ODA(政府開発援助)

2019年1月23日発行
平成31年1月29日

ODAメールマガジン第390号では,以下3話をお送りいたします。(肩書きは全て当時のものです)

  • (画像1)マラウイ共和国

水の有効活用で大地に緑を

原稿執筆:JICAマラウイ事務所 加藤 洋介 企画調査員

穏やかな国民,淡水魚の宝庫で「湖のガラパゴス諸島」と呼ばれ,その一部が国立公園にも指定されているアフリカ三番目の広さのマラウイ湖を有するマラウイは,「Warm heart of Africa」と呼ばれています。
一方で,気候変動の影響や農業生産基盤の脆弱性から毎年食糧危機の不安があり,安定的に農作物を確保することは重要な課題の一つです。

1年が乾季と雨季に分かれるマラウイでは,水資源は非常に貴重です。その水資源を有効活用するために灌漑(かんがい)という技術があります。
灌漑とは,作物の栽培に必要な水を人為的に耕地に供給するもので,安定的に農産物の生産することを目的の一つとしています。農業は,マラウイの労働人口の約80%を占める基幹産業ですが,灌漑可能な農地のうち実際に灌漑が行われている農地は28.5%にとどまっています。

灌漑を行うには,水位,土地の傾斜,流量,地形等を正確に測量・計算する必要があり,専門性の高い仕事です。そのため,海外では人材が不足していることが多く,マラウイも例外ではありません。

マラウイでは,現在「中規模灌漑維持管理能力強化プロジェクト別ウィンドウで開く(2015年から2020年まで)」を実施しており,3名の青年海外協力隊OBである経験豊富な専門家を派遣しています。

  • (写真1)土井専門家(チーフアドバイザー)フィリピンで青年海外協力隊・農業土木隊員として活動【写真提供:久野 真一/JICA】
    土井専門家(チーフアドバイザー)
    フィリピンで青年海外協力隊・
    農業土木隊員として活動
    【写真提供:久野 真一/JICA】
  • (写真2)田中専門家(業務調整・研修管理)ガーナで青年海外協力隊・稲作隊員として活動【写真提供:久野 真一/JICA】
    田中専門家(業務調整・研修管理)
    ガーナで青年海外協力隊・稲作隊員
    として活動
    【写真提供:久野 真一/JICA】
  • (写真3)榊専門家(灌漑施設・水管理)マラウイで青年海外協力隊・農業土木隊員として活動【写真提供:久野 真一/JICA】
    榊専門家(灌漑施設・水管理)
    マラウイで青年海外協力隊・農業土木隊員として活動
    【写真提供:久野 真一/JICA】

マラウイ人の灌漑専門技師の育成だけではなく,農民に直接農業サービスを提供する,政府職員である農業普及員や,農民自身にもできる役割を知ってもらい,プロジェクト協力期間が終わった後も,自身の手で灌漑施設の拡張・維持管理を続けてもらうことを目指しています。

また,灌漑事業底上げに繋がる活動は,現場だけではなく中央政府とも協議をし,効率的で持続性のある人材育成に尽力しています。

(注)映像は,現在マラウイで実施中である「カムズ国際空港監視システム運用支援プロジェクト別ウィンドウで開く」のチーフアドバイザー水政弘専門家の協力によって撮影されたものです。

  • (写真4)施工現場の1つであるThawi村の水路と農場【写真提供:水政 弘】
    施工現場の1つであるThawi村の水路と農場
    【写真提供:水政 弘】
  • (写真5)施工現場の1つであるThawi村上空からの画像【写真提供:水政 弘】
    施工現場の1つであるThawi村上空からの画像
    【写真提供:水政 弘】

ジャパン・プラットフォームによる緊急人道支援
【第12弾 SDGsの実現のために:課題解決のために連携するプラットフォームを目指して】

原稿執筆:ジャパン・プラットフォーム 広報部 河南 琢也

2015年9月にニューヨークの国連総会で採択された「SDGs(Sustainable Development Goals):持続可能な開発目標」では,貧困や飢餓,暴力といった人類への脅威をなくし,「Leave No One Behind(誰一人取り残さない)」世界の実現を目指し,様々なセクターが連携・協力して課題解決に取り組むことが求められています。

  • (写真6)SDGsロゴ(写真7)SDGsロゴ
    【SDGsロゴ】

ジャパン・プラットフォーム(JPF)も,各分野に専門性を持つNGO,政府,経済界,そして地域や個人の力を合わせたプラットフォームとして,日頃から人道危機における課題解決に取り組んでいます。

世界各地の自然災害による被災者や,紛争による難民・国内避難民などへの現場での支援だけでなく,国連機関などと連携し,人々が難民や移民の問題をより身近にとらえることができる機会をつくることにも努めています。

「世界難民の日」シンポジウム

世界中で紛争や迫害などにより家を追われた人の数は,現在6,850万人(2017年末時点)に上るといわれています。

2017年6月20日,JPFは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と5回目の共催となる「世界難民の日」シンポジウム,『アレッポからニューヨーク,そして東京へ:共に生きるために』を開催しました。

当日は,難民を社員として採用する日本企業,福島避難区域のお寺の住職,難民を受け入れる活動をしている日本の学生,ギタリストのMIYAVI氏(2017年11月に,日本人として初めてUNHCR親善大使に就任)などに登壇いただき,多様な視点を交え,日本における創造的な難民支援の活動,共に人権を尊重しながら生きるために必要な市民社会について議論しました。

  • (写真7)2017年6月のUNHCR/JPF共催「世界難民の日」シンポジウム支援関係者,学生,企業のほか,メディア16社18人を含む360人が参加【写真提供】JPF
  • (写真8)2017年6月のUNHCR/JPF共催「世界難民の日」シンポジウム支援関係者,学生,企業のほか,メディア16社18人を含む360人が参加【写真提供】JPF
  • (写真9)2017年6月のUNHCR/JPF共催「世界難民の日」シンポジウム支援関係者,学生,企業のほか,メディア16社18人を含む360人が参加【写真提供】UNHCR
    2017年6月のUNHCR/JPF共催「世界難民の日」シンポジウム
    支援関係者,学生,企業のほか,メディア16社18人を含む360人が参加
    【写真提供】JPF(上2枚),UNHCR(下写真)

参加した皆さんからは,「市民が専門家でなくても参加できるようなシンポジウムや勉強の場を,これからもたくさん設けてほしい」,「MIYAVIさんの,“自分たちは世界の一部なんだ”という言葉が印象に残った。各分野で活躍する人たちがそれぞれのやり方で同じ方向を向いて進んでいくことが大事だと思った」,「他国の先進的な事例が非常に勉強になった」などのコメントをいただきました。

ミャンマー避難民の人道危機,難民・移民の諸課題に関する円卓会議

  • (写真10)IOM/JPF/UNHCR共催 支援関係者,メディア,企業など100名以上が参加し満席に【写真提供:JPF】
    IOM/JPF/UNHCR共催
    支援関係者,メディア,企業など100名以上が参加し満席に
    【写真提供:JPF】
  • (写真11)ウィリアム・レイシー・スウィングIOM事務局長(当時)【写真提供:JPF】
    ウィリアム・レイシー・スウィング
    IOM事務局長(当時)
    【写真提供:JPF】
  • (写真12)ダーク・ヘベカーUNHCR駐日代表【写真提供:JPF】
    ダーク・ヘベカーUNHCR駐日代表
    【写真提供:JPF】

2018年3月2日には,国際移住機関(IOM),UNHCRとともに,現在130万人(注1)が支援を必要としているミャンマー避難民(注2)の人道危機,難民・移民の諸課題に関する円卓会議を共催しました。この会議では,国連機関やNGO,企業,メディア,有識者などが一堂に会し,各組織としての関わりや課題,さらに日本としての役割などについて意見交換が行われました。

また,来日したウィリアム・レイシー・スウィングIOM事務局長(当時)(注3),ダーク・ヘベカーUNHCR駐日代表が,「難民グローバル・コンパクト」(注4)および「安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト」(注5)の現状と課題を共有する機会となりました。

そのほか,JPF加盟NGOや来日した現地支援団体は,難民キャンプの状況や,難民たちの生の声,それぞれの支援活動について報告しました。メディアからは,難民の現状だけでなく,その背景についても広く周知していきたいという声があがりました。各企業は,自社の強みや技術を難民支援に活用している事例を紹介しました。

参加者からは,「特に企業による難民支援についてお話を聞けて有意義だった」,「全てのセクターの人を巻き込み,支援を続け,変えてゆく姿勢と努力が見られた」等のコメントをいただきました。セクターを越えた連携実現のため,それぞれの役割や課題を共有する第一歩となりました。

JPFは,これからも各支援機関やNGO,政府,経済界,そして地域や個人の力を合わせたプラットフォームとして,人道危機における課題解決に取り組んでまいります。皆さんがこのプラットフォームに参加し,一緒に「Leave No One Behind(誰一人取り残さない)」世界の実現を共に目指していけることを願っています。

  • (注1)UNHCR; Joint Response Plan For Rohingya Humanitarian Crisis March-December 2018別ウィンドウで開く
  • (注2)JPFでは,民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し,「ロヒンギャ」ではなく「ミャンマー避難民」という表現を使用します。
  • (注3)2018年6月29日に新たにアントニオ・ヴィトリーノ氏が国際移住機関(IOM)の事務局長に選任されています。
  • (注4)2018年に策定され,同年末に国連総会で支持されました。(参考:UNHCR Japan別ウィンドウで開く
  • (注5)2018年12月に採択されました。(参考:国連広報センター別ウィンドウで開く

ワン・ワールド・フェスティバル(大阪)開催のお知らせ

原稿執筆:国際協力局政策課

2月2日(土曜日)・3日(日曜日)10時から17時に,第26回ワン・ワールド・フェスティバル(同フェスティバル実行委員会主催,外務省協力)が,大阪市内の北区民センター・扇町公園・カンテレ扇町スクエア一階イベントスペースで開催されます。

本フェスティバルで,外務省は北区民センターにおいて写真展示「わたしたちのAction」を実施するほか,ブースを出展し,オリジナルキャラクター「ODAマン」がODA(政府開発援助)を紹介するクイズを行います。素敵な景品が当たるかもしれません!

また,SDGs(持続可能な開発目標)についてのセミナーや,NGO支援制度についての説明会も行われる予定です。

更に,2日(土曜日)13時からは,カンテレ扇町スクエア一階にて,草の根大使のペナルティ(吉本興業所属)が登場し,タイを訪問し,現地の人々と交流してわかった草の根無償(注)の魅力について熱く語ります。
(注)草の根・人間の安全保障無償資金協力

  • (写真13)草の根大使のペナルティ(吉本興業所属)

その他にも,会場では様々なイベントが開催され,世界各国の文化等を楽しむことができます。皆様のご来場をお待ちしております。詳細はワン・ワールド・フェスティバル(大阪)開催のお知らせをご覧下さい。

  • (画像2)ワン・ワールド・フェスティバル

最近の開発協力関連トピック

  • (1)【各国の言葉が伝える!開発協力】
    在外公館は,現地プレスをODAの現場に招いて報道してもらうツアーを実施しています。今回,6か国で実施したプレスツアーの実施報告を公開しました。
  • (2)【つたわる!開発協力
    パプアニューギニアの軍楽隊の育成と活動に,日本人の支援が深く関わっていたことをご存じでしょうか?詳しくはODAホームページチェック!
  • (3)【ODA出前講座】
    国際協力のお話しをするため,第一線で働く職員を皆様のもとへ派遣しています。新年度の行事やイベントなどに是非ご活用ください!ご相談,お申し込みはこちらから。過去の実施例もご覧いただけます。

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