ODA(政府開発援助)

令和7年1月15日

評価年月日 令和6年6月20日
評価責任者 国別開発協力第一課長 鴨志田 尚昭

1 案件概要

(1)供与国名

 インドネシア共和国(以下、「インドネシア」という。)

(2)案件名

 パティンバン港開発計画(第三期)

(3)目的・事業内容

 本計画は、ジャカルタ首都圏東部パティンバンに新港(コンテナターミナル、自動車ターミナル等)を建設することにより、首都圏の物流機能の強化を図り、もってインドネシアの投資環境の改善を通じた更なる経済成長に寄与するもの。なお、今次借款は輪切り三期目として、2029年7月までの資金需要に対応するもの。

主要事業内容
  • 土木・建設工事(コンテナターミナル及び自動車ターミナルの各建設、泊地・航路浚渫等)
  • コンサルティング・サービス
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
834.08億円 0.3%(STEP) 40(10)年 タイド
  • (注)金利は、本邦技術活用条件(STEP)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.2%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

ア 環境影響評価(EIA):
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定、以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる港湾・道路セクター、影響を及ぼしやすい特性に該当するため、カテゴリAに分類される。本計画に関するEIA報告書は、2017年2月にインドネシア環境林業省より承認済み。加えて、インドネシア国内法に基づき、Phase1-2の詳細設計に基づく変更点に関し追加文書が作成され、2022年2月に承認済み。
イ 用地取得及び住民移転:
 本計画では、後背地(バックアップエリア)の開発及びアクセス道路の建設により、それぞれ、356.23ヘクタール及び15.79ヘクタールの用地取得のほか、港湾施設の建設による漁業への影響等を伴うため、インドネシア国内手続及びJICAガイドラインに沿って作成された用地取得・住民移転計画(LARAP)に基づいて取得・補償・生計回復支援が行われた(上記356.23ヘクタールのうち私有地0.8ヘクタールの取得が未了、また一部公有地の移管手続中。)。なお、非自発的住民移転について、本件第二期では75世帯及び21世帯の住民移転が想定されたが、用地取得の進捗に伴い、対象世帯等の詳細な調査・精査を行った結果、対象世帯数が20世帯及び8世帯に減少している。被影響住民から計画に係る特段の反対意見は出ていない。その他、生計回復支援においても住民の意見を反映しプログラム内容を修正するなど対応している。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 安定した経済成長を続けてきたインドネシアが更に経済的に飛躍するためには、経済インフラ及び法制度の整備等を通じてビジネス環境の改善を進める必要がある。実際、港湾分野については、近年の急激な経済成長に伴い国全体の取扱貨物量が増加傾向にある中で、港湾の全体的な取扱容量不足を主要因とした港湾混雑による物流停滞が懸念されている。ジャカルタ首都圏では、国内でも特に貨物量が増加傾向にある中、その9割以上を扱っている既存のタンジュンプリオク港のコンテナ取扱容量では今後のコンテナ需要に対し十分に対応できないほか、ターミナル内のコンテナ蔵置スペースや物流機能用の後背地のスペースも不足している。また、首都圏の慢性的な交通渋滞が深刻化し、貨物の交通量の分散が望まれている中で、早期の新港建設に対するニーズが高まっている。なお、同首都圏東部に位置する西ジャワ州の工業団地には多数の日本企業が進出していることから、現地の経済活動の促進及び産業発展のみならず日本企業のビジネス環境改善及び事業展開の観点からも、同新港の整備には期待が寄せられている。
 上記状況において、インドネシア政府は、パティンバンを新港開発の最有力候補地とし、2016年5月に同新港開発に係る大統領令を制定したほか、新港に係るマスタープランにて同新港を国内の主要な貿易拠点として機能する「主要港」と位置付けた。また、国家中期開発計画(2020-2024)において、経済成長の促進を支えるインフラ整備を国家開発の優先事項に位置付けた上で、同新港開発を、首都圏東部に位置する工業団地を含む首都圏の物流改善の方策として掲げている。
 本件は、首都圏の物流機能の強化を通じて、包摂的で持続可能な経済成長、工業化、雇用創出に資するものであることから、第一期、第二期、有料アクセス道路建設計画に引き続き、パティンバン新港の整備を実施することは、日本政府の方針に合致している。
イ 我が国の基本政策との関係
 我が国の対インドネシア国別開発協力方針(2017年9月)は、「国際競争力の向上に向けた支援」を重点分野とし、民間企業の国際競争力向上を通じた経済成長を実現するため、交通・物流等の質の高いインフラ整備への支援を掲げているところ、本計画は同方針に合致している。また、本計画は、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のための新たなプランの4つの柱のうち、第三の柱「多層的な連結性」に資するものであり、SDGsゴール8(持続的、包摂的で持続可能な経済成長)及びゴール9(強靱なインフラ整備)にも貢献すると考えられる。
 インドネシアは、東南アジア地域において最大の人口及び国土を擁するASEANの中核国であり、2022年はG20の議長国も務め、日本ASEAN友好協力50周年の節目となる2023年にASEAN議長国を務めたほか、2,100社を超える日系企業(2022年調査)が進出するなど、政治、外交、経済及び地理的関係において我が国と極めて重要な関係にあり、基本的な価値や原則を共有する包括的・戦略的パートナーである。2023年12月の日インドネシア首脳会談においても、インフラ開発等の分野で協力していくことで一致しているところ、本計画は、両国間の協力強化及び日本の外交政策の推進の観点からも重要である。

(2)効率性

 我が国はこれまで港湾セクターに対して、2012年5月から運輸省海運総局に「港湾開発政策アドバイザー」を派遣し、本計画の形成・実施支援を行っている。また、2023年3月に「パティンバンアクセス有料道路建設計画」の円借款貸付契約を調印。上記アクセス道路に接続する高速道路を整備し、本計画による港湾周辺の交通量の増加に対応することとしている。
 2020年3月から2021年9月、有償専門家「パティンバン港後背地開発支援業務」にて、新港の物流拠点となる後背地の開発計画の支援を実施。また、2023年3月から技術協力「パティンバン港運営管理能力強化プロジェクト」にて、港湾の運営維持管理及び後背地開発に関する支援を実施中(2026年2月まで)。
 これらを通じ、民間資金の動員も想定した後背地全体開発の推進や物流・製造拠点の誘致等を支援し、同港の機能の最大化を図ることとしている。

(3)有効性

 本計画の実施により、計画が完成する2年後(2029年)には、2016年比で以下のような成果が期待される。

  • ア 定量的効果
    • (ア)コンテナターミナルでのコンテナ貨物取扱量が、1,434,000TEU/年となる。
    • (イ)自動車ターミナルでの完成車取扱量が、522,000台/年となる。
    • (注)TEU:海上コンテナの貨物量を表す単位であり、1TEUは20フィートコンテナの1個分を表す。
  • イ 定性的効果
    ジャカルタ首都圏の物流を含む投資環境の改善、経済発展の促進、インドネシアの持続的経済成長への寄与が期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、インドネシア国別評価報告書(2018年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。

 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く 、並びに事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。

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