ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第487号
外交関係70周年! 内陸国ラオスと“連結性”支援
在ラオス大使館 経済・経済協力班
外交関係樹立70周年を迎えるラオス


2023年8月以来、1年半ぶりのラオスからの発信です。
今年は、日本とラオスとの間では、1955年3月の外交関係樹立以降、70周年の記念の年になります。これを機に、今年1月に石破総理とラオスのソーンサイ首相は首脳会談を行い、日本とラオスの二国間関係は「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされました。また、昨年は日本の「国際協力70周年」記念の年でもありました。更にラオスとの関係では、1965年にJICA海外協力隊(以前は青年海外協力隊と呼ばれていました)が世界で初めて派遣された国であり、今年は以来60周年の記念の年でもあります。
今回はこのラオスに対する経済協力の柱の一つであり、そしてラオスにとって極めて重要な政策の1つである「連結性(Connectivity)」について少し触れてみたいと思います。
内陸国ラオスの目指す“Land-locked to Land-linked”

結んで走る大型コンテナトラック
世界地図を見ていただくと判りますとおり、ラオスは東南アジア唯一、海に面していない、内陸国になります。この内陸国であるということは、海外からの物資の輸入、生産物の世界への輸出にあたって、他の国を通らなければならない、他国の港において船と陸上輸送とで荷物を積み替えて運ばなければならないという大きな手間と費用を要することを意味しており、経済成長のために各種分野(農業、製造業、鉱業など)の企業が活動するにあたって、海に面した国に比べて、大きなデメリットを負っていることになります。
ラオスはそのデメリットを乗り越えるため、以前から「Land-locked to Land-linked(内陸国から連結国へ)」を旗印に掲げ、様々な交通の「連結性」の改善に、開発パートナー(所謂ドナー国・機関)と共に取り組んできました。
物流・交通の円滑化、「連結性の強化」は、各種産業の企業活動を容易化させるのみならず、ラオスにとって重要な外貨獲得手段である「観光」業の活性化、より多くの海外からの観光客を運ぶためにも、極めて重要です。
日本も、対ラオス経済協力の指針である「国別開発協力方針」において、「周辺国とのハード・ソフト面での連結性強化」を4本柱の1つに掲げ、この連結性強化のための支援を長い間行ってきました。
これまでの我が国の“連結性”支援

我が国の支援について幾つか例を御紹介させて下さい。
ラオス中南部サワンナケートとタイ側ムクダハンとを結ぶ「第2メコン国際橋」(2001年有償)は、ベトナム、ラオス、タイ、そしてミャンマーまでを結ぶ経済動脈となる、メコン地域「東西回廊」の要となる重要なインフラです。この橋から東のベトナムへと延びる国道9号線に対しては「国道九号線(メコン地域東西経済回廊)整備計画」(2011年無償)や、「国道九号線橋梁改修計画」(2016年無償)など、多くの支援を行い、この国際的な幹線道路の整備を支援してきました。


南部チャンパサック県パクセーとタイ側ウボンラチャタニ-とを結ぶ道路に所在する「パクセー橋」は、1万キープ札にも描かれており、記念切手となった「第2メコン国際橋」と共に、日本のラオスに対する経済協力の象徴的案件となっています。


にかかる交換公文署名式
また、「空の連結性」に対する支援として、首都ビエンチャンの窓口である「ワッタイ空港」に対しては、「ビエンチャン国際空港ターミナルビル拡張計画」(2014年有償)を始め、複数回の支援を行い、毎年旅客・貨物需要の増大する首都空港の機能確保を支援しています。このワッタイ空港は現在、日本企業「JALUX」社がオペレーションに参画し、日本のような高品質のサービス提供に努めています。
更に近年では、ラオス政府(公共事業運輸省)がラオス人の技術者・オペレーターを育てながら、自らの手で道路や橋の補修・維持管理を行えるよう、必要な機材の供与(2024年無償など)や技術協力を行っています。つい先日3月6日(木曜日)には、「経済社会開発計画(橋梁補修資機材の供与)」の実施が決定され、交換公文署名式典が開催されました。これらの機材を使って、ラオスの方々が、自らの手で、長きに亘り持続的に道路を良好に維持管理できるようになり、そしてこれによって経済活動が更に活発化していくことを期待しています。
結び

さて、最後にちょっと趣向の変わったお話しを二点。
昨2024年7月、タイから国際橋を渡り、ビエンチャン市街地の外れにあるタナレーン地区まで、ラオスにほんの少しだけ乗り入れてきていた鉄道が、ビエンチャン市街地近くのカムサワート駅まで約7キロメートル延伸されました。この鉄道は、タイのレムチャバン港などからラオスへのコンテナ貨物輸送がその主要な役割で、これも「連結性」の1つなのですが、その延伸に合わせて、タイのバンコクからビエンチャン・カムサワート駅まで直通の夜行列車が走るようになりました。この直通列車には、かつてJR西日本で使われていた“元ブルートレイン”用の寝台車と座席車が連結されているのです。このため鉄道ファンの熱い視線が注がれており、コロナ後のバックパッカー旅行者の回復も相まって、連日満席状態です。そしてこの車両に乗りたい、撮影をしたい、といった日本人旅行者が毎日のようにラオスを訪れて来ています。“元ブルートレイン”に乗るためのツアーも計画されているようで、観光客呼び込みの“キラーコンテンツ”になるかもしれません。

最後にもう一つ。上述しましたとおり日本との関わりが深いビエンチャンのワッタイ国際空港には、現在日本からの直行フライトがありません。日本や韓国の冬にあたる乾季には、毎週40便もの直行便が韓国各地から大勢の観光客を乗せてラオスに飛んできているにも関わらず、日本人としては些か悔しい思いをしていますが、近年では、隣国ベトナムやタイを拠点とする格安航空会社(LCC)が、このメコン地域でも多数のフライトを飛ばしており、うち何社かはビエンチャンにも乗り入れています。
日本からだと乗り換えの一手間はありますが、日ラオス70周年の機会に皆さんも是非ラオスに来て、隣国同士が地続きでつながるメコン地域の「連結性」を実感してみて下さい!