され、日本からも高村外務大臣政務官が出席した。
一方、これら原子力発電に利用される核物質、機材及び技術が軍事転用される可能性もあり、また一国の事故が周辺諸国にも影響を与え得る。したがって、原子力の平和的利用に当たっては、(ア)保障措置、(イ)原子力安全(原子力事故の防止に向けた安全性の確保など)及び(ウ)核セキュリティの「3S」(53)の確保が重要である。また、東京電力福島第一原子力発電所事故の当事国として、事故の経験と教訓を世界と共有し、国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、日本の責務である。2013年には福島県において「IAEA緊急時対応能力研修センター」が指定され、同センターにおいては、IAEAと日本の協力の下、国内外の関係者を対象として、緊急事態への準備及び対応の分野での能力強化のための研修が実施されている。
原子力は、発電のみならず、保健・医療、食糧・農業、環境、産業応用などの非発電分野でも活用されている。これら非発電分野での原子力の平和的利用の促進と開発課題への貢献は、開発途上国がNPT締約国の大半を占める中で重要性が増してきており、IAEAも、開発途上国への技術協力やSDGsの達成への貢献に取り組んでいる。
そのような中、日本は、「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)(54)」に基づく協力を始めとする技術協力活動や、「平和的利用イニシアティブ(PUI)(55)」への拠出などを通じてIAEAの活動を技術面、財政面で積極的に支援している。PUIへの拠出を通じた支援事業の例としては、がん対策、食糧問題への対処、海洋プラスチックごみ問題への対処のための事業が挙げられる。11月には、ウィーンで、原子力科学技術の活用や同分野におけるIAEAの技術協力活動に関する「原子力科学技術・応用・技術協力閣僚会議」が6年ぶりに開催された。日本からは宮路拓馬外務副大臣が出席し、日本の取組について発表するとともに、今回の閣僚会議が原子力科学技術の平和的利用の促進に、更なる弾みを付けることを期待すると述べた。
イ 二国間原子力協定
二国間原子力協定は、相手国との間で原子力の平和的利用分野における協力を実現するため、相手国との間で移転される原子力関連資機材などの平和的利用及び核不拡散の法的な確保に必要となる枠組みを定めるために締結するものである。また、二国間協定の下で、原子力安全の強化などに関する協力を促進することも可能である。原子力協定の枠組みを設けるかどうかは、核不拡散の観点、相手国の原子力政策、相手国の日本への信頼と期待、二国間関係などを総合的に勘案し、個別具体的に検討してきている。12月時点で、日本は、発効順で、カナダ、フランス、オーストラリア、中国、米国、英国、欧州原子力共同体(EURATOM)、カザフスタン、韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)及びインドの14か国・1機関との間で二国間原子力協定を締結している。
ウ 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉及びALPS処理水の取扱い
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策、除染・環境回復は、困難な作業ではあるものの、世界の技術や英知を結集し、原子力分野の専門機関であるIAEAとも緊密に連携しつつ、着実に進められている。2021年4月、日本政府はALPS処理水の処分に関する基本方針を公表し、同年7月には、日本政府とIAEAとの間で、「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の取扱いの安全面のレビューに関する日本政府に対するIAEAの支援についての付託事項(TOR)」が署名された。IAEA職員及びIAEAが選定した国際専門家で構成されるIAEAタスクフォースは、このTORに基づき、日本政府及び東京電力に対し、第三者の立場から安全性と規制面に係るレビューを実施してきた。
2023年7月4日、グロッシーIAEA事務局長が訪日し、TORに基づくこれらのレビューを総括するIAEA包括報告書が岸田総理大臣に手交された。IAEA包括報告書では、(ア)ALPS処理水の海洋放出に対する取組及び関連の活動は、関連する国際安全基準に合致していること、(イ)ALPS処理水の海洋放出による人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどであることが結論として示されたとともに、(ウ)IAEAが放出中及び放出後も継続して追加的なレビュー及びモニタリングを行う予定であることが示された。
同年8月22日の廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議、ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議を経て、同年8月24日、ALPS処理水の海洋放出が開始された。ALPS処理水は計画どおり放出されており、これまでのモニタリング結果から安全であることが確認されている。
また、海洋放出開始後、2023年10月、2024年4月及び同年12月に、IAEAによる安全性レビューミッションが3回行われ、公表された放出開始後1回目及び2回目のレビューミッションの報告書においても、IAEAは2023年7月4日の包括報告書で示した安全性レビューの根幹的な結論を再確認することができたとしている。
9月20日、日本とIAEAは、関係国の関心を踏まえ、IAEAの枠組みの下で現行のモニタリングを拡充することで一致した。同日、中国との間ではALPS処理水の海洋放出と日本産水産物の輸入規制について、「日中間の共有された認識」を発表し、中国側は、IAEAの枠組みの下での追加的なモニタリング実施後、日本産水産物の輸入規制の調整に着手し、日本産水産物の輸入を着実に回復させることとなった。10月15日には、この追加的なモニタリングの一環として、IAEAの枠組みの下で参加国(韓国、スイス及び中国)の分析機関による採水が実施された。
国際社会の正しい理解と支援を得ながら事故対応と復興を進める観点から、日本政府は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の進捗、空間線量や海洋中の放射能濃度のモニタリング結果、食品の安全といった事項についても、IAEAを通じて包括的な報告を定期的に公表しているほか、在京外交団を始めとする関係団体及びIAEA向けの現状の通報や、原子力発電所事故以来100回以上に上る在京外交団などに対する説明会の開催、在外公館を通じた情報提供、SNSなどを活用した情報発信などを行っている。
日本政府は、ALPS処理水の海洋放出の安全性について今後も国際社会に対し、科学的根拠に基づき、透明性の高い説明を引き続き丁寧に行っていく方針であり、風評被害を助長しかねない主張に対しては、適切に対応していく。
(4)生物兵器・化学兵器
ア 生物兵器
生物兵器禁止条約(BWC)(56)は、生物兵器の開発・生産・保有などを包括的に禁止する唯一の多国間の法的枠組みである。条約遵守の検証手段に関する規定や条約実施機関がなく、条約をいかに強化するかが課題となっている。
2006年以降、履行支援ユニット(事務局機能)の設置や、5年に1度開催される運用検討会議の間における年2回の会期間会合の開催などが決定され、BWC体制の強化に向けた取組が進められてきた。
2022年に行われた第9回運用検討会議において、BWCの実行をあらゆる面で強化するため、全締約国に開かれた作業部会を設置することが決定された。作業部会は2023年から会合を開き、締約国が国際協力に係る措置、科学技術の進展に係る措置、条約遵守・検証に係る措置などにつき検討を進めている。
イ 化学兵器
化学兵器禁止条約(CWC)(57)は、化学兵器の開発・生産・貯蔵・使用などを包括的に禁止し、既存の化学兵器の全廃を定めている。条約の遵守を検証制度(申告と査察)によって確保しており、大量破壊兵器の軍縮・不拡散に関する国際約束としては画期的な条約である。CWCの実施機関として、ハーグ(オランダ)に化学兵器禁止機関(OPCW)(58)が設置されている。OPCWは、シリアの化学兵器廃棄において、国連と共に重要な役割を果たし、2013年には、「化学兵器のない世界」を目指した広範な努力が評価されノーベル平和賞を受賞した。
化学産業が発達し、化学工場の数が多い日本は、OPCWの査察を数多く受け入れている。
日本は、OPCWに対して具体的な協力を積極的に行っている。3月には、日本は、ウクライナにおける対化学兵器防護・援助に貢献するため、OPCWに対し約2,600万円を拠出した。同資金は、OPCWを通じたウクライナへの化学物質分析計の供与に当てられる。このほか、日本は、加盟国を増やすための施策や、締約国による条約の国内実施措置の強化により条約の実効性を高めるための施策に取り組んでいる。
また、日本は、CWCに基づき、中国国内で遺棄された旧日本軍の化学兵器について、中国と協力しつつ、一日も早い廃棄の完了を目指している。
(5)通常兵器
通常兵器とは、一般に大量破壊兵器以外の武器を意味し、戦車、大砲、地雷から、けん銃などの小型武器まで多岐にわたる。実際の紛争で広く使用され、文民の死傷にもつながる通常兵器の問題は、安全保障に加え人道の観点からも深刻であり、グテーレス国連事務総長が2018年に発表した軍縮アジェンダにおいて、通常兵器分野の軍縮は「人命を救う軍縮」として3本柱の一つに位置付けられている。日本は、通常兵器に関する国際的な協力・支援や関連会議での議論などを通じて、積極的な貢献を継続している。
ア 小型武器
小型武器は、実際に使用され多くの人命を奪っていることから「事実上の大量破壊兵器」とも称され、入手や操作が容易であるため拡散が続き、紛争の長期化や激化、治安回復や復興開発の阻害などの一因となっている。日本は、2001年以来毎年、小型武器非合法取引決議案を他国と共同で国連総会に提出し、同決議は毎年採択されてきている。また、世界各地において武器回収、廃棄、研修などの小型武器対策事業を支援してきている。2019年には、グテーレス国連事務総長の軍縮アジェンダに基づき設立された小型武器対策のための基金に200万ドルを拠出し、同基金を通じた小型武器対策事業が、非合法小型武器の影響を受ける国々において実施されている。
イ 武器貿易条約(ATT)(59)
通常兵器の国際貿易を規制するための共通基準を確立し、不正な武器移転などを防止することを目的としたATTは、2014年12月に発効した。日本は、条約の検討を開始する国連総会決議の原共同提案国の1か国として、国連における議論及び交渉を主導し、条約の成立に大いに貢献した。また発効後も、2018年8月、アジア大洋州から選出された初めての議長国として第4回締約国会議を東京で開催するなど、積極的な貢献を継続している。条約発効後10周年の会議となるATT第10回締約国会議(8月に開催)において、条約の重要性を確認する「政治宣言」が発表された。同会議で日本は、透明性・報告作業部会議長を務めるなど、条約履行促進に向け積極的な貢献を果たした。
ウ 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)(60)
CCWは、過度に傷害を与える又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用を禁止又は制限するもので、手続事項などを定めた枠組条約及び個別の通常兵器などについて規制する五つの附属議定書から構成される。枠組条約は1983年に発効し、日本は、枠組条約及び改正議定書Ⅱを含む議定書ⅠからⅣを締結している。2017年からは、急速に進歩する科学技術の軍事利用に対する国際社会の懸念を背景として、CCWの枠組みで自律型致死兵器システム(LAWS)(61)に関する政府専門家会合が開催されており、2019年にはLAWSに関する指針11項目が作成された。日本はこうした国際的なルール作りに関する議論に積極的かつ建設的に貢献してきており、2023年3月には、米国、英国、オーストラリア、カナダ、韓国と共に「国際人道法を基礎とした禁止と制限の方法に係る自律型兵器システムに関する条項案」を政府専門家会合に提出した。2023年3月の政府専門家会合では、国際人道法を遵守できない兵器システムは禁止し、それ以外の兵器システムは制限するとの考え方を含む報告書が全会一致で採択された。また、5月には、LAWSに関する国連総会決議を踏まえ、国連事務総長報告書の作成及び政府専門家会合での議論に資することを目的に、LAWSに関する日本の見解をまとめた作業文書を提出した。
また、AIを含む新興技術が軍事領域に与える影響に係る国際的議論の活発化を背景に、9月、韓国において「軍事領域における責任あるAI(REAIM)(62)」第2回サミットが開催された。
エ 対人地雷
日本は、1998年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)(63)締結以来、対人地雷の実効的な禁止と被害国への地雷対策支援の強化などを含む同条約の包括的な取組を推進してきた。アジア太平洋地域各国へのオタワ条約締結に向けた働きかけに加え、人道と開発と平和の連携の観点から、国際社会において、地雷除去や被害者支援などを通じた国際協力も着実に実施してきている。
11月には、シェムリアップ(カンボジア)で開催されたオタワ条約第5回検討会議に英(え)利アルフィヤ外務大臣政務官が出席し、これまでの日本の地雷対策支援の取組及び実績を振り返るとともに、日本が2025年の第22回締約国会議の議長国を務めることも踏まえ、同条約の着実な履行及び普遍化に向けて、努力を継続していくとの立場を表明した。

オ クラスター弾(64)
クラスター弾がもたらす被害は、人道上の観点から国際的に深刻に受け止められている。日本は、被害者支援や不発弾処理といった対策を実施(65)している。また、クラスター弾に関する条約(66)(CCM)(67)の締約国を拡大する取組も継続しており、9月に開催されたCCM第12回締約国会議においても、これらの課題に関する議論に参加し、日本の積極的な取組をアピールした。
(22) 岸田総理大臣が2022年8月のNPT運用検討会議で提唱したもの。「核兵器のない世界」という理想と厳しい安全保障環境という現実を結び付けるための現実的なロードマップの第一歩として、核リスク低減に取り組みつつ、(1)核兵器不使用の継続の重要性の共有、(2)透明性の向上、(3)核兵器数の減少傾向の維持、(4)核兵器の不拡散及び原子力の平和的利用、(5)各国指導者などによる被爆地訪問の促進、の五つの行動を基礎とする。
(23) NPT:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons
(24) NPDI:Non-Proliferation and Disarmament Initiative
(25) 日本、オーストラリア、ドイツ、ポーランド、オランダ、カナダ、メキシコ、チリ、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、ナイジェリア及びフィリピン
(26) CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty
(27) FMCT:Treaty Banning the Production of Fissile Material for Nuclear Weapons or other Nuclear Explosive Devices / Fissile Material Cut-off Treaty
(28) 核兵器その他の核爆発装置製造のための原料となる核分裂性物質(高濃縮ウラン及びプルトニウムなど)の生産を禁止することにより、核兵器の数量増加を止めることを目的とする条約構想
(29) 特に発展途上国における軍縮専門家を育成することを目的とした国連による研修プログラム。1978年の第1回国連軍縮特別総会において実施が決定された。日本は1983年以来、本プログラム参加者(各国若手外交官など)を日本政府の費用負担で日本に招待しており、2024年までに1,027人の参加者が日本を訪問した。訪日プログラムは、広島・長崎での資料館の視察や被爆者による被爆体験講話などを通じ、被爆の実相への理解を促進する有意義な機会となっている。
(30) 広島市や長崎市との協力の下、ニューヨーク(米国)、ジュネーブ(スイス)及びウィーン(オーストリア)で常設原爆展が開設されている。
(31) 2010年から2022年までに、300人以上の被爆者に「非核特使」の名称を付与してきている。
(32) IAEA:International Atomic Energy Agency
(33) IAEA理事会で指定される13か国。日本を含む高度な原子力技術を有する国が指定されている。
(34) AP(Additional Protocol):NPT締約国である非核兵器国は、NPT第3条1項に基づきIAEAとの間で当該国の平和的な原子力活動に係る全ての核物質を対象とした「包括的保障措置協定(CSA)」などを締結することを義務付けられているが、これに追加して、各国がIAEAとの間で締結する議定書。追加議定書の締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲が拡大され、未申告の原子力核物質・原子力活動がないことを確認するためのより強化された権限がIAEAに与えられる。2024年10月時点で、143か国が締結している。
(35) APSN:Asia Pacific Safeguards Network
(36) NSG:Nuclear Suppliers Group
(37) AG:Australia Group
(38) 弾道ミサイルに関しては、輸出管理体制のほかにも、その開発・配備の自制などを原則とする「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範」(HCOC)があり、2024年10月時点で、145か国が参加している。
(39) MTCR:Missile Technology Control Regime
(40) WA:Wassenaar Arrangement
(41) PSI(Proliferation Security Initiative):2003年に発足。2024年10月時点で、115か国がPSIの活動に参加・協力している。2013年、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、シンガポール及び米国の6か国は、アジア太平洋ローテーション訓練として1年ごとに訓練を主催することで合意した。日本は、外務省、警察庁、財務省、海上保安庁、防衛省・自衛隊などが連携し、これまで2004年、2007年及び2018年にPSI海上阻止訓練、2012年にPSI航空阻止訓練、2010年にオペレーション専門家会合(OEG)をそれぞれ主催したほか、直近の2024年9月のオーストラリア主催訓練を始め、他国が主催する訓練及び関連会合にも積極的に参加している。
(42) 2004年4月採択。全ての国に対し(1)大量破壊兵器開発などを試みるテロリストなどへの支援の自制、(2)テロリストなどによる大量破壊兵器開発などを禁ずる法律の制定及び(3)大量破壊兵器拡散を防止する国内管理(防護措置、国境管理、輸出管理など)の実施を義務付けるとともに、国連安保理の下に国連安保理理事国から構成される「1540委員会」(国連安保理決議第1540号の履行状況の検討と国連安保理への報告が任務)を設置
(43) ASTOP(Asia Senior-Level Talks on Non-Proliferation):日本が主催し、ASEAN10か国、中国、インド、韓国、そしてアジア地域の安全保障に共通の利益を持つ米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、フランス、オランダ及びEUの局長級が一堂に会し、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題について議論を行う多国間協議で、2003年に発足。直近では、2024年10月に第19回協議を開催し、アジアにおける拡散課題や輸出管理の強化について議論した。
(44) 日本が主催し、アジア諸国・地域の輸出管理当局関係者などが参加して、アジア地域における輸出管理強化に向けて意見・情報交換をするセミナー。1993年から毎年東京で開催している(2021年のみ新型コロナの影響により中止)。
(45) JCPOA(Joint Comprehensive Plan of Action):イランの原子力活動に制約をかけつつ、それが平和的であることを確保し、また、これまでに課された制裁を解除していく手順を詳細に明記したもの
〈イラン側の主な措置〉
●濃縮ウラン活動に係る制約
・稼動遠心分離機を5,060機に限定
・ウラン濃縮の上限は3.67%、貯蔵濃縮ウランは300kgに限定など
●アラク重水炉、再処理に係る制約
・アラク重水炉は兵器級プルトニウムを製造しないよう再設計・改修し、使用済燃料は国外へ搬出
・研究目的を含め再処理は行わず、再処理施設も建設しない
(46) UAV:Unmanned Aerial Vehicle
(47) GICNT:Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism
(48) ICONS:International Conference on Nuclear Security
(49) Global FTPRNT:Global Forum to Prevent Radiological and Nuclear Terrorism
(50) 1.原子炉、燃料貯蔵プール、放射線廃棄物貯蔵・処理施設にかかわらず、原子力施設の物理的一体性が維持されなければならない。
2.原子力安全と核セキュリティに係る全てのシステムと装備が常に完全に機能しなければならない。
3.施設の職員が適切な輪番で各々の原子力安全及び核セキュリティに係る職務を遂行できなければならず、不当な圧力なく原子力安全と核セキュリティに関して、決定する能力を保持していなければならない。
4.全ての原子力サイトに対して、サイト外から配電網を通じた電力供給が確保されていなければならない。
5.サイトへの及びサイトからの物流のサプライチェーン網及び輸送が中断されてはならない。
6.効果的なサイト内外の放射線監視システム及び緊急事態への準備・対応措置がなければならない。
7.必要に応じて、規制当局とサイトとの間で信頼できるコミュニケーションがなければならない。
(51) 1.特に原子炉、使用済み燃料倉庫、その他の重要なインフラ設備及び職員を狙った、原子力発電所からの、または、原子力発電所に対するいかなる攻撃も行ってはならない。
2.ザポリッジャ原子力発電所が、同発電所からの攻撃に使用され得るような軍事要員または重火器(例:多連装ロケット砲、砲撃システムや弾薬、戦車)の倉庫や基地として使用されてはならない。
3.原子力発電所のオフサイト電源がリスクにさらされてはならない。全てのオフサイト電源が常に保護され、使用可能な状態であるよう確保するための全ての努力が行われなければならない。
4.ザポリッジャ原子力発電所の安全かつ確実な運用にとって不可欠な全ての設備、システム及び備品は、攻撃及び破壊行為から保護されなければならない。
5.これらの原則を損なういかなる行動もとってはならない。
(52) IAEAによると、原子炉は世界中で415基が稼働中であり、63基が建設中(IAEAホームページ、2024年11月時点)
(53) 核不拡散の代表的な措置であるIAEAの保障措置(Safeguards)、原子力安全(Safety)及び核セキュリティ(Security)の頭文字を取って「3S」と称されている。
(54) RCA:Regional Cooperative Agreement for Research, Development and Training Related to Nuclear Science and Technology
(55) PUI:Peaceful Uses Initiative
(56) BWC:Biological Weapons Convention 1975年3月発効。締約国数は187か国・地域(2024年12月時点)
(57) CWC:Chemical Weapons Convention 1997年4月発効。締約国数は193か国・地域(2024年12月時点)
(58) OPCW:Organization for the Prohibition of Chemical Weapons
(59) 武器貿易条約(ATT:Arms Trade Treaty)の2024年12月時点の締約国は116か国・地域。日本は、署名が解放された日に署名を行い、2014年5月に受諾書を寄託した。
(60) 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW:Convention on Certain Conventional Weapons)の2024年12月時点の締約国は128か国・地域
(61) LAWS:Lethal Autonomous Weapons System
(62) REAIM:Responsible Artificial Intelligence in the Military Domain
(63) 対人地雷の使用・生産などを禁止するとともに、貯蔵地雷の廃棄、埋設地雷の除去などを義務付ける条約で、1999年に発効した。2024年12月時点の締約国数は、日本を含め164か国・地域
(64) 一般的には、多量の子弾を入れた大型の容器が空中で開かれて子弾が広範囲に散布される仕組みの爆弾及び砲弾のことをいう。不発弾となる確率が高いともいわれ、不慮の爆発によって一般市民を死傷させることなどが問題となっている。
(65) クラスター弾対策及び対人地雷対策に関する国際協力の具体的な取組については、開発協力白書を参照
(66) クラスター弾の使用・生産・保有などを禁止するとともに、貯蔵クラスター弾の廃棄、汚染地域におけるクラスター弾の除去などを義務付ける条約で、2010年8月に発効した。2024年12月時点の締約国数は、日本を含め111か国・地域
(67) CCM:Convention on Cluster Munitions