ODA(政府開発援助)
法制度整備支援
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日本の法制度整備支援
明治以降、近代国民国家への第一歩を踏み出した日本は、多岐にわたる近代化への取組を行い、国の基本的な形を築き上げていきました。その過程で、日本は、欧米の法律を学びながらも、日本の伝統的な文化や社会制度に合わせた近代的な法体系整備が進められました。こうした自国の経験を踏まえて、日本は、アジアをはじめとする開発途上国の立法支援や制度整備支援などの法制度整備支援を行ってきました。こうした支援は、法の支配に基づき、途上国の自助努力を支援するとともに、途上国が持続的成長を実現するために不可欠な基盤づくりを支援するものです。
具体的には、途上国に日本の法曹(ほうそう)専門家を派遣して、相手国のカウンターパート機関と対話・調整を進めながら、日本の経験・知見を踏まえつつも、相手国の文化や歴史、社会、オーナーシップを尊重し、国の実情・ニーズに見合った法制度整備を支援していることに特長があります。さらに、相手国自身による法制度の運用ができるよう、法の起草・改正にとどまらず、法制度が適切に運用・執行されるための基盤整備、法曹の人材育成や法学教育、運用に係る実務面での能力強化までを視野に入れた支援を行っています。
日本による法制度整備支援は、1990年代のベトナムにおいて始まりました。ベトナムでは、1980年代に「ドイモイ(刷新)」と呼ばれる市場経済の導入を柱とする政策が導入されましたが、当時の民法をはじめとする法律や法制度は市場経済に合致するものではありませんでした。そこで、日本政府やJICAは、日本の法曹専門家らの協力を得ながら、ベトナム政府の民法の起草を支援すると同時に、ベトナム現地の法曹人材の育成を支援してきました。その結果、2015年には、日本側の関係者の提言が数多く反映され、現代的な取引に関する条項等が盛り込まれた新たな民法が制定されるに至りました。そのほか、日本は、民事訴訟法や行政訴訟法などの各種法律・法制度の支援も行ってきました。ベトナムへの法制度整備支援は現在も続いており、近年では、法規範文書間の整合性を確保するための制度を整備することを目的とした協力などを実施しています。
また、日本は、ベトナム以外の国々でも法制度整備支援を行っています。最近では、2018年12月6日、ラオス初の民法が国会で承認され成立しました。日本は、1998年からラオスへの法整備支援を開始し、現役の検察官や弁護士等を派遣して、法律の知識を普及するとともに、法曹人材の育成を実施してきました。さらに2012年からは、ラオスの人たちが自分たちの社会や文化に合う民法は何なのかを考え、まとめるための起草支援に力を注いできました。その結果が、600余りの条文からなる民法となりました。日本が起草を支援し成立した民法としては、ベトナムのほか、カンボジア、ネパールに続く4例目となります。
また、ミャンマーに対しては、2013年から協力を実施しており、日系企業等のビジネス環境の改善にも大きな重点を置き、ビジネス関連紛争解決に関する裁判官向け教科書作りや、民事調停制度の導入等に取り組んでいます。
昨今では、途上国への法制度整備支援は民法や民事訴訟法に加え、知的財産法などにも協力が拡大してきています。このように日本は、法制度整備支援をはじめ、日本が近代化を行う中で得てきた教訓を活かしながら途上国に様々な支援を行っています。