ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第375号
ODAメールマガジン第375号は,国際協力局地球規模課題総括課からシリーズ「SDGs 誰一人取り残さない日本の取組」第9弾として「日本のSDGs達成に向けた取組 SDGsアクションプラン2018を通じた「豊かで活力ある未来像」の実現」を,同局国別開発協力第一課から「第8回太平洋・島サミット(PALM8)の結果と概要」を,総合外交政策局国際機関人事センターから「国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)について」を,また,内閣府野口英世アフリカ賞担当室から「第3回 野口英世アフリカ賞 受賞候補者を推薦受付中(7月31日締切)」をお届けします。なお,肩書は全て当時のものです。
日本のSDGs達成に向けた取組 SDGsアクションプラン2018を通じた「豊かで活力ある未来像」の実現
原稿執筆:国際協力局地球規模課題総括課 福留 健太 外務事務官
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで,全国連加盟国によって合意された,2030年までを期限とする17の国際目標です。
SDGsは,先進国を含む国際社会全体の目標として,相互に密接に関連した17の目標と169のターゲットから構成されています。
- SDGs全17ゴールのロゴ
【出典:国連広報センター】
SDGsが目指すのは,経済成長,社会問題の解決,環境保全がバランス良く達成された持続可能な世界です。その実現過程では,貧困層,障がい者,子ども,女性など,脆弱な立場に置かれやすい人々を「誰一人取り残さない」ことを誓っています。日本が国際社会で主導し,かつ開発協力の柱の一つと位置づけている「人間の安全保障」の理念が明確に反映されています。
SDGs採択後,その実施に向け政府がまず取り組んだのは国内の基盤整備です。2016年5月に総理大臣を本部長,官房長官,外務大臣を副本部長とし,全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置。国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む体制を整えました。
さらに,この本部の下で,行政,民間セクター,NGO・NPO,有識者,国際機関,各種団体等を含む幅広いステークホルダーによって構成される「SDGs推進円卓会議」での対話を経て,同年12月,今後の日本の取組の指針となる「SDGs実施指針(PDF)」を決定しました。
昨年12月に行われた第4回SDGs推進本部会合では,外務省のみならず関係府省庁のSDGs達成に向けた主要な取組を「SDGsアクションプラン2018(PDF)」として決定しました。同アクションプランでは,1 SDGsと連動する「Society5.0の推進」,2 SDGsを原動力とした地方創生,3 SDGsの担い手としての次世代・女性のエンパワーメントを3つの柱として掲げています。同会合において安倍総理大臣は,SDGsの推進を通じて創業や雇用の創出を実現し,少子高齢化やグローバル化の中で実現できる「豊かで活力ある未来像」を世界に先駆けて示す決意を表明しました。今後,同アクションプランに基づいた,官民の好事例を共有しながら,主要な取組を実施するとともに,更に具体化・拡充し,日本の「SDGsモデル」を構築していきます。
- 第4回SDGs推進本部会合で発言する安倍総理
【写真提供:内閣広報室】
更に,第4回SDGs推進本部会合と同日に,SDGs達成に資する優れた取組を行っている日本の企業・団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」の第1回表彰式を実施しました。同アワードは,NGO・NPO,有識者,民間セクター,国際機関等の広範な関係者が集まるSDGs推進円卓会議構成員から成る選考委員会の意見を踏まえて決定され,多数の応募の中から北海道下川町がSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しました。
- SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞
を受賞する北海道下川町
【写真提供:内閣広報室】 - 受賞団体を交えた記念撮影
【写真提供:内閣広報室】
SDGsの今後の展望としては,2019年に,ニューヨークの国連本部で首脳級のレビュー会合があります。さらには,2020年の東京オリンピック・パラリンピックとも連携しつつ,また,2025年の万博も見据えながら,SDGsの取組をますます加速させていきたいと考えています。
SDGsが目指す世界を実現するためには,社会を構成する様々なステークホルダーによる協働が不可欠です。まずは,私達一人ひとりがSDGsとは何かを知り,「自分ごと」として捉えることが,既存の動きを加速することに繋がります。
世界各国が国際社会共通の課題に直面する中,日本の「SDGsモデル」を世界に発信することは,SDGsを通じて実現できる「豊かで活力ある未来像」を世界に先駆けて示すチャンスとなります。政府は,年央に予定される次回SDGs推進本部会合までに,先ほどご紹介した三本柱を踏まえた『アクションプラン』の実施に注力し,SDGsを推進する取組の具体化及び拡充を進めていきます。次回のSDGs推進本部会合で決定される新たな取組については,今後のメールマガジンで引き続き発信してまいります。
第8回太平洋・島サミット(PALM8)の結果と概要
原稿執筆:国際協力局国別開発協力第一課
5月18日(金曜日),19日(土曜日),福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズにおいて,安倍総理とトゥイラエパ・サモア首相の共同議長の下,第8回太平洋・島サミット(The Eighth Pacific Islands Leaders Meeting: PALM8)が開催されました。
太平洋・島サミットは,太平洋島嶼(とうしょ)国が直面する様々な問題について首脳レベルで率直に意見交換を行い,地域の安定と繁栄に貢献するとともに,日本と太平洋島嶼国のパートナーシップを強化することを目的としています。1997年から3年に一度開催されており,今回で8回目の開催となりました。
PALM8には,「繁栄し自由で開かれた太平洋に向けたパートナーシップ」というキャッチフレーズの下,日本,島嶼14か国,ニュージーランド,オーストラリアに加え,今回新規参加のニューカレドニア,フランス領ポリネシアの2地域を含む19の国・地域から首脳等が参加しました。
- 記念撮影に臨む安倍総理大臣
【写真提供:内閣広報室】
会合に先駆けて東京で行われた各国との外相会談等においては,ソロモン,パラオ及びトンガと,それぞれ無償資金協力「ホニアラ国際空港整備計画」,「廃棄物処理場建設計画」及び「全国早期警報システム導入及び防災通信能力強化計画」に関する交換公文署名式が行われました。この協力が,各国の今後の自立的かつ持続可能な発展等に資することが期待されます。
- 署名を行う河野外務大臣とトザカ・ソロモン諸島外務・貿易大臣
開会式において,安倍総理は,海洋に焦点を当てた日本の対太平洋島嶼国外交に関する基調発言を行いました。
各会合では,1 法の支配に基づく海洋秩序,持続可能な海洋,2 強靱かつ持続可能な発展,3 人的往来・交流の活性化,4 国際場裡における協力の4つの議題を中心に議論を行い,議論の成果として「PALM8首脳宣言」を採択しました。
- 基調発言を行う安倍総理大臣
【写真提供:内閣広報室】
PALM8のポイントは以下の4点です。
- ア 日本からは,「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づいて,この地域の安定と繁栄により深くコミットしていく考えを表明し,太平洋島嶼国側からは,同戦略の基本的な理念の重要性を共有するとともに,同戦略の下での我が国の太平洋地域への関与強化に歓迎の意が表されました。
- イ 「自由で開かれたインド太平洋戦略」を踏まえ,自由で開かれた持続可能な海洋をPALM8の最も重要な議題として議論し,海における法の支配の重要性に関する認識を共有するとともに海上法執行を含む海上保安分野の能力構築支援や港湾整備等の分野での協力を推進していくことで一致しました。
- ウ 国際場裡における協力について,踏み込んだ議論を行い,PALMとしては初めて首脳宣言において北朝鮮問題に関する文言が盛り込まれました。また,日本の国連安保理常任理事国入りへの支持についても表明されました。
- エ 日本として,これまでの実績を踏まえながら,今後3年間で従来同様のしっかりとした開発協力を実施することを約束するとともに,成長と繁栄の基盤は人作りであるとの考え方に基づき,今後3年間で,5,000人以上の人的育成・交流の協力を行っていくことを表明しました。その中で,特に今回の重要な柱の一つである「自由で開かれた持続可能な海洋」のための協力に関しては,今後3年間で500人の人材育成・交流を行っていくことを表明しました。
- 共同記者発表
【写真提供:内閣広報室】
今後は,「PALM8首脳宣言」に示された各分野の具体的行動を着実に進めていくことが重要な課題となります。
国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)について
原稿執筆:総合外交政策局国際機関人事センター 田村 貴和子 外務事務官
将来グローバルに活躍するために,国連をはじめとする国際機関で勤務することをお考えの方も,このメールマガジン読者の方の中には数多くいらっしゃると思います。しかし,実際にどのような準備をし,どのような条件を満たし,どのように応募したら良いかまでをご存じの方は少数派かもしれません。
日本人が国際機関で働くためには,主に以下の3つの方法があります。
- 空席広告
各国際機関のホームページに掲載される「空席広告」といわれる求人票を見て,募集されているポストが自分のこれまでの学歴と職歴に合えば応募し,書類選考・面接を経て採用に至る方法です。毎日のように新たな空席情報が出ますが,英語圏を含む世界中のあらゆる国籍の候補者と競うため,競争率が高いという難点もあります。 - ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度
外務省が原則年1回実施するもの。空席広告に比べると,日本人同士の競争であり,倍率が低くなっているというメリットがあります。 - 国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)
今回は,最近応募受付がはじまった,この「国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)」についてお話したいと思います。
今回は,外務省 国際機関人事センターのマスコット「ジンセ」くんに説明してもらいましょう。

【YPPの概要】
国連事務局YPPは,国連事務局の若手職員を採用するための試験です。日本人が国連職員になるための主な3つの方法のうち,空席公告,JPO派遣制度に並ぶ,採用制度の1つです。年に一度試験が行われ,書類審査,筆記試験,面接を経て,合格した方はロスター(合格者名簿)に掲載されます。

合格後は,ポスト(P1またはP2)の空き状況に応じて,ロスター掲載者の中から選考が行われ,ポストに採用されます。そのため,合格イコール採用ではありません。ロスターの有効期限は3年間です。
ポストに採用されると,2年の任期で勤務し,勤務中の成績が優秀であれば引き続き雇用されます。
【応募資格】
(1)日本国籍を有し,32歳以下(受験年の12月31日現在)であること
(2)英語またはフランス語で職務遂行が可能であること
(3)募集分野に関連する学士号以上の学位を有すること
(注)大学4年生(大学卒業見込み)では応募できません。
(注)職歴は不要です。
【応募期間】
8月9日まで
【募集分野】
1 法務分野
2 社会学分野
3 統計学分野
募集分野はこの3分野です。これ以外の分野を専攻している人は応募できません。この募集分野は毎年変更になっていますので,来年同じ分野で応募されるとは限りませんので,注意が必要です。
その他の詳細については,国連事務局ホームページまたは外務省 国際機関人事センターのホームページ
をご覧ください。
第3回 野口英世アフリカ賞 受賞候補者を推薦受付中(7月31日締切)
原稿執筆:内閣府野口英世アフリカ賞担当室
第3回 野口英世アフリカ賞の受賞候補者を推薦受付中です。今から90年前の1928年,野口英世博士はアフリカの地で自身が研究していた黄熱病に感染し,亡くなりました。
本賞は,野口英世博士の志を踏まえ,アフリカでの感染症等の疾病対策及び公衆衛生推進のため顕著な功績を挙げた方々を顕彰します。
選考は,皆様からの推薦をもとに行われ,2019年のTICAD7(第7回アフリカ開発会議)の開催に合わせて,授賞式が行われる予定です。
皆様からのご推薦をお待ちしています。
- 対象分野:
- 医学研究分野:基礎医学研究/臨床医学研究/医学に密接に関連した生命科学の諸領域の研究
医療活動分野:アフリカで展開される疾病対策及び公衆衛生の改善に係る医療/公衆衛生 - 推薦締切:
- 2018年7月31日(火曜日)必着
- 賞の内容:
- 各分野の受賞者に,表彰状,賞牌,賞金(1億円)が授与されます。
推薦に関する詳細は,内閣府の野口英世アフリカ賞のホームページをご参照ください。
問い合わせ先:内閣府野口英世アフリカ賞担当室 TEL:03-5501-1774
- (左から)第1回受賞者:ブライアン・グリーンウッド博士(英国),
ミリアム・ウェレ博士(ケニア)
第2回受賞者:ピーター・ピオット博士(ベルギー),
アレックス・G・コウティーノ博士(ウガンダ)
【写真提供:内閣府】
最近の開発協力関連トピック
- (1)「グローバルフェスタJAPAN2018」が今年もお台場で開催!
日本最大級の国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN」が今年も9月29日(土曜日),30日(日曜日)の二日間,お台場で開催されます。出展募集も始まりましたので,こちらのサイトからぜひお申込みください!
- (2)「ペナルティ」に草の根大使を委嘱しました!
5月30日,漫才コンビの「ペナルティ」(吉本興業株式会社所属)に草の根・人間の安全保障無償資金協力30周年の広報関連業務を担う「草の根大使」を委嘱しました。今年で実施開始から30周年を迎える同支援制度。今後は,草の根大使として現地視察や同制度の広報を担っていく予定です。 - (3)ODAちょっといい話「マリの治安改善に貢献!日本製機材が暮らしの安全を守る」(在マリ日本国大使館より)治安の問題が深刻化するマリにおいて,治安改善に貢献すべく日本が供与した白バイや警察車両等の日本製機材についてのお話です。
- (4)『今のアフリカ』開催
6月16(土曜日),17日(日曜日),東京日比谷公園で,アフリカ38か国の音楽,ダンス,フード等華やかなアフリカの文化を日本に紹介するイベントが開催されます。
このイベントは,在京アフリカ外交団が,2019年横浜で開催されるTICAD7に向けた機運を盛り上げるため実施するものです。 - (5)ODA出前講座をご存じですか?国際協力局では,国際協力についてお話しするため,第一線で働く職員を皆さまのもとへ派遣しています!全国の大学・高校・中学をはじめ,自治体,NGO団体などで開催しています。申請は,開催希望日の2か月前をめどにこちらから。