ODA(政府開発援助)

2018年12月12日発行
平成30年12月14日

ODAメールマガジン第387号では,以下2話をお送りいたします。(肩書きは全て当時のものです)

  • (画像1)パレスチナ自治政府,ミャンマー連邦共和国

「平和と繁栄の回廊」構想:ジェリコ農産加工団地への支援

原稿執筆:在ラマッラ出張駐在官事務所(対パレスチナ日本政府代表事務所) 瀬戸 寛 二等書記官

イスラエル・パレスチナ紛争は,中東・北アフリカ地域における中核的な政治・領土問題の1つで,その包括的な解決は同地域の安定と繁栄に不可欠です。しかしながら,和平合意に向けた当事者間の政治対話は停滞しています。

このような状況下において,日本はイスラエルとパレスチナが共存共栄する「二国家解決」を一貫して支持してきており,1993年のオスロ合意以降,これまでに約19億ドルのパレスチナ支援を行ってきました。今回はその中から,パレスチナの経済的自立を促し,地域の安定化を図る日本独自のイニシアチブ「平和と繁栄の回廊」構想の旗艦事業であるジェリコ農産加工団地(JAIP:Jericho Agro-Industrial Park)についてご紹介します。

  • (写真1)JAIPの入り口
    JAIPの入り口
  • (写真2)JAIP管理棟:日本の支援によって建設
    JAIP管理棟:
    日本の支援によって建設
  • (写真3)JAIP内に所在する工場の社屋
    JAIP内に所在する工場の社屋
  • (写真4)貸し工場棟の外観:一部が日本の支援によって建設
    貸し工場棟の外観:
    一部が日本の支援によって建設

「平和と繁栄の回廊」構想は,日本,パレスチナ,イスラエル,ヨルダンの4者による地域協力によりパレスチナの経済的自立を促す中長期的取組で,2006年に,小泉総理(当時)がパレスチナを訪問した際に提唱されたものです。2006年以降,中東和平プロセスが停滞する状況にもかかわらず,工業,農業,観光業等の発展に向けた不断の協力を通じて,同構想は着実に成果を挙げてきました。その背景には,日本がイスラエルやパレスチナを含む地域の各当事者から得ている厚い信頼があります。

同構想の旗艦事業であるJAIPは,ジェリコ市に建設された工業団地で,日本は管理棟の建設や,電気・水・工場棟といったインフラの整備にかかるハード面での支援をするだけでなく,工業団地の設立・運営を所管するパレスチナ政府関係機関の能力強化を目的とした技術協力プロジェクトによるソフト面での支援も実施してきました。

パレスチナでは高い失業率が深刻な問題となっており,多くの雇用を生み出すJAIPでの取組は,内外から高い評価を得ています。現在,オリーブの葉からサプリメントを製造する会社や,清涼飲料を製造する会社など計13社が稼働しており,約200名の雇用が創出されるなど,目に見える大きな成果が生まれています。

  • (写真5)JAIPで生産された商品の一例(オリーブの葉を使用したサプリメント,オリーブ石けん,ウエットティッシュ等)
    JAIPで生産された商品の一例
    (オリーブの葉を使用したサプリメント,
    オリーブ石けん,ウエットティッシュ等)
  • (写真6)清涼飲料製造会社を訪問する現地メディア
    清涼飲料製造会社を訪問する
    現地メディア

2015年5月には安倍総理夫妻がJAIPを訪問し,JAIP製品のアイスティーやナッツを試飲・試食しました。2017年12月には,河野外務大臣がJAIPを訪問し,「平和と繁栄の回廊」構想を更にグレードアップさせ,新たにICT分野や物流円滑化への協力を強化することが発表されました。このように,パレスチナへの開発協力における成功モデルとしてJAIPへの内外からの注目が集まり,更なる発展に向けた機運が高まっています。

  • (写真7)安倍総理夫妻のJAIP訪問の様子【写真提供:内閣広報室】
    安倍総理夫妻のJAIP訪問の様子
    【写真提供:内閣広報室】
  • (写真8)河野外務大臣のJAIP訪問の様子
    河野外務大臣のJAIP訪問の様子

最近のニュースとしては,2018年9月に「平和と繁栄の回廊」構想グレードアップの一環で,100人以上の応募者から事前の書類審査を通過した25名が,ICTビジネスのアイディアを競うICTコンペがJAIPで開催されました。同コンペにおける優秀者5名は日本でのトレーニングプログラムに招待され,ICT産業視察や日本企業関係者とのネットワーキングの場が提供される予定です。また,JAIP内において,ICT分野を含む産業人材の育成を目的としたトレーニングセンターの建設も進んでいます。

  • (写真9)ICTコンペの様子
    ICTコンペの様子
  • (写真10)コンペ入賞者への賞品授与
    コンペ入賞者への賞品授与

中東和平をめぐる状況が困難を極める状況においても,パレスチナに撒かれたJAIPという希望の種は,大きく育っています。この希望の木から,より大きな果実が得られるよう,日本による継続的な支援が求められています。

現地から見た日本のミャンマー教育への貢献

原稿執筆:在ミャンマー日本国大使館 チョー・チョー・ルイン 草の根外部委嘱委員

ミャンマー教育の歩み

ミャンマーでは,昔から教育の重要性が認識されてきました。その昔,村や町のいたるところに僧院があり,子どもたち(特に男子)は僧院で教育を受けていました。1866年,当時ミャンマーを統治していた英国政府による教育システムが導入され,ミャンマー教育の主流は,僧院での教育から,現在の公立学校での教育へと移行していきました。

公立学校が抱える問題

ミャンマーの公立学校には,地域住民や保護者が組織する学校運営委員会があり,多くの学校では,寄付を募り自助努力で学校校舎を建設しています。しかし,予算や入手できる資材に限りがあることから,多くの委員会は,非常に簡素な造りの校舎しか建設することができません。そのため,各学年に教室を割り当てることができず,複数学年が間仕切りもない同じ空間で学習しています。

また,天井や壁が整備されていない仮設校舎を使用している学校もあり,児童や生徒は雨風に晒されながら授業を受けざるを得ません。教室の数が足りないため,入学者数を制限している学校もあり,既存校舎が老朽化し倒壊の危険がある場合でも,児童や生徒はこの危険な校舎で学習を続けるしかありません。

椅子や机といった学校備品の不足も公立学校が抱える問題の一つです。ミャンマー政府の予算は非常に限られているため,教育施設は地域住民によって建設された校舎や僧院学校に大きく頼っているのが現状です。

また,ミャンマーは,災害大国です。台風や洪水,地滑りなどによって校舎が壊れる被害が毎年起きています。

  • (写真11)地域住民の自助努力で建設された校舎
    地域住民の自助努力で建設された校舎
  • (写真12)同じ空間で複数の学年が学習している様子
    同じ空間で複数の学年が学習している様子
  • (写真13)仮設校舎で学習する生徒達の様子
    仮設校舎で学習する生徒達の様子

ミャンマーでの草の根・人間の安全保障無償資金協力による支援

日本政府は,1993年からミャンマーにおける草の根・人間の安全保障無償資金協力を実施し,2013年3月時点で435件の教育案件(主に校舎建設)を実施しています。

私たち外部委嘱員は,専門知識を必要とする業務,及び外部に委嘱することでより効率的,効果的な援助が実施されると判断される業務の補助的な作業を大使館から委嘱されています。具体的には,適切な支援が適切な裨益者に届くように,ミャンマー全土から送られてくる申請書を受け取った後,事前調査を実施します。この事前調査を通して,当国の教育指針に添った形で必要とされる支援が検討され,多くの場合は,単に申請された施設を供与するだけでなく,ニーズがより反映された形での支援を大使館から提案し,実施しています。

校舎建設の支援を受けて,教育環境が改善した結果,小学校が小中学校に,小中学校が小中高等学校に格上げされるケースが多々あります。児童・生徒は,小学課程から高校課程までを同じ地域で受けられることになり,進学率が向上するなど,地域全体の教育環境の発展に寄与しています。新しく建設された校舎は,通気性や採光が確保され,建設予定地の風土に適した設計が施されており,子どもたちは非常に快適な環境で学習することができます。

学校運営委員会は,日本の支援で建設された校舎を長期的に使用できるように,メンテナンス資金の確保に努めています。多くの場合には,地域住民からの寄付金や学校菜園で栽培された野菜や花を売って資金を確保するなど,地域住民と学校が一体となって,この取組に参加しています。校長や保護者からは,品質の良い校舎を50年以上維持していきたいという声が聞かれています。

  • (写真14)草の根・人間の安全保障無償資金協力で建設された校舎
    草の根・人間の安全保障無償資金協力
    で建設された校舎
  • (写真15)新校舎の明るい教室で学習する児童たち
    新校舎の明るい教室で学習する児童たち
  • (画像2)「草の根無償」イメージキャラクター「くさのネコ」2017年に誕生。手に草を持ち,世界中の人々に笑顔を届ける
    「草の根無償」イメージキャラクター「くさのネコ」
    2017年に誕生。手に草を持ち,世界中の人々に笑顔を届ける

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