ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:平成29年1月13日
評価責任者:国別開発協力第一課長 原 圭一
1 案件概要
(1)供与国名
ミャンマー連邦共和国
(2)案件名
ヤンゴン・マンダレー鉄道整備計画(フェーズI)(第二期)
(3)目的・事業内容
ミャンマー第一・第二の都市であるヤンゴン・マンダレーを結ぶ既存鉄道路線のうちヤンゴン・タングー間において,老朽化した施設・設備の改修,近代化,新規車両の調達等を実施するもの。
- ア 主要事業内容
- 土木工事・資機材調達
- コンサルティング・サービス
- イ 供与条件
供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件 250億円 年0.01% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境影響評価:本計画は鉄道セクターのうち大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され,かつ,影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しない。また,本計画にかかる環境影響評価(EIA)報告書はミャンマー国内法上,作成が義務付けられていない。
- イ
- 用地取得及び住民移転:本計画の被影響住民は7世帯32名,うち物理的な移転が生じるのは6世帯31名で,約32ヘクタールの用地取得も見込まれている。住民移転及び用地取得はミャンマー法令及びJICA環境社会配慮ガイドラインに基づき作成された簡易住民移転計画に沿って取得が進められる。住民協議では特段の反対意見は出ていない。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ミャンマーの幹線鉄道は英国植民地時代にほぼ完成しているが,これまでミャンマー国鉄の年間投資額の大半が新線建設に充当されてきた結果,既存輸送施設・設備の更新が大きな課題となっている。中でもヤンゴン・マンダレー線は,当国最大の商業都市ヤンゴン,首都ネーピードー,第二の商業都市マンダレーを結ぶ重要路線(約620キロメートル,複線区間)である。
ヤンゴン・マンダレー線が通るヤンゴン地域,バゴー地域,マンダレー地域には全人口の37%にあたる1,955万人(2014年)が居住しており,旅客・貨物の輸送需要が高まる一方で,列車走行速度低下・遅延・脱線事故等が生じ,輸送サービスの低下が課題となっている。更なる需要増加への対応・サービス向上のため,輸送施設・設備の老朽化解消,近代化が喫緊の課題となっている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
2012年4月に見直した我が国の対ミャンマー経済協力方針では,「持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」を重点分野の一つとしている。本計画は,幹線鉄道路線の施設・設備の改修・近代化による,安全で高速の列車運行と旅客・貨物の輸送能力強化を通じミャンマーの持続的経済成長の促進に寄与するものであり,同方針に合致している。
(2)効率性
無償資金協力「鉄道中央監視システム及び保安機材整備計画」と連携し,包括的な鉄道システムの導入を図り,技術協力「鉄道安全性・サービス向上プロジェクト」で維持管理能力の向上を図る。また,有償資金協力「ヤンゴン環状鉄道改修計画」ではヤンゴン市内の信号システムを更新する。これら他スキームとの連携により案件の効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施により,ヤンゴン・タングー間において,より安全で高速の列車運行と旅客・貨物の輸送能力増強を図る。事業完成4年後の2027年には運行本数164本/日(2013年実績値:27.5本/日),車両キロ52,119キロメートル/日(同:11,112キロメートル/日),ヤンゴン・タングー間所要時間3時間20分(同:6時間54分)となる見込みであり,ミャンマーの経済発展に寄与する。さらには,我が国との二国間関係の強化に資することが期待される。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,「メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(第三者評価)」報告書(PDF),「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)
,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。