外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

2 東部アフリカ地域

(1)エチオピア

東アフリカ最大の人口(1億人強)を有するエチオピアには、AU本部が置かれているほか、国連アフリカ経済委員会(UNECA7)の本部が所在しており、アフリカ大陸において重要な役割を果たしている。経済面では堅調な成長が続いており、2025年までの中所得国入りを目指している。10月、20年間対立が続いていた隣国エリトリアとの外交関係の再開など、域内の平和への貢献が評価され、アビィ首相へのノーベル平和賞授賞が発表された。

5月に河野外務大臣がエチオピアを訪問し、アビィ首相マルコス外務国務相と会談を行った。また、8月のTICAD7参加のためアビィ首相がゲドゥ外相とともに訪日し、10月の即位礼正殿の儀参列のためムラトゥ前大統領が訪日し、安倍総理大臣とそれぞれ会談を行った。さらに、11月、ジンマ-チダ間の道路整備のための円借款に関する書簡の交換(供与額約97億円)に関する署名が行われた。

日・エチオピア首脳会談(8月29日、横浜 写真提供:内閣広報室)
日・エチオピア首脳会談(8月29日、横浜 写真提供:内閣広報室)

(2)エリトリア

エリトリアでは、1993年にエチオピアからの独立後、1998年から2000年にかけて同国との間で国境紛争が勃発し、その後も対立関係が続いていたが、2018年7月に20年ぶりに外交関係が再開された。また、2009年以来国連安全保障理事会から科されていた制裁の解除のための決議が、同年11月に全会一致で採択された。

2019年3月にオスマン外相が外務省賓客として訪日し、河野外務大臣と外相会談を行った。8月のTICAD7参加のためオスマン外相が再度訪日し、河野外務大臣と会談を行った。

(3)ケニア

ケニアは、東アフリカ最大の港湾であるモンバサ港を擁し、東・中央アフリカの玄関口として地域経済の中心を担っている。また、ソマリア、南スーダンなどの平和構築にも尽力するなど、東アフリカの安定勢力として地域の平和と安定のために貢献している。内政面では、ケニヤッタ大統領は、2017年に今後の5年間の重点経済政策として①製造業、②食料、③保健、④住宅の4つの分野から成る「BIG4」を打ち出し、新たな国造りの取組を行っている。

8月のTICAD7参加のためケニヤッタ大統領のほか、ジュマ外務長官を始めとする重要閣僚が多数訪日し、安倍総理大臣や河野外務大臣と会談を行った。

(4)ジブチ

ジブチは、インド洋を挟んでヨーロッパとアジア諸国を結ぶ世界貿易の大動脈に面し、地域の物流ハブ(拠点)を目指している。また、国際安全保障上の拠点であり、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現する上でも重要な国である。

2011年から同国は海賊対処行動のための自衛隊の拠点を受け入れており、二国間関係は非常に良好である。2019年8月のTICAD7参加のため、ゲレ大統領及びユスフ外務・国際協力相ほかが訪日し、同大統領は安倍総理大臣と会談を行った。また、10月の即位礼正殿の儀参列のためアブドゥルカデル首相が訪日し、木原稔総理大臣補佐官や河野防衛大臣と会談を行った。12月には、木原総理大臣補佐官と河野防衛大臣がそれぞれジブチを訪問し、要人往来が活発な1年となった。

日・ジブチ首脳会談(8月29日、横浜 写真提供:内閣広報室)
日・ジブチ首脳会談
(8月29日、横浜 写真提供:内閣広報室)

9月には無償資金協力「タジュラ湾海上輸送能力強化計画」(供与限度額約41億円)に関する書簡の交換が行われるとともに、11月の豪雨・洪水被害に際し、海賊対処行動のため派遣されている自衛隊部隊の一部をもって、小学校の排水・清掃作業や日本が供与した緊急援助物資の移送などの国際緊急援助活動を実施した。

(5)スーダン

スーダンは、サブサハラアフリカ第2位の国土面積を持つ大国であり、原油、鉱物資源、ナイル川からの水資源や肥沃(ひよく)な耕地に恵まれている。4月、30年間続いたバシール政権が崩壊し、一時的に国内の治安情勢が悪化したが、8月には国軍と国民パワー・シェアリング(権力分有)に基づく新暫定政府が発足し、3年間の暫定期間の後に民主選挙を実施して新政府を樹立することが合意された。新暫定政府は、内戦の終結と経済再生を優先課題に掲げており、国際社会と連携・協力しながら、国造りを進めることを目指している。

TICAD7の際に開催された「アフリカの角及び周辺地域の平和と安定特別会合」にイルハーム外務国際協力省次官補が出席した8

(6)セーシェル

セーシェルは、1人当たり国民総所得(GNI)が1万5,600米ドル(2018年)と、サブサハラアフリカ第1位の高水準であるものの、小島嶼(とうしょ)国として気候変動・防災などの分野での脆弱性を抱えている。

1月には、在セーシェル日本国大使館が新設された。8月のTICAD7参加のためダニー・フォール大統領バリー・フォール外務長官が訪日した。安倍総理大臣や佐藤正久外務副大臣とそれぞれ会談し、強固な二国間関係が確認された。また、10月には、無償資金協力「海上保安能力強化計画」(供与額8億円)に関する書簡の交換が行われた。

(7)ソマリア

ソマリアは、2012年に21年ぶりに統一政府が樹立したが、干ばつなどの人道危機の発生や、テロ組織アル・シャバーブによる活動が続いており、国造りの途上にある。

8月のTICAD7参加のためモハメド大統領が訪日し、安倍総理大臣と会談を行ったほか、10月の即位礼正殿の儀参列のためアブドゥルカディル外務国際協力閣外相が訪日し、鈴木馨祐外務副大臣と会談を行った。11月には、地形図作成に必要な機材とデータを同国に供与し、その作成能力の向上を支援する無償資金協力に関する書簡の交換(供与額5億円)を行った。

(8)マダガスカル

マダガスカルは、2013年に続き2018年に大統領選挙が平和裡(り)に実施され、ラジョリナ大統領が選出された。過去5年間の民主主義の成果の上に、同国の経済成長の加速化が期待される。

2019年は活発な要人往来が行われた。1月には、秋葉賢也総理特使(衆議院議員)が同大統領の就任式に出席したほか、その後も山田賢司外務大臣政務官などがマダガスカルを訪問した。また、8月のTICAD7参加のため、ラジョリナ大統領が訪日した。

経済面では、日本企業によるアフリカ最大規模の鉱山投資であるニッケル・コバルト地金の一貫生産事業がマダガスカル経済に貢献している。また、日本は同国内最大のトアマシナ港の拡張事業を円借款で支援している。

(9)南スーダン

南スーダンでは、2013年12月の首都ジュバにおける衝突事件以降、混乱が続いており、政府間開発機構(IGAD)9による調停活動が継続している。2016年7月の2度目の衝突事件の後、2018年6月には恒久的停戦に関するハルツーム宣言が発出され、9月にはキール大統領、マシャール前第一副大統領らによって再活性化された衝突解決合意が署名された。しかしながら、暫定的治安措置や州の数と境界線の問題などが原因で、新暫定政府の設立は2019年5月及び11月の2度にわたる延期を経て、2020年2月に実現した。

5月には河野外務大臣が南スーダンを訪問したほか、8月のTICAD7参加のためイッガ副大統領が訪日した。

(10)ルワンダ

2019年、大虐殺から25年を迎えたルワンダでは、カガメ大統領のリーダーシップの下、経済成長及び国民融和に向けた努力が継続している。近年、情報通信技術(ICT10)分野を中心に日本企業の関心が集まる中、日・ルワンダ関係の一層の促進の機運が高まった1年となった。

1月、カガメ大統領が訪日し、安倍総理大臣との首脳会談及びビジネスフォーラムなどが開催された。3月には山田外務大臣政務官がルワンダを訪問しアフリカCEOフォーラム11に出席し、TICADについて発信を行ったほか、セジベラ外務・国際協力相やインガビレICT・イノベーション相などと会談した。8月のTICAD7参加のためカガメ大統領が6回目の訪日を果たし、同年2回目の首脳会談を行った。

日・ルワンダ首脳会談(8月29日、横浜 写真提供:内閣広報室)
日・ルワンダ首脳会談
(8月29日、横浜 写真提供:内閣広報室)

9月にはルワンダの技術者と東京大学が合同で組み立てたルワンダの人工衛星RWASAT-1が打ち上げられるなど、両国の協力の分野が広がっている。

7 UNECA:United Nations Economic Commission for Africa

8 AUによるスーダンのAUメンバー資格停止措置(2019年6月~9月5日)を受けて、スーダンはTICAD7の本会合には参加しなかったが、「アフリカの角及び地域の平和と安定特別会合」には参加した。

9 IGAD:Inter-Governmental Authority on Development, 東アフリカ地域における地域経済共同体

10 ICT:Information and Communication Technology

11 アフリカ域内外の企業経営者や投資家、政府関係者が一堂に会し、アフリカにおける民間投資を中心に議論することを目的に、2012年に始まった国際会議

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