ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第386号
ODAメールマガジン第386号では,以下2話をお送りいたします。(肩書きは全て当時のものです)
- 第1話:ジャパン・プラットフォームより
「ジャパン・プラットフォームによる緊急人道支援【第10弾 人道支援は誰のため?:JPFのモニタリング&評価】」 - 第2話:国際協力局地球規模課題総括課より
「「『世界津波の日』2018高校生サミットin和歌山」の開催報告」
ジャパン・プラットフォームによる緊急人道支援
【第10弾 人道支援は誰のため?:JPFのモニタリング&評価】
原稿執筆:ジャパン・プラットフォーム 事業評価部 月岡 悠
災害や紛争により一時的に厳しい状況に置かれた被災者や難民であっても,本来は一人一人が困難を自ら乗り越えていく力を備えています。ジャパン・プラットフォーム(JPF)のような人道支援機関は,その一人一人とともに生活や社会の再建に取り組みます。JPFの使命は,支援を受け取る人々(裨益者)のための人道支援を提供することです。支援を展開する上で,“支援の質”を担保しつつ,裨益者に対する“説明責任(アカウンタビリティ)”を最大限果たしていくことは,我々の義務です。
“支援の質とアカウンタビリティ”は,人道支援を実施する上での最も基本的な価値観であり,「災害救援における国際赤十字・赤新月運動および非政府組織(NGOs)のための行動規範(PDF)」や「スフィア基準」などに反映され,人道支援機関の共通言語となっています。
支援を実施した結果,どのくらいの成果が得られたのか。
人道支援における“支援の質”とは,支援が,効果的(インパクト),効率的(適切なタイミングと費用効率),ニーズマッチング(支援ニーズと事業地の状況)に基づき実施されているのかを意味します。効果,効率,ニーズマッチング性は,経済協力開発機構 開発援助委員会(OECD DAC)の評価基準に沿っており,きちんと測定することが求められています。
支援のための資金,人,時間などのリソースはどのように使用されたのか
“アカウンタビリティ”を担保するためには,支援内容の透明性が,資金を提供してくださる納税者や寄付者,そして裨益者に対しても担保されることが最も重要です。
支援は本当に裨益者のためになったのか
JPFは,“支援の質とアカウンタビリティ”を確保するため,モニタリング・評価を実施し,様々な方法,角度から事業を検証しています。例えば,食糧の配布数や配布に対する単純な満足度だけではそのような検証には耐えられません。支援を受ける前の人々はどのように食糧を確保していたのか,そして食糧支援の結果,人々の状態にどのような変化があったのか。こうした総合的な検証を実施することなしに,使用したリソースに応じた質の高い成果があったとは言えません。
一例として,今世紀最大の人道危機と言われるシリアを巡る危機に対して,JPFは2012年から現地提携団体を通じて支援を実施してきました。常に戦闘に追われ,居場所を転々とせざるを得ない人々に対し,生存のために必要な最低限の食糧をシリア国内で届けています。
JPFの最新の現地定期モニタリング調査では,食糧配布の成果を数量的に確認するため,30分から1時間程度の質問票による裨益者インタビューを実施しました。同時に,質的なデータ収集のため,1グループ8人程度の裨益者に集まってもらい,実施された食糧支援を議題に話し合いをしてもらいました。さらに,地域のリーダーなどに対しても,個別インタビューを実施しました。
合計1,082人の裨益者インタビュー,8回のグループ議論,10人の地域リーダーへの個別インタビューの結果から,対象事業の計画どおり,裨益者が対象地域内で最も脆弱な人々かどうか適切に検証され,大きな問題が発生することなく彼らに対して食糧配布が実施されていることが確認できました。また,配布食糧の品質にも問題はなく,きちんと配布先で消費され,その結果,脆弱な人々が食糧を確保する一助となっていると判断できました。
一方で,食糧を一度に持って帰れない年老いた女性が2回に分けて持ち帰ろうとしたところ,置いてあったはずの食糧が戻ったときにはなくなっていたなど,配布後のプロセスにおいて今後の課題が浮き彫りになりました。
JPFの使命は裨益者のための人道支援を提供することです。現場からあがってくる裨益者の声に真摯に耳を傾け,今後も“支援の質とアカウンタビリティ”の向上に取り組んでいきます。
「『世界津波の日』2018高校生サミットin和歌山」の開催報告
原稿執筆:国際協力局地球規模課題総括課 渡邊 幸治 外務事務官
2015年12月の第70回国連総会において,日本をはじめ世界142か国による共同提案で,11月5日が「世界津波の日」として採択されました。日本は「世界津波の日」を踏まえ,防災分野での国際協力を推進しています。今回はODAメールマガジン第383号で開催告知しました「『世界津波の日』2018高校生サミットin和歌山」の開催についてご報告します。
本年で3回目となる同サミットは10月31日から11月1日にかけて和歌山県で開催され,日本を含む48か国の高校生(国内参加高校生134名,海外参加高校生244名)が参加しました。
高校生たちは,サミット開催前に和歌山県広川町の「稲むらの火祭り」に参加したほか,鉄道からの避難訓練(鉄學)や,県内高校との交流等を行いました。また,1854年に安政南海地震の津波から村人を救った濱口梧陵(ごりょう)の広村堤防や,稲むらの火の館,美浜町の津波避難用の高台等も視察しました。
サミットでは,全体テーマ「災害から命を守る『稲むらの火』発祥の地で濱口梧陵の精神を共に学ぶ」のもと,12グループに分かれた高校生が,「災害について知識を得る」「災害に備え意識を高める」「災害から生き抜く」の3分野で2日間にわたって分科会を行い,国籍を越えて活発な議論が行われました。
10月31日の夜には,鈴木憲和外務大臣政務官主催のレセプションが開催されました。日本の高校生によるよさこい踊りや,ラオスの高校生による伝統舞踊等が披露され,日本と海外の高校生が交流を深めました。最終日の11月1日の総会では,各グループの意見が集約された,「稲むらの火継承宣言」が採択されました。
本サミットにて津波を始めとする自然災害の脅威や防災・減災の取組を学んだ高校生らは,帰国後,日本で学んだことを発信するとともに実践し,各国の防災・減災分野において,主導的な役割を担う津波防災大使として活躍することが大いに期待されます。日本はそのような若手防災リーダーの育成に尽力し,津波をはじめとする自然災害から一人でも多くの尊い命を守るため,引き続き防災分野で国際社会に貢献していきます。
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赤がトレードマークの「秘密結社 鷹の爪団」。主人公の吉田くんが日本のODAをわかりやすく紹介するため,外務省になんとなく任命されて真っ白な“ODAマン”に変身しています!ODAマンが活躍するアニメはこちらからご覧ください!ぜひお見逃しなく! - (2)海外における開発協力広報(現地報道機関に対するプレスツアー)
在外公館では,開発協力を通じた日本の国際貢献について現地の方々に理解してもらうための広報をしています。
このたびエルサルバドルおよびグアテマラで,現地プレスを招いて開発協力の現場を視察してもらいました。 - (3)ODAホームページ日本語版「みえる!開発協力」と英語版「Pickup Development Cooperation JAPAN」のコーナーに新しい記事をアップしました
ケニアの首都ナイロビでは,人口増加の加速により渋滞や環境悪化が問題となっています。日本は,1963年からODA案件を通じてケニアの経済連携を深めていますが,今回はその中のひとつ,道路拡幅計画への協力について紹介しています。