ODA(政府開発援助)

2020(令和2年)年7月10日発行
令和2年7月10日

フィリピンに笑顔の種をまく、ODA草の根無償資金協力

(画像1)フィリピン

在フィリピン大使館 一等書記官 岡田 岳大

(写真1)集合写真 保健所と医療機材の引渡式で
コロン島の子どもたちと
(写真2)初めてやってきた分娩台 島に初めて分娩台がやってきました。
出産は月に1~4人ほどです

 近年フィリピンは経済成長率約6%と著しい成長を続けていますが、まだ貧富の差や地域による生活水準の格差が大きいために、教育、保健など人間の安全保障における基本的なニーズが十分に満たされない方々が多く存在します。草の根無償資金協力(注1)は、途上国で活動するNGOや地方公共団体、非営利団体と協力して、そのような現地のニーズに対応する形で行われる支援であり、フィリピンでは同支援が始まった1989年から現在に至るまでの間に、計548件の事業を実施してきています。

案件1 パラワン州コロン町 島に初めての分娩台を届ける

 フィリピンは大小7,000を超える島を有する、世界有数の群島国家です。中でも「フィリピンの秘境」と呼ばれるパラワン州コロン島は、美しい海と自然に囲まれた観光スポットで世界中から観光客が訪れます。その一方で、コロン本島の周囲にある離島では、財政面の問題で島内に医療施設を整備することができず、受診の際にはボートで本島に渡る必要があります。そのため軽い病気やけがが重症化してしまう問題や、リスクが高い自宅出産を余儀なくされるという問題を抱えていました。
 この問題の解決のため、同自治体からの要請を受け、日本は平成25年の事業として、授産施設をもつ保健所1棟および診察・治療器具類などの医療機器(およそ810万円)を整備しました。その結果、約2,900人の住民が安全に医療にアクセスすることが可能となったのです。

(写真3)リハビリテーション機材にチャレンジする子どもたち 我先にと新しいリハビリテーション機材に
チャレンジする子どもたち
(写真4)トレーニングに励む様子 子どもたちは新しい施設をみて表情も明るくなり、助け合いながらトレーニングに励んでいます

 コロン町に赴いた際「これで安心して子どもを産めます」と話した女性の言葉が非常に印象的でした。町長からも「地理的に隔離されていた人々が医療にアクセスできるようになりました。健全なコミュニティを構築するための日本の協力に感謝します」との言葉をいただきました。

案件2 パラニャケ市 障がい児のためリハビリテーション機材を届ける

 マニラ首都圏パラニャケ市では約6,000人の障がい児が居るとされていますが、フィリピンでは、障がい者に対する公共支援制度が十分に整っておらず、特に障がい児に対する特殊教育やリハビリテーションを行う施設は限られています。また、その施設利用料が高いことから、貧困家庭の障がい児の多くは必要な教育やリハビリテーションを受けられていない状況にあります。
 ステッピングストーン特殊教育センター財団は、そのような貧困家庭の障がい者の自立支援を目的として、特殊教育やリハビリテーションプログラムを提供してきました。同財団からの要請を受け、日本は平成28年度の事業として、同財団が所有するリハビリテーション施設に理学療法施設と関連するリハビリテーション機材(およそ540万円)を整備しました。財団からは「この施設は障がい児の特殊教育や、理学療法士の学習会場としても活用されています。引き続きあらゆる経済水準の障がい児を治療していきます。日本の皆様、本当にありがとうございました!」の言葉をいただきました。
 引渡式が終わると、子どもたちが早速楽しそうにトレーニングを始めており、この施設が彼らの未来に明るい光を指してくれることを実感しました。

 フィリピンは第二次世界大戦末期において激戦の地となり、100万人以上のフィリピン人が犠牲となりました。その後、1946年にフィリピンが独立し、1956年に日比賠償協定が結ばれたことにより、フィリピンに対する日本のODAは戦後処理の賠償支払いと並行して始まりました。
 以降、日本は質の高いインフラ整備や人間の安全保障の確保、紛争影響地域における平和と開発など、さまざまな分野でフィリピンの発展のために支援を続けており、日本はフィリピンにとって最大の援助供与国となっています。

 フィリピンと日本は、戦後さまざまな困難を乗り越え、現在では「黄金時代」と称されるほど良好な関係を築いています。こういった一つ一つの支援が両国の関係をより強くすると信じ、これからも日本は草の根無償資金協力を通じてフィリピンに笑顔の種をまき続けます。

(注)本記事は、6月20日に執筆されました。

新型コロナウイルス感染拡大防止のための国際協力

(写真5)ブータンに提供された乳房デジタル(注)本文記事とは無関係です。

 保健・医療体制が脆弱な途上国における感染拡大防止は、日本への感染症流入を予防する観点からも非常に重要です。また日本の経済・社会にも大きく影響する課題です。そのため、日本がODAを通じて、途上国の感染防止対策および保健・医療体制整備のために行っている支援例を紹介いたします。

(注)写真はODAによってブータンに提供された乳房デジタルX線撮影装置(平成28年度「国立病院及び地域中核病院における医療機材整備計画」)。本文記事とは無関係です。

東ティモールへの医療関連機材の供与

 東ティモールでは、早期に入国制限措置がとられたことにより、新型コロナウイルス感染症の拡大は抑えられています(7月7日現在)。しかし、入国制限により人的・物的往来が制限されたことで、経済的に大きな打撃を受けています。今後も引き続き、感染予防・拡大防止が必要ですが、基礎的な保健・医療体制が不十分で、関連機材も不足しています。そこで日本は東ティモールに対し、救急車、患者用モニターなどの保健・医療関連機材の供与を行うこととしました。

感染症対策および保健・医療体制整備のための支援例
国名をクリックすると支援の内容を詳しく知ることができます。
国名 供与内容 金額 ODAタイプ 署名日付
東ティモール 救急車、患者用モニター等 5億円 無償資金協力 6月16日
ジャマイカ 保健・医療関連機材 2億円 無償資金協力 6月16日
ソロモン諸島 小型救急車、患者用モニター等 3億円 無償資金協力 6月17日
クック諸島 移動式超音波スキャナー等 1億円 無償資金協力 6月17日
モンゴル 救急車、高濃度酸素発生器等 10億円 無償資金協力 6月17日
ウズベキスタン CTスキャナー等 5億円 無償資金協力 6月17日
ニウエ 患者用モニター、超音波画像診断装置等 1億円 無償資金協力 6月18日
ツバル 医療回診車、貯水槽等 1億円 無償資金協力 6月18日
タジキスタン 移動式X線撮影装置、血液ガス分析装置等 6億円 無償資金協力 6月19日
ハイチ 保健・医療関連機材 3億円 無償資金協力 6月19日
バヌアツ CTスキャナー、X線撮影装置等 3億円 無償資金協力 6月22日
ナウル ICUベッド、X線撮影装置等 1億円 無償資金協力 6月23日
パナマ 保健・医療関連機材 6億円 無償資金協力 6月23日
ブータン 小型救急車、可搬型超音波診断装置等 3億円 無償資金協力 6月23日
パプアニューギニア CTスキャナー、X線撮影装置等 9億円 無償資金協力 6月25日
ネパール 保健・医療関連機材 3億円 無償資金協力 6月25日

(6月16日~25日署名分)

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