国連外交
河野外務大臣の第72回国連総会出席



(写真提供:内閣広報室)
- 河野外務大臣は,9月17日(日曜日)から22日(金曜日)まで,第72回国連総会出席のためニューヨークを訪問した。
- 河野大臣は,下記の多国間会合及び二国間会談等への参加を通じて,多くの国・地域との関係を強化するとともに,国際社会が直面する課題に対する我が国の立場や貢献等について積極的に発信した。また,河野大臣は,コロンビア大学において,「迫り来る危機における外交」と題した講演を行った。
- 特に北朝鮮が6度目の核実験を強行し,我が国上空を通過する弾道ミサイルをここ3週間で2回発射する中,北朝鮮の脅威に対して国際社会が連携,連帯していくことや,関連安保理決議の完全な履行により,従来にない新たな段階の圧力をかけ,北朝鮮の政策を変えさせる必要があることを訴えた。
1 国際的課題に対する我が国の立場・貢献の積極的発信等
(1)日本人国連関係機関職員との意見交換(9月17日)
河野大臣から,日本人国連関係機関職員を最大限支援したい,邦人職員増強戦略を策定して様々な取組を実施しており,国際機関を目指す日本人が増えることを期待する旨述べた。また,参加した日本人職員との間で,日本人職員増強に向け政府が取り組むべき事項等について意見交換を行った。
(2)コーン米国国家経済会議(NEC)議長主催朝食会(9月18日)
河野大臣から,エネルギー・気候変動問題に対する米国の一層の関与を望む旨述べたほか,日本はパリ協定の下,気候変動対策に積極的に取り組んでいく,世界全体のエネルギー安全保障を強化していくことが重要である等述べた。また,出席者の間で,国際的な気候変動対策の推進及びエネルギー安全保障の強化の重要性に関し,活発な意見交換が行われた。
(3)国連改革に関するハイレベル会合(9月18日)

主催者であるトランプ米大統領から,国連が多大な投資に見合うような効果を上げるため,グテーレス国連事務総長が主導する国連改革の取組への支持を表明し,他の加盟国に対し同事務総長の取組への支持を呼びかけた。また,グテーレス事務総長は,手続の簡素化,分権,透明性,効率性及びアカウンタビリティを高めるためのマネジメント改革を進めていく決意を述べた。
(4)パレスチナ支援調整委員会(AHLC)閣僚級会合(9月18日)

河野大臣から,中東和平の進展がないことに懸念を表明するとともに,新規案件を含む約2千万ドルの対パレスチナ支援を決定したこと等を説明した。多くの出席者が,ガザの人道状況や停滞する中東和平プロセスへの懸念を表明し,二国家解決にむけて,パレスチナ全体の経済・社会の安定を支援する必要性が改めて確認された。
(5)質の高いインフラ投資の推進に関するサイドイベント(9月19日)


河野大臣から,共催者として行う基調講演の中で,「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」や「自由で開かれたインド太平洋戦略」等の我が国の取組を紹介し,「質の高いインフラ」コンセプトの国際スタンダード化及びインフラ資金量拡大のために不可欠な民間資金動員のための国際ルール整備の重要性につき述べた。本イベントを通じて,「質の高いインフラ」を国際的に普及させていくことの重要性が確認された。
(6)グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)閣僚級会合(9月20日)


河野大臣は,スピーチにおいて,テロの脅威が欧州及びアジア地域へ急速に拡大している現状について発信するとともに,我が国の国際テロ対策協力の実績及び独自の暴力的過激主義対策支援等を紹介したほか,GCTFにおける貢献及びTOC条約締結等を通じた今後の国際的なテロ対策協力について表明した。また,閣僚声明及び2件の成果文書の採択が行われた。
(7)包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議(9月20日)


河野大臣は,スピーチにおいて,CTBT発効促進共同調整国としての取組を通じて得た日本の教訓を紹介しつつ,CTBT早期発効に向けた国際社会の努力を主導していく決意を述べた。各国の演説では,北朝鮮による核実験への非難,CTBTの早期発効の必要性等への言及があり,会議参加国の総意として,北朝鮮による核実験を最も強い言葉で非難等した最終宣言が採択された。
(8)国連PKO改革に関する安保理ハイレベル公開討論(9月20日)


河野大臣から,ステートメントの中で,PKO要員の能力・パフォーマンス向上の重要性を指摘しつつ,国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト(ARDEC)等,我が国の訓練・能力構築支援におけるベスト・プラクティスを紹介した。各国からは紛争予防や政治的解決の必要性,国連と地域機関のパートナーシップの重要性などが強調された。また,会合の成果として国連PKO改革に関する安保理決議第2378号が採択された。
(9)安保理改革に関するG4外相会合(9月20日)


G4外相は,安保理の正統性,実効性及び代表性を向上させるよう,常任・非常任議席双方の拡大や作業方法の改善等を含む形で,安保理を早期に改革する必要があることを再確認した。また,第71回会期末までに全ての論点に関する議論が尽くされたとの認識に立ち,圧倒的多数の国が交渉のためのテキストを求めていること等も踏まえ,今会期中の政府間交渉でテキスト・ベース交渉を開始するために強い決意を持って取り組むこと等で一致した。
(10)軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)外相会合(9月21日)


共同議長の河野大臣から,核軍縮を進める環境が厳しさを増す中,NPDIの役割がこれまでになく高まっている,核兵器国と非核兵器国の信頼関係を再構築すべく,各国と緊密に協力していきたい旨述べ,北朝鮮の核実験・ミサイル発射等を強く非難。本会合では,(1)2020年NPT運用検討会議に向け,現実的かつ実践的な提案を続けるとのNPDI外相共同声明,及び,(2)北朝鮮の挑発行為をNPDIとして最も強い表現で非難する,独立した共同声明,が発出された。
(11)「不拡散」に関する安保理閣僚級公開会合(9月21日)


河野大臣は,不拡散体制が深刻な挑戦を受けていることに懸念を表明し,CTBT等の具体的取組の重要性を指摘しつつ,北朝鮮の核・ミサイルを強く非難し,安保理決議の厳格かつ全面的な履行等を求めた。また,多くの国が,NPT体制や安保理決議第1540号等軍縮・不拡散体制の維持・強化,国連安保理が大量破壊兵器の不拡散上果たす役割の重要性について発言するとともに,北朝鮮による累次の核実験及び弾道ミサイル発射を強く非難した。
(12)コロンビア大学における講演(9月21日)


河野大臣は,コロンビア大学において,「迫り来る危機における外交」と題した講演を行った。
(13)イエメン人道状況ハイレベル会合(9月22日)


河野大臣から,イエメンにおける極めて深刻な人道状況に対する懸念を表明するともに,日本は本年4月のイエメン支援会合において表明した支援を着実に実施している旨説明した。また,河野大臣は,イエメン政府に対して停戦に向けた積極的な行動をとるよう呼びかけつつ関係各国に対しイエメンの各勢力が対話に向かうことを促すよう呼びかけた。
2 各国・地域との会談・会合を通じた関係強化等
(1)日米印外相会合(9月18日)

日米印外相は,3か国を含む国際社会全体で,北朝鮮に対して,従来にない新たな段階の圧力をかけていくことで一致した。また,自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて,海洋安全保障や地域連結性強化の分野における協力の強化や今後も3か国間の対話を強化・継続していくことで一致した。
(2)日豪外相会談(9月18日)


河野大臣は,日豪間の「特別な戦略的パートナーシップ」を一層強化し,法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するため,緊密に連携することで一致した。また,両外相は,TPPの早期妥結等を目指し,緊密に連携することを確認した。両外相は,北朝鮮問題について緊密に連携すること,拉致問題を含む北朝鮮の人権問題について協力することで一致した。
(3)日・バングラデシュ外相会談(9月18日)


河野大臣は,日本政府がバングラデシュに流入している避難民への具体的支援策を検討中であり,ミャンマー政府に治安の回復等を求めていく旨説明した。また,河野大臣から,北朝鮮情勢に対して従来にない新たな段階の圧力をかけ,北朝鮮の政策を変えさせる必要があること等を説明して協力を求めた。
(4)日露外相会談(9月18日)


河野大臣から,露に対し,北朝鮮に対して働きかけを行うよう強く要請し,両国外相は北朝鮮問題について,国連安保理の場を含め,様々なレベルで連携していくことで一致した。また,北方領土問題について,ウラジオストクの東方経済フォーラムの際の日露首脳会談での首脳間の合意事項の具体化を進めることを確認した。
(5)日英外相会談(9月19日)
(6)日加外相会談(9月19日)
(7)日・アラブ首長国連邦(UAE)外相会談(9月19日)
(8)日EU外相会談(9月19日)
両外相は,15日の北朝鮮による日本上空を通過する形での弾道ミサイルの発射を強く非難し,関連安保理決議の完全な履行の重要性,及び,国際社会の北朝鮮に対する更なる圧力の強化の必要性について一致した。モゲリーニ上級代表から,日米韓各国と協力していくとともに,累次の安保理決議の厳格な履行を各国に働きかけていきたい旨表明した。また,両外相は,アジア太平洋地域における安全保障について緊密に協力していくことを確認した。
(9)日仏外相会談(9月20日)
両外相は,北朝鮮問題に対応する上で,国連安保理決議の完全な履行が重要であり,両国で緊密に協力して圧力をかけていくことを確認した。また,両外相は,海洋における法の支配の重要性を確認するとともに,引き続き「2+2」等の機会を通じて様々な議論を行い,両国間の安保・防衛協力を強化していくことで一致した。さらに,「ジャポニスム2018」の成功へ向けた協力を再確認した。
(10)日・ブラジル外相会談(9月20日)
河野大臣から,ブラジルは,基本的価値を共有する大切なパートナーであり,国連改革等,グローバルなレベルで緊密な協力を深めていきたいと述べた。ヌネス外務大臣から,来年は日本人のブラジル移住110周年であり,この機会に両国関係をこれまで以上に強化したい旨述べた。また,河野大臣から,北朝鮮に対し,国際社会全体で従来にない新たな段階の圧力をかけていく必要性について説明し,両大臣は,今後緊密に連携していくことで一致した。
- (写真提供:ブラジル外務省)
(11)「GUAM+日本」外相級会合(9月20日)
河野大臣から,民主主義,法の支配といった普遍的価値の重要性を指摘し,国際社会における法の支配の確立のため,GUAM諸国と協力したい旨表明し,参加各国から支持を得た。また,河野大臣は,北朝鮮の政策を変えさせるために最大限の圧力をかける必要があること等を述べ,各国は,北朝鮮による最近の核実験及び度重なる弾道ミサイルの発射を非難するとともに,日本に対する連帯を表明した。本会合を受けて共同プレスリリースを発出した。
(12)アフリカ諸国外相との夕食会(9月20日)
河野大臣から,アフリカの平和と安定における「制度構築」の重要性を指摘し,南スーダンへの自衛隊施設部隊の派遣を始めとする日本の取組を紹介するとともに,北朝鮮による核実験及び弾道ミサイル発射の強行はこれまでにない重大かつ差し迫った脅威である等述べた。アフリカ諸国外相等から,日本の支援に対し謝意が述べられた他,北朝鮮関連安保理決議の完全な履行を含め,日本の立場を支持する旨述べ,安保理改革を始め,アフリカ及び国際社会の平和と安定に向けて引き続き日本と協力したい旨述べた。
(13)日・ブルキナファソ外相会談(9月20日)
河野大臣から,道路改修のための無償資金協力に言及しつつ,交通・物流の改善を期待する旨述べたところ,バリー外相は日本の支援を高く評価する旨述べた。また,河野大臣から,北朝鮮について関連安保理決議の完全な履行の重要性等を強調したところ,バリー外相から,日本の立場と一致している等述べた。さらに,バリー外相から,安保理改革の必要性について立場を共有しており今後も協力したい旨述べたのに対し,河野大臣から,交渉の進展を期待する,是非協力したい旨述べた。
(14)日・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)拡大トロイカ外相会合(9月21日)
河野大臣から,CELACとの対話を通じて日・中南米関係をさらに発展させていきたい旨述べ,CELAC側から,日本の援助に感謝する,防災分野等幅広い分野でさらに協力したい旨述べた。また,河野大臣から,北朝鮮に対して従来にない新たな段階の圧力をかける必要性と関連安保理決議の完全な履行等を訴え,各国外相等は北朝鮮による核・ミサイル開発が国際的な軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦であるとして深刻な懸念を共有した。
(15)日独外相会談(9月21日)
河野大臣から,中露にも働きかけ国際社会全体として北朝鮮に対して圧力を強化していく必要がある旨述べ,ガブリエル副首相兼外務大臣は,独も中国やロシアに働きかけておりEUとしても北朝鮮に対する制裁措置をとっている旨述べ,両外相は緊密に協力していくことで一致した。また,安保理改革や核軍縮等の分野でも緊密に協力していくことで一致した。
(16)日中外相会談(9月21日)
両外相は,本年9月の日中国交正常化45周年を歓迎し,懸案を適切に処理しながら更なる関係改善を進め,安定的に関係構築を進めることで一致。また,日中韓サミットの年内開催や河野大臣の訪中について今後具体的に調整していくこととなった。更に,北朝鮮について,河野大臣から,中国が責任ある建設的な対応をとるよう強く働きかけ,両外相は,朝鮮半島の非核化は両国の共通目標であること,関連安保理決議の完全な履行が重要であること,日中間で緊密に連携していくこと等を確認した。
(17)日イラン外相会談(9月22日)
河野大臣から,日本は核合意を支持しており,イランによる遵守を今後も期待している,全ての当事国による核合意の遵守が重要である旨述べ,ザリーフ外相より,イランは核合意を遵守している旨述べた。また,北朝鮮について,河野大臣から,北朝鮮は核実験と弾道ミサイルの発射を繰り返しており,イランとも協力しつつ,北朝鮮に圧力をかけていきたい旨述べ,ザリーフ外相からイランは核兵器及び核実験を含む核兵器の開発に反対しているとの反応があった。
(18)日韓外相会談(9月22日)
両外相は北朝鮮問題について,前日(21日)の日米韓首脳会談の議論も踏まえ,安全保障分野での協力を含め,引き続き日韓・日米韓で緊密に連携していくことを確認した。また,両外相は日韓間には困難な問題もあるが,これらを適切にマネージしつつ,日韓関係を未来志向で進めるべく協力していくことで一致した。