ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第320号
ODAメールマガジン第320号は,バヌアツ共和国からの「今後のバヌアツの経済発展を担う港湾整備プロジェクトへの期待」,「バヌアツ・タンナ島での取組からみえるバヌアツ復興(島嶼国の防災支援)」と「外務省ホームページ「ODAちょっといい話」の更新」をお届けします。
今後のバヌアツの経済発展を担う港湾整備プロジェクトへの期待
原稿執筆:在フィジー日本国大使館 國場 幸恒 二等書記官
バヌアツ共和国は南太平洋の西寄りに鎖状に分布する島国で,西にオーストラリア,北にソロモン諸島,東にフィジー,南にニューカレドニア及びニュージーランドといった国々に囲まれています。
昨年3月,バヌアツを襲撃したサイクロン・パムで初めて同国を知った方も多いのではないでしょうか。あるいは,有名なバヌアツ牛は日本へも輸出されているので,赤身の美味しいバヌアツ牛の産地として,食通の方には同国に馴染みがあるかもしれません。
- バヌアツ牛ステーキ
(写真提供:JICAバヌアツ支所 由本氏)
バヌアツの主要産業は農業と観光業であり,生活物資の多くを輸入に頼っているほか,周囲の国々に物資を運ぶコンテナ船の経由地としての役割もあります。また,豊かな観光資源を背景にクルーズ船を利用した観光も増加しており,港湾が国の発展に重要な役割を果たしています。
- (引用:Vanuatu National Statistics Office)
日本はバヌアツに対してこれまで港湾,道路,電力,医療施設の整備等の支援を行っています。このうち港湾分野への支援に関しては,過去に無償資金協力でポートビラのメイン埠頭の整備を行い,現在は国際埠頭として活用されています。しかしながら,同埠頭はクルーズ船の取扱いを優先しているため,近年は観光クルーズ船の増加により,コンテナ船が沖待ちせざるを得ない状況がしばしば発生するようになりました。
- 整備されたメイン埠頭(国際コンテナ貨物船)
(写真提供:(株)エコー) - 整備されたメイン埠頭(観光クルーズ船)
(写真提供:(株)エコー)
このため,増加する国際コンテナ貨物船に対応するべく,バヌアツ政府は現在国内埠頭として利用しているラペタシ埠頭を国際多目的埠頭として新たに整備することとし,その支援を我が国に対して要請しました(平成22年)。これを受け第6回太平洋・島サミット(平成24年開催)に際して円借款「ポートビラ港ラペタシ国際多目的埠頭整備計画」の交換公文(E/N)署名を行い,新たな国際貨物専用埠頭の建設を支援しています。
- ポートビラ港湾関連プロジェクト(実施予定)
また,本事業と並行し,アジア開発銀行(ADB)及びニュージーランドが新国内埠頭の整備計画を進めています。バヌアツの経済発展に大きく役割を占める港湾整備が首都ポートビラでダイナミックに進められており,さらなる経済発展を後押しすることが期待されます。
バヌアツ・タンナ島での取組からみえるバヌアツ復興(島嶼国の防災支援)
原稿執筆:在フィジー日本国大使館 中井 忍 一等書記官
2015年3月13日に30年に一度と言われたサイクロン「パム」が南太平洋島嶼国(バヌアツ,キリバス等)を襲い,11名の人々が犠牲になりました。その約1年後,更に破壊力を増したサイクロン「ウィンストン」が2016年2月20日にフィジーを直撃しています。
この2つの超巨大サイクロンに限らず,2014年1月にトンガを襲ったサイクロン「イアン」,2012年12月にサモアやフィジーを襲ったサイクロン「エヴァン」など,南太平洋島嶼国においてサイクロンによる被害は不可避のものとなっています。
自然災害の影響を特に受けやすい太平洋島嶼国はインフラも脆弱であり,災害(サイクロン)のたびに,経済成長を鈍化・悪化させていることから,経済の強靱性を高めるという観点からも,災害に強い経済・産業インフラ,質の高いインフラの必要性が盛んに言われるようになりました。
「バヌアツ」においても,「パム」の被害を受けて5ヵ月ほど経過した8月5日に発表された「バヌアツ国家復興計画」(2015年8月~2017年7月の2年間を対象)の目的の一つに,「インフラの修復・改善」が掲げられました。こうした開発ニーズに対し,我が国は,インフラ改善やバヌアツ国民の生計向上のための支援として,例えば,無償資金協力「経済社会開発計画」(2億円。重機等機材供与)や円借款「ポートビラ港ラペタシ国際多目的埠頭整備計画」(96億円。「今後のバヌアツの経済発展を担う港湾整備プロジェクトへの期待」参照。)に取り組んでいます。これらの支援の着実な実施が,サイクロンからの復興につながると考えています。
こうした「復興」の取組とともに,中長期的には防災の観点からの取組も必要になります。
一例として,我が国はアジア・太平洋電気通信共同体(APT)を通じて,サイクロン「パム」の被害の中心地であったタンナ島(バヌアツ南端の島)において,島民一人一人に確実に災害情報を伝達するため,島内にWifi網を構築するパイロットプロジェクト進めています。これにより,首都から提供された防災情報について,島内の防災拠点(病院,学校,避難所等)だけでなく,各島民が所有する通信デバイスを介して,より早くアクセスすることができるようになりました。このパイロットプロジェクトは,ブロードバンド整備が見込めない地方村落部において,学校等の施設に多目的テレセンターを構築し,ICTにより教育,医療,文化保存等の活動を効果的に支援することも目的としています。
このほか,我が国は,無償資金協力「広域防災システム整備計画」(3億円)を通じ,災害の観測能力及び伝達能力を向上させるため,バヌアツ国全土を対象に気象等の観測及び予警報を行うための機材を整備する等の取組も進めています。
こうしたハード・ソフト両面の継続的な協力は,次に必ず来るであろうサイクロンの時に,準備さえできていれば失うことのなかった生命や財産を守る大きな鍵になると思います。そして,これらの取組を他の島々へ,国全体に,国から国へ,そして域内全体にスケールアップすることが,島嶼国固有の問題である「遠隔性」の克服を現実のものにする可能性を秘めているのではないかと思います。
- APTパイロットプロジェクトによるバヌアツ事業概念図
(図提供:プラマニク・カデル・博)
外務省ホームページ「ODAちょっといい話」の更新
原稿執筆:国際協力局政策課広報班
外務省ホームページ「ODAちょっといい話」に新たにパラオの案件を掲載しました。
同国最大の人口規模を持つ都市「コロール」のリサイクルセンターでは,日本の開発協力で供与された「油化装置」が,ごみの分別回収・減量化に貢献しています。
輸入の拡大に伴いゴミの増加が深刻な太平洋島嶼地域では,廃棄物処理が重要課題なのです。
このように,開発協力は,供与国の開発レベルや重要課題を考慮し,様々な分野・角度から行うことがとても大切です。
2014年で60周年を迎えた日本の開発協力ですが,国際社会における日本の開発協力に期待される役割や,今後の日本の開発協力のあり方に思いを巡らせてみてください。
今後も引き続き,いろいろな地域の開発協力案件をアップ予定です。
世界中で活躍する日本の「人間力・技術力」にご注目ください!