軍縮・不拡散・原子力の平和的利用

原子力の平和的利用 総論

平成30年8月2日

1 総論

(1)原子力の平和的利用の国際的な位置づけ

  • ア 第二次世界大戦後,原子力の商業的利用に対する関心の増大とともに,核兵器の拡散に対する懸念が強まり,原子力は国際的に管理すべきであるとの考えが広まりました。
  • イ 1953年の国連総会における米国のアイゼンハワー大統領による演説(「Atoms for Peace」演説)を契機として,1957年,国際原子力機関(IAEA)が設立され,IAEA憲章第2条において,全世界における平和,保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進・増大することがIAEAの目的の一つと定められました。
  • ウ 1968年には核兵器不拡散条約(NPT:Treaty of the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)が署名・開放され,同条約において核軍縮・不拡散と並び,原子力の平和的利用は3本柱の一つとされ,不拡散の義務に従って,平和目的のために原子力の研究,生産及び利用を発展させることは「奪い得ない権利」であると定められました。
  • エ このように,1950年代後半以降,原子力の平和的利用は確実な進展をみせています。
  • オ 原子力発電分野に関しては,近年,国際的なエネルギー需要の拡大や地球温暖化問題への対処の必要性等から,原子力発電の拡充及び新規導入を計画する国が増加しており,東京電力福島第一原子力発電所の事故後も,原子力発電は国際社会において重要なエネルギー源となっています。
  • カ 原子力技術は,発電分野に加え,保健・医療,食糧・農業,環境・水資源管理,工業適用など非発電分野においても各国の経済・社会の発展にとって不可欠な技術となっています。その利用形態は大きく分ければ,放射線照射と同位体分析です。
  • キ 放射線照射は,レントゲン撮影やがんの放射線治療をはじめ,伝染病や農業被害をもたらす病害虫を防除する不妊虫放飼法や,半導体,タイヤの製造などにも活用されています。また,同位体分析は,水の循環,土壌の組成,人の栄養素の摂取状況などの調査に活用されています。
  • ク 天野IAEA事務局長は,アイゼンハワー大統領が提唱した「平和のための原子力(Atoms for Peace)」に「開発(Development)」を加えた「平和と開発のための原子力(Atoms for Peace and Development)」をIAEAの新たなスローガンとして掲げ,同スローガンの下,IAEAは,原子力技術を活用して,開発課題に取り組み,原子力の平和的利用の促進に貢献しています。また,IAEAは,この活動を通じて,加盟国の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成支援にも取り組んでいます。

(2)日本の取組

ア 3Sの確保

 原子力発電に利用される技術や機材,核物質は軍事転用が可能であることや,一国の事故が周辺諸国にも大きな影響を与え得ることから,原子力の平和的利用に当たっては,(ア)核不拡散(IAEAの保障措置)(Safeguards),(イ)原子力安全(原子力事故の防止に向けた安全性の確保等)(Safety),(ウ)核セキュリティ(核テロリズムの危険への対応等)(Security)の「3S」の確保が重要であるとの考えの下,日本はこれまで,二国間,多数国間の枠組みを通じて,「3S」確保の重要性を国際社会の共通認識とするための外交を展開しています。

イ 福島第一原発事故を踏まえた原子力安全強化に向けた取組

  • 福島第一原発事故後,日本は各国,IAEAを始めとする国際機関から協力を得ながら,国際社会に開かれた形で廃止措置等を進めています。
  • 福島第一原発事故の状況に関する国際的な情報発信,関連する国際会議への参加及び各国での原子力安全向上のための施策の支援等,日本は,事故の経験と教訓を国際社会と共有し,国際的な原子力安全の向上に貢献しています。

ウ 原子力の平和的利用の促進

  • 日本は,NPT体制の3本柱の1つである「原子力の平和的利用」の促進を重視しており,この一環として,IAEAによる開発協力や研究活動を人的・財政的に支援し,IAEA加盟国における原子力の平和的利用の促進に貢献しています。
  • IAEAの活動は,グローバルな開発課題の解決にも繋がるもので,日本が重視するSDGs達成にも貢献するものです。このため,日本がこのようなIAEAの活動を支援することは日本にとっても重要な政策となっています。

エ 二国間原子力協定

  • 二国間原子力協定は,原子力の平和的利用の促進と核不拡散の観点から,原子炉のような主要な原子力関連資機材等を移転するに当たり,移転先の国からこれらの平和的利用等に関する法的な保証を取り付けるために締結するものです。
  • また,日本は,「3S」を重視する観点から,最近の原子力協定においては,原子力安全面に関する規定も設けており,原子力安全に関する国際条約の遵守について,相互に確認するとともに,同協定下での原子力安全分野の協力を促進することとしています。
  • ・日本の原子力技術に対する期待は,福島第一原発事故後も引き続き諸外国から表明されており,二国間の原子力協力においても,福島第一原発事故に関する経験と教訓を世界と共有し,相手国の原子力安全の向上に協力していくことが求められています。また,相手国の事情や意向を踏まえつつ,世界最高水準の安全性を有する原子力関連資機材・技術を提供していくことも可能です。原子力協定の枠組みを整備するかどうかについては,核不拡散の観点,相手国の原子力政策,相手国の日本への信頼と期待,二国間関係等を総合的に勘案し,個別具体的に検討していくこととなります。
  • 日本は,これまでにカナダ,オーストラリア,中国,米国,フランス,英国,欧州原子力共同体(EURATOM),カザフスタン,韓国,ベトナム,ヨルダン,ロシア,トルコ,アラブ首長国連邦及びインドとの間で原子力協定を締結しています。
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