軍縮・不拡散・原子力の平和的利用

令和3年4月16日

1 原子力安全に関する国際的な枠組み

  • (1)原子力安全とは,原子力発電所などの原子力利用に当たって,原子力事故による放射線の悪影響から人,社会及び環境が防護されていることを指します。
  • (2)これまで,IAEAの下で国際的な原子力安全を確保するための枠組みが整備されてきました。
  • (3)IAEAは,健康を守るため及び生命や財産に対する危険を最小限に抑えるために原子力安全に関する基準(安全基準)を策定又は採択する権限が与えられており,各種の国際的な安全基準の作成及び普及に貢献しています。
  • (4)この安全基準に基づき,総合規制評価サービス(IRRS)ミッション(注1),運転安全評価チーム(OSART)ミッション(注2)等各国の原子力安全を確認するための各種調査を加盟国の要請により実施しています。
  • (5)毎年9月にウィーンで開催されるIAEA総会では,原子力安全に関する文書(原子力安全決議)を採択しています。
  • (6)また,IAEA事務局長は,「原子力事故の早期通報に関する条約(1986年発効)」,「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約(1987年発効)」,「原子力の安全に関する条約(1996年発効)」,及び「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約(2001年発効)」の寄託者となっており,IAEAがこれら条約の締約国会合の事務局を務めています。
  • (7)このように,IAEAは継続的に原子力安全に関する取組を行っています。

(注1)規制の枠組みや原子力,放射線,放射性廃棄物等に係る安全も含む幅広い課題についての総合的な調査。

(注2)原子力発電所運営上の安全性について評価するための調査。

2 我が国の取組

  • (1)東電福島第一原発事故後,我が国は各国,IAEAを始めとする国際機関から協力を得ながら,国際社会に開かれた形で廃止措置等を進めてきました。具体的には,IAEAとの協力の下,以下の取組を行っています。
  • 包括的情報提供レポート(英語)
    2013年より,IAEAは,日本政府から提供された福島第一原発事故対応に関する包括的な情報を記載したレポートについて,IAEAによる評価とともにIAEAのホームページに掲載(約3~4か月毎に更新)。
  • 海洋モニタリングにおける協力
    福島第一原発の汚染水対策の一環として,我が国が行う海洋の放射線モニタリングの透明性及び信頼性を維持・向上するため,2014年以来,IAEAと協力を進めています。
  • 福島県とIAEAの協力プロジェクト別ウィンドウで開く
    2013年より,福島県が取組を進める除染,廃棄物処理,放射線モニタリングの分野について,IAEAが専門的な視点から助言を行う協力が行われています。
  • IAEAミッションの受け入れ
    東電福島第一原発の廃炉及び除染活動の進捗に関し,IAEAからレビューを受けました。
  • 東電福島第一原発事故後の環境回復に関するIAEAとの専門家会合
    東電福島第一原発事故によって影響を受けた発電所外の地域の環境回復活動の進捗,成果及び今後の取組などについて,IAEAの専門家と議論をしています。
  • (2)また,東電福島第一原発事故の経験と教訓を国際社会と共有し,国際的な原子力安全の強化に貢献することは我が国の責務であるとの観点から,以下のとおり取り組んでいます。
  • IAEA行動計画(PDF)別ウィンドウで開く
    2011年6月,原子力安全に関する行動計画の策定を要請する閣僚宣言がIAEA閣僚会合にて採択されました。これを受け,我が国が提案したIAEA安全評価ミッションの拡充等を含む自然災害に対する原発の設計の国内評価の実施,緊急事態への準備・対応等の12項目で構成されたIAEA行動計画案が同年9月にIAEA理事会により承認され,総会で採択されました。本計画の各国における実施について積極的な支援を行いました。
  • 福島閣僚会議
    2012年,我が国とIAEAが原子力安全に関する福島閣僚会議を共催しました。我が国から事故への対応の進捗を説明し,教訓を国際社会に発信するとともに,IAEA行動計画の進展について議論が行われました。
  • 東電福島第一原発事故IAEA事務局長報告への寄与
    2015年9月,IAEAは東電福島第一原発事故に関し,事故の詳細と背景,安全性評価,緊急事態への準備・対応,放射線による影響及び事故後の復旧について,概要及び教訓を記載した報告書を公表しました。本報告書の作成に際し,我が国は,技術面及び事実関係を伝える観点から,専門家の派遣や事故関連の情報提供を通じて協力を行いました。
  • CBC
    2013年5月,IAEAが,福島県に原子力事故対応等のための研修センター(CBC:Capacity Building Centre)を指定,福島県及び外務省は運営・研修の開催等を支援しています。2013年5月以降,放射線モニタリング,リスクコミュニケーション等をテーマに,原子力事故対応等に関わる国内外政府関係者約400名に向けて,合計19回の研修が開催されました。
  • その他の取組
    上記の取組の他,我が国は,関連の国際会議に主体的かつ積極的に参加し事故の経験と教訓について国際的な情報発信を行うとともに,TCF,PUIといったIAEAの枠組みを通じ国際的な原子力安全を強化するための協力を行っています。
  • (3)東電福島第一原発の廃炉・汚染水対策の現状を適時適切に国際社会に発信する一環として,様々な国際会議で現状に関する情報提供を行ってきており,原則月一回の外交団通報に加えて,経済産業省及び東京電力とも協力して在京外交団等説明会を行ってきています。これらの機会に,東電福島第一原発の廃炉に向けた日本政府の取組み全般,汚染水の発生状況,多核種除去設備(ALPS)等を使って,トリチウム以外について規制基準以下まで浄化され,希釈された水(ALPS処理水)の取扱いに関する検討,これまでの我が国とIAEAとの緊密な連携などについて,説明を行ってきました。
  • (4)4月13日に公表された東電福島第一原発におけるALPS処理水の処分に関する基本方針に関する英文広報資料及び関連情報は,以下を参照下さい。
  • 英文広報資料(英文(PDF)別ウィンドウで開く
  • ALPS処理水の取扱い(METI/経済産業省ウェブサイト)別ウィンドウで開く
  • 我が国としては,引き続き,国際社会に対して,科学的根拠に基づいた正確な情報を提供していきます。
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