ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第393号
ODAメールマガジン第393号では,以下4話をお送りいたします。(肩書きは全て当時のものです)
- 第1話:モンゴル国より
「モンゴルにおける保健医療の取組」 - 第2話:パプアニューギニア独立国より
「日本が育てたパプアニューギニア国防軍軍楽隊」 - 第3話:国際協力局政策課より
「【イベント報告】「鷹の爪団の 行け!ODAマン 出張授業in島根」を開催しました!」 - 第4話:大臣官房ODA評価室より
「第16回ODA評価ワークショップの開催」
モンゴルにおける保健医療の取組
原稿執筆:一次及び二次レベル医療施設従事者のための卒後研修強化プロジェクト チーフアドバイザー 井上信明,JICAモンゴル事務所 所員 坂元芳匡
モンゴルは面積が日本の約4倍と広大な国ですが,1990年以前の社会主義の時代に全国に医療施設が整備されたため,地方でも基礎的な医療サービスを受けられる体制となっています。2000年代に入り,母子保健や感染症なども改善してきましたが,2016年の5歳児未満死亡率が日本2.7人に対して,モンゴル17.9人(出生1,000人あたり),結核罹患率が日本16人に対して,モンゴル183人(人口10万人あたり)(WHO World Health Statics 2018(PDF)による)と先進国と比べると大きな開きがあるのが現状です。また,近年は遊牧生活からウランバートルなど都市への移住も進み,高血圧,糖尿病などライフスタイルの変化による疾患も増えています。
都市と地方との医療の質の格差も大きな課題です。かねてから,モンゴルでは地方の医師不足を解消するため,医学部卒業直後の十分な技術のない医師たちを,指導医もいない地方に強制的に配置してきました。しかしその結果,地方の医療の質は低下,住民の医療不信を招いてしまっています。
こうした課題に取り組むため,JICAは医学部卒業後の医師の卒後研修制度を強化する技術協力プロジェクトを実施しています。2015年より5年間の予定で,(1)研修を管理する行政組織の能力強化,(2)カリキュラム開発や指導医の養成,(3)地方での研修実施の3つを柱に協力しています。
特に,住民の様々な健康課題に対応できる幅広い能力を備えた総合診療医の育成は急務で,モンゴル関係機関と一緒に取り組んでいます。これまで,国民が求める総合診療医の能力を定め,その能力を獲得できる1年間の研修カリキュラムの開発に協力しました。
また日本の臨床研修指導医講習会をモデルに,指導医を養成する研修の開発も支援し,すでに400名以上の指導医が全国各地に生まれています。
もう一つの大きな成果は,地方での総合診療医育成です。これまでモンゴルでは1年間という長い期間の臨床研修は地方で実施できませんでしたが,日本の専門家による技術指導もあり,2018年10月よりモンゴル初の総合診療研修がオルホン県開始されています。
このプロジェクトの他にもモンゴル初の大学病院である日本モンゴル教育病院の設立による医療人材育成にも取り組んでいます。また,看護師など10名程度の保健・医療分野の青年海外協力隊員も全国各地でモンゴル国民の方々と寄り添いながら活動しています。これらの協力を通じて,モンゴルの保健医療水準の向上を目指しています。
日本が育てたパプアニューギニア国防軍軍楽隊
原稿執筆:JICA専門家(元航空自衛隊航空中央音楽隊長) 水科 克夫
2018年11月,パプアニューギニア(以下PNG)が初の議長国としてAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を開催した中,PNG国防軍軍楽隊がガラ・ディナー会場で各国首脳を歓迎する演奏を繰り広げました。
安倍総理夫妻が会場に到着した際は,日本の童謡「ふるさと」を演奏。夫妻は立ち止まって聴かれ,総理は終了後「ブラボー」の掛け声と共に指揮者に握手を求められました。これに先立つ数時間前には,PNG国防軍軍楽隊の駐屯地を訪問された昭恵夫人が「ふるさと」を含む演奏を聞かれて涙ぐまれる場面もありました。
この軍楽隊は,APEC議長国をつとめるPNG政府への日本による支援の一環として誕生したものです。軍楽隊への支援は,2015年6月の防衛省とPNG国防軍との能力構築支援事業への合意にさかのぼります。
この合意に基づいて,2017年1月,PNG国防軍は40名の軍楽隊を編成し,本格的な支援を受けることになりました。支援事業は陸上自衛隊中央音楽隊による音楽教育から始まり,APEC開催までの間,1回あたり1週間から2か月間の教育を日本で4回,現地で7回実施しました。
また,ODAによる支援として,2017年3月から,JICA専門家として筆者が2年間現地に派遣され,継続的な教育や各種楽曲の作編曲をするなど成果の向上を図りました。
2017年8月には草の根文化無償資金協力による新品の日本製楽器が全員に手渡されました。また,軍楽隊のための行進曲を外務省が日本国内で一般公募し,入選曲「March “Port Moresby”」が軍楽隊に寄贈され,APECをはじめとする種々の公式行事で何度も演奏されました。これらに先だって,PNGに姉妹校を持つ仙台育英学園から軍楽隊に対して中古楽器を贈られました。
PNGにおける学校教育では,音楽の授業が十分ではないため支援当初は軍楽隊員のほとんどが楽譜も読めず,管楽器に触れるのも初めての経験でした。軍楽隊がわずか2年足らずの教育で,APECの公式行事で演奏できるレベルに達したことは奇跡的だといえますが,そこには隊員の熱意と,それを育んだオール日本の支援がありました。
【イベント報告】「鷹の爪団の 行け!ODAマン 出張授業in島根」を開催しました!
原稿執筆:国際協力局政策課
3月2日(土曜日),島根県で「鷹の爪団の 行け!ODAマン 出張授業in島根」(主催:外務省,共催:国立大学法人島根大学,TSK山陰中央テレビ,協力:JICA中国,後援:島根県)が開催されました。
島根県は,河野外務大臣になんとなく任命されて「ODAマン」となった「秘密結社 鷹の爪団」の主人公・吉田くんのふるさとです。島根に初めて登場した「ODAマン」の着ぐるみが盛り上げる中,トルコでのダイナミックな地下鉄敷設事業に始まり,島根と世界をつなげる知られざるODAまで,熱いトークが交わされました。
河野大臣も愛用している「ODAマン」のオリジナルピンバッヂが当たる抽選会も行われ,最後は全員でO・D・Aポーズで決めて終了。TSK山陰中央テレビや山陰中央新報でも報道され,島根が「ODAマン」色に染まった一日となりました!
【第一部:オダじゃないよ!島根一分かりやすいODA講座】
14時10分から14時50分
第一部では,ODAのプロである外務省国際協力局政策課の今福課長と,「ODAマン」を生み出す過程で初めてODAを詳しく知ったという「秘密結社 鷹の爪」の原作者にして声優のFROGMAN氏が,日本のODAによって叶えられたトルコ150年の夢,イスタンブールのボスポラス海峡を横断する地下鉄の敷設事業についてトーク。世界から信頼される日本の技術,そしてODAを通じて深まる国と国の関係等,臨場感あふれる話に,皆さん真剣に聞き入っていました。
【第二部:島根でODA!トークイベント】
15時10分から16時20分
第二部では,島根大学国際交流センターの青晴海教授がコーディネーターとなり,「島根でODA!」の最前線にいる,JICA中国の岩田和美・島根県国際協力推進員,浜田市世界こども美術館(島根県)によるブータン王国への美術教育支援事業でプロジェクトマネージャーを務める高野訓子学芸員,7月から青年海外協力隊隊員としてジャマイカで野菜栽培技術を教える予定の島根大学大学院生・橋本友太さんも参加。
島根県は47都道府県中,鳥取県の次に人口が少ないながら,青年海外協力隊の派遣人数の人口に対する割合は最近まで全国一位をキープしており,実は世界にとても近い県であること,浜田市世界こども美術館を始め,島根県が誇る石州和紙も長年ブータンへの支援をしていたこと,海外展開を始めた島根県の企業の取組事例等が紹介されました。これらは全てODAの一環であるということに皆さん驚かれ,ODAを一気に身近に感じてくださったようです。
今後とも,「ODAマン」は全国各地で情報発信に尽力していきますので,イベント情報をどうぞお見逃しなく!
第16回ODA評価ワークショップの開催
原稿執筆:大臣官房ODA評価室
1月29日から30日にかけて,外務省はタイ外務省国際協力機構(TICA)と共催し,バンコクにおいて第16回ODA評価ワークショップを開催しました。
今回のワークショップには日本とタイを含め19か国から52名の参加者があり,特にアジア大洋州諸国からの幅広い参加が得られました。ODA評価ワークショップは,より効果的な開発政策の策定と実施に資する各国の評価能力の向上を目的として,2001年から開催されており,今回で16回目の開催となりました。
今回のワークショップは,共催国である日本とタイの代表(桑原進 外務省国際協力局審議官およびバンチョン・アモーンチーウィン タイ外務省国際協力機構(TICA)副局長・局長代理)の開会挨拶で始まりました。
湊直信 日本評価学会理事(元アジア太平洋評価学会副会長)とシリポーン・ワッチャワンク タマサート大学准教授による共同議長の下,ワークショップ中には参加者間で「持続可能な開発目標(SDGs)時代における評価:評価能力開発とアカウンタビリティーに向けた知見の共有」について,各国の評価能力の向上や評価の仕組みづくりに関し活発な意見交換がなされました。
今回のODA評価ワークショップは,各国政府の評価関係者,およびタイ外務省国際協力機構,国連開発計画(UNDP),アジア開発銀行(ADB),経済協力開発機構(OECD)などの国際機関や,評価専門コンサルタントの参加を得て,参加者にとってより広い視野から,SDGsを踏まえた評価能力開発とアカウンタビリティーを学ぶ機会となりました。また同時に本ワークショップの開催を通じて,日本の評価の取組をアジアから世界に向けて発信することができました。
第16回ODA評価ワークショップの開催
最近の開発協力関連トピック
- (1)第5回国際女性会議WAW!(PDF)
今月の23日から24日,国際女性会議WAW!が東京で開催されます!女性の活躍についての様々なワークショップやリーダーたちの企業講演などが盛りだくさんです。 - (2)【ODAちょっといい話】ルワンダにおける技術教育のモデル校「トゥンバ高等技術専門学校」
ODAの現場のお話を毎月お届けする「ODAちょっといい話」。今月は,ルワンダ全土に広まった日本の教育システムについてお伝えします。
【各国の言葉が伝える!開発協力】
現地の人々に日本の開発協力を知ってもらうため,在外公館は,その国の言語で開発協力に関するパンフレットを作成したり,現地プレスを開発協力の現場に招いて報道してもらうツアーを実施しています。今回,ミクロネシア(英語)(PDF),ナイジェリア(英語)(PDF),コロンビア(西語)(PDF)のパンフレットおよび,コンゴ共和国,トンガ,ベナンで実施したプレスツアーの実施報告を公開しました。