ODA(政府開発援助)

2016年1月13日発行
平成28年1月15日

2015年は日本・ブラジル外交関係樹立120周年

原稿執筆:在ブラジル日本国大使館 横山 大輔 二等書記官

1895年11月5日,パリにおいて「日伯修好通商航海条約」が署名され,日本とブラジルとの間で外交関係が樹立されてから,2015年で120周年を迎えました。

【世界有数の親日国】

ブラジルは「世界有数の親日国」であり,日本文化がブラジルで根付いています。親日の要因は,主に二つあります。
第一の要因は,海外で最大規模の日系人社会の存在です。日本人のブラジル移住は1908年に始まり,一世は主に農業でブラジルの発展に貢献しました。二世以降は,農業のみならず,政治,医学,ビジネス,法曹,芸術,スポーツ等あらゆる分野で活躍し,ブラジル国内の日系人・日本人に対する高い評価が確立しています。

日本文化がブラジルに根付いているのは,日系人社会が日本文化の継承・普及のために長年行ってきた努力の賜物です。現在では,盆踊りや日本祭り等がブラジル各地で地域社会の参加を得て開催されており,そこで販売される焼きそば,巻きずし等の日本食は,和太鼓などとともにブラジルで当たり前に見られるものになっています。

  • 盆踊り
  • 日本祭り

【共同の大型プロジェクト】

第二の要因は,これまで日本とブラジルが共同で多数の大型プロジェクトを実現してきたという歴史です。特に,「セラード農業開発協力事業」では,両国の農業技術者と日系人農業従事者の協力で,「セラード(不毛の地)」と呼ばれる広大な内陸地域を大豆やトウモロコシの一大生産地に転換することに成功しており,多くのブラジル人が今も感謝しています。

  • 開発前のセラード
  • 現在の広大な大豆畑

【対ブラジル経済協力】

上述の親日国であるという土壌や,これまでの対ブラジル経済協力の実績も踏まえ,日本は対ブラジル国別援助方針では重点分野として,「1.都市問題と環境・防災対策」,「2.三角協力支援」を掲げ,各種経済協力に取り組んでいます。

「1.都市問題と環境・防災対策」では,近年ブラジル各地で発生した大規模土砂災害を契機とした防災リスク管理,治安改善に向けた我が国の地域警察活動(交番制度)のブラジル国内での普及,都市環境改善に向けた上下水道の整備等に取り組んでいます。
「2.三角協力支援」では,日本・ブラジル両国の援助方針に基づき,中南米やポルトガル語圏アフリカ諸国に対して経済協力を行っており,農業開発(モザンビーク),地域警察活動普及(中米諸国)等に取り組んでいます。

日本政府は,これまで培われてきた日本とブラジルの友好関係を継承・発展させ,今後ますます両国関係が緊密になるよう,努めて参ります。

ブラジルに日本の交番システムを導入! 地域住民と共に治安改善に取り組む
(地域警察活動普及プロジェクト)

原稿執筆:JICAブラジル事務所 山田 奈央子

2014年FIFAワールドカップブラジル大会,2016年リオデジャネイロ夏季オリンピック。

ブラジルには世界中から多くの旅行者が集まります。そして,この国の人々が醸し出す陽気な雰囲気は,ブラジルに訪れるすべての人々を魅了しています。

魅力的な側面がある一方,組織犯罪や麻薬取引等が深刻な社会問題となっており,特に大都市では凶悪な犯罪が後を絶ちません。現地警察は治安改善を図るため,市民に対し厳しい取締りを行ってきましたが,一方で警察官自身による犯罪も多発し,市民と警察官の間で少しずつ溝が深まり始めました。

このような背景から,地域での犯罪予防に焦点をあて,犯罪率の高いサンパウロ州に日本の地域警察活動を導入するJICA国別研修「ブラジル公共公安」コースが2000年に開始されました。当研修を通して,サンパウロ州の現地警察は日本人専門家と一緒に,地域レベルの犯罪の予防に取り組んできました。地域や各家庭が抱える問題をいち早く察知し,その解決のために住民一人一人と話し合う機会を大切にしてきた結果,今では地域に連帯感が生まれ,住民と警察官が主体となって人々を守る取り組みが根付き始めています。
そして,このサンパウロ州の経験をブラジル国内に普及することを目的とした「地域警察活動普及プロジェクト」が2015年から始まりました。

  • 毎朝交番の前に立ち,
    住民の方々に挨拶をしています
  • 日本の専門家(右)
    と巡回記録について話している様子

このような活動を経て,かつて威圧的だと言われていた警察官もしだいに日本の「お巡りさん」のように人々から慕われる存在となりました。
警察官が住民にとって身近な存在になることは,地域の子供たちの非行防止にも繋がります。例えば,サンパウロ市内の交番が主体となって実施しているサッカー教室は,警察官が子供たちの様子を把握し,子供たちを犯罪から遠ざける効果を上げています。

  • 今では地域の子供たちが
    気軽に交番に立ち寄ります
  • サッカー教室の先生,
    子供たち,そしてお巡りさん

治安の改善に向けた活動は,サンパウロをはじめ,各地域に広がりつつあります。
現在ではブラジル国内のみならず,ホンジュラスやエルサルバドル等の中米諸国の治安改善に向けて,サンパウロ州とJICAが手を取り合い,地域警察活動の普及に取り組んでいます。

私たちJICAは,このプロジェクトを通して,中南米諸国の国造りに貢献できることを願っています。

土砂災害のリスクに備える 統合自然災害リスク管理国家戦略強化プロジェクト

原稿執筆:JICAブラジル事務所 石黒 要

ブラジルは,幸いなことに日本ほど自然災害に見舞われている国ではありません。しかし,ブラジルにも大きな問題となっている自然災害があります。それは,降雨が引き起こす土砂災害です。
土砂災害は,ブラジルでは昔からずっと続いてきた自然災害であり,身近な出来事だったはずですが,それに対する取組は決して十分ではなかったと言えます。

2011年1月にリオデジャネイロ州の広範囲で土砂災害が発生しました。
この土砂災害は,死者・行方不明者が1,200人を超えるかつてない甚大な被害をもたらしました。この災害をきっかけとして,ブラジル政府は,自然災害の管理体制の見直しを開始しました。また,多年度計画と呼ばれる国家計画のなかに災害リスクに関するプログラムが組み込まれることになりました。ようやくブラジル政府の重要政策として防災対策を位置付けたのです。

  • 2015年10月に発生した地すべり災害(ブルメナウ市)

この防災対策を日本として後押しするため,2013年から統合自然災害リスク管理国家戦略強化プロジェクトが始まりました。このプロジェクトの大きな目的は,ブラジルの土砂災害のリスクを軽減することです。そしてこの目的を果たすためには,リスクをどのように評価するのか,予警報体制をどのように整えるのか,また都市計画をどのように行なうべきなのかを考える必要があります。

  • 地すべり現場でのリスク評価技術の指導風景(ブルメナウ市)

地方政府が果たす防災対策の役割は大変重要です。
現在,プロジェクトでは,防災行政に携わる地方政府の職員が参考に出来る防災対策に関する手引書を作成しているところです。日本とブラジルの多くの関係者が日々議論を交わしながら,手引書作りを進めています。まだこの世に生まれていない手引書ですが,今後3つの地方政府においてパイロットプロジェクトを実施しながら充実させていきます。完成した手引書がブラジル全国において利用されること,土砂災害による被害が無くなること,これが生みの親であるプロジェクトの大きな願いです。

第13回ODA評価ワークショップの開催

原稿執筆:大臣官房ODA評価室

12月9日(水曜日)及び10日(木曜日),外務省は,国際協力機構(JICA),日本評価学会等の協力を得て,東京において,アジア・大洋州諸国の27か国及び国際機関から参加を得て,第13回ODA評価ワークショップを開催しました。

このワークショップは,より効果的な開発政策の策定と実施に資する各国の評価能力の向上を目的としています。相互学習とネットワーキングの場として,参加国から自国の評価制度や評価事例の共有があり,また,開発パートナー及び評価専門家からは評価のトレンドや理論的背景の紹介が行われました。今回のワークショップは,2001年に第1回会合を開催して以来,13回目の開催となりました。

会議では,冒頭の濱地外務大臣政務官による開会挨拶の後,開発協力における評価のフィードバックメカニズムや参加国の評価能力の開発・向上とそのための先進国によるサポートのあり方など5つの議題について,廣野良吉成蹊大学名誉教授(アジア太平洋評価協会前会長)が議長を務め,活発な意見交換が行われました。

今回のワークショップの特徴としては,参加国の幅広い関心に応えるべく,2つの分科会を設けたことが挙げられます。また,今年9月に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されたことを踏まえ,持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて評価が果たしうる役割についても議論されました。
最後にまとめられた議長サマリーでは,参加国・機関は評価の質を高めるために今後も対話を続けていくことが確認されるとともに,アジア・大洋州地域内で早急に評価ネットワークの構築を図ることが要請されました。

今回のODA評価ワークショップは,日本のODA政策の根幹である開発協力大綱が2015年2月に閣議決定されたことや,同年が国際評価年であることなどから,国際評価年を締めくくるイベントとして東京で開催しました。本ワークショップの開催を通じて,評価の取組を日本から世界に向けて発信することが出来ました。

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国際会議「新たな開発目標におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:強靭で持続可能な保健システムの構築を目指して」の開催

原稿執筆:国際協力局国際保健政策室

2015年12月16日,東京において,国際会議「新たな開発目標におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:強靭で持続可能な保健システムの構築を目指して」を外務省,財務省,厚生労働省,国際協力機構(JICA),日本国際交流センターの共催で実施しました。

この会合には,安倍晋三内閣総理大臣が出席したほか,各国政府,国際機関,民間財団,有識者,市民社会が一堂に会し,強靱で公平なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現とその継続について議論し,来年日本が議長国を務めるG7伊勢志摩サミット及びTICAD VIへの重要なインプットとなりました。また,第2セッションでは,秋篠宮妃殿下が傍聴されました。

安倍総理大臣は冒頭セッションで,持続可能な開発のための2030アジェンダが採択(2015年9月国連総会)された後,日本が最初のG7議長国になるとともに,TICAD VIを初めてアフリカで開催することを強調しつつ,日本がG7伊勢志摩サミットにおいて,保健を優先課題として取り上げ,国際的な議論において主導的な役割を果たしていくとの考えを表明しました。これは,安倍総理大臣が先般「ランセット」誌に寄稿した「世界が平和でより健康であるために」という論文にも反映されています。
また安倍総理大臣は,G7伊勢志摩サミット及びTICAD VIを通じて,公衆衛生危機への対応及びUHCを推進し,保健システムの強化に積極的に貢献していくことを表明しました。

  • 新たな開発目標の時代とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
    国際会議開会セッションでスピーチをする安倍総理1(平成27年12月16日)
    (出典:首相官邸ホームページ別ウィンドウで開く

会議の各セッションにおいては,国内外の参加者の間で活発な議論が交わされ,最後にリチャード・ホートン「ランセット」誌編集長が議論を総括し,安倍総理大臣の保健分野に対するコミットメントと今般の会合開催に対する謝意が表明され,UHCの達成のためには,強い政治的リーダーシップが必要であり,来年のG7伊勢志摩サミットが重要な場であると述べました。これを受け,長嶺安政外務審議官から,参加者に謝辞を述べるとともに,本日の充実した議論をG7保健分野の議論に活かしていきたい旨述べ,会議は盛況且つ成功裡に終了しました。

会議の概要については,以下の外務省HPからもご覧いただくことができます。

平成27年度 開発協力特集番組『林修の「世界をひらく僕らの一歩」』総集編

原稿執筆:国際協力局政策課広報班

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昨年9月~11月に亘り,テレビ東京系6局ネットにて,開発協力特集番組(3回シリーズ,各75分)が放送されました。この特集番組を約60分に再編集したスペシャル動画をテレビ東京の番組サイトで配信しております。

  • 番組名:『林修の「世界をひらく僕らの一歩」』
  • テレビ東京サイト別ウィンドウで開く
  • 番組の内容
    「約5秒に1人」。こちらの数字の意味をご存知でしょうか?答えは番組内で明かされます。世界は問題であふれていて,そんな問題だらけの世界を,日本は「開発協力」を通じて支援し続けています。しかし「開発協力」と聞いて,具体的にはどこで何をしているのか知らない方も多いのではないでしょうか。そんな「開発協力」について,カリスマ塾講師の林修先生が白熱した講義スタイルでわかりやすく解説しています。

「知っているようだけど,知らない。知ると少し日本が好きになる」番組となっておりますので,是非ご覧ください。

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