ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第447号
外交関係樹立100周年を迎えた
ウルグアイに笑顔を届ける日本の開発協力


着任を伝える当時のウルグアイ外務省公報資料
在ウルグアイ東方共和国日本国大使館 経済協力担当 木田秀一郎
日本からは地球の反対側にあり、距離的に最も遠い国の一つであるウルグアイですが、1908年に初めて日本人が移住してから2018年で110周年を迎えました。また、両国の外交関係が樹立された1921年9月24日から今年で100周年を迎えました。
日本とウルグアイは基本的価値観を共有する重要なパートナーであり、またウルグアイが南米の物流拠点としての地勢的優位性を持つことなどを背景に、経済分野を中心に両国の関係がますます強化されつつあります。
そこで今回は、新型コロナウイルス感染症対策で活躍した移動診療車両「希望の急行号」や、副大統領が熱心に取り組んでいる乳がん撲滅対策のための検診車両、再生可能エネルギー推進に力を入れるウルグアイに初めて導入された太陽光発電施設「あさひ」「ひかり」についてご紹介したいと思います。
地方の人々に医療を届ける日本の医療車両
コロナ対策や乳がん検診に大きく貢献


ウルグアイは周囲を南米の大国に囲まれ、ラテンアメリカの中では比較的小さな国です。日本の約半分の面積の国土に、横浜市より少し少ない人口が暮らしています。人口の多くは首都モンテビデオをはじめとする都市に集中しており、都市部から一歩踏み出した途端、どこまでも続く見渡す限りの広大な草原が拡がっています。このような環境の中で、地方の都市からも遠く離れた村に住む住民は、医療・保健をはじめとする社会サービスへのアクセスに日々大変苦労しています。
このような地域格差を解消し、地方部の住民の方々が各種社会保障サービスを受けるための支援として、日本大使館では草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて、地方の保健医療センターの改修・増築や医療機材の供与、農村部巡回医療用の車両や救急車、病気を未然に予防するための健康診断のため車両に搭載するポータブル式マンモグラフィー機器(乳がん検査機器)の供与などの支援を重点的に実施しています。


例えば、北部ブラジル国境の町、リベラ県では「希望の急行号」(写真は2台目)を整備し、定期的に各地を巡回することで、農村部の住民が内科、歯科治療や定期的なワクチン接種を受けられるようになりました。また、同車両は新型コロナウイルス感染症対策としてコロナワクチン接種にも大活躍しました。


また、ウルグアイにおける乳がん撲滅対策月間である10月には、毎年、各地で関連啓発活動が行われていますが、ベアトリス・アルヒモン副大統領のイニシアティブにより、国会議事堂前で開催された乳がん撲滅対策キャンペーン式典には、日本がタクアレンボ県に供与したポータブルマンモグラフィーが2年連続で動員され、活躍しました。
この検査車両は、通常、北部のタクアレンボ県で運用されており、このイベントのために片道5時間の道のりを夜通し移動してモンテビデオまで駆けつけてくれました。県内の業務に支障を来さないため、イベントが終わるとその足で戻るというタクアレンボ県の関係者の皆様の大変な対応に、頭が下がる思いです。
再生可能エネルギー普及に向けた支援
「あさひ」「ひかり」が太陽光発電の先駆けに


ウルグアイは供給源の多様化によるエネルギー供給の安定化に取り組んでおり、なかでも再生可能エネルギーへの先進的取り組みで知られています。2020年には、電力供給源の約96%が再生可能エネルギー由来となっています。その内訳は凡そ、風力4割、水力3割、バイオマス発電2割、太陽光4%です。
電力供給源として歴史が長い水力発電は干ばつによる不安定性があるため、近年はこれに加えて風力利用が急速に伸びているほか、長年のJICAを通じた林業・パルプ産業への協力の結果、林業が振興し、その結果バイオマス発電もシェアを伸ばしています。太陽光発電についても日本は2期にわたって協力しており、サルト県とラバジェハ県で電力プラントが稼働しています。北部サルト県の水力発電所近くに2013年に設置された第1期太陽光発電施設「あさひ」、2019年にラバジェハ県ミナス市に設置された第2期施設「ひかり」は、いずれもウルグアイにおける太陽光発電の先駆けとなりました。

さらにモンテビデオ県のウルグアイ技術研究所にはJICAを通じた協力により多くの木材検査機材が導入されています。LATUルペルト・ロング理事長は、「長年に亘る日本の林業技術協力がウルグアイの現在の製紙・林業振興の礎となった」と高く評価しています。
ウルグアイは日本から遠く離れた国ですが、この国の人たちは日本に高い関心を寄せています。子どもたちが日本大使館にはためく日の丸を見て「ハポン、ハポン!!」と両親に指さしてはしゃぐ姿を見かけます。今年採択した草の根事業の署名式の様子がテレビで全国放送された次の日には、大使館の職員が町往く人に「日本人ですか」と声をかけられ、涙を流して感謝された、と言う話を聞いたとき、本当に嬉しく感じ、案件形成時の苦労が吹き飛ぶ思いがしました。