核軍縮・不拡散

令和3年9月17日

1 国連における取組(国連軍縮・不拡散教育政府専門家グループ会合)

 2000年にニューヨークで開催された国連軍縮諮問委員会において、現在の核軍縮の停滞を打破するためには、若い世代の教育から精力的に取り組む必要があるとの問題提起がなされた。これを踏まえて、同年に開催された第55回国連総会で、軍縮・不拡散教育の現状を評価し、促進するための研究の準備を行うよう事務局長に要請する決議案が提出され、全会一致で採択された。

 この決議に従い、2001年から軍縮・不拡散教育政府専門家グループ(10名の政府・NGO・研究所の専門家で構成、日本からは天野在米大使館公使(当時)がメンバーとなった。)会合が計4回開催され、2002年8月、「軍縮・不拡散教育に関する報告書」が事務総長に提出された。同報告書では、軍縮・不拡散教育の重要性が訴えられていると共に、各国や国際機関等に対する34の具体的な提言がなされている。

2 我が国独自の取組

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、また、国際的な軍縮・不拡散体制の強化を主要な外交課題と捉える立場から、上記報告書や決議も踏まえて、以下のとおり、軍縮・不拡散教育の推進事業を行ってきている。

(1)NPT運用検討プロセスにおける共同ステートメント実施及び軍縮・不拡散教育に関する作業文書提出

 我が国は、NPT運用検討プロセスにおける軍縮・不拡散教育の取組の必要性、軍縮・不拡散教育を進めるため現実的な方法について締約国に喚起するとともに、軍縮・不拡散教育分野での我が国の存在感を改めて示すことを目的として、軍縮・不拡散教育共同ステートメントを主導してきている。また、同プロセスにおいて、我が国主導の下、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)として、2019年までに計4本の「軍縮・不拡散教育」に関する作業文書を提出してきている。この中で、次世代を担う若い世代の関与やSNS等を活用することの重要性を強調してきている。

(2)非核特使・ユース非核特使

日本政府は、被爆者等が各種国際会議を含む様々な国際的場面で自らの実体験に基づく証言を行う際に、「非核特使」として委嘱する事業を2010年9月に開始した。また、被爆者の高齢化が進む中、被爆の実相を次世代(若者)に継承するため、「ユース非核特使」制度を2013年6月から開始した。更に、国境を越えた継承を促進するため、2016年3月、ユース非核特使のネットワークの国際化を決定し、被爆の実相の継承に努めてきている。

(3)国連軍縮フェローシップ

 1978年の第1回国連軍縮特別総会において、特に開発途上国における軍縮専門家を育成するために、国連軍縮フェローシップ・プログラムを実施することが決定された。これに従い、1979年以来毎年、軍縮に携わる各国の中堅外交官や国防省関係者等がこのフェローシップ・プログラムに参加し、軍縮・不拡散に関係のある国際機関、研究所や関係国を訪問し、見識を深めている。

 我が国との関係では、1982年の第2回国連軍縮特別総会において、鈴木総理大臣(当時)が、このフェローシップ・プログラムの参加者を広島及び長崎に招待する提案を行い、翌1983年以来、毎年25名前後を本邦に招待してきている。フェローシップ・プログラムでの本邦招待は2019年で37回目を迎え、この間、延べ950名を超える各国の外交官等が我が国を訪問した。また、2021年は日本関連プログラムをオンライン形式で開催し、19名が参加した(2020年は新型コロナウィルス感染拡大のためプログラム全体が中止)。参加者は、我が国の軍縮・不拡散政策について説明を受けるとともに、広島・長崎の訪問などを通じて、被爆の実相に触れるなど、唯一の戦争被爆国である我が国の経験にも接してきた。

 現在、世界の軍縮外交の第一線で活躍する各国外交官の中には、本プログラムの出身者も多く、彼らの多くが広島・長崎訪問に非常に感銘を受けたと言っている。このことからも分かるように、フェローシップ・プログラムの参加者を日本へ招待することは、自身の被爆体験に基づいて核兵器の非人道性を広く世界に訴えるとともに、軍縮・不拡散分野における我が国の取組を世界にアピールしていく上で、非常に有意義である。


核軍縮・不拡散へ戻る