ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和2年1月24日
評価年月日:令和元年11月21日
評価責任者 国別開発協力第一課長 渡邊 滋
1 案件概要
(1)供与国名
ミャンマー連邦共和国(以下,「ミャンマー」という。)
(2)案件名
ヤンゴン都市開発計画
(3)目的・事業内容
本計画は,ヤンゴン市において,排水路改修,主要道路の渋滞要因対策,中心商業地区の街路整備等を実施することにより,ヤンゴン市における都市環境の改善を図り,もってヤンゴン市の経済・社会発展に寄与するもの。
- ア 主要事業内容
- 排水路改修
- 主要道路の渋滞要因対策
- 中心商業地区の街路整備
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 240億8,500万円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価:本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,カテゴリはBに該当する。
- イ
- 用地取得及び住民移転:本計画では,サブプロジェクトが確定した後,用地取得・住民移転が生じる場合は,環境影響評価フレームワークに基づき作成される住民移転計画に沿って取得が進められる予定。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ミャンマーでは,2011年の民政移管・経済の自由化以降,高い経済成長を続けており,特に,同国の経済活動の中心地であるヤンゴン都市圏には国内外からの投資が集まり,急速に開発が進んでいる。その結果,同都市圏の人口は約560万人(2011年)から約619万人(2016年)に増加している(出典:ヤンゴン都市圏開発マスタープラン)。
国際協力機構は,ヤンゴン都市圏が将来にわたり持続的な開発を進めるために,2012年8月からヤンゴン都市圏開発マスタープラン及びヤンゴン都市交通マスタープラン(以下,「マスタープラン」という。)の策定・改訂を支援してきた。同マスタープランでは,同都市圏がインフラの整備された魅力ある国際都市となるために早期に対応すべき課題として,洪水被害軽減のための排水路整備,ヤンゴン市内の交通渋滞緩和のための道路整備及び中心商業地区の街路整備等が挙げられている。
これら課題のうち,排水については,既存排水路の流下能力の不足や河川水位の影響による排水不良により,雨水が適切に市外へ排出されず洪水が発生しており,経済活動・市民生活に影響を及ぼしている。2015年のモンスーン豪雨による洪水では,ヤンゴン都市圏で1万6千人の住民が避難を余儀無くされた。
交通渋滞については,道路面積率が低いことに加え,非効率な交差点構造や,適切な交通安全設備(中央分離帯,道路標識及び踏切周辺道路の設備),バス停,歩道等の未整備といった問題があり,交通渋滞を引き起こす要因となっている。また,自動車登録数は2012年から2016年の4年間で5倍に増加しており,ヤンゴン都市圏の交通需要は,2013年の653.6万トリップ(人がある目的をもってA地点からB地点まで移動する際の単位)から2035年には1,560.8万トリップに増加(内34.9%が自動車)すると見込まれるなど,今後,慢性的な渋滞が深刻化していくと考えられる。
街路については,中心商業地区には多くの歴史的・宗教的建造物が残っているが,街路が適切に整備されていないため,歩行者や観光客が安全・快適に過ごせる空間とはなっていない。
このような問題を受け,ピョー・ミン・テイン ヤンゴン地域政府首相及びヤンゴン市開発委員会は,都市環境・交通渋滞の改善をマスタープランにおいて優先事業と位置付けている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
2012年4月に見直した我が国の対ミャンマー経済協力方針では,「持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」を重点分野の一つとしており,本計画は同方針に合致している。また,2016年11月の安倍内閣総理大臣とアウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問との会談において安倍内閣総理大臣が表明した「日本・ミャンマー協力プログラム」では,「都市開発・都市交通」は重要な協力プログラムの一つとして掲げられている。我が国はこれらプログラム実施のために官民合わせて2016年度から5年間で8千億円規模の貢献を行う旨表明しており,本計画はそれを具体化するものであり,二国間関係の強化に資するとともに,同国における我が国のプレゼンス向上にもつながることから,外交上の意義も大きい。
(2)効率性
技術協力「ヤンゴン公共バスサービス改善プロジェクト」の中で,バス停付近でバス等の停車に伴い渋滞が発生している箇所については,一部道路の改良工事を予定しており,本計画と連携して効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施により,ヤンゴン都市環境の改善及びヤンゴン市の経済活性化・社会発展・交通安全の向上に寄与することが期待される。なお,排水路疎通容量等に係る基準値及び目標値については,サンプルベースでサブプロジェクトが確定した際に設定する予定。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価)」報告書(2014年度)(PDF),「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)
,その他国際協力機構より提出された資料。
本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース
及び事業事前評価表
を参照。
なお,本計画に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。