ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第454号
ボリビアでのODA事業の経験を伝える
民間企業による開発教育の取組

株式会社レアックス 営業企画部 鈴木利実
ボリビアは国土の3分の1がアンデス山脈の高地にあり、南米でも最も所得水準の低い国の一つです。山岳地帯の首都ラパスでは、川に水が十分に流れておらず、生活用水は井戸水を活用していますが、給水施設の整備が遅れており、また地方からの人口流入などもあり深刻な水不足が続いています。最近では地球温暖化の影響により、氷河が後退するなど貴重な水資源も減少しています。2016年には大規模な干ばつが発生し、大統領による非常事態宣言が出されるなど、水資源の確保が急務になっています。水不足解消と関連のビジネス展開に関する調査と実証を行うため、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用した井戸長寿命化事業に取り組みました。
ボリビア国における効果的な診断・改修による長寿命化事業(JICA事業)

1988年以降、水不足解消のため日本のODAで井戸掘削機材の提供と、組織能力強化や維持管理能力の向上等の技術移転が行われた結果、ボリビア全体で約2000本の井戸が掘削されてきました。井戸は適切なメンテナンスを行わないと、得られる水量がだんだんと減ってしまいますが、ボリビアにおける技術や予算の不足等により、一部の井戸については、水量が減ると放置され、井戸機能回復の可能性が検証されないまま新たな井戸が掘られていました。JICA事業では、サンプリングした井戸について、井戸カメラを使った診断を行い、診断結果に基づく改修(井戸洗浄)を実施し、ほとんどの井戸で機能が回復し、井戸を復活させることができました。
開発教育の取り組み(札幌の学校との連携)

ボリビアで行ったODA事業は新聞などのメディアに掲載されたことをきっかけに札幌市内の学校等で事業を紹介する取組が始まりました。学校で紹介しているのは、現地の”課題”です。日本国内、特に私達が暮らす札幌では、水資源が豊富にあり、水不足に直面する機会はほとんどありません。しかし現地では、水不足解消を求めるデモが各地で頻繁に起きており、井戸内に暮らすカエルがいる不衛生な井戸水を生活用水として使用しているなど、リアルな実情を伝えています。こうした課題に触れることで、水を大切に使うことや、大人になるときに課題に取り組むことを想像し、色々なことに挑戦してもらえるようになればと思い取り組んでいます。
開発教育の取組の変化(最新技術のVRで地中体験を実現)

講演を聞いた生徒達の反応は様々です。「ODAの重要性を知ることができた」、「ボリビアは日本の反対側にあるのですね」といったものから、「個人と会社が成長した部分は何か?」、「海外でビジネスを行うコツは?」など少し回答に困るような質問もありました。講演を聞いた生徒から、実際に井戸カメラを見たいとの要望があり、最近では会社訪問の受け入れも行っています。また、自社の製品や取組を楽しみながら知ってもらうために、地中体験ができるVRシステムを開発して体験会を行うなど、講演だけなく最新技術を活用した教育ができるように当社の環境も変化しています。人間が決して入ることの出来ない未知の世界(地中内部)を擬似体験した生徒たちは皆、「すごい、楽しかった」と興奮気味に感想を言ってくれます。地中に飛び込むときに「うわぁ」と声を上げながら、楽しそうに体験する姿を見ると嬉しくなりますし、体験型VRを作って良かったと思います。こうした活動がメディアに取り上げられ、ODA事業がきっかけとなり、企業のPR活動の幅がさらに広がっています。今後の開発教育の取組では、日本のものづくりの技術やサービスで世界の課題解決に貢献ができるということ、日本とは環境の異なる海外事業への取組にはリスクも伴うが、個人や企業が成長する多くの経験を得ることができることを、生徒達に伝えていきたいと思います。

