ODA(政府開発援助)

2019年2月13日発行
平成31年2月21日

ODAメールマガジン第391号では,以下3話をお送りいたします。(肩書きは全て当時のものです)

  • (画像1)アゼルバイジャン共和国

国の陰に光を当てる,日本の支援

原稿執筆:在アゼルバイジャン日本国大使館 薄井 謙彰 一等書記官

アゼルバイジャンは実は地下資源が豊富な国です。パイプラインを通じて石油やガスを直接ヨーロッパの国々に売って,大きな収入を得ることが出来ます。なぜ日本はそんな国でODAでの支援を行っているのでしょうか?

確かに,アゼルバイジャンでは石油やガスを売ることが出来るため,外貨は潤沢に入ってきます。近年の原油価格下落によって経済は大打撃を受け,現在は石油依存の経済構造の脱却を迫られているものの,石油の値段が高かった2014年までは見事な経済成長を見せ,首都バクー市内には様々な高層ビルや珍しいデザインの建築物が建てられました。

  • (写真1)カスピ海から見たフレームタワー
    カスピ海から見たフレームタワー
  • (写真2)国内避難民【写真提供:東草の根委嘱員】
    国内避難民
    【写真提供:東草の根委嘱員】

バクー市内では高層ビルやショッピングモールが建設されたり,立派な道路が作られたりとインフラが整えられています。国際的にもヨーロッパオリンピックやF1グランプリを誘致するなど,国力の高さをアピールしています。2025年の万博開催をかけて,大阪と争ったことも記憶に新しいかと思います。

劇的な経済成長を遂げた産油国のアゼルバイジャンですが,2017年の一人あたりのGDPは4,140.7ドル(世界第109位)ほどです。他のコーカサス地域の国であるジョージアの4,085.8ドル(世界第111位)やアルメニアの3,857.2ドル(世界第118位)と大きく変わらず,国内の富の再分配は依然大きな課題となっています。

お金が行くべきところに行っていないというのは,多くの国民が感じていることのようです。バクー市は著しく発展しているのですが,地方に目を転じてみると,驚くほど発展から取り残されていることが分かります。

例えば,ガス産出国だけあり,全土にガス管は張り巡らされているのですが,水道インフラの整備は十分になされていません。UNICEFとWHOが2015年に行った調査では,都市部では95%が水道からの飲み水を得られている一方,地方では72%にとどまるという結果が出ています。

実際に,湧水や川まで水汲みに行くか,それもない場合は週1回やってくる給水車から水を買うという生活をしている村が未だにあります。【参考:WHO/UNICEF JMP別ウィンドウで開く

また,地方での医療施設の状態も様々です。診療所があって医師が常駐していることが理想的ですが,そのようなインフラが整っている村はそれほど多くなく,地方の拠点となる町から医師が巡回でやってくるか,看護師などが常駐して予防接種や簡単なけがの治療を行うのが一般的です。
その際に拠点となる診療所の状態も様々で,壁や床が崩壊寸前の建物で医療行為を行っている診療所もまだまだ残っています。(注)

日本は,こうした状況を踏まえ,地方における水や医療インフラの整備を主に草の根・人間の安全保障無償資金協力によって支援しています。現在は年間10数件の支援を実施しており,このような小さな一歩一歩が将来のアゼルバイジャンの国造りを支え,それによって育つ若者が日本との友好関係の礎となってくれればと思いながら,日々まい進しています。

アゼルバイジャンは独立してまだ28年目の比較的若い国であり,着実な国造りを行うための準備を行っている段階です。石油からの収入を,教育や医療といった長期的な投資を必要とする分野に的確に振り分け,国として目標に向かって着実に前進できるよう,日本は引き続き,その努力の後押しとなる支援をしていきます。

  • (写真3)給水施設の供与式の様子
    給水施設の供与式の様子
  • (写真4)幼稚園の供与式にて
    幼稚園の供与式にて
  • (写真5)給水車から給水する様子
    給水車から給水する様子

【参考:IMF,World Economic Outlook Databases別ウィンドウで開く(2018年10月現在)】

(注):医学雑誌「Lancet別ウィンドウで開く」による調査(2018年)では,アゼルバイジャンの医療へのアクセスと質は(HAQ,Healthcare Access and Quality)は92位と,他のコーカサス地域のアルメニアの70位,ジョージアの89位に比べて,低くなっています。

第24回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP24)開催報告

原稿執筆:国際協力局気候変動課

国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)は年に1回度開催されます。気候変動枠組条約の締約国(197か国・機関)が集まって世界の気候変動対策について議論する,気候変動に関する最も重要な会議の1つです。今回は,2018年12月2日から15日にかけてポーランドのカトヴィツェで開催されたCOP24についてご紹介します。

  • (写真6)ポーランド・カトヴィツェにおけるCOP24の会場<br>【写真提供:IGES】
    ポーランド・カトヴィツェにおけるCOP24の会場
    【写真提供:IGES】

COP交渉の歴史

COPは,1992年に気候変動枠組条約が採択された後,気候変動に関する国際枠組みを議論する交渉の場として,1995年から毎年開催されています。気候変動交渉は先進国と途上国の立場の違いもあり,非常に難しい交渉であると言われていますが,一歩ずつ議論を進展させてきました。

1997年に京都で開催されたCOP3で採択された京都議定書では,先進国のみに法的拘束力のある温室効果ガス削減目標が設定されました。しかし,2015年のCOP21で採択されたパリ協定では,先進国・途上国の区別なく,全ての国が排出削減目標を設定し,目標達成に向けた取組を行うことが合意されました。パリ協定は先進国・途上国がお互いの立場を乗り越え,全ての国が気候変動対策に向けた取組を進めていくことに合意した,歴史的な転換点であるといえます。

  • (写真7)COP21におけるパリ協定採択時の様子
    COP21におけるパリ協定採択時の様子

COP24での交渉

COP21でパリ協定が採択された後は,パリ協定の実施に必要な詳細なルール(パリ協定実施指針:the Paris Agreement Implementation Guidelines)の交渉がはじまりました。2018年12月2日から15日にかけてポーランド・カトヴィツェで開催されたCOP24では,このパリ協定実施指針に合意できるかが,最大の焦点となりました。

  • (写真8)COP24における議論の様子【写真提供:IGES】
    COP24における議論の様子【写真提供:IGES】

パリ協定実施指針は,非常に技術的な論点が多く,とても難しい交渉が続きました。各国の交渉官が連日深夜まで,時には明け方まで交渉を重ねた他,日本からは原田環境大臣が参加した閣僚級の交渉も幾度となく行われました。結果,12月15日にパリ協定の実施指針が無事採択され,一部論点はCOP25に向けて検討を継続することが決まりました。

パリ協定の実施指針が採択された瞬間,会場は大きな歓声・拍手に包まれました。各国の交渉官が「予想以上の成果だった」と評する実施指針に合意できたことは,国際社会の気候変動対策に対する強い決意の表れであるとも言えます。今後は,パリ協定が「絵に描いた餅」とならないよう,各国の具体的な行動(action)が求められており,日本も積極的な国内対策・国際協力を進めていく必要があります。

  • (写真9)パリ協定実施指針を採択し握手を交わす,原田環境大臣とCOP24議長のクリティカ・ポーランド環境副大臣
    パリ協定実施指針を採択し握手を交わす,
    原田環境大臣とCOP24議長のクリティカ・ポーランド環境副大臣

COP24における日本の取組発信

世界中の国・企業・NGO等,1万から2万人もの参加者が集まるCOPは,各国の激しい交渉の場というだけではなく,各々の取組・主張を国際的にアピールする場としても重要な意味を持っています。日本も,原田環境大臣がナショナルステートメントで日本の取組を紹介するとともに,ジャパンパビリオンと呼ばれるイベントスペース等を通じて,日本のアクションを積極的に発信しました。

  • (写真10)原田環境大臣によるナショナルステートメントの様子
    原田環境大臣によるナショナルステートメントの様子
  • (写真11)日本の取組を紹介するジャパンパビリオンの様子【写真提供:IGES】 (写真12)日本の取組を紹介するジャパンパビリオンの様子【写真提供:IGES】
    日本の取組を紹介するジャパンパビリオンの様子【写真提供:IGES】

【イベント報告】「ワン・ワールド・フェスティバル」に参加しました!

原稿執筆:国際協力局政策課

2019年2月2日(土曜日),3日(日曜日),大阪市内の北区民センター等三会場にて「ワン・ワールド・フェスティバル」(主催:ワン・ワールド・フェスティバル実行委員会,協力:外務省)が開催されました。

26回目を迎えた今回のワン・ワールド・フェスティバルには,外務省を始めとする国際協力に関わる約128者がブースを出展,2日間で延べ約25,000人が来場し,大盛況のうちに終了しました。外務省は,写真展や,草の根大使・ペナルティによるステージイベントをはじめ,以下の出展・プログラムを行いました。多くの来場者の方と心温まる交流を持つことができ,思い出に残るイベントとなりました。

【写真展】

日時:2月2日(土曜日)・3日(日曜日)10時00分から17時00分

「わたしたちのAction」

一般から広く募集した,日本の国際協力活動の現場や,開発途上国における日本人の国際協力活動の取り組み等をとらえた貴重な写真を紹介しました。多くの来場者の方が真剣に見入り,積極的な感想を寄せてくださいました。

  • (写真13)【写真展】「わたしたちのAction」
  • (写真14)【写真展】「わたしたちのAction」

【外務省ブース】

日時:2月2日(土曜日)・3日(日曜日)10時00分から17時00分

外務省の職員から来場者の皆様に,ODA(政府開発援助)やSDGs(持続可能な開発目標)等についてご紹介するとともに,外務省のオリジナルキャラクター「ODAマン」がODAを紹介するクイズで皆様と楽しく交流しました。

  • (写真15)【外務省ブース】
  • (写真16)【外務省ブース】

【草の根大使・ペナルティ】

日時:2月2日(土曜日)13時00分から13時30分

「草の根大使」ペナルティが草の根無償を紹介しました!

昨年誕生30周年を迎えた「草の根・人間の安全保障無償資金協力」(草の根無償)について,草の根大使のペナルティ(吉本興業所属)が,タイの支援現場を訪問した際のオリジナル動画を交えて紹介しました。

ペナルティは現地の人々との交流を振り返り,現地の様々なニーズに迅速かつきめ細やかに対応する草の根無償の特色を語りました。また会場の皆さんに対し,自分でも何かやってみようという気持ちが大切と訴えながら,草の根大使にちなんだギャグも披露し,大いに盛り上がったステージとなりました!

  • (写真17)【草の根大使・ペナルティ】
  • (写真18)【草の根大使・ペナルティ】

【SDGs関連セミナー】

日時:2月2日(土曜日)14時00分から15時00分

「SDGs及びマルチな国際課題における日本の取組」

G20大阪サミットを6月に控え,同サミットの重要課題の一つであり,日本がリードする分野でもあるSDGs(持続可能な開発目標)および各分野の国際課題における取組について,外務省の担当者が,具体例を交えて分かりやすく説明しました。会場からは,多くの質問が寄せられ,SDGsへの関心の高まりが感じられました。

  • (写真19)【SDGs関連セミナー】
  • (写真20)【SDGs関連セミナー】

【NGO支援制度説明会】

日時:2月2日(土曜日)16時20分から17時20分

日本の国際協力NGOが活用できる支援事業についての説明会を開催しました。外務省からは民間援助連携室長が出席し,外務省と国際協力NGOの連携や資金協力のスキーム等について説明しました。JICAと(一財)日本国際協力システム(JICS)からも,それぞれが有するNGO支援事業の対象団体や金額など細やかな説明が行われ,(特活)関西NGO協議会からは民間財団の助成プログラムの紹介がありました。また,外務省の委託を受けたNGO相談員による相談コーナーも設置し,NGO関係者やNGOに関心のある方々から,多くの相談が寄せられました。

  • (写真21)【NGO支援制度説明会】
  • (写真22)【NGO支援制度説明会】

今後とも,外務省は地方における情報発信に尽力していきますので,ODAホームページで発信するイベント情報をどうぞお見逃しなく!

最近の開発協力関連トピック

(写真23)最近の開発協力関連トピック
  • (1)【ODAちょっといい話】(働きたい女性を応援!山の中の女性職業訓練学校)ホンジュラスの女性の経済的自立に向けた日本のサポートについてお話しします。
  • (2)【ODA出前講座】
    国際協力のお話しをするため,第一線で働く職員を皆様のもとへ派遣しています。新年度の行事やイベントなどに是非ご活用ください!ご相談,お申し込みはこちらから
  • (3)【各国の言葉が伝える!開発協力】
    現地の人々に日本の開発協力を知ってもらうため,在外公館は,現地の記者を開発協力の現場に招いて報道してもらうツアーを実施しています。今回はスーダン別ウィンドウで開くモンゴル別ウィンドウで開くルワンダ別ウィンドウで開くで実施したプレスツアーの報告を公開しました。

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