ODA(政府開発援助)

平成28年3月2日

評価年月日:平成28年2月15日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男

1 案件概要

(1)供与国名

エジプト・アラブ共和国

(2)案件名

配電システム高度化計画

(3)目的・事業内容

 アレキサンドリア,北カイロ及び北デルタ配電公社管轄地域において,配電設備の更新・新設を行い,配電ロスの削減及び電力供給の効率性・信頼性向上を図り,もって経済発展の促進及び気候変動の緩和に寄与することを目的とする。

  • ア 主要事業内容
    • 資機材調達
    • コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
    247.62億円 年0.3% 40(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分については,金利年0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • ア EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上,環境への好ましくない影響は重大でないと判断されるためカテゴリCに分類される。本計画に係る環境影響評価(EIA)は2014年8月にエジプト環境庁により不要と確認済み。
  • イ 土地収用及び住民移転:本計画により住民移転及び用地取得は伴わない。
  • ウ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

  • ア 開発ニーズ
     エジプトは2001年から2011年の間に年率4.7%の経済成長を遂げ,最大需要電力は2002/03年度から2012/13年度の間に年率6.7%で伸びた。発電設備容量は年々増強されており2012/13年度時点で30,803MWとなっているが,2015/2016年度の最大需要電力は32,798MWと現在の供給能力を超える見込みであり,今後も更なる発電設備容量の増強が必要であるとともに,増加する電力需要に対応した送配電設備の整備によるエネルギー効率化も求められている。
     送配電ロス率の低減は,発電量や発電に必要な燃料消費の節約,及び発電設備投資の合理化につながる。2011年時点でエジプトの送配電ロス率は10.2%であるものの,今後,電力供給量の増加につれ,送配電ロス率が大幅に増加することが懸念される(送配電ロスは電流の大きさの2乗に比例して増加/減少するため,一般的に電力供給が増えると送配電ロス率は増加する)。送配電においては,技術的なロスだけでなく,盗電や料金未徴収等によるノンテクニカルロスが存在するが,本計画対象地域ではいずれも送配電ロスの約50%がノンテクニカルロスによるものと報告されていることから,こうしたロスにも対応する配電設備の整備が必要となっている。
     2012年7月に閣議承認された電力分野における国家エネルギー効率化計画(the National Energy Efficiency Action Plan of Electricity Sector(2012-2015年))は,電力消費量の削減によるエネルギー効率化を目指しており,本計画は同計画の下に位置付けられている。また,2015年3月に開催されたエジプト経済開発会議(Egypt Economic Development Conference)で発表された電力セクター戦略によると,エジプト政府は2022年までに54.5GW分の発電設備容量を増強する計画であり,再生可能エネルギーによる発電設備容量を2022年までに全体発電設備容量の20%に増加させることを目指している。これに伴い,送配電網の強化・更新も行い,ネットワーク能力の向上,信頼性の強化,サービスの質の改善を行う計画である。また,供給サイドにおけるエネルギー効率向上の一環として送配電ロスの削減を目標に掲げており,配電ロス削減に資する本事業は同戦略の下に位置付けられている。配電設備の更新・新設によりエネルギー効率化を図る本計画は,同国の課題及び方針に合致する。
  • イ 我が国の基本政策との関係
     エジプトは,中東・アフリカ・欧州をつなぐ地政学的要衝に位置し,中東和平プロセス等,地域の平和と安定に向け重要な役割を果たしている。同国の開発課題への取組を支援し同国の安定化に貢献することは,地域の安定化にも繋がる。
     我が国は,対エジプト国別援助計画において,「持続的成長と雇用創出の実現」,「貧困削減と生活水準の向上」及び「地域安定化の促進」の3点を援助計画目標に掲げている。
     「持続的経済成長と雇用創出の実現」の中の重点セクター目標「投資・ビジネス環境改善」の下,発電設備容量の増強及びエネルギー利用効率化と省エネ推進を支援している。これまでに16件の電力分野の円借款案件を実施し,現在,「ガルフ・エル・ゼイト風力発電事業」及び「上エジプト給電システム改善事業」の2案件を実施中である。
     本計画は,エネルギー効率化を図るものであり,我が国の協力方針に合致するのみならず,過去の協力成果を補完するものである。

(2)効率性

 我が国が実施する配電分野の本邦研修へ,本計画に関連する各配電公社の職員を参加させ,送配電ロス対策の総合的な能力強化を行うことで,本計画の開発効果の一層の増大を図る。

(3)有効性

 カイロ首都圏や第2の商業都市地域を管轄するアレキサンドリア,北カイロ及び北デルタ配電公社所管の配電設備の更新・新設を行うことにより,送配電ロスの削減及び電力供給の効率性・信頼性向上を図り,停電時間の短縮が期待される。
 本計画により,停電時間(分/顧客)は,基準値である2012年実績値と比較して約5分の1に短縮する(目標値(2024年:事業完成2年後))こと等が見込まれる。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,エジプト国別評価報告書国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料

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