ODA(政府開発援助)

2018年8月23日発行
平成30年8月27日

ODAメールマガジン第380号では,以下2話をお送りいたします。(肩書きは全て当時のものです)

  • (画像)バングラデシュ人民共和国

子どもたちがほんとうに学ぶために

原稿執筆:JICAバングラデシュ事務所 花屋 亜希子 (初等教育アドバイザー)

今回は持続可能な開発目標(SDGs)の目標4「質の高い教育をみんなに」に関して,バングラデシュで行われている初等教育支援を紹介します。

SDGsの前身は,2000年から2015年にかけて世界で達成を目指して設定されたミレニアム開発目標(MDGs)ですが,そのうちの一つである目標2は「初等教育の完全普及の達成」でした。

初等教育の目標における,MDGsからSDGsへの主な変化は,教育への「アクセス」だけでなく「質」に注目するようになった点です。この進展は実はバングラデシュの発展段階にぴったりと合っています。バングラデシュ初等教育の純就学率(注1)は2000年の73%から2016年の98%にまで大きく伸びましたが,残念ながら,学校に来てはいても学力が十分に身についていない子どもたちが多くいます。

  • (写真1)バングラデシュの小学生【写真提供:谷本 美加/JICA】
    バングラデシュの小学生
    【写真提供:谷本 美加/JICA】
  • (写真2)教室の様子【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】
    教室の様子
    【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】

バングラデシュ初等教育支援の特徴として,ドナー(支援を行う側)が協調して個別の分野を支援するというセクター・ワイド・アプローチ(SWAp)が採用されていることがあります。2018年6月に終了したばかりの7年計画では,日本を含む10のドナーが参加し,効率的・効果的な援助を行い,成果をあげました。
この後継計画は,世界でもあまり例をみないSWApの4代目になります。プロジェクトサイクルを重ねるごとに,政府の初等教育を円滑に運営する力が着実に強くなってきているのが頼もしいところです。

日本のバングラデシュ初等教育支援の看板は,なんといっても理数科教育です。JICAの技術協力プロジェクトは,2004年から,教科書や教材の開発,教員研修など,理数科教育を包括的に支援してきました。SDGsにおいても「読解力,算数の習熟度」が教育目標の達成度を測る第一の指標となっていること,バングラデュの児童は算数の学力向上が課題であることから,特に重要視されている支援です。

多くの開発パートナーがいる中,バングラデシュ政府からは,「理数科教育の支援は継続して日本にお願いしたい」と依頼を受けています。信頼に応え,児童が理数科をより理解する,結果を出す支援をしなければ,と身の引き締まる思いです。

  • (写真3)技術協力プロジェクトで支援した小学校1年生算数の教科書【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】
    技術協力プロジェクトで支援した
    小学校1年生算数の教科書
    【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】
  • (写真4)教員研修の様子【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】
    教員研修の様子
    【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】

かつてはアジア最貧国の1つに数えられていたバングラデシュは,着実な経済成長を続け,2017年には後発開発途上国(注2)からの卒業が認定されました。SDGsにもしっかりと国がリーダーシップをとって取り組んでおり,毎年達成状況を確認していく意向を表明しています。日本が,この力強い発展を見せる国と信頼のおけるパートナーとして固い絆を築いており,また,その子どもたちの将来の可能性を広げる初等教育の支援をできることは,よりよい世界の実現につながる大切な一歩であると感じています。

  • (写真5)試験を受ける子ども【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】
    試験を受ける子ども
    【写真提供:JICAバングラデシュ事務所】

(注1)純就学率:ある学年に相当する年齢の人口のうち,実際何名がその学年に在籍しているかを表す割合。

(注2)後発開発途上国:国連開発委員会が認定した基準に基づき,国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々。2017年6月時点では,バングラデシュを含む47か国がリストに含まれていた。

ジャパン・プラットフォームによる緊急人 道支援【第8弾 アフガニスタンでの緊急人道支援】

原稿執筆:ジャパン・プラットフォーム 助成事業推進部 増田 育真

約40年という長きにわたり紛争状態にあるアフガニスタンでは,総人口3,450万人のうち39%が貧困ライン以下で生活しており,29%が医療や教育といった基礎サービスへのアクセスが,極めて限られた状況下で暮らしています(注1)。

  • (写真6)校舎がなく,炎天下で授業を受ける生徒の様子【写真提供:シャンティ国際ボランティア会】
    校舎がなく,炎天下で授業を受ける生徒の様子
    【写真提供:シャンティ国際ボランティア会】
  • (写真7)遠くまで水を汲みに行く子どもたちの様子【写真提供:シャンティ国際ボランティア会】
    遠くまで水を汲みに行く子どもたちの様子
    【写真提供:シャンティ国際ボランティア会】

2016年以降の同国を取り巻く人道危機の特徴は,難民として避難していた人々が帰還民として元の国に大量流入していることによる,社会的混乱と貧困の更なる拡大です。隣国パキスタンやイランで長年居住してきたアフガン難民の多くがアフガニスタンへ帰還し始めており,2018年は約45万人の国内避難民の発生に加え,パキスタン・イランからおよそ500万人の帰還民が流入してくることが予測されています(注1)。

帰還民の大部分はアフガニスタンの外で生まれ育っており,地縁や生活の基盤を持たない多くの帰還民は,保護や雇用の面で困難な状況に立たされています。一方で,国内避難民・帰還民の受け入れコミュニティも,病院・学校などの受け入れ能力の超過,労働者の賃金の下落,家賃相場の高騰といった様々な社会問題に直面しており,国内避難民・帰還民と彼らを受け入れているコミュニティとの間で乏しい資源をめぐる競争も生まれています(注1)。

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は2001年よりアフガニスタンでの支援活動を開始し,状況に応じて内容を変えながら長く支援を続けてきました。2017年2月からは,これらの情勢を鑑み,特にアフガニスタンに帰還してくる人々に焦点を当て,JPF加盟NGOの6団体(注2)がそれぞれの強みと経験を活かしながら帰還民支援として11事業を実施してきました。

加盟NGOの一つ,シャンティ国際ボランティア会は,不安定な避難生活によるストレスや,紛争によるトラウマに苦しむ子どもたちを対象に,図書の貸出しやレクリエーション活動を通じた心理社会的支援や,帰還民の流入により教室数が不足している学校に対する仮設校舎の建設等を実施し,子どもが安心して過ごせる空間の確保に取り組んでいます。

また,複数の団体が,生活に必要な物資を購入することができない貧困層の帰還民を対象に,食糧・物資配布支援を実施し,困窮する人々の生活を守り,帰還民の生活向上に貢献しています。2018年6月時点で,総事業費は約3億9千万円,総裨益者数は約65,700名となっています(注3)。

  • (写真8)物資を受け取った帰還民たち【写真提供:シャンティ国際ボランティア会】
    物資を受け取った帰還民たち
    【写真提供:シャンティ国際ボランティア会】
  • (写真9)アフガン災害支援・防災関係者と石巻の方々【写真提供:ジャパン・プラットフォーム】
    アフガン災害支援・防災関係者と石巻の方々
    【写真提供:ジャパン・プラットフォーム】

アフガニスタンでは,紛争だけでなく地震や洪水,干ばつ,土砂災害などの自然災害が多発しており,被災する人々の数も増加傾向にあります。JPF事務局は2016年に,同国政府機関の防災能力とコミュニティのレジリエンス(自ら復興する力)強化を目的とした事業を開始し,CWS(Church World Service)Japanの調整の下,アフガン災害支援・防災関係者を日本に招へいしました。本事業に参加されたアフガニスタン国家災害庁の上層部は,日本の防災枠組を基礎とした防災戦略を作りたい,との意欲を示し,国としての取り組みの機運を作ることに貢献しました。

まだまだ多くの困難と課題をかかえるアフガニスタンですが,JPFはこれからも,私たちの経験と強みを活かした支援を届けてまいります。

JPFの活動について詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい

(注1)文章内各数値は,国連人道問題調整事務所(OCHA)のAfghanistan Humanitarian Needs Overview 2018別ウィンドウで開くより参照

(注2)特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR),特定非営利活動法人ADRA Japan(ADRA),特定非営利活動法人CWS Japan(CWS),特定非営利活動法人ジェン(JEN),特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ),公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)

(注3)2017年2月から2018年6月までの期間。この恩恵を受けた人数(総裨益者数)は,JPFに提出された申請書に記載の数字を基に算出。

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