核軍縮・不拡散
国際原子力機関(IAEA)原子力科学技術・応用・技術協力閣僚会議(結果)
令和6年12月9日
11月26日から28日にかけて、オーストリア・ウィーンにおいて、国際原子力機関(IAEA)原子力科学技術・応用・技術協力閣僚会議が開催されたところ、概要と評価は以下のとおり。
1 概要
- (1)本閣僚会議は、保健、食料安全保障、気候変動、水資源管理等の分野における原子力科学技術の活用や、これらの分野におけるIAEAの技術協力活動について議論を行うことを目的に開催された。日本がコスタリカとともに共同議長を務めた2018年の原子力科学技術閣僚会議に引き続き、この分野で2回目の閣僚会議であり、フィンランド及びガーナが共同議長を務めた。143か国から1,400名以上が参加し、50か国から閣僚・政務レベルが参加するなど、改めて原子力科学技術に対するIAEA加盟国の関心の高さが示された。
- (2)会議初日の冒頭、閣僚宣言が採択された。また、会議初日から翌27日にかけての閣僚セグメントでは、各国による演説が行われ、我が国からは、宮路拓馬外務副大臣が日本政府を代表して演説を行い、原子力科学技術に関する日本の取組みについて発表するとともに、今回の閣僚会議が原子力科学技術の平和的利用の促進にさらなる弾みをつけることを期待する旨述べた。また、宮路副大臣は、グロッシーIAEA事務局長、アフリエ・ガーナ気候変動担当大統領特使(共同議長)、ミュッカネン・フィンランド気候環境大臣(共同議長)、パレデス・ホンジュラス保健大臣と、それぞれバイ会談を行った。
- (3)27日から会議最終日の28日にかけての専門家セッションでは、保健、食料安全保障、科学における女性の役割、気候変動、水資源管理、技術協力に関して、それぞれパネルディスカッションが行われた。保健のセッションのうち、がん対策に関するIAEAの旗艦イニシアティブである「Rays of Hope」に関するパネルに、田巻倫明福島県立医科大学教授が登壇し、プレゼンテーションを行った。
- (4)加盟国による展示ブースの出展やサイドイベントの開催も活発に行われた。26日にIAEA主催で開催されたIAEAサイバースドルフ研究所非破壊検査サービスセンター竣工式には、宮路副大臣が出席し、日本政府を代表して挨拶を行ったほか、日本非破壊検査協会から坂上隆英・同協会前会長(理事)が出席し、同協会による長年にわたるIAEAとの協力の歴史について発表した。
- (5)27日には、日本政府主催で放射線治療の品質基準の向上に関するサイドイベントを開催し、医療現場における放射線の安全かつ効果的な使用を促進する上での線量測定の重要性や、IAEAの線量測定研究所における日本企業の線量計の活用を含めた日本の貢献について紹介した。海部篤在ウィーン国際機関日本政府代表部大使が冒頭挨拶を行ったほか、加藤昌弘産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ)放射線標準研究グループ長及び小口靖弘・千代田テクノル大洗研究所長も登壇し、それぞれプレゼンテーションを行った。
- (6)また、日本を含む「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」の加盟国が共同で展示ブースを出展したほか、海洋プラスチック問題への対処に関するIAEAの旗艦イニシアティブである「NUTEC Plastics」に関するフィリピン主催のサイドイベントに、谷内一智在ウィーン国際機関日本政府代表部公使が主要貢献国として招待され、スピーチを行うなどした。
2 評価
- (1)前回会議から6年が経過し、国際情勢の変動や地球規模での感染症の拡大、気候変動を含む環境問題の一層の深刻化等を背景に、原子力科学技術の活用への関心が一層高まる中、IAEA加盟国のハイレベルが一堂に会し、閣僚宣言を採択することで原子力科学技術の平和的利用の促進に関する重要性について共通認識を示すことが出来たことは、重要な成果となった。
- (2)我が国は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を含む地球規模の課題の解決に貢献する原子力科学技術を重視しており、宮路副大臣の演説において同分野における日本の取組みについて発表し、各国に日本の貢献を改めて印象づけることができた。加えて、専門家セッションに日本人専門家が登壇したことや、日本政府主催のものも含め、展示ブースの出展やサイドイベントの開催を積極的に行い、これに日本の研究機関や民間団体も出席したことにより、我が国が、財政面だけでなく、人的・技術的な貢献も行っていることを強く印象づけることができた。
- (3)このように、我が国は、政府、研究機関、民間団体等の様々なレベルで会議の成功に貢献し、原子力科学技術分野におけるオール・ジャパンでの取組みを強力にアピールできた。