国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組

UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime

令和6年9月24日

1 概要

(1)設立目的及び経緯

 UNODCは持続可能な開発と人間の安全保障を確保する観点から、不正薬物、犯罪、国際テロの問題に包括的に取り組むことを目的に設立されました。

 1997年、国連薬物統制計画(1990年国連総会決議により設立)及び犯罪防止刑事司法計画(1991年同決議で設立)を統合し、国連薬物統制犯罪防止事務所(UNODCCP)が設立された後、2002年に改称して現在のUNODCとなりました。

(2)体制

職員数:
約547名(2023年12月時点)(専門職・一般職の合計)
事務局長:
ガーダ・ファトヒー・ワーリー(2020年2月~)
本部:
ウィーン
事務所:
約100か所に各国事務所やプロジェクト・オフィス等が置かれている他、各地に地域統括事務所(注)が置かれています。
(注)東南アジア・大洋州地域事務所(タイ)、南アジア地域事務所(インド)、中央アジア地域事務所(ウズベキスタン)、南東欧地域事務所(トルコ)、中東・北アフリカ地域事務所(エジプト)、西・中部アフリカ地域事務所(セネガル)、南アフリカ地域事務所(南アフリカ共和国)、東アフリカ地域事務所(ケニア)、中米・カリブ地域事務所(パナマ)
予算:
約1割が国連予算、約9割が加盟国等による任意拠出金。

(3)業務

  • ア 主な業務は、(ア)政策及び事業決定過程に資するため、不正薬物及び犯罪に関する調査・分析を行うこと、(イ)不正薬物、犯罪、テロリズムに関する各条約の締結・実施及び国内法整備を支援すること、(ウ)不正薬物、犯罪、テロ対策における能力向上のための技術協力を提供すること。
  • イ UNODCは、国連経済社会理事会(経社理)の機能委員会である麻薬委員会及び犯罪防止刑事司法委員会と、国際麻薬統制委員会の事務局を務めているほか、国際組織犯罪防止条約など各種関連条約の事務局も務める。
  • ウ 麻薬委員会や犯罪防止刑事司法委員会で採択された後、上部機関である経社理で採択された決議は、UNODCの事業の方向性に指示を与える。

2 活動内容

(1)組織犯罪対策

  • 国連加盟国の国際組織犯罪防止条約(UNTOC)と関連議定書への批准及び履行支援
  • 国際組織犯罪に対処するためのエビデンスに基づく政策推進及びグッドプラクティスの提供
  • 政策分析のための男女別データの収集と提供
  • 現場志向のプロジェクトやプログラムを通じた、違法薬物、武器、偽造品、文化財、人間、野生生物、その他天然資源の違法取引との闘いへの支援
  • サイバー犯罪など、新しい形態の犯罪への対応

(2)違法薬物対策

  • 国連加盟国の国際麻薬3条約の履行及びこれら条約に沿った政策策定とその実践の支援
  • 薬物乱用・不正使用防止戦略の実施
  • 薬物依存者の治療、支援、リハビリテーション、社会復帰(リインテグレーション)の支援
  • 医療用途での規制対象薬物へのアクセスの確保
  • 違法薬物原料植物の栽培と生産等に関与してきた地域住民に対する持続可能な代替生計の開発と普及支援
  • 違法薬物の製造、取引、流通市場等の動向に関するデータの集約、分析・報告による、エビデンスに基づく政策立案・プログラム実施提案のための情報ツールの開発と情報発信

(3)腐敗対策

  • 国連加盟国の国連腐敗防止条約(UNCAC)への批准・履行及び国内法整備支援
  • 腐敗関連行為の犯罪化への支援
  • 引渡及び捜査共助に関する国際協力の促進
  • 腐敗公務員により窃取された財産回復支援
  • グッド・ガバナンス、清廉性及び透明性の促進
  • 技術協力プロジェクトを通じた国家の腐敗対策能力の強化

(4)テロ対策

  • 国連加盟国のテロ対策関連の国際法的文書の履行及び政策的・立法的対応の強化支援
  • テロ対策のための多国間協力支援
  • 現地ベースのプロジェクトを通じた、テロを効果的に防止・対処するための刑事司法制度の能力構築支援
  • テロ防止のため、少年司法、効果的な刑務所管理とリハビリテーション、社会復帰の提供を強化する。

(5)犯罪防止・刑事司法

  • 犯罪防止と刑事司法における国連準則の履行を通じた法の支配促進及び人権保障の強化
  • 女性や子どもに対する暴力など特定の課題に焦点を当て、包括的な犯罪防止戦略と効果的で公正かつ人道的な刑事司法制度を推進する国連基準を支援
  • 現場重視の技術協力を通じた、刑事司法制度や刑務所の改革支援
  • 殺人などの暴力犯罪の主要カテゴリーについての性別を区別したデータと分析を加盟国に提供

3 日本との関係

 我が国は、UNODCへの主要拠出国として、その政策決定や行政財事項にかかる議論にも積極的に参画しています。また、2013年6月、平松総合外交政策局長とフェドートフ事務局長との間で第1回「日・UNODC戦略政策対話」を開催しました。同対話はその後も定期的に行われてきています。

(1)邦人職員

 2024年9月現在、邦人職員は9名が勤務。

(2)日本の拠出実績(過去5年分)

 国境管理強化、違法薬物やオンライン詐欺やサイバー犯罪対策分野における地域横断的なプロジェクトや、ミャンマー、アフガニスタン等における薬物対策支援、インド・太平洋、アフリカにおける海上法執行能力強化、アジア・アフリカ地域におけるテロ・暴力的過激主義対策など、UNODCによる多方面の活動を支援しています。

  • 令和元年度:約3,696万ドル
  • 令和2年度:約1,818万ドル
  • 令和3年度:約1,677万ドル
  • 令和4年度:約2,092万ドル
  • 令和5年度:約3,107万ドル

4 トピックス

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