ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日 令和6年6月20日
評価責任者 国別開発協力第一課長 鴨志田 尚昭
1 案件概要
(1)供与国名
インドネシア共和国(以下、「インドネシア」という。)
(2)案件名
漁港・国際魚市場統合整備セクター・ローン(フェーズ1)
(3)目的・事業内容
インドネシアの全土において、漁港と市場の関連設備の建設・整備を行うもの。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)施設、機材等の整備・改修
- 施設:漁港防波堤、水揚げ用桟橋、荷捌き場、倉庫、水産加工場、市場棟等
- 機材:製氷機、冷凍・冷蔵庫、データ管理に係る機材等
- (イ)コンサルティング・サービス
- (ア)施設、機材等の整備・改修
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 155.45億円 1.80%
一般条件(固定・基準)30(10)年 アンタイド - (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.2%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価(EIA):
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)上、JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトが特定できず、かつ、そのようなサブ・プロジェクトが環境への影響をもつことが想定されるため、カテゴリFIに分類される。本計画に係るEIA報告書は、F/S及び詳細設計の実施中に作成される予定。 - イ
- 用地取得及び住民移転:
本計画は、14世帯(26人)の非自発的住民移転を伴う可能性があり、同国国内手続及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画(LARAP)に基づき用地取得が進められる。先方政府には、住民移転に際して十分な補償、事前の情報公開等を申し入れている。なお、住民協議では、現時点で被影響住民から本計画に係る特段の反対意見は確認されていない。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
インドネシアでは、国内の所得格差改善が重要な社会課題となる中、所得の低い地方部での水産業における更なる雇用創出・所得向上による社会の安定化も期待される一方、水産インフラ及び水産物流通インフラの整備不足が主な原因となってその水産ポテンシャルを活用しきれていない状況にあり、さらに、海岸線の長さに比して水産インフラが十分でなく、その多くが修繕やアップグレードが必要な状況にある。
かかる背景から、インドネシア政府は、漁業資源管理及び水産物の高付加価値化を通じて水産業の対GDP構成比を引き上げることを目標としており、海洋水産省は、国営漁港マスタープラン(2020年)を策定すると同時に、水産資源の保全と経済成長(雇用創出、地方における経済開発、投資促進)を同時に進めるため「割当漁業政策」を策定し、当該政策に基づいて水産セクター開発を進めている。
本計画は、対象漁港における円滑な漁船の出入港・停留・漁獲物の品質改善などを通して、対象地域における持続的な経済・社会の発展を目指すものであり、同国政府の計画及び方針に合致するものである。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国の対インドネシア国別開発協力方針(2017年9月)では、重点分野「国際競争力の向上に向けた支援」が定められ、民間企業の国際競争力向上を通じた経済成長を実現するため、交通・物流等の質の高いインフラ整備への支援を掲げており、本計画は同方針に合致する。
また、同国は、東南アジア地域において最大の人口及び国土を擁するASEANの中核国であり、2,100社を超える日系企業(2022年調査)が進出するなど、政治、外交、経済及び地理的関係において我が国と極めて重要な関係にあり、基本的な価値や原則を共有する包括的・戦略的パートナーである。2023年12月の日インドネシア首脳会談においても、インフラ開発等の分野で協力していくことで一致しているところ、本計画は、両国間の協力強化及び日本の外交政策の推進の観点からも重要である。
さらに、本計画は、SDGsゴール8(経済成長・雇用)及びゴール14(海洋と海洋資源の保全・持続可能な利用)にも貢献するものである。
(2)効率性
我が国は、現在インドネシアの水産セクターにおいて、財政支援型無償「離島における水産セクター開発計画に係る情報収集・確認調査」の中で、本計画のサイトを含む水産セクター調査を実施している。この他、実施中の無償資金協力「離島における水産セクター開発計画(フェーズ1・2)」においても、離島6サイトにおける統合海洋水産センターの漁港施設及び市場の整備・改修等を整備している。こうした無償資金協力と本計画の対象地は同国政府が優先的に整備・修繕を行うサイトとしており、一体的に水産セクター開発を進めている。本計画を通じて更なる水産インフラ整備を進めることにより、一部の漁場・漁港における漁獲・水揚げの集中が緩和され、水産資源の保全と経済成長を促進することが期待される。
また、円借款調達支援業務として専門家を投入し、コンサルタント調達に係る実施機関の能力強化を行う予定。
(3)有効性
本計画の実施によって、事業完了2年後の2031年には、1日当たりの来航漁船数、年間水揚げ量、冷凍・冷蔵施設における年間保存量、事業実施地における食品安全・衛生管理に関する認証を受けた水産加工場の年間生産量の増加、対象漁港における生産性の向上及びバリューチェーンを通じて販売される水産物の品質の向上に寄与することが期待される。なお、定量的効果を把握するための各指標に係る基準値及び目標値については、サブ・プロジェクトが確定した際に設定する予定。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
要請書、インドネシア国別評価報告書(2018年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース並びに事業事前評価表
を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。