核軍縮・不拡散

令和4年9月15日

1 概要

【日程・出席者】

(日程)
8月1日から26日まで、米国ニューヨークの国連本部において開催された。
(出席者)
岸田総理大臣、武井外務副大臣、小笠原軍縮会議代表部大使、小澤外務省参与、引原在ウィーン国際機関代表部大使、山田外務審議官、海部軍縮不拡散・科学部長他が出席。

【会議を巡る状況と事前の見通し】

 (1)従来からの核軍縮をめぐる深い分断に加え、(2)ロシアによるウクライナ侵略などで厳しい状況の中での開催となった。このため、最終的なコンセンサスでの単一の包括的文書採択は非常に厳しいとの見通しであった。

【我が国の対応・結果】

  • (1)我が国は、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石である核兵器不拡散条約(NPT:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)を重視し、NPT体制を維持・強化する観点から各国の建設的な対応を繰り返し呼びかけつつ、協議・交渉にあたった。
  • (2)会議では、岸田総理が提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」をはじめ我が国の提案や考えに多くの国からの支持・評価が得られ、最終成果文書案の中に多く盛り込まれた。
  • (3)しかしながら、最終的にウクライナをめぐる問題を理由にロシアが反対し、成果文書のコンセンサス採択には至らなかった。

2 会議の流れ

第1週:
 各国の一般討論演説により、会議全体のトーンセッティングが行われた。
 岸田総理が日本の総理として初めてNPT運用検討会議に出席して演説を行い、「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表。また、岸田総理から以下について発表。
  • (1)本年9月の国連総会の際の包括的核実験禁止条約(CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)フレンズ会合の首脳級での開催
  • (2)国連への1,000万ドルの拠出を通じた「ユース非核リーダー基金」の立ち上げ
  • (3)「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」第1回会合を11月23日に広島で開催することを発表。
第2週:
 3つの「柱」(核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用)ごとの協議体(主要委員会、補助機関)に分かれて議論が行われた。第2週末に成果文書案が提示された。
第3週:
 第3週は以下3の争点を中心に文言交渉。しかし、多くの争点を残したまま第3週の議論を終了。状況を打開すべく、週末から、非公式の少数国会合を開催。
第4週(最終週):
【月曜日から水曜日】
非公式会合や関係国間の協議が断続的に行われ、対立点についての重点的な議論を実施。
【木曜日】
残る対立点を巡る関係国の立場を踏まえ、議長より、最終成果文書案を提示。
【金曜日(最終日)】
午後3時の最後の公式本会議の直前に、ロシア代表団が最終成果文書案には合意できないと表明し、最終的にコンセンサスは成立せず(同文書は議長による作業文書として会議に提出された)。
また、次回の運用検討会議の時期(2026年)やそれに向けた会議プロセス、さらに、運用検討プロセス強化に向けた作業部会の設置も合意された。

3 今次会議での主な争点

第1の柱(核軍縮)

  • 核軍縮交渉義務
  • 軍縮の安全保障環境への条件付け
  • 同盟国の責務
  • 消極的安全保証
    NSA:Negative Security Assurance
  • 先行不使用(NFU: No First Use
  • 兵器級核分裂性物質の生産モラトリアム
  • 透明性の向上・報告事項の精緻化
  • 核兵器禁止条約
  • 軍縮・不拡散教育

第2の柱(不拡散)

  • イラン
  • 北朝鮮
  • 中東非大量破壊兵器地帯
  • AUKUS
  • ザポリッジャ原発への保障措置活動

第3の柱(原子力の平和利用)

  • 原子力安全
    (含ザポリッジャ原発の安全性)

分野横断的な案件:

 ジェンダー

4 とりあえずの評価

【会議結果】

  • 最終的にはロシアのみによる反対によってコンセンサスは成立しなかったものの、その争点となったのはロシアによるウクライナ侵略に関連する記述(ザポリッジャ原発やブダペスト覚書等)とされており、今次会議において成果文書のコンセンサス採択に至らなかった原因はNPT自体の問題ではない
  • 今次会議の最終成果文書案は議長による作業文書として登録された。
  • 次期運用検討会議の開催時期や、運用プロセス強化に関する作業部会の設置が決まる等、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石としてのNPTを維持・強化していくことの重要性が各国の間で強く認識されたことは有意義。
    (会議閉会セッションでは、多くの国は、スラウビネン(H.E. Ambassador Gustavo Zlauvinen)議長の取りまとめの努力に対する謝意と高い評価を述べ、また、閉会の瞬間には、会場に大きな拍手が起こった。)

【我が国の取組・貢献】

  • 我が国の貢献の観点からは、岸田総理の「ヒロシマ・アクション・プラン」をはじめ、軍縮・不拡散教育共同ステートメントが過去最高の88か国・地域の賛同を得るなど、我が国の考え・提案について、多くの国から支持・理解が得られた。
  • 実際に、最終成果文書案にもその多くが反映される結果となり、日本としての貢献もしっかりと示すことができた

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