日本の安全保障と国際社会の平和と安定

令和6年12月6日
「シェムリアップ・アンコール・コミットメント」に署名した英利政務官と随行員 「シェムリアップ・アンコール・コミットメント」に署名した
英利政務官と随行員

外務省通常兵器室

 11月25日から29日、カンボジアのシェムリアップにおいて、対人地雷禁止条約(通称:オタワ条約)第5回検討会議が開催されたところ、概要と評価は以下のとおりです。なお、検討会議は5年に一度開催され、過去5年間の条約履行状況を評価するとともに、今後の課題や目標等について議論し、条約へのコミットメントを新たにするものです。今般、日本政府を代表して本検討会議に出席した英利外務大臣政務官は、対人地雷による苦痛及び犠牲を終結させることへの決意を新たにする「シェムリアップ・アンコール・コミットメント」に署名しました。

1 概要

「協力と支援」セッションでステートメントを読み上げる市川大使

(1)参加国等

 締約国のうち89か国・地域(全締約国は164か国・地域)及び13の国際機関の他、地雷禁止国際キャンペーン(International Campaign to Ban Landmines: ICBL)等のNGOも参加しました。また、未締約国のうち、米国、ベトナム、ラオス等12か国がオブザーバー参加しました。

(2)成果文書

 検討会議における議論の結果、オタワ条約を効果的に履行していくための今後5年間の行動指針となる「シェムリアップ・アンコール行動計画」、締約国のコミットメントを謳う政治宣言である「シェムリアップ・アンコール宣言」及び第4回検討会議(2019年)以降の5年間の条約の運用・締結状況等を記録した「履行状況報告書」の3つの成果文書が採択されました。今般採択された「政治宣言」において、全ての締約国含む関係ステークホルダーが「地雷のない世界」に向けて、次回の第6回検討会議に向けて最大限の努力を払っていくこと等を宣言しました。

(3)我が国の対応

  1. 我が国からは英利アルフィヤ外務大臣政務官が首席代表として出席し、25日午前のハイレベル・セグメントでステートメントを行いました。同ステートメントにおいて、日本による地雷分野での貢献(2023年度は20か国・地域で約6,700万ドルの支援実施)を紹介すると共に、全ての締約国に対してオタワ条約への遵守やコミットメントを新たにするよう呼びかけました。また、英利政務官は、我が国として、「人間の安全保障」の理念の下、カンボジアと共に国際社会において、第三国への能力強化支援を始めとする三角協力の推進や普遍化の取組等、オタワ条約に貢献してきたこと等を紹介しました。
  2. 我が国は、今般の検討会議において、「協力・支援強化委員会」委員及び同委員会のジェンダー・フォーカル・ポイントを務めました。「協力と支援」のセッションにおいては、市川軍縮代表部大使がステートメントを行い、2024年7月に日本が発表した「地雷対策支援に関する包括的パッケージ」及び「日カンボジア地雷イニシアティブ」に触れ、リスク回避教育・啓発支援、能力強化支援、新興技術も活用した地雷・不発弾対策、地雷被害者支援等、多様なニーズと段階に応じた包括的な支援を実施していくことを念頭に、今後も国際社会における地雷対策に貢献していく旨述べました。また、今般の会議において市川大使は、各委員会のジェンダー・フォーカル・ポイントを代表し、60か国が参加した「シェムリアップ・アンコール行動計画」後のジェンダー及び多様化に係る共同声明を読み上げました。
会議最終日に第22回締約国会議議長職を引き継いだ市川大使
  1. 我が国は、2025年12月に予定される第22回締約国会議(於ジュネーブ)において議長を務めます。29日、会議の最終日にカンボジアから議長職を引き継いだ市川大使は、議長就任ステートメントを行い、我が国の議長期間中(2024年12月~2025年12月)における優先テーマとして、(1)地雷対策における「国家の主体性」の強化及び「能力構築」支援、(2)新興技術を活用した対人地雷対策の促進、(3)地雷対策におけるWPS(女性・平和・安全保障)との連携、(4)条約普遍化取組の継続、の4分野を掲げることを発表しました。
26日に行われたサイドイベントの様子
  1. 会議開会前日の24日、我が国は、地雷対策支援の取組について国際社会に広報する観点から、日本の支援により建設中の「地雷対策平和博物館」において、カンボジア(カンボジア地雷対策センター:CMAC)との共催イベントを行いました。英利政務官は、ミルアド・ヨルダン王子はじめ各国ハイレベルを含む300名以上が参加した同イベントにおいてスピーチを行い、地雷対策分野での日本政府によるカンボジアへの支援、及びその経験・知見に基づき、両国が国際社会においてウクライナ、コロンビア、アフリカ諸国等に協力して行っている能力強化支援を始めとする「三角協力」、日本企業(コマツ、日建、ALISys、IOS)の技術、日本地雷処理を支援する会(JMAS)による活動等を紹介しました。
     また、26日、我が国は、日本企業(NEC、ALISys、IOS)及びCMACと共催でサイドイベントを行い、地雷対策における人工知能(AI)を使った地雷埋設位置予測システム、地雷探知機、地雷除去ロボットといった我が国の技術を紹介しました。

2 評価

  1. 本年の第5回検討会議期間において、議長国であるカンボジアは、ア 対人地雷の除去に係る第5条履行義務の推進、イ 地雷の被害者支援、ウ 条約の普遍化促進、の3つの優先テーマに基づき、積極的なイニシアティブを発揮し、今般の検討会議を成功に導きました。我が国は、会議期間中、副議長として、「シェムリアップ・アンコール行動計画」のドラフト策定段階から採択に至るまで一貫してカンボジアを支援しました。
  2. 今般の会議で採択された「シェムリアップ・アンコール行動計画」では、日本が重視する「三角協力」を含む能力強化支援の重視や地雷対策におけるWPS(女性・平和・安全保障)の観点も含まれました。今後5年間、全締約国及び関係ステークホルダーは、同行動計画に基づいて条約の履行に係る具体的活動を行っていくこととなります。
  3. 今般の会議において我が国は、ハイレベル・セグメントにおける英利政務官のステートメント、日本の協力・支援に関するスピーチ及び日本の地雷分野における貢献や技術を紹介するサイドイベントの開催を通じて、主要地雷対策支援国としての活動を広くアピールしました。我が国の地雷対策支援については、会合の内外において、複数の裨益国及び国際機関等から高い評価と謝辞が表明されました。
  4. オタワ条約第22回締約国会議議長を務める我が国は、地雷対策分野における取組を継続すると共に、「地雷のない世界」に向けて、関係ステークホルダーと協力を一層進めていきます。

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