ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第424号
コロナ感染症予防にも貢献、トンガで注目された日本の草の根支援

在トンガ日本国大使館
日本から約7,800キロメートルのポリネシア地域に浮かぶ、南太平洋唯一の王国トンガは、今年日本との外交関係樹立50周年の節目を迎えました。人口約10万人のトンガでは、新型コロナウイルスの感染が拡大を始めた当初に海外からの入国を禁止したことで、7月半ば現在までウイルスの侵入を防ぎ、国内で1人も感染者を出していません。しかしながら、それと引き換えに人と物の流れが大きく制限されてしまったうえ、4月には大型のサイクロンの来襲にも見舞われ、主要な産業である農業や観光業をはじめ、経済は大きな痛手を被りました。
そのような困難の中で、日本の草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下、草の根無償)によって実施中の7つの案件のうち、日本は今年に入ってトンガの人々が待ち望んでいた3つの案件を竣工しました。一つ目は地域診療所の増改築、もう二つは小学校校舎の新築・改修プロジェクトです。
1 トンガ首相や保健大臣も注目! 地域診療所への草の根支援

石井大使

トンガの地域診療所は、患者が最初に受診する、国民に最も近い公的医療機関の1つです。病気や怪我の治療にとどまらず、最近では、生活習慣病とも呼ばれる糖尿病などの非感染性疾患(NCD)の改善のための運動や食事の指導、病気予防の啓発など、幅広い役割を担うようになりました。
今回のプロジェクトは、トンガタプ島西部にあるホウマ地区の保健・医療体制を強化し、地域の診療所に、こうした新たな役割を果たすため、NCD対策の指導室、診察室、バリアフリートイレなどの新たな部屋を増築したものです(注1)。より健康的な生活を取り戻すことが、長い目で見れば、新型コロナウイルスを含むさまざまな感染症に対しても有効な対策になり、特にホウマ地区は近年NCD患者の増加傾向が著しいため、トンガ政府の期待は特に大きく、草の根無償の引渡式としては異例となる、首相や保健大臣をはじめとする5人もの閣僚や国会議員等が出席してその完成を祝いました。
2 未来を担う子どもたちの笑顔のため、小学校の増改築を支援


児童代表から石井大使に渡された(ハアラロ小学校)
国造りの基礎は、教育にあり。人口も経済も小さく、資源もないトンガにとって、国民こそが国の財産、発展の原動力と考えられており、質のよい教育をすべての国民に行き渡らせることが、すべてのトンガ人の切なる願いです。この願いに応えるべく、日本は1990年以来の30年間で、草の根無償約300案件のうち、初等・中等教育分野に約150件の支援を行ってきました。
今回支援を行ったのは、児童数の増加から教室に児童が入りきれず、身動きが出来ないほどすし詰めの状態だったハアラロ小学校(注2)と、雨漏りがひどく授業に集中できず大変な状況が長く続いていたファアモツ小学校(注3)です。父母会からの要請に沿って、日本は校舎の新築や改修を実施、2校でおよそ370人近い児童たちが、よりよい環境で勉強できるようになりました。ハアラロ小学校では、新築の2教室は可動式の間仕切りが採用されているため、児童たちは普段の授業だけではなく間仕切りを動かすことで大きな行事も行うことができるようになり、学校での楽しみが増えたとの声が聞かれました。また、感染症予防のため、トンガ教育訓練省の自助努力によって、この2つの小学校には、教室の入口に手洗い台も設置されました。

子どもたちが新しい校舎での勉強を通じて獲得した知識や知恵を生かして、将来新型コロナウイルス感染症のような地球規模の問題にも立ち向かっていけるような人になってほしいとの思いを、このプロジェクトに関わったすべての人々が、子どもたちの笑顔を見ながら抱いています。
自然災害の多い島国という共通点を持つ日本とトンガには、謙譲の精神や思いやりなど、多くの文化的な共通点もあり、トンガの国民は日本をとても親しい友人と考えています。多くの困難に直面する中でも、日本はトンガ国民と共に、トンガの将来のためにこれからも支援を続けていきたいと考えています。
(注)本記事は、7月10日に執筆されました。
- ODA草の根支援(草の根・人間の安全保障無償資金協力)とは
- (注1)令和元年度対トンガ草の根・人間の安全保障無償資金協力「ホウマ地域診療所整備計画」
- (注2)令和元年度対トンガ草の根・人間の安全保障無償資金協力「ハアラロ小学校整備計画」
- (注3)令和元年度対トンガ草の根・人間の安全保障無償資金協力「ファアモツ小学校整備計画」
新型コロナウイルス感染拡大防止のための国際協力

新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大は、人の往来やモノの流通がグローバルに進展している今日、日本を含む全ての国の経済・社会にとっても大きな脅威であり、世界全体にとっての深刻な危機として国際社会全体が一致して取り組むべき課題です。そのため、日本がODAを通じて、途上国の感染防止対策および保健・医療体制強化のために行っている支援例を紹介します。
モーリタニアへの医療関連機材の供与
モーリタニアでは基礎的な医療体制が整っておらず、新型コロナウイルス感染者数増に対応可能な医療機材の整備や、地方での保健・医療体制の強化が重要な課題となっています。そこで日本はモーリタニアに対して救急車、患者用モニターなどの保健・医療関連機材の供与を行うこととしました。
- 報道発表全文はこちらから
国名 | 供与内容 | 金額 | ODAタイプ | 署名日付 |
---|---|---|---|---|
ドミニカ共和国 | CTスキャナー、心電計等 | 3億円 | 無償資金協力 | 6月26日 |
フィジー | CTスキャナー、X線撮影装置等 | 5億円 | 無償資金協力 | 6月29日 |
アルメニア | MRIシステム等 | 4億円 | 無償資金協力 | 6月30日 |
フィリピン | 新型コロナ危機対応緊急支援円借款 | 500億円 (償還期間15年) |
円借款 | 7月1日 |
カメルーン | 可搬型超音波画像診断装置、小型救急車等 | 3億円 | 無償資金協力 | 7月2日 |
ガーナ共和国 | サーモグラフィー等 | 5億円 | 無償資金協力 | 7月2日 |
ボリビア | 移動式X線撮影装置等 | 3億円 | 無償資金協力 | 7月3日 |
トンガ | サーモグラフィー、移動式超音波スキャナー等 | 1.5億円 | 無償資金協力 | 7月6日 |
コートジボワール共和国 | 小型救急車、移動式X線撮影装置等 | 4億円 | 無償資金協力 | 7月7日 |
ギニア共和国 | 小型救急車、超音波洗浄器等 | 3億円 | 無償資金協力 | 7月7日 |
ベナン共和国 | 患者用モニター、小型救急車等 | 3億円 | 無償資金協力 | 7月7日 |
スリランカ | MRIシステム、ⅭTスキャナー等 | 8億円 | 無償資金協力 | 7月8日 |
シエラレオネ | 超音波画像診断装置、患者用モニター等 | 4億円 | 無償資金協力 | 7月8日 |
モロッコ王国 | 超音波診断装置、X線撮影装置等 | 5億円 | 無償資金協力 | 7月10日 |
ジブチ | 移動式X線撮影装置、小型救急車等 | 5億円 | 無償資金協力 | 7月13日 |
キルギス | MRIシステム、CTスキャナー等 | 5億円 | 無償資金協力 | 7月14日 |
モーリタニア | 救急車、患者用モニター等 | 1億円 | 無償資金協力 | 7月15日 |
バングラデシュ | CTスキャナー、移動式X線撮影装置等 | 10億円 | 無償資金協力 | 7月16日 |
ガボン共和国 | 可搬型超音波診断装置、保育器等 | 3億円 | 無償資金協力 | 7月16日 |
(6月26日~7月17日署名分。日付は日本時間)