軍縮・不拡散・原子力の平和的利用

技術協力・原子力科学技術応用

平成30年8月2日

1 IAEAの取組

(1)平和と開発のための原子力

 天野IAEA事務局長は,「平和のための原子力(Atoms for Peace)」に「開発」加え,「平和と開発のための原子力(Atoms for Peace and Development)」をIAEAの新たなスローガンとして掲げています。そのスローガンの下,IAEAは,原子力の平和的利用の促進のため,原子力発電・安全分野に加え,保健・医療,食糧・農業,環境,産業等の非発電分野において専門家派遣,機材供与,研修の開催等,技術協力活動に積極的に取り組んでいます。また,IAEAは,この活動を通じて,加盟国の持続可能な開発目標(SDGs)達成支援を重視しています。

(2)SDGsに関するIAEAの取組

 IAEAは,SDGsの17の目標のうち以下9分野(目標2,3,6,7,9,13,14,15,17)に貢献していくとしています。

目標2(飢餓)

 IAEAは,FAOと連携し,原子力技術を活用した畜産動物のウィルス感染や農作物の害虫被害の防止,生産性や災害耐久性の高い農作物の品種改良などによって,加盟国の食糧安全保障や農業の改善に取り組んでいます。

プロジェクト例

  • サブサハラ地域のアフリカ諸国における家畜診断ラボ能力の向上
  • 東南アジア全域のミバエ管理プログラムへの不妊虫放飼技術の統合

目標3(保健)

 IAEAは,核医学,放射線腫瘍学関連施設の設立支援及び教育機会の提供によってがんを含む非感染症の診断及び治療能力の向上に貢献しているほか,エボラ出血熱などの人畜共通感染症の早期発見や乳幼児の栄養失調のための対策にも原子力科学技術を活用して取り組んでいます。

プロジェクト例

  • 中南米地域における放射線医療に対する包括的なアプローチのための人材能力構築支援
  • アフリカ地域におけるエボラ出血熱を含む緊急あるいは再発可能性のある人畜共通感染症診断の能力強化

目標6(水・衛生)

 IAEAは,同位体分析技術を用いて水資源の質や年代を解明することで,加盟国の持続可能な水資源の活用や水に関わる生態系の保護に取り組んでいます。

プロジェクト例

  • サヘル地域の共有帯水層システム及び流域の総合的及び持続可能な管理

目標7(エネルギー)

IAEAは,世界中の既存及び新規の原子力発電プログラムの効率的で安全な活用を促進しています。

プロジェクト例

  • 原子力発電計画を採用する国に対する管理システム開発及び原子力安全文化の向上支援

目標9(インフラ,産業化,イノベーション)

IAEAは,原子力科学技術を活用した安全及び品質テストのための非破壊検査や,放射線技術を用いた車のタイヤ,パイプライン,医療機器など様々な産業品の耐久性向上などを通じて,加盟国の産業競争力の増強に貢献しています。

プロジェクト例

  • アジア太平洋地域に対する社会インフラの自然災害対策能力強化支援

目標13(気候変動)

 IAEAは,気候変動について原子力発電が果たす役割の認識向上,特に加盟国の温暖化ガス排出削減に果たす役割の適切な認識向上に取り組んでいます。また,原子力技術は,洪水被害対策の改善,新たな灌漑技術の発展,生産性が高く病気に強い農作物の生成などを通じて,加盟国の気候変動の影響への適応に重要な役割を果たしています。

プロジェクト例

  • アジア地域における洪水リスク軽減及び洪水後の復興活動のための原子力技術の従来型アプローチへの補完的活用

目標14(海洋資源)

 IAEAは,原子力及び同位体技術を用いて得た情報や分析結果によって,加盟国が海洋酸性化や有害藻類ブルームなど,海洋健全度及び海洋現象の理解を深め監視することを支援しています。

プロジェクト例

  • 核技術及び同位体技術を用いたカリブ海の海洋酸化のための監視ネットワーク設立

目標15(陸上資源)

 IAEAは,同位体技術を用いた土壌浸食に関する正確な分析を加盟国に提供し,土地の砂漠化・土壌劣化対策に取り組んでいます。このような土壌に関する分析情報は,土地保全手法の改善や資源,生態系,生物多様性保護の改善にも貢献しています。

プロジェクト例

  • 革新的な放射性同位体及び安定同位体を活用した地形での土壌,水保全戦略の強化

目標17(実施手段)

 IAEAは,加盟国,国連機関,その他国際機関及び市民社会団体などと緊密に連携し,IAEAによる支援効果の最大化に取り組んでいます。

(2)IAEA技術協力国際会議

 2017年5月30日から6月1日にかけて,IAEAによる60年間の技術協力の成果を総括するため,IAEAの主催により,技術協力国際会議が開催されました。政府関係者,国際機関関係者等,約1,100名が参加し,今後の技術協力のあり方,SDGsへの貢献,IAEAによるアウトリーチ等について議論が行われました。外務省からは中根猛科学技術協力担当大使,JICAからは金井要技術審議役,大阪大学からは畑澤順教授が出席し,IAEAとの協力についてパネルディスカッションを行いました。

2 日本の取組

(1)財政的支援

技術協力基金(TCF)拠出金

 技術協力基金(Technical Cooperation Fund)は,IAEAによる技術協力活動の主要な財源です。TCFは,IAEA総会にて決定する分担率に基づき,各国の分担額が設定されています。2017年の日本の分担率は9.314%で,日本は米国(25%)に次ぐ第2位の拠出国です。

平和的利用イニシアティブ(PUI)拠出金

 平和的利用イニシアティブ(Peaceful Uses Initiative)は,原子力の平和的利用分野におけるIAEAの活動を促進するための任意拠出メカニズムです。2010年のNPT運用検討会議において,米国の提案により設立されました。現在の拠出国は24か国及び欧州委員会で,累計拠出額は1.2億ユーロに上ります。日本はこれまで,PUIに,約3,400万ドルを拠出しており,米国に次ぐ第2位の拠出国です。原子力の平和的利用の促進は,核軍縮・不拡散と並んでNPT体制の3本柱の1つであり,原子力を活用した開発協力が新たなフロンティアとして途上国から大きく期待される中,PUIを通じた途上国支援により,NPT体制を下支えしています。

(2)技術的支援

 日本は,技術的強みを活かし,より多くの人がより安全に原子力の平和的利用のメリットを享受できるよう,IAEAの様々な枠組みを通じ,技術及び知見の移転に取り組んでいます。

RCARegional Cooperative Agreement

 RCAは,アジア大洋州地域における協力協定です。IAEA及び日本を含む22の締約国の相互協力により,医療,食糧・農業,工業,環境等の分野において,原子力科学技術に関する共同の研究,開発及び訓練を推進しています。

研修員受入れ

 原子力人材育成ネットワークを通じ,国内研究機関及び企業において,IAEA研修生の受入を実施しています。

実施取決めに基づく貢献

 地方自治体,大学等の研究機関さらには企業が,独自にIAEAと実施取決め(Practical Agreement)を結び,IAEAとの協力の下,調査研究,情報交換,人材育成などの活動を実施しています。

IAEA協働センター

 IAEA協働センターは,IAEAにより認定を受けた,原子力関連技術の研究,開発及び研修等を通じ,IAEAの活動を支援する施設です。現在,日本は2つの機関が認定を受けており,研修の共催,専門家の派遣等を実施しています。

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