ODA(政府開発援助)

2017年5月24日発行
平成29年5月26日

 ODAメールマガジン第350号は,国際協力局地球環境課から「生物多様性条約と名古屋議定書」,大臣官房ODA評価室から「平成28年度外務省ODA評価個別報告書の公表」,総合外交政策局国連企画調整課から「国連ビジネス・セミナー参加者募集」と,同国際機関人事センターから「国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)について」をお届けします。

生物多様性条約と名古屋議定書

原稿執筆:国際協力局地球環境課 奥田青州 課長補佐

 みなさんは「生物多様性」という言葉を知っていますか?
 地球上には,様々な場所に様々な生き物がいて,その種の数は3000万とも言われています。また同じ種の中でも遺伝子の違いにより,例えば人がひとりひとり違うように,それぞれの生き物には違いがあります。こうした違いを含めて,多種多様な生物が存在することを「生物多様性」と言います。様々な機能を持ったたくさんの生物が複雑につながり合い,私たちが生きていく上で不可欠な酸素,気候の安定,きれいな水,食料が提供され,気候の安定,自然災害の防止など,人々の生活の基盤となっています。生物多様性は,世界各地の暮らしや文化の違いの根源にもなっているほか,生物由来の物質を用いた医薬品の開発などを通じ,私たちの暮らしに深くかかわっています。

  • (写真1)多種多様な生物が生息するサンゴ礁(石西礁湖)の様子
    多種多様な生物が生息するサンゴ礁(石西礁湖)
    【写真:環境省】

 この生物多様性を守り,大切に活用していくための条約が,1992年に採択された「生物多様性条約」です。現在,日本を含む196の国と地域がこの条約に加盟しています。
 ところで約6年半前の2010年10月には,この条約の第10回締約国会議(COP10)が愛知県名古屋市で開催され,そこで「名古屋議定書(注)」が採択されました。この議定書は,植物や微生物といった遺伝資源から,例えば医薬品などが開発された場合に,その利益の一部を生物多様性の保全等のために遺伝資源の提供国に配分するルールを明確化することを目的としています。

  • (写真2)様々な遺伝資源
    様々な遺伝資源から様々な医薬品等が開発されてきた

 もともと生物多様性条約は「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分」をその目的の一つとしていますが,その具体的な実施方法については定められていませんでした。このため,遺伝資源の提供国としての側面を強く有する途上国は利益の確実な配分を求める観点から,一方で,バイオ産業が盛んな先進国は研究開発のために途上国で遺伝資源を取得する際の手続の透明化を求める観点から,国際的な枠組みの策定を目指して長年交渉が続けられてきました。途上国と先進国との間の意見の隔たりは大きく,交渉期限とされていたCOP10での合意は難しいとみられていましたが,会議最終日に,議長国である日本は,途上国と先進国の主張をバランスよく取り入れた議長案を提示し,粘り強く各国に働きかけを行った結果,名古屋議定書の採択に至りました。

  • (写真3)COP10最終日(2010年10月29日)の様子
    COP10最終日(2010年10月29日)の様子

 名古屋議定書は50か国の締結を受けて2014年10月に発効しました。
 遺伝資源の研究開発には,大学や研究機関のほか,医薬品・化粧品・食品・種苗をはじめとする産業など関係者が多岐にわたります。このため,日本は,本議定書の締結にあたって慎重な検討及び丁寧な調整を行い,そして本議定書は,本年5月10日に国会で承認され,国連が定めた国際生物多様性の日である5月22日に日本は本議定書を締結しました。
 豊かな生物多様性を育む自然環境に存在する遺伝資源を活用して開発された製品から得られた利益が,その豊かな生物多様性の確保のために還元され,自然環境やそこに住む人々の暮らしが守られる,そうした世界を目指して,日本は名古屋議定書の締約国として今後も国際的な議論に貢献していきます。
(注)正式名称は「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書」。

平成28年度外務省ODA評価個別報告書の公表

原稿執筆:大臣官房ODA評価室

 平成28年度は,「パラグアイ国別評価」,「タンザニア国別評価」,「環境汚染対策の日本の取組の評価」,「無償資金協力「日本方式」の普及の評価」,「タイの産業人材育成分野への支援の評価」,の5件を実施しました。

 ODAに携わる方々やODAにご関心のある方々に,ぜひ活用していただければと思います。
 これらの報告書は,外務省ODAホームページに掲載しています。

  • 平成28年度外務省ODA評価(第三者評価)個別報告書(日本語英語

 また,これらの個別報告書以外にも,外務省が実施したODA評価の概要を中心に,他のODA関係省庁と国際協力機構(JICA)が実施したODA評価の概要などを取りまとめた「ODA評価年次報告書」についても,毎年度公表しておりますので,ぜひこちらもご覧ください。

  • (写真1)自動車裾野産業育成に関する研修を受講した企業の様子
    自動車裾野産業育成に関する研修を受講した企業
    (「タイ産業人材育成分野への支援の評価」より)
  • (写真2)ナマンガ ワンストップボーダーポスト
    ナマンガ ワンストップボーダーポスト
    (「タンザニア国別評価」より)
  • (写真3)コロネル・オビエド市給水システム改善計画サイト
    コロネル・オビエド市給水システム改善計画サイト
    (「パラグアイ国別評価」より)

国連ビジネス・セミナー 参加者募集

原稿執筆:総合外交政策局 国連企画調整課

2017年6月22日(木曜日)及び23日(金曜日),外務省は,三田共用会議所(東京都港区)において,日本企業を対象に,国連ビジネス・セミナーを開催いたします。
同セミナーには,国連事務局を含む11の国際機関の調達担当者が参加し,国連ビジネスの概要,国連への企業登録,入札手順,入札書類の準備に至るまでの詳細な説明や国際機関の調達担当者との個別相談セッションを行います。

国連を始めとする国際機関は,途上国への支援等,活動を行うに際し,物品・サービスを各国企業から購入(調達)しています。国連システムの調達対象分野は輸送サービス(航空機,船舶),自動車,簡易住居,食料,燃料,医療関連製品,医薬品,発電機購入,IT等,多岐にわたっています。日本企業にも参入のチャンスは開かれており,国連側も日本企業に関心を有しています。
外務省では,日本企業の国連調達への参入機会を設けるべく,2015年・16年にも国連ビジネス・セミナーを開催しています。今回のセミナーは,各国際機関の調達制度について調達部門の担当者から説明を聞き,個別に国際機関の担当者と直接相談できる貴重な機会となっています。企業の皆様の参加をお待ちしています(下記の申込フォームを5月26日(金曜日)までにメール(un-procurement@mofa.go.jp)にてご提出ください。)。

(参加国際機関)
国連調達部(UN/PD),国連フィールド支援局(UN/DFS),国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS),国連工業開発機構(UNIDO),国際農業開発基金(IFAD),国際移住機関(IOM),GAVIアライアンス(GAVI),グローバルファンド(GF),国連世界食糧計画(WFP),国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国際赤十字社(ICRC),国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)

(詳細は下記をご参照ください。)

国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)について

原稿執筆:総合外交政策局 国連企画調整課 国際機関人事センター 田村 貴和子 外務事務官

ODAメールマガジン第346号でグローバルに活躍するために,国連をはじめとする国際機関で勤務する方法について主に3つの方法があることをお話しましたが,今回は,最近応募受付がはじまった「国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(通称「YPP」といいます)」についてお話したいと思います。

今回は,外務省国際機関人事センターのマスコット「ジンセ」くんに説明してもらいましょう。

ジンセくん

【YPPの概要】
国連事務局が年1回実施します。32歳以下で学士号(=大学卒業の資格)があれば,働いた経験(=職歴)が無くても応募可能です。但し,大学を卒業している必要があるので,大学4年生は受験できません!

【応募期間】
5月中旬から7月中旬までです。

【募集分野】
3分野です。
1 政治・平和・人道分野
2 マネージメント・管理分野
3 広報・会議マネージメント分野

【応募資格】
・日本国籍を有すること
・受験年の末時点で32歳以下
・英語またはフランス語で職務遂行可能であること
・募集分野に関連する学士号以上の学位を有すること

その他の詳細については,外務省 国際機関人事センターのホームページ別ウィンドウで開くをご覧ください。

 
ジンセくん

今回は ,YPPで実際 ,国連事務局職員となった小川弘昭さんに登場いただき ,お話をうかがいましょう。

 

国際機関名:国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)
タイトル:経済担当官補
名前:小川弘昭(おがわ・ひろあき)
2015年 国連ヤング・プロフェッショナル・プログラム(経済分野)に合格
2016年 国連アジア太平洋経済社会委員会 北・中央アジア地域事務所 着任

(写真)

ジンセくん

どんな経歴をお持ちですか?

 
小川弘昭さん

学部時代に国際機関で働きたいと考え,そのまま同じ大学(大阪大学)の修士課程に進学しました。大阪大学が国際機関職員を育成するプログラムを開始した時期だったので,ニューヨーク国連本部への訪問や経済開発協力機構(OECD)でのインターンシップの機会に恵まれました。その中で,エコノミストとして国際機関に入る方法を知りました。
専門性をさらに深めるために博士後期課程に進学後,OECDのプロジェクトにコンサルタントとして関わりながら,開放経済が途上国が直面する問題にどのように影響を与えるのかを研究をしていました。最終年度に近づいたころに国連YPPを受験したところ合格しました。

 
ジンセくん

今の仕事について教えてください!

 
小川弘昭さん

ESCAPの北・中央アジア地域事務所(アルマトイ(カザフスタン))で,中央アジアと南コーカサスの経済,社会及び政策の分析を担当しています。他に予算・決算・評価担当も兼任し,今年度の事業評価や次年度の予算策定などに従事しています。
エコノミストとしての分析的な仕事だけではなく,組織に関わる仕事が一年目から経験できて,国連システムへの理解が一層深まっています。

 
ジンセくん

国際機関を目指す方へ一言お願いします!

 
小川弘昭さん

今自分がやっていることが自分の将来の目標にどうつながるのかを常に意識しながら,何をすべきかを取捨選択していくことが重要です。国連にYPPで入る際には,裏づけされた強い専門性が最も評価されますので,“履歴書に書ける”一貫したキャリアを戦略的に築くことをお勧めします。

 
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