国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組
国連薬物・犯罪事務所
(UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime)
1 概要
(1)設立目的及び経緯
UNODCは持続可能な開発と人間の安全保障を確保する観点から、不正薬物、犯罪、国際テロリズムの問題に包括的に取り組むことを目的に設立されました。
1997年、国連薬物統制計画(1990年国連総会決議により設立)及び犯罪防止刑事司法計画(1991年同決議で設立)を統合し、国連薬物統制犯罪防止事務所(UNODCCP)が設立された後、2002年に改称して現在のUNODCとなりました。
(2)体制
- 職員数:
- 約557名(2022年12月時点)(専門職・一般職の合計)
- 事務局長:
- ガーダ・ファトヒー・ワーリー(2020年2月~)
- 本部:
- ウィーン
- 事務所:
- 約100か所に各国事務所やプロジェクト・オフィス等が置かれている他、各地に地域統括事務所(注)が置かれています。
(注)東南アジア・大洋州地域事務所(タイ)、南アジア地域事務所(インド)、中央アジア地域事務所(ウズベキスタン)、中東・北アフリカ地域事務所(エジプト)、西・中部アフリカ地域事務所(セネガル)、南アフリカ地域事務所(南アフリカ共和国)、東アフリカ地域事務所(ケニア)、中米・カリブ地域事務所(パナマ) - 予算:
- 約1割が国連予算、約9割が加盟国等による任意拠出金。
(3)業務
- ア 主な業務は、(ア)政策及び事業決定過程に資するため、不正薬物及び犯罪に関する調査・分析を行うこと、(イ)国連加盟国の不正薬物、犯罪、テロリズムに関する各条約の締結・実施及び国内法整備を支援すること、(ウ)国連加盟国に対し、不正薬物、犯罪、テロ対策における能力向上のための技術協力を提供すること。
- イ UNODCは、国連経済社会理事会(経社理)の機能委員会である麻薬委員会及び犯罪防止刑事司法委員会と、国際麻薬統制委員会の事務局を務めているほか、国際組織犯罪防止条約など各種関連条約の事務局も務める。
- ウ 麻薬委員会や犯罪防止刑事司法委員会で採択された後、上部機関である経社理で採択された決議は、UNODCの事業の方向性に指示を与える。
(4)内部基金
UNODCは、薬物対策のための国連薬物統制計画(UNDCP: the United Nations International Drug Control Programme)基金及び犯罪・テロリズム対策のための犯罪防止刑事司法基金(CPCJF: Crime Prevention and Criminal Justice Fund)の2つの基金を有しています。両基金の使途等については、国連の監査を受けるとともに、麻薬委員会及び犯罪防止刑事司法委員会の会期間会合で審議され、国連総会で正式に決定されます。
2 分野別の活動内容
(1)薬物分野
国連薬物統制計画基金の技術協力事業の主な分野別内訳は、ア 条約の締結・実施等法整備、イ 調査・研究等政策分析、ウ 薬物予防措置、エ 代替開発、オ HIV/AIDS対策等となっており、薬物統制について国連内外の各機関に対してアドバイスを行うほか、薬物の需要・供給の削減と不正取引の防止に関するプロジェクトなどを実施しています。
(2)犯罪防止刑事司法分野
犯罪防止刑事司法基金の技術協力事業の主な分野別内訳は、ア 条約の締結・実施並びに刑事司法制度改革等支援、イ 脅威・リスク分析、ウ 腐敗対策、エ 人身取引対策、オ 被害者支援等となっており、法の支配の強化や安定した刑事司法制度の促進など、国際組織犯罪の脅威との闘いに取り組んでいます。
(3)テロ対策分野
1999年4月にUNODC内に設置されたテロ防止部は、国連安保理決議第1373号及びテロ防止関連条約実施のための技術支援を、国連テロ対策委員会(CTC)ないし援助を必要とする国々からの直接要請に基づき実施しています。
3 日本との関係
我が国は、UNODCへの主要拠出国として、その政策決定や行政財事項にかかる審議にも積極的に参画しています。また、2013年6月、平松総合外交政策局長とフェドートフ事務局長との間で第一回「日・UNODC戦略政策対話」を開催し、今後の更なる連携強化を目指す重点分野や重点地域等を記載した「日・UNODC共同行動計画」に署名しました。同対話はその後も定期的に行われてきています。
(1)邦人職員
2022年12月現在、邦人職員は13名が勤務。
(2)日本の拠出実績(過去5年分)
違法薬物分野や腐敗対策分野における地域横断的なプロジェクトや、ミャンマー、タイ、アフガニスタン等における薬物対策支援、アジア大洋州の海上法執行能力強化、アジア・中東・アフリカ地域におけるテロ対処能力向上支援や暴力的過激主義対策など、UNODCによる多方面の活動を支援しています。平成30年度:約2,694万ドル令和元年28年度:約3,694万ドル
- 令和2年度:約1,818万ドル
- 令和3年度:約1,677万ドル
- 令和4年度:約2,092万ドル
4 トピックス
- 上川外務大臣とワーリー国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長との会談(令和5年9月19日)
- ワーリー国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長による林外務大臣表敬(令和5年7月4日)
- 第10回日・UNODC戦略政策対話の開催(令和5年7月4日)
- 小田原外務副大臣とワーリー国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長との会談(令和4年7月27日)
- 第9回日・UNODC戦略政策対話の開催(令和4年7月25日)
- ワーリー国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長による林外務大臣表敬(令和4年7月25日)
- ワーリー国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長の訪日(令和4年7月21日)
- 宇都外務副大臣の京都コングレス開会式出席及び「国際女性デー」を記念した京都コングレス・特別イベントにおけるビデオ・メッセージの発出(令和3年3月8日)
- ワーリー国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長による菅総理大臣表敬(令和3年3月7日)
- 中西外務大臣政務官の京都コングレス2020を成功させる議員連盟総会出席(令和2年12月11日)
- 第7回日・UNODC戦略政策対話の開催(令和2年9月1日)
- 中央アジア5か国に対する国境管理能力強化のための無償資金協力に関する書簡の交換(令和2年2月27日)
- アフガニスタン・パキスタンの貿易促進に関するハイレベル会合(令和元年11月27日)
- 国連薬物・犯罪事務所(UNODC)の次期事務局長任命の発表について(外務報道官談話)(令和元年11月22日)
- 第6回日・UNODC戦略政策対話の開催(令和元年8月23日)
- 第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)の専用ホームページの本格開設(平成31年4月19日)
- 第62会期国連麻薬委員会閣僚級セグメントの開催(平成31年3月18日)
- 山田外務大臣政務官とフェドートフ国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長との会談(平成31年3月14日)
- 法の支配に基づく刑事司法の対応強化を通じたテロにつながる暴力的過激主義及び帰還FTFの防止に関する地域間ワークショップにおける山田外務大臣政務官開会挨拶(平成30年12月17日)
- 第5回日・UNODC戦略政策対話の開催(平成30年8月27日)
- フェドートフ国連薬物・犯罪事務所事務局長による河野外務大臣表敬(平成30年8月27日)
- 第4回日・UNODC戦略政策対話の開催(平成29年8月29日)
- 第14回国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)の京都開催の決定(平成29年8月14日)
- 岸田外務大臣とフェドートフ国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長との会談(平成29年5月2日)
- 木原外務副大臣とフェドートフ国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長との会談(平成28年6月28日)
- 第3回日・UNODC戦略政策対話の開催(平成28年6月28日)
- 木原外務副大臣と国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長との会談(平成28年4月26日)
- 麻薬対策に関する日露協力(アフガニスタン及び中央アジア麻薬対策官に対する研修)(平成28年3月14日)
- 第13回国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)(平成27年4月21日)
- 第2回日・UNODC(国連薬物・犯罪事務所)戦略政策対話の実施(平成27年1月21日)
- 第13回国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)準備のためのカタール代表団による宇都外務大臣政務官表敬(報道発表)(平成26年10月21日)
- UNODC合成薬物レポート2014の発表(報道発表)(平成26年5月21日)
- フェドートフ国連薬物・犯罪事務所事務局長の岸田外務大臣表敬(概要)(平成25年6月3日)
- 日・UNODC(国連薬物・犯罪事務所)戦略政策対話(概要)(平成25年6月2日)
- フェドートフ国連薬物・犯罪事務所(UNODC)事務局長の来日(概要)(平成25年4月15日)