ODA(政府開発援助)

令和2年4月21日

評価年月日:令和2年2月28日
評価責任者:国別開発協力第一課長 渡邊 滋

1 案件概要

(1)供与国名

 ミャンマー連邦共和国(以下,「ミャンマー」という。)

(2)案件名

 ヤンゴン・マンダレー鉄道整備計画(フェーズI)(第三期)

(3)目的・事業内容

 ヤンゴン・マンダレーを結ぶ既存鉄道路線のうち,ヤンゴン・タングー間において,老朽化した施設・設備の改修・近代化及び新規車両の調達を行うことにより,より安全で高速の列車運行と旅客の輸送能力増強を図り,もってミャンマーの経済発展に寄与するもの。

  • ア 主要事業内容
    • 土木工事及び資機材調達
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
406.04億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア 環境影響評価:本計画は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる鉄道セクターのうち,大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響等は重大でないと判断され,かつ,同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため,カテゴリBに該当する。
  • イ 用地取得及び住民移転:本計画の被影響世帯は5世帯28人,加えて80エーカーの用地取得が必要だが,住民移転及び用地取得は,ミャンマー法令及びJICAガイドラインに基づき作成された簡易住民移転計画(ARAP)に沿って実施済み。
  • ウ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 ミャンマーの鉄道網の総延長は約6,112キロメートル(2018年)であり,全路線をミャンマー国鉄(Myanma Railways。以下,「MR」という。)が管理・運営している。路線の多くは英国植民地時代に建設され,MRによる維持・管理が不十分であることから,鉄道関連施設・設備の老朽化により列車走行の速度低下・遅延・脱線事故等が生じており,安全かつ安定した列車運行が難しい状況となっている。 中でも,ヤンゴン・マンダレー線は,同国最大の商業都市ヤンゴン,首都ネピドー,第2の商業都市マンダレーを結ぶ重要路線(約620キロメートル,複線区間)であり,沿線には全人口の約4割が居住している。同国の経済発展に伴い,旅客・貨物の輸送需要が高まっており,更なる需要増加への対応・サービス向上のため,輸送施設・設備の老朽化解消,近代化が喫緊の課題となっている。 こうした状況下,JICAの支援により策定された「全国運輸マスタープラン」(2015年12月に閣議承認)において,「ヤンゴン・マンダレー鉄道整備計画(フェーズI)」は,早期に実施すべき優先度が高いプロジェクトの一つとして位置付けられ,2014年9月に第一期分(200億円),2017年3月に第二期分(250億円)の円借款契約が締結されている。また,同国政府が2018年8月に発表したMyanmar Sustainable Development Plan(2018~2030)においても,戦略の一つとして「国内鉄道路線の拡張,近代化,継続」が掲げられている。
我が国の基本政策との関係
 2012年4月に見直した我が国の対ミャンマー経済協力方針では,「持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」を重点分野の一つとしており,本計画は同方針に合致するとともに,SDGsゴール9(強靱なインフラ構築)にも貢献すると考えられる。また,2016年11月の安倍総理大臣とアウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家最高顧問との会談において安倍総理大臣が表明した「日本・ミャンマー協力プログラム」では,「地方と都市を結ぶ運輸インフラ整備」は重要な協力プログラムの一つとして掲げられている。我が国はこれらプログラム実施のために官民合わせて2016年度から5年間で8千億円規模の貢献を行う旨表明しており,本計画はそれを具体化するものである。さらに,ミャンマー政府のニーズに応え,同国の持続的経済成長を後押しすることは,二国間関係の強化に資するとともに,同国における我が国のプレゼンス向上にもつながることから,外交上の意義も大きい 。

(2)効率性

 無償資金協力「鉄道中央監視システム及び保安機材整備計画」により,本計画の対象区間において,特に緊急性の高い信号・通信・保安機材を先行導入。また,技術協力「鉄道車両維持管理・サービス向上プロジェクト」を通じた維持管理能力強化を実施中。さらに,本計画の詳細設計策定を支援するため,有償勘定技術支援「ヤンゴン・マンダレー鉄道整備計画フェーズI詳細設計調査」を実施済みであり,本計画のコンサルティング・サービスによる技術移転を行うだけでなく,これら他スキームとの連携により本計画の効率性を確保する。

(3)有効性

 本計画の実施により,ヤンゴン・タングー間において事業完成4年後(2027年)には,2013年比で以下の成果が見込まれる。

  • ア 1日あたりの運行本数が,27.5本から164本に増加する。
  • イ 1日あたりの車両キロが,11,112キロメートルから52,119キロメートルに増加する。
  • ウ 所要時間が,6時間54分から3時間20分に短縮される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価)」報告書(2014年度)(PDF)別ウィンドウで開くJICAガイドライン別ウィンドウで開く,その他JICAより提出された資料。
 本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。

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