ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第371号
ODAメールマガジン第371号は,セネガル共和国からシリーズ「SDGs 誰一人取り残さない日本の取組」第7弾として「西アフリカの大地にそびえ立つ安全な水のシンボル 給水塔を取り巻く協力の歴史」を,国際協力局事業管理室から「JICAボランティア事業 2018年度長期春募集&短期第1回募集」をお届けします。なお,肩書は全て当時のものです。
西アフリカの大地にそびえ立つ安全な水のシンボル 給水塔を取り巻く協力の歴史
原稿執筆:JICAセネガル事務所 澁谷 政治
「星の王子様」で有名なバオバブの木々が見え隠れするセネガルの村落地方。照りつく太陽と乾いた土ぼこりの中を車で走って行くと,突然日本の国旗が付いたアイボリーカラーの給水塔に出くわすことがあります。
アフリカ大陸最西端の国セネガル。面積は日本のおよそ半分の197,161平方キロメートル,人口は1,541万人(2016年)。イスラム教徒が95%を占めるフランス語圏の国で,代表料理のチェブジェン(魚の炊き込みご飯)は日本人にも親しみやすく,派手なアフリカ布をきれいに仕立てたおしゃれな服装の人が多いことから,「着倒れの国」とも呼ばれています。
- 日本の国旗の付いた給水塔と
水管理組合(ASUFOR)のメンバー
【写真提供:JICAセネガル事務所】 - 普段から華やかな服装でおしゃれを楽しむ
地域住民
【写真提供:JICAセネガル事務所】
豊かな文化を持つこのセネガルも,地方では多くの女性や子供が遠方への水汲み労働を強いられるほか,トイレ及び手洗い場の設置不足により,村落地域における安全な水の確保と衛生状況の改善が国家的課題となっていました。日本は,1979年から38年間にわたり,首都圏を除く全13州128か所における給水施設の建設・改修を実施し,50万人以上の給水アクセスの改善に貢献してきました。
2003年からは過去に給水施設を建設・改修した25サイトにおいて,技術協力プロジェクト「安全な水とコミュニティ活動支援計画」を実施し,地域住民による自主的な維持管理体制を確立するため,住民参加型の水利用管理組合(ASUFOR)の運営支援や,地域住民の生活改善や村落開発につなげるための活動を実施しました。
- 地域住民への衛生啓発活動
【写真提供:JICAセネガル事務所】 - 水の防衛隊の指導による井戸掘削作業
【写真提供:JICAセネガル事務所】
また,2008年には青年海外協力隊による「水の防衛隊」派遣を開始。前述のASUFORの運営支援強化や,地域保健ポストにおける衛生改善啓発活動など,のべ17人のボランティアが活動を行いました。
2012年には,トイレの普及,手洗いなど衛生意識の向上を目指した技術協力プロジェクト「タンバクンダ,ケドゥグ,マタム州村落衛生改善プロジェクト」を実施し,衛生習慣の定着と衛生施設へのアクセス改善を図りました。
- トイレの建設工事
【写真提供:JICAセネガル事務所】 - 無償資金協力により設置されたトイレ
【写真提供:JICAセネガル事務所】
これらを踏まえ,2017年7月に完工した無償資金協力「農村地域における安全な水の供給と衛生環境改善計画」では,セネガル南東部3州の5サイトに深井戸や公共水栓などの給水施設を建設,公共トイレ・手洗い場の設置のほか,施設の維持管理を行うASUFORの運営支援を含めた包括的な支援も実施しています。
近年は,日本の民間企業もセネガルでの給水衛生分野におけるビジネスに関心を寄せており,相互に持続的な経済効果につながる可能性も出てきています。2011年にはJICAの協力準備調査(BOPビジネス連携促進)として,セネガル北部にてASUFORとの連携も見据えた小型浄水装置の普及を目指す「西アフリカにおける浄水装置を用いた村落給水事業準備調査(BOPビジネス連携促進)」を実施。また,2017年には中小企業海外展開支援事業を活用し「直流駆動ポンプを活用したソーラーポンプシステムによる小規模地方給水施設整備事業案件化調査」も実施されました。実際のビジネス展開にはまだ課題はあるものの,日本の給水衛生分野での協力が色々な形で拡がってきています。
- 平原に立ち並ぶ巨大なバオバブ
【写真提供:JICAセネガル事務所】 - 日本が整備した給水施設で
水を汲む地域住民
【写真提供:JICAセネガル事務所】
聖なる巨大なバオバブの木の下には,偉大なグリオ(伝統的な吟遊詩人)が眠っていると言われています。試行錯誤しながら地域住民と育んできた安全な水の確保の歴史を経て,今は経済パートナーとしてビジネスも考える日本の活動を,歴代のグリオたちもバオバブの根元から,給水塔を見ているのかも知れません。
JICAボランティア事業 2018年度長期春募集&短期第1回募集 世界を変えてきたのは,いつの時代も,たったひとりの強い想い
原稿執筆:国際協力局事業管理室
突然ですが,JICAボランティアって,ご存じですか?青年海外協力隊ならば聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。テレビ番組等で活躍を目にする機会があっても「忙しいし,難しそう」「ボランティアなんて・・・」と考えていませんか?
JICAボランティアは,青年海外協力隊,日系社会青年ボランティア,シニア海外ボランティア,日系社会シニア・ボランティア
の4種類に分類されており,2018年2月末現在,77か国で,2,584人のJICAボランティアが活躍しています。応募時の年齢や活動する場所で分かれていますが,共通しているのは,「参加したい!」という思いがあれば,20歳から69歳までの健康な方であればどなたでも応募頂けることです。
- パラグアイでコミュニティ開発隊員として
家計をテーマに生活水準向上を指導する
青年海外協力隊員
【写真提供:JICA/和田 浩】 - マダガスカルで助産師として
母子保健を支援する青年海外協力隊員
【写真提供:JICA/和田 浩】
長期ボランティアは年2回,短期ボランティアは年4回募集をしており,まさに今,募集期間中です(長期の2018年度春募集は2018年4月2日(月曜日)から5月1日(火曜日),短期の2018年度第1回募集は4月中旬の予定)。全国各地で予約不要の「体験談&説明会」も開催されている他,公式ウェブサイトで募集の概要や,隊員の活動を紹介するブログや動画も配信されていますので,「もっと知りたい協力隊」
を是非チェックしてみて下さい。
JICAボランティアには120種類以上の職種があり,必要とされている技術や経験・資格も多種多様です。「技術」と言っても,自動車の整備といったハード系の技術から,1人1人の内面にある創意工夫能力や企画力といったソフト系の技術まで,幅広くあります。活動期間も原則2年の長期から1か月から1年未満の短期があり,さまざまな支援制度がボランティアの参加前から帰国後までをそれぞれサポートしています。
今すぐに参加することは難しくても,募集要項や実際に参加された方の体験談を基に,もし自分が参加するとしたら,どんな国でどんな活動ができるかな,と想像してみるのも楽しいですよ。開発途上国にはこんなニーズがあるんだという新たな発見もあると思います。
まずはJICAボランティアの活動を知って下さい。そして,あなたの持つ技術や経験を,開発途上国の人々と共に生活・協働しながら途上国の国づくりのために活かしてみませんか。『世界を変えてきたのは,いつの時代も,たったひとりの強い想い』です!!
- パラグアイで地域女性への
生活改善を指導するコミュニティ開発の
青年海外協力隊員
【写真提供:JICA/和田 浩】 - ベトナムで日本語を指導する
シニア海外ボランティア
【写真提供:JICA/加藤 雄生】
最近の開発協力関連トピック
- (1)ODAちょっといい話「体育館建設で地域住民をハッピーに!」(在ミクロネシア大使館より)ミクロネシアの首都があるポンペイ島では,1年のうち300日以上は雨が降るため,子ども達は十分に運動ができていませんでした。そこで日本の支援により体育館が建設されました。運動のほかにもイベント開催やクラブ活動などに幅広く活用され,地域住民より大変感謝されています。
- (2)「ここが知りたい」(JICA広報誌mundiより)(PDF)
外務省員へのインタビュー記事と,在外公館から発信のコラムをお届けしています。
4月号のテーマは「日本の教育支援」です!重要な開発課題の一つである教育。国際社会の教育支援の潮流と,それに対する日本の貢献とは?
日本は公教育も,代替教育も支援している!小学校の卒業率52%,識字率60%と,パキスタンでは教育に大きな課題を抱えています。コラムでは,同国における日本の教育支援の取組をご紹介します。是非,ご覧ください! - (3)第8回太平洋・島サミット(PALM8)が5月18,19日に福島県いわき市で開催されます。太平洋・島サミットは,太平洋島嶼国が直面する様々な問題について首脳レベルで率直に意見交換を行い,地域の安定と繁栄に貢献するとともに,日本と太平洋島嶼国のパートナーシップを強化することを目的として,1997年から3年に一度開催されている首脳会議であり,これまで7回開催されています。