ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第363号
ODAメールマガジン第363号は,ガボン共和国からシリーズ「SDGs 誰一人取り残さない日本の取組」第6弾として「すべての人に健康と福祉を ガボンでのHIV/エイズ通院治療センターへの日本の支援」を,国際協力局地球規模課題総括課から「「『世界津波の日』2017 高校生島サミットin沖縄」の開催」をお届けします。なお,肩書は全て当時のものです。
すべての人に健康と福祉を ガボンでのHIV/エイズ通院治療センターへの日本の支援
原稿執筆:在ガボン日本国大使館 森 英麻 専門調査員
赤道直下の中部アフリカの国「ガボン」をご存知でしょうか。首都リーブルビルの海岸大通りの横に広がる砂浜は,大西洋に沈む美しい夕陽を眺めつつ散歩やジョギングに来る人々で賑わっていて,「リーブルビルは,まるでアフリカのホノルルだ」と言われることもあるようです。
しかし,ガボンは深刻なHIV/エイズ問題に直面しており,HIV陽性者は約48,000人に上ります。リーブルビルには,約80万人が暮らしているにもかかわらず,HIV/エイズの通院治療ができる公立病院はたった3つしかありません。日本はそのうちのひとつであるンケンボHIV/エイズ通院治療センターに対し,草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて支援を実施しました。
ンケンボHIV/エイズ通院治療センターの登録患者数は,2008年の設立当初は約100名でしたが,リーブルビルにおける人口増加に伴い,2016年には6,300名まで増加しました。同センターには,1日あたり平均100人の患者が来院しますが,狭い診療室にて2~3名同時に診察を行うため,プライバシーの確保が困難でした。また,同センターには十分なスペースがなく,各種医療器材や薬剤は整理・整頓がなされないまま保管がされており,薬の処方等に必要以上の時間を要していました。
これを受けて,日本は同センター敷地内に,薬局カウンターや薬剤保管室,精神科医診察室等の増築支援を行いました。この支援を通じて同センターには様々な変化がありました。まず,薬局カウンターと薬剤保管室ができたことにより,患者は平日いつ来ても確実に薬を受け取ることができるようになりました。仕事を抜けて薬をもらいにくる患者も多く,「30分もあれば薬を受け取れる。確実に入手できるので安心して必要な量の薬を飲めるようになった」と非常に喜ばれています。次に,治療・診察室を増築したことにより,医師一人あたりの負荷も減り,スタッフは皆,ここでの仕事にとても満足していると話しています。また,一人一部屋で診察が可能となったことから,他人に聞かれることを心配して医師に相談できなかった患者も心を開いてくれるようになりました。
- 増築した施設引渡式でのテープカット
- 施設引渡式での集合写真
ンケンボHIV/エイズ通院治療センターでは,草の根・人間の安全保障無償資金協力の他にも,青年海外協力隊派遣事業も実施しています。本年3月まで感染症・エイズ対策隊員として同センターにて活動していた阿部彩奈さんは,種類別に薬剤を陳列したり,パソコン操作が得意なスタッフと一緒に出納帳を作成して薬剤倉庫管理を行ったりと,円滑な薬局業務体制の構築に貢献し,同センターのスタッフから高く評価されています。
- 待合室に掲示されている,
阿部元隊員が作成した資料 - 薬剤管理作業中のスタッフと阿部元隊員
- 薬剤保管室
- 薬局カウンター
「日本の協力のおかげで施設全体が変わった」と患者やスタッフは口を揃えます。その評判を聞きつけて新規の患者も毎日やって来るそうです。日本の協力で増築した施設は,SDGsのスローガン「誰一人取り残さない」を日々実践している同センターのスタッフ及び患者に大きな影響を与えることができました。
「『世界津波の日』2017 高校生島サミットin沖縄」の開催
原稿執筆:国際協力局地球規模課題総括課 福留 健太 外務事務官
2015年12月,第70回国連総会において,日本を始め世界142か国が共同提案した,11月5日を「世界津波の日」とする決議が全会一致で採択されました(「世界津波の日」の詳細はODAメールマガジン第360号でご案内しました。)。
- 第70回国連総会にて,
「世界津波の日」を制定する決議が採択される様子
日本は,自然的条件から各種の自然災害に襲われてきました。その数々の経験により蓄積した防災・減災に関する知見を活かして,「世界津波の日」の制定を切り口に,防災の様々な分野において国際協力を推進しています。今回は,そのような日本の防災協力の一つの柱である「世界津波の日 高校生サミット」についてご紹介します。
「世界津波の日 高校生サミット」は,津波の影響を受けやすい国の高校生を日本に招へいし,日本の津波の歴史や各国における防災・減災の取組等の学習を通じ,防災の経験と教訓を未来を担う若者に引き継いでいく青少年交流事業です。昨年11月に高知県黒潮町で開催された「世界津波の日 高校生サミット」に続き,第2回目となる本年度は11月7日,8日に沖縄県宜野湾市で「『世界津波の日』2017 高校生島サミットin沖縄」(沖縄県・沖縄県教育委員会主催)を開催し,島しょ国を中心に日本を含む26か国の高校生が参加しました。沖縄県は日本で唯一の島しょ県であり,1771年に世界でも最大級とされる「明和の大津波」で甚大な被害を受けました。今でも県内各地に津波石が残る沖縄に,同じような自然環境を有する島しょ国の若者が集まりました。外務省は,高校生サミットを後援するとともに,高校生サミットへの海外の高校生の招へいを担当しました。
- 「世界津波の日 高校生サミット」
開会式での集合写真撮影 - 開会式で挨拶をする二階自民党幹事長
国籍を越えて,防災,減災に関して活発な議論が行われました。サミットの成果物として,防災・減災に関するアクションプランをまとめた,「若き津波防災大使ノート」も発表しました。
また,サミット開催前に,参加高校生は宮古島・石垣島のスタディーツアーに参加し,明和の大津波慰霊碑や津波石を視察したほか,高台への津波避難訓練に参加しました。
- 各グループで防災の取組について
議論する高校生 - 避難訓練の様子
「世界津波の日 高校生サミット」を通じ,津波を始めとする自然災害の脅威や防災・減災の取組を学び,津波防災への議論を通じて防災への理解を深められたことは非常に有意義なものでした。
このサミットに参加した高校生が将来,地震・津波の被害を最小化し,各国で防災・減災分野において主導的な役割を担うリーダーとして活躍することを大いに期待しています。日本はそのような若手防災リーダーの育成に尽力し,津波災害をはじめとする災害から一人でも多くの尊い命を守るため,引き続き防災分野で国際社会に貢献していきます。