通常兵器の軍縮及び過剰な蓄積禁止に関する我が国の取組
自律型致死兵器システム(LAWS)について
令和6年6月24日
自律型致死兵器システム(LAWS: Lethal Autonomous Weapons Systems)とは
LAWSの定義については、国際社会で議論が行われており、まだ定まっていませんが、我が国は、「一度起動すれば、操作者の更なる介入なしに標的を識別し、選択し、殺傷力を持って交戦することができる」という特徴を備えている兵器システムが、現在行われているLAWS議論の主な対象となるものと考えています。
経緯
- 議論のきっかけ
2013年、国際NGOが「殺人ロボット阻止キャンペーン」を開始しました。また、国連人権理事会のヘインズ特別報告において「自律型致死性ロボット」に対する国際社会の対処の必要性が指摘されました。 - 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)
2014年から2016年にかけて、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みにおいてLAWSに関する非公式会合が開催されました。
2017年からはCCWの枠組みにおいてLAWSに関する政府専門家会合(GGE)が開催されました。
2019年11月、CCW締約国は、2020年と2021年の2年間にわたってGGEを開催すること、また、11項目から成るLAWSに関する指針(英文)(PDF)について一致しました。そして、同指針を含む議論を、規範・運用の枠組みの明確化・検討・発展に関する勧告のための基礎として活用していくこととなりました。また、2023年には、国際人道法の遵守の観点からの禁止・制限の考え方等について記載したLAWS・GGE報告書を採択しました。そうした過去の成果を踏まえつつ、引き続き、CCWの枠組みの下、LAWSに関し、その定義・特徴、人間の関与の在り方、国際人道法上の課題、規制の在り方等について議論が行われています。 - 国連総会
2023年12月、オーストリアが、LAWSに関する報告書の作成を国連事務総長に求める決議案を国連総会に提出しました。同決議は、賛成152、反対4、棄権11で採択されました(A/RES/78/241)。
CCWの議論における主要論点
- LAWSの特徴・定義
LAWSの定義及びその特徴の特定。 - 国際人道法の適用
国際人道法の遵守を確保するに当たって必要な具体的課題及びその手段の検討、国際人道法以外の国際法等への考慮の在り方。 - 人間の関与
人間の関与を及ぼす対象・方法・タイミング等。 - 責任・説明責任
人間の責任・説明責任の確保・明確化の方法等。 - リスク軽減・信頼醸成
意図しない結果に係るリスクの防止の検討等。 - 規制の在り方
LAWSの規範及び運用の枠組みとして取り得る選択肢の検討並びにその成果物((1)法的拘束力のある文書、(2)政治文書、(3)行動規範・成果文書等)の在り方。
我が国の対応
- 2019年3月、我が国はCCWに対して作業文書を提出しました。この作業文書は、LAWS・GGEにおいて、人道と安全保障の観点も勘案したバランスの取れた議論を行い、国際社会が将来目指すべき取組の方向性を示すことに貢献すべく提出したものであり、重要な論点である(1)LAWSの定義、(2)致死性、(3)有意な人間の関与、(4)ルールの対象範囲、(5)国際法や倫理との関係、(6)信頼醸成措置についての我が国の考え方を記述しました。
- 2023年3月、LAWS・GGE議論に貢献するため、国際人道法遵守の観点から兵器システムの禁止制限の考え方を記載した作業文書「国際人道法を基礎とした禁止と制限の方法にかかる自律型兵器システムに関する条項案(Draft articles on autonomous weapon systems – prohibitions and other regulatory measures on the basis of international humanitarian law)」を米英加豪韓と共に提出しました。
- 2024年5月、LAWSに関する国連総会決議(A/RES/78/241)に基づき、国連からLAWSに関する意見を提出するよう要請がなされたことを踏まえ、我が国の見解をまとめた作業文書(概要(和文)(PDF)/全文(英文)(PDF))を提出しました。同作業文書において我が国は、国連事務総長報告書の作成及びCCWの下で行われているLAWS・GGEでの議論に資することを目的に、新興技術の軍事利用及び今後のLAWSに関する議論の在り方に係る我が国の基本的な考え方に加え、主要論点である(1)LAWSの特徴、(2)国際人道法の適用(禁止と制限に係る考え方)、(3)人間の関与の在り方、(4)責任・説明責任、(5)リスク評価と緩和措置、(6)法的審査についての見解を述べています。
我が国の基本的な立場
- 我が国は、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性兵器の開発を行う意図はなく、また、当然のことながら国際法や国内法により使用が認められない装備品の研究開発を行うことはありません。
- 新興技術の軍事利用については、そのリスクとメリットを十分理解し、人道的考慮と安全保障上の観点を踏まえながら、包括的な検討を行う必要があります。包括的検討に当たり、我が国は、新興技術の軍事利用は、人間中心の原則を維持し、信頼性、予見可能性を確保し、責任ある形で行われることを重視しています。また、国際人道法(IHL)の義務はLAWSを含む全ての兵器システムに適用されるものであり、IHLを遵守する形で使用できない兵器システムは使用してはならず、それ以外の兵器システムについても、IHLの遵守を確保するために必要な制限を行うとの考え方を支持しています。
- 一方で、人間の関与が確保された自律性を有する兵器システムは、ヒューマンエラーの減少、省力化・省人化といった安全保障上の意義を有するとの考えです。
- 新興技術の更なる発展を見据え、IHL等の国際法との関係を整理しつつ、LAWSに係る規範・運用の枠組みの明確化に向けて取り組むことは重要です。今後も、我が国は、LAWSに係る国際的なルール作りを通じて国際社会の安定に貢献すべく、主要国を含め、広く国際社会において共通の認識が得られるよう、国際的なルール作りに積極的かつ建設的に参加していく考えです。