ODA(政府開発援助)

令和5年4月6日

評価年月日 令和5年2月22日
評価責任者 国別開発協力第一課長 石丸 淳

1 案件概要

(1)供与国名

 インドネシア共和国(以下「インドネシア」という。)

(2)案件名

 ジャカルタ都市高速鉄道計画(フェーズ2)(第二期)

(3)目的・事業内容

 本計画は、交通混雑が深刻なジャカルタ首都圏において都市高速鉄道システム(MRT)を整備することにより、増加するジャカルタ首都圏の輸送需要への対応と自動車交通から公共輸送へのモーダルシフトを図り、もって、同首都圏の交通混雑の緩和、投資環境の改善、環境負荷の軽減に寄与するもの。なお、我が国は、2018年10月にインドネシア政府との間で円借款の供与に係る交換公文「ジャカルタ都市高速鉄道計画(フェーズ2)(第一期)」に署名し(供与限度額:700.21億円)、現在工事が進められており、今次借款はその後続借款ととして2025年12月末までの資金需要に対応するもの。

主要事業内容
  • 土木・建設工事(土木工事、電気・機械システム、車両調達等)
  • コンサルティング・サービス
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
879.18億円 0.1%(STEP) 40(10)年 日本タイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA):本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定、以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる鉄道セクター、影響を及ぼしやすい特性に該当するため、カテゴリAに分類される。本計画(フェーズ2)のEIA報告書は、2011年1月に承認されたが、その後の線形、車両基地用地等の変更に伴い、2A区間と2B区間に分けて再度作成された。2A区間については、2021年2月にジャカルタ首都特別州政府により承認済み。
用地取得及び住民移転:本計画(フェーズ2)は、約35haの用地取得を伴うことが想定されるため、インドネシア国内手続及びJICAガイドラインに沿って作成される用地取得計画(LARAP)に基づいて実施される。なお、住民移転は生じない。
外部要因リスク:事業実施に当たっては、感染症対策を含め、関係者間で緊密に情報共有を行い、必要な安全対策を講じる。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドネシアでは、近年の急激な経済成長とジャカルタ首都特別州及び隣接県の人口増加に伴い、ジャカルタ首都特別州における深刻な交通混雑による経済的損失及び排気ガスによる大気汚染が大きな課題になっている。ジャカルタ首都特別州政府は、ジャカルタ中心部での乗用車の通行規制やバス専用レーンの設置により交通混雑緩和に取り組んできたが、人口増加が継続し更なる交通需要の増加が見込まれる中、都市高速鉄道システムの整備・延伸が急務となっている。
 上記状況を受けて、同国政府は、国家中期開発計画(2020-2024)において、経済成長の促進を支えるインフラ整備を国家開発の優先事項に位置付けているほか、本計画を国家戦略プロジェクトの一つとして掲げている。
 なお、本計画のフェーズ1区間は、2019年に開業し、ジョコ大統領を含むインドネシア側からも高く評価されているほか、首脳会談等において日本・インドネシア協力の象徴的案件として取り上げられており、その延伸区間であるフェーズ2に対する我が国の支援にも、インドネシア側から高い期待が寄せられている。2021年9月には、国際コンサルティング・エンジニアリング連盟(FIDIC)から「環境・社会に明らかな変化をもたらしたインフラ事業」として、インドネシアにおける事業として初めて表彰を受けた。
我が国の基本政策との関係
 本計画は、対インドネシア国別開発協力方針(2017年9月)の重点分野「国際競争力の向上に向けた支援」の中の「質の高いインフラの整備」に合致する。
 また、本計画は、「自由で開かれたインド太平洋」における経済的繁栄の追求のほか、SDGsゴール9(強靱なインフラ整備)、ゴール11(持続可能な都市づくり)及びゴール13(気候変動対策)にも資するものである。
 インドネシアは、東南アジア地域において最大の人口及び国土を擁するASEANの中核国であり、2022年はG20の議長国も務め、日本ASEAN友好協力50周年の節目となる2023年にASEAN議長国を務めるほか、1,780社を超える日系企業(2021年)が進出するなど政治、外交、経済及び地理的関係において極めて重要な関係にあり、重要な戦略的パートナーである。2022年7月の日インドネシア首脳会談においても、インフラ開発等の分野での両国の連携を確認しているところ、本計画は、両国間の協力強化及び日本の外交政策の推進の観点からも重要である。

(2)効率性

 2008年から2021年度末まで、本計画の運営主体であるジャカルタMRT運営会社の監督機関であるジャカルタ首都特別州政府に「ジャカルタMRT事業アドバイザー」を派遣し、本事業の形成・実施支援を行った。新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりアドバイザーが一時不在となったが、2023年度に派遣を再開する見込み。また、本計画と結節する路線として「ジャカルタ都市高速鉄道東西線」の整備が計画されているところ、日本政府として2015年にE/S借款を供与し、設計等の支援を実施中。さらに、本計画は、技術協力「ジャカルタ首都圏都市交通政策統合プロジェクトフェーズ2」にて提案した交通ネットワークを形成する主要路線でもあり、現在実施中の同プロジェクトフェーズ3においても、本計画の沿線開発案の策定支援を行う予定。
 本件の実施については、これらの案件との相乗効果が期待される。

(3)有効性

 本計画の実施により、以下のような成果が期待される。

定量的効果
  • (ア)旅客輸送量が4,407,637人・キロメートル/日となる。
  • (イ)車両運行数が259本/日となる。
定性的効果
 本計画の実施により、鉄道運営及び駅中・駅周辺開発等を通じた雇用機会の創出、女性の鉄道利用の促進と利便性の向上、ジャカルタ首都圏の物流・投資を含む環境の改善、同首都圏経済の発展、公共輸送利用の促進を通じた大気汚染の抑制及び温室効果ガス削減による気候変動の緩和への寄与が期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、インドネシア国別評価報告書(2018年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く並びに事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本案件に関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。

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