ODA(政府開発援助)
目指せ!自主独立のリサイクル
パラオ・コロール州廃棄物事務所の挑戦
原稿執筆 在パラオ日本国大使館
リサイクルセンターに油化装置の灯がともる
2016年1月20日,コロール州廃棄物事務所(通称リサイクルセンター)は職員と関係者の熱気に包まれました。JICAの中小企業海外展開支援普及・実証事業で導入された,ごみの分別回収・減量化を促進するための「油化装置」の火入れ式が行われたのです。
この油化装置は日本生まれ。神奈川県平塚市にある株式会社ブレスト製で,正月返上で取り付け作業が進められました。ペットボトルの蓋等のプラスチックゴミを油に変えるこの装置の導入により,センターで必要な電力の完全自給が可能となるばかりか、余剰分は州政府庁舎の発電にも使用されます。
太平洋島嶼地域のモデルとなるリサイクルセンター
パラオ唯一のリサイクル処理施設として,全人口の約7割が生活するコロール州やその近隣からの空き缶,ペットボトル,ビンの圧縮・破砕処理を一手に担うこのセンターは,2004年の設立当初,JICAシニア海外ボランティアとパラオ側カウンターパートの2名だけで運営されていました。その後,多くの人々の情熱と支援により,空き缶・ペットボトルの回収や剪定ゴミや段ボール箱・古雑誌から作るコンポスト(生ゴミなどを発酵させて作成する有機肥料の総称)販売の事業化等に成功し,今では70名のスタッフを抱える施設にまで成長しました。
輸入の増加に伴い増加の一途をたどるゴミ処理問題に頭を抱える太平洋島嶼地域において,様々なアイデアを駆使して採算性と処理能力を高めている当センターの活躍は注目を集めています。
藤勝雄アドバイザーの挑戦
その中心にいるのが,藤勝雄さん。JICAシニアボランティアとして設立当初よりリサイクルセンターで活動された藤さんは,その功績が高く評価され,現在はコロール州政府のアドバイザーとしてセンター運営の中核的役割を担っています。藤さんが目指すのは更なる採算性とゴミ処理能力の向上,さらには後進の育成です。導入された油化装置で作った油を燃料として発電した電気でガラス炉の熱源を確保し,廃ガラスをコップや花瓶などのガラス細工に変える「Belau Eco Glass」プロジェクトに取り組んでいます。日本人ガラス職人の指導により,パラオ人の若者が工房を任されるまでの腕前になりました。「知恵と工夫でパラオのゴミ問題を自立主体的に解決したい」,藤さんの挑戦はこれからも続きます。